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イベントレポート

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2016年7月16日(土) 13:30~15:00

杉山 美矢子(すぎやま みやこ) / フリーカメラマン

視点を変えて街を撮ろう ~楽しい街ぶら写真の撮り方 初心者編~

デジタルカメラの性能は、年々進化し続け、特別な技術がなくても、誰でも失敗の少ないキレイな写真が撮れるようになった。撮りたいと思った時にすぐ撮影し、その場ですぐ確認できるので、写真を撮ることは日常のごく自然な出来事になっている。その反面、現像に時間とお金がかからなくなったことで、手間のかかるフィルムカメラに対して、1枚の写真に込める想いやこだわりが少なくなっているのも事実。
そこで今回は、写真歴45年のフリーカメラマンの杉山美矢子氏をお招きし、初心者でも挑戦しやすい「街ぶら写真」の撮り方のコツを教わった。カメラの基本的な使い方から、ファインダーを覗かないコンパクトカメラや携帯カメラだからこそできるワザ、さらに撮影する時の心がけや自分なりの視点の持ち方まで、実践を交えて教えていただいた。

コンパクトカメラならではの撮り方を見つける

d-labo静岡会場の一角では、約1ヶ月に渡り杉山氏の写真展が開催されていて、静岡の街の何気ない風景を写した写真が並んでいた。作品には、静岡人なら見慣れている景色の中の、ともすれば見過ごしてしまいそうな美しい瞬間が切り取られている。きっと日常の小さな発見を楽しむことができる方なのだろうと、お会いするのを楽しみにしていた。

講座当日は、開始前から参加者と積極的に会話を楽しみ、会場の雰囲気を和ませている杉山氏がいた。お話すると想像したとおり自然体で、恐れることなく自分の心のドアを開いてくれる、そんな魅力的な女性だった。きっと、レンズ越しでも同じような姿勢でいれるからこそ、こんな素敵な写真が撮れるのだろう。いよいよ講座が始まり、まずは杉山氏がカメラに携わるきっかけから話していただいた。

「私が日刊工業新聞社で働いていた時、同じビルに入っている新聞社のカメラマンと接する機会がありました。1枚の写真に対する情熱に感動したことからカメラに興味を抱き、鬼師匠のような厳しい方に教わることになりました。そこから猛勉強を重ね、45年間カメラとともに過ごしてきました。」

まずは、カメラの基本的な操作方法からレクチャーが始まった。カメラの構え方からピントの合わせ方、レンズの違いやストロボの効果をわかりやすく教えていただいた。
「ファインダーを覗かなくても良いコンパクトカメラの魅力は“アオリ”を使った撮影がしやすいこと。アオリを使うと、人とは違う面白い構図になります。」
アオリとは、被写体を下から見上げて撮影する方法。特に、風景や道端の草花を撮る時に使ってみると、メリハリのある作品になるという。

「ストロボの使い方でも印象は大きく変わります。今から同じ景色を強制発光と発光禁止の2つのモードで撮影して、出来上がりを見比べてみましょう。」
参加者は、自分のカメラで撮影を始めた。比べてみると、強制発光した写真は、のっぺりとした印象を受ける気がする。
「実は、発光禁止にした方がいい場合が多いです。暗めの被写体でも、脇をしっかり締めてブレないように撮影すると、雰囲気のある写真になります。反対に逆光を利用した写真では、強制発光をすることで光をキレイに写すことができます。」
まずは、被写体を活かす構図を決め、カメラの機能を上手に利用することが、上達の近道だ。

自分だけの気持ちで撮らないこと

次は、杉山氏が実際に撮影した街ぶらの写真をスライドでみせてくれた。青葉公園や道路脇にある鉢植え、レストランの天井など、杉山氏がとらえた被写体は普段私たちが目にしているものばかり。それを面白いと感じる構図で切り取り、偶然の一瞬や美しい瞬間をとらえた写真だった。どれも自然の光を利用しているのが印象的で、杉山氏の豊かな感受性と鋭い洞察力が感じられた。
「街ぶら写真は、光と仲良くなることがポイントです。どの時間帯の光がいいのか、どこから撮るのが一番ステキに見えるのか、自分の好きな光を探してみるといいと思います。」

