スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2016年9月3日(土)13:30~15:00

迫田 惠三(さこだ しげみ) / 海洋建設材料研究所 代表・株式会社オムス取締役・工学博士

雄大なるモンゴル草原 ~大地を歩く~

モンゴルといえば、蒙古斑や元寇、大相撲などで我々にとってなじみ深い国。
だが、欧米やアジアの国々に比べると、その実情についてあまり知られてはいない。迫田氏は、モンゴルに関わるようになって以来約4年間、首都ウランバートルに長期滞在し、真冬には氷点下40度の極寒を、真夏には爽やかな草原の風を体感してきた。ときには、ウランバートル郊外やゴビ砂漠などへ出かけ、自然の雄大さや厳しさをも体験した。日常生活においても、モンゴル人との交友をとおして知った、その風習や考え方の違いには驚くことばかり。
今回は、現在のモンゴルの政治、経済、文化、インフラ、教育の現状や人々、自然および食べ物などについて体験談を交えながらたっぷりとお話しいただいた。

~近くて遠い国~モンゴルって?

大草原、遊牧民、チンギス・ハーン、ゲル…モンゴルに対する一般的な我々のイメージとは、こういったところだろうか。直行便なら成田空港から5時間強。しかし、その地理的な近さに相反して、私たち日本人とモンゴル人は心情的に近しいとは言い難い。今回、この「近くて遠い」モンゴルについてのあれこれを教えてくださるのは、海洋建設材料研究所代表・株式会社オムス取締役・工学博士である迫田惠三氏。

モンゴルの人口は、約300万人強。日本の約4倍の国土面積を誇るが、人口密度は1.90人/km2(2015年度)。これは、なんと世界一の少なさだ。対して家畜は、4500万頭以上。
遊牧民の数は、年々減少しているとはいえ約30万人と人口の10%を占める。平均寿命は、男性65歳、女性74歳。やや短めなのは、迫田氏曰く「過酷な気象条件と塩分が濃いモンゴル料理のせいではないか」とのこと。首都ウランバートルの緯度は、日本の稚内とほぼ同じ。10月を過ぎればもう冬はすぐそこだ。日本との時差は1時間で、夏季はサマータイム導入により時差はなくなる。
迫田氏が、初めてモンゴルを訪れたのは4年前の4月下旬。

「あまりの殺伐とした風景にこれはすぐ帰ろう、と思いました。」

緑がない、空気も汚れている、幹線道路にも関わらず穴が開いてボコボコ…。

「でも、その印象はだんだん良くなりましたね。6~9月は、モンゴルのベストシーズンだと思います。緑が増え空気も澄み、日本より乾燥しているので暑い夏も快適に過ごせますよ。」

当時、毎月2~3週間首都ウランバートルに滞在し、日本へ一時帰国するスケジュールをこなしていた迫田氏。モンゴルへのアクセスについて「成田からの直行便が時間的に楽ですが、韓国のインチョン空港や中国の北京空港経由といった便もあるので、空の旅もいろいろと楽しめると思います。」

モンゴルは中国とロシアに接する。北西部はアルタイ山脈といった高い山地、南東部は砂漠(ゴビ砂漠)、北部は森林地帯、中・東部は草原地帯。日本と1972年に国交を回復し、東西に長いその国土には21の県がある。西部のドルノゴビ県は静岡県と友好協定があり、大道芸ワールドカップが開催される折にはモンゴルの子供たちを招待するなどの文化交流がある。

モンゴル帝国は、チンギス・ハーンが多くの部族を次々に制圧して建国された。チンギス・ハーンの孫であるフビライ・ハーンは、元の建国や遷都などの政治改革を行ない、帝国へ経済的な発展をもたらした。日本史にも登場する元寇が行なわれたのはこのときだ。

しかし、拡大しすぎた勢力を維持できずに瓦解していく。その後、中国清朝の支配下に置かれていたが、1911年に独立。1992年に社会主義を放棄し現在に至る。現在は共和制・大統領制で国民大会議は1院制より成る。選挙権は18歳以上、被選挙権は25歳以上、任期は4年。

モンゴルの教育制度は日本と同じ、小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年。大学進学率は6割以上で世界42位、中でも大学生&大学卒業者の女性比率は約7割で世界第6位と女性の勤勉性が際立っている。

モンゴルのインフラについて

モンゴルの水道普及率は都市部では30%弱、地方では2%と、インフラ設備が整っているとは言い難い。しかし、旅行客が滞在することの多いウランバートルはその限りではない。

「首都ウランバートルではほぼ100%です。携帯電話もほぼ1人1台以上持っていますし、インターネットアクセスもスムーズ。大抵のホテルでは無料で使用でき便利です。」

対して、電力消費量はさほど多くはない。モンゴルの主なエネルギー源は、自国の地下に豊富に眠るため安価に手に入る石炭だ。

「寒い冬には、大量に消費するためスモッグで街の空気は汚れ、マスクなしでは歩けないほど。ただ、アパートやマンションにはスチームが完備されているので、とても暖かく快適です。」

