スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2016年9月10日(土) 14:00~16:00

柏原 賢一、島袋 誠守 /  

再発・転移へのあきらめないがんセミナー 免疫療法×放射線治療による、注目のがん治療 アブスコパル増強療法について「名医による最新がん治療をご紹介」

“2人に1人ががんになる”といわれる時代。再発・転移がんにおいては、状態により「打つ手なし」との宣告がされることもある。そこで、がん治療を“あきらめない”2人の医師が、再発・転移がんへの治療について解説いただいた。一般的に、治療対象となるがんの数や大きさが制限されがちな放射線治療の真の可能性とは?自分の免疫力でがんと闘う免疫療法の実態とは?今回、東京放射線クリニックの柏原院長と東京ミッドタウン先端医療研究所の島袋診療部長をお招きし、論文が発表され注目が高まる、免疫療法と放射線治療の組み合わせ治療についてお話しいただいた。

免疫療法と抗がん剤の組み合わせで胃がんがなくなった

この日のセミナーは、日本で唯一、がんに対して高度放射線療法と免疫療法の組み合わせ治療を行なっている柏原賢一氏と島袋誠守氏が講師。がん治療というと日本では保険が適用する標準治療が一般的だが、実はそれ以外にも選択肢はある。そこで両氏にそれぞれのクリニックにおける症例などを挙げてもらいながら、話題になっているアブスコパル増強療法なども交えながら最新のがん治療についてお話ししていただいた。

島袋氏のテーマは「がんと免疫」。昨年までは故郷の沖縄で外科医として手術と抗がん剤治療を中心にがん治療に携わってきた島袋氏。が、患者の中にはすでにがんが進行していて「手がつけられない