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イベントレポート

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2016年6月2日(木) 19:00~21:00

西 加南子、田代 恭崇 /  

女王とオリンピアンが伝授!
「初心者でもわかるサイクルロードレース観戦術」

世界最高峰のサイクルロードレース、ツール・ド・フランス開幕まであと1か月。そして国内サイクルロードレースもシーズン真っ盛り。個人戦のようで団体戦?エース?アシスト?趣味で始めたロードバイク、乗るのは楽しいけどレースの観方がよくわからない方に向けて、現役プロロードレーサー女王の西加南子さん(LUMINARIA所属)とアテネオリンピック代表でヨーロッパプロロードレースで優勝した田代恭崇さん(リンケージサイクリング代表・サイクリングプランナー)に、サイクルロードレースの観方を伝授していただきました。

知っておきたいロードレースの種類

本日の講師はd-laboではお馴染みのプロ自転車競技選手・西加南子氏と、スルガ銀行サイクリングプロジェクトのイベントを企画運営しているリンケージサイクリングの田代恭祟氏。今回は現役第一線で活躍している西氏とアテネオリンピック出場経験を持つ田代氏に、ロードレースの種類やルール、観戦術を、競技者だからこそ明かせる裏話も含めてお伝えしていただいた。

トークショーの冒頭は「ロードレースってどんな競技?」。ひとくちにロードレースといっても、着順で決まる「個人ロードレース」やタイムを競い合う「タイムトライアル」など、順位の決め方や走るコースはさまざま。よく「ロードレース」と聞いてイメージされる一般道を走ってのレースにも、1回走りきるだけで勝負が決まる「ワンデイレース」と、そのワンデイレースを数日間に渡って行ない、総合で成績を争う「ステージレース」の2つがある。西氏が毎年出場している全日本選手権やジャパンカップなどの大会は「ワンデイレース」。自転車レースの最高峰である『ツール・ド・フランス』は「ステージレース」だ。

「ステージレースは女子だと短くて3日間くらいですね(西氏)」

「これが『ツール・ド・フランス』になると21日間、3週間ものステージレースになります(田代氏)」

ロードレースというと平坦な道を集団で走っている光景が目に浮かぶが、長いレースになると「ヒルクライム」といって山岳路を登ることも珍しくはない。スピードが落ちるために風の影響を受けにくい山岳コースは「選手の力の差が出やすい」という。

田代氏と西氏が「ある意味いちばんきつい」と口を揃えるのは、チーム単位で競いあう「チームトライアル」。3人から9人程度で走るこの競技は、たとえば9人であれば3番目から5番目にゴールした選手が「チームのタイム」となるため、全員に責任がかかってくる。なかでもきついのは「5番目、6番目の人」。

「このポジションで切れるわけにいかないから、ここにいる人は必死で前についていかなくてはなりません(西氏)」

男子は「エースを優勝させるチーム戦」、女子は「真っ向勝負の個人戦」

選手にとって走っていて楽しいのは「スタートとゴールの場所が違うラインのレース」。周回ではなく一本道を移動するレースは、逆に見る方にとってはひと苦労。だが、海外には車でうまく裏道を移動して観戦を楽しむ「上手な観客」がいるという。

「ヨーロッパのレースなどに出ると、あ、さっきもこの人見た、ということがけっこうあります(田代氏)」

観戦しやすさ、という面でいちばんお勧めなのは、3キロメートル程度の短いコースをぐるぐると回るクリテリウム。この競技は町中で行なわれるので見に行くにも便利だ。

チームトライアルを除けば、ほとんどは優勝者が1人というロードレース。しかし、男子の場合は実質は「チーム戦」になるという。各チームにはそれぞれエースやサブエース、アシスト役がいて、他チームと駆け引きをしながら、いかにしてエースをトップでゴールさせるかを考える。そこには選手だけでなく監督やメカニック、マッサージャーなどスタッフの存在も欠かせない。対して、日本国内での女子のレースというと「人数が少ないこともあって個人戦になることが多い」という。