また、モンゴルは車社会なので、街中では慢性的な渋滞がみられる。自家用車のほかにバスも走っており、乗車賃が格安なため車内は常に混雑している。スリが多く、利用する際には注意が必要。車が走っている中を歩行者がどんどん渡っていく光景も日常のようだ。

「渋滞はドライバーのみならず歩行者の交通マナーの悪さが一因ですね。」

街を走る車の80%は日本車だという。人気はトヨタ車。エコカーのプリウスもよく見られるそうだ。

「中でもランドクルーザーはステイタスシンボルになっています。」

また、中国やロシアにつながる道路や鉄道もある。迫田氏おすすめのスポットはロシアのバイカル湖。冬季に見ることができるエメラルドグリーンの氷が幻想的な、人気の観光地だ。

「ビザが必要になりますが、電車や車、飛行機でもアクセスできる素敵な場所です。電車は草原の中を走っていきますので、車窓からの風景は美しく、素晴らしい体験ができると思いますよ。」

もうひとつは、モンゴル北西部のフブスグル湖。この湖から流れ出る川は、バイカル湖に注がれる。ちなみに世界一の高い透明度を誇るのがバイカル湖で、2番目がこのフブスグル湖。

「南東部のゴビ砂漠は360度どこまでも砂の世界が広がり、日本にいては実感に乏しい地球の大きさを実感させてくれます。また、北西部のアルタイ山脈でトレッキングを楽しむのも稀有な体験でしょう。」

大自然の美しさ、厳しさに触れることができそうだ。

次にモンゴルの住居について。有名なのは、遊牧民が使用する移動式テントのゲル。組み立てにかかる時間は1~3時間で、家具を中に置いてから周りを組み立てていくそう。ちなみに内モンゴル(中国)ではパオと呼ばれる。

近年都市部では、高層アパートの建設も進んでいる。上下水道にスチーム完備で住み心地は快適だが、全体にまだそれほど所得が高くないこともあり、空き部屋率も高いそうだ。

モンゴルの祝祭日や料理、人となりについて

モンゴルの祝祭日の中で盛大なのが、旧正月を祝って1、2月の2日間開催される「ツァガーン・サル」と、革命記念日である7月11から12日の2日にわたって行なわれる「ナーダム」。「ツァガーン・サル」では、この時期にだけ供される料理を楽しめる。「ナーダム」では騎馬隊のパレードや民族舞踊の披露など、華やかな雰囲気の中で相撲、弓術および競馬の競技が開催される。
外国を訪れる際の楽しみといえば、なんといっても食事。以下では、迫田氏おすすめのモンゴルメニューを紹介する。モンゴルに行く機会があったら、挑戦してみてはいかがだろうか。

・スーテーツァイ(乳茶)
・ホルホグ(羊肉の塊を野菜、塩、香辛料で蒸し焼きにしたもの)
・ゴリルタイ・ショル(肉うどん)
・ツォイバン(焼うどん)
・ホーショール(小麦粉を練った生地でひき肉などを包み油で揚げたもの)
・ボーズ(肉まんや餃子のようなもの)

「モンゴルのレストランでは、様々な国の料理がいただけます。もちろん和食も。モンゴルでは羊肉を使った料理が多く、全てが口に合うわけではありませんが、上に挙げたメニューは私も大好きなものです。」

外見的には、我々日本人とよく似たモンゴル人。では、内面はどうだろう?迫田氏のモンゴル人のイメージは以下のとおり。

・親日的である
・日本製、日本人に対する信頼感が大きい
・女性は勤勉である
・酒に強い
・楽天家が多い
・交通マナーが悪い
・喫煙者が多い
・時間にルーズ

「親切で面倒見のいい人が多いですね。女性が勤勉、ということはつまり男性は怠け者ということなのですが…。なんとかなるさ、とおおらかな感じです。離婚率、離職率ともに高めですが、明るく楽天的。酒は男女ともに強いですね。」

これまで多くの旅を経験された迫田氏。

「ありがたいことに色んな場所へ行かせていただき、色んな経験をして今があります。モンゴルでの経験もかけがえのない宝物です。」

スクリーンに映し出されたモンゴルの写真の数々を、食い入るように見つめる熱心な参加者たちの姿が印象的であった今回のセミナー。

「これで君もモンゴル人だね」と現地の友人から贈られた民族衣装を着て微笑む迫田氏の写真をもって、盛況のうちに幕を閉じた。

文・土屋 茉莉

講師紹介

迫田 惠三(さこだ しげみ)
迫田 惠三(さこだ しげみ)
海洋建設材料研究所 代表・株式会社オムス取締役・工学博士
元東海大学海洋学部大学院教授・学部教授(専門:建設材料学)
元日本ウォータージェット学会会長
趣味:家庭菜園(200坪の農地を耕作)
旅行:外国(長期滞在・オーストラリア、モンゴル)アジア8ヵ国、ヨーロッパ8ヵ国、アメリカ大陸2ヵ国、オセアニア2ヵ国、中近東1ヵ国、南太平洋8ヵ国を訪問、船による赤道通過6回