次に、撮影時のマナーの話。お店で撮影したり人を撮らせてもらう時は、まず声をかけて他愛ない話をした後で、写真撮影の許可を得ることを心がけているという。
「写真は、撮りたい相手がいてこそのもの。だから、自分だけの気持ちで撮らないようにしています。人はもちろんですが、植物や風景を撮る時も同じです。実際に声に出さなくてもいいので、心の中で『キレイだね~』『撮ってもいい?』など、被写体に声をかけてあげるようにしています。」
杉山氏の写真から優しさを感じるのは、被写体への敬意や愛があふれているからだろう。

もちろん、カメラ本体に対しても同じことが言えるという。
「カメラ自体は、ただの道具に過ぎませんが、その中には潤滑油が入っていて、手で温めてることで潤滑油がよく巡るようになっています。だから高いカメラだからといって大事にしまっておくと、不思議と故障してしまいます。よく手にとってあげて外に出してあげると、ホコリも付かずカビも生えなくなるので、時々カメラとも対話をしてあげてください。」
まさに杉山氏の人柄そのものを現すような言葉だった。

ご自分の部屋にも、スライドで見せていただいたような、何気ない写真を大きめにプリントして飾って楽しんでいるという。
「友達から『こんな何気ない写真でいいんだね』と言われると嬉しくなります。誰かが描いた高価な絵よりも、自分で撮った心のこもった1枚の方が素敵なインテリアだと思います。好きな写真を部屋に飾っておくと、それだけで心が豊かになれますから。」

撮った写真はプリントして部屋に飾ろう

少し休憩を挟んだ後は、実際に自分のカメラで撮影をする実践の時間。d-labo静岡店内を自由に歩き、いいなと思った景色や瞬間を撮影していく。たとえば、エスカレーターを撮るのであれば、その隣にたまたま置いてあった赤い傘を入れると、人とモノとの接点ができて面白い写真になるという。同じように、自然の風景だけで物足りないと思えば、自分の履いている靴やショール、帽子などを入れて撮ってみるのも面白いというアドバイスをいただいた。参加者は、習ったばかりの“アオリ”を使って撮影をしたり、しゃがんでみたり近づいてみたり…。普段とは違う視点を持って撮影を楽しんでいた。

撮影が終わった後、杉山氏からひとつ全員に宿題が課された。
「今日撮ったお気に入りの写真を、2Lくらいの大きさでプリントして、部屋に飾ってみてください。撮った写真をパソコンの画面で見るのと、プリントをして手にとるのでは全然違います。写真は、生活の中に喜びや楽しみを連れてきてくれるものだと、私は思っています。」

最後に、杉山氏の今後の夢を語っていただいた。
「私は、静岡市内で下町とも言うべき川辺町に生まれました。小さい頃からこの静岡の街そのものをふる里と感じています。今は、街並みが昔とずいぶん変わりましたが、変わって良くなったものや、昔と変わらないものもたくさんあります。だからこれからも写真生活を続けて、静岡の街の魅力をもっと伝えたいと考えています。私の写真を見て、やっぱり静岡の街にも魅力がいっぱいあるんだなと静岡の街を見直すきっかけになったら嬉しいです。」

《杉山氏が配布してくれた、写真への想いを綴った文章から抜粋した一文》
~たかが1枚の写真ですが、風景ならその時の感動や美しさ、記録写真は今後の参考に、人物写真からはその人の魅力が伝わり、私たちが何気なく撮ったスナップ写真からは生き生きした日々の暮らしの物語が生まれてくるのです。撮る時は一瞬、でもその写真を身近に置いたら一生楽しめ、あなたの感動を家族に伝えることができます。だからこそ、良い写真を撮る努力をしていきましょう~

文・しずおかオンライン

講師紹介

杉山 美矢子(すぎやま みやこ)
杉山 美矢子(すぎやま みやこ)
フリーカメラマン
静岡市生まれ。日刊工業新聞社静岡支局勤務の時カメラに興味をもち、「カメラに恋してる」をキャッチフレーズに写真を45年間撮り続けている。現在はグランシップ撮影サポーター6年目。静岡県主催のイベント「世界お茶まつり」「富士山三保子里帰り展」等の撮影を担当。カメラのキタムラでプリントアドバイザーとして12年間勤務の後独立。写友三水会所属。