「もちろん強い選手に引っ張ってもらったり、仲のいい選手とは協力しあったりすることもありますが、女子の場合はけっこう真っ向勝負になりますね(西氏)」

後半は「ロードレースの観戦方法」。いちばん簡単なのは、やはりテレビ中継だ。

「今は『ツール・ド・フランス』に『ジロ・デ・イタリア』、『ブエルタ・ア・エスパ―ニャ』の世界三大ツールもほぼライブで観られるようになりました(田代氏)」

問題があるとすれば「スタートもゴールも日本では夜の時間だから生で観ると睡眠不足になること」だが、これは致し方なし、贅沢な悩みといったところだ。

「ぜひ足を運んでほしい」のは国内の主要大会。スタート前の選手の表情を観察するのもいいし、スピードの落ちる登りで選手の息づかいを感じるのもいい。むろん「声援は大歓迎」。実は走っている選手は意外なほど観客の顔を見ているという。

「声もちゃんと聞き分けているので、ガンガン応援してください(西氏)」

勝負はゴール前、最後の200メートルで決まる

観戦時、注目しておきたいのは選手の体形。ロードレースはマラソンなどと違って同じレースのなかに筋肉隆々の選手もいればガリガリに痩せた選手もいる。「マッチョタイプ」はスプリンターでタイムトライアルなどに強く、軽量の選手は山岳路に強いのが特徴だ。また強い選手は専用のジャージを着ているので、そこにも目を向けるといい。

観戦すればわかるように、ロードレースというものは、基本的に「大集団」と「逃げグループ」の2つによって構成されている。集団で走るのは「風をよけるため」。選手にとって最大の敵は風による疲労だからだ。

「誰一人として先頭を走りたくはない。レース中に選手同士が何か言いあっていたりしたら、それはもう誰が先頭を走るか、それで喧嘩しているのだと思ってください(田代氏)」

他にも「トイレ休憩は集団全員で」、「ラスト30キロまでは大集団は総合首位のチームが引く」など、暗黙のルールがあるのがロードレース。また、大集団の前を行く「逃げグループ」はたいてい途中で追いつかれるものだが、ときにはそのまま逃げ切ってしまうことがある。そうなると思惑とは違ってアシスト役の選手が優勝してしまったりもする。

「それがロードレースのおもしろいところですね(西氏)」

ゴール手前30キロともなれば、各チームは自分たちの「場所」を確保して自分たちのエースをできるだけいい位置に持って行く。勝負が決まるのは「最後の200メートル」。選手としてもっとも達成感を感じるのは「単独ゴール」の瞬間だという。観戦する側にとっても、ゴールシーンは最大の見どころだ。

他にも知識として持っていればより楽しいという話が盛りだくさん。最後は「自転車の魅力を多くの人に伝えたい(田代氏)」、「選手をやめても健康を保って自転車にはずっと乗りつづけたい(西氏)」という両講師の「夢」をお聞きしてセミナーは終了した。

講師紹介

西 加南子、田代 恭崇
西 加南子、田代 恭崇
 
西 加南子(にし かなこ)
静岡県掛川市出身。静岡県立掛川西高等学校卒業後、日本大学短期大学部入学。その後、二松学舎大学に編入。大学卒業後、本格的に自転車競技を開始し、初出場となる全日本自転車競技選手権大会では7位。
2009年全日本自転車競技選手権大会優勝。2010年ジャパンカップオープン女子優勝。 2011年ジャパンカップオープン女子優勝(2連覇)。2014年ジャパンカップオープン女子優勝。

西加南子さん 公式HP http://www.kanakonishi.com

田代 恭祟(たしろ やすたか)
1974年東京都出身。大学サイクリング部で自転車ロードレースを始め、卒業後プロに転身。10年間「チームブリヂストンアンカー」に所属、ヨーロッパプロレースや全日本選手権など多くの優勝を飾る。2004年アテネオリンピック代表。2007年現役を引退後、ブリヂストンサイクル株式会社に入社。2013年同社を退社し、2014年、サイクリングイベントやスクール、コーチを行なうリンケージサイクリングを設立し、現在に至る。

リンケージサイクリング 公式HP http://linkagecycling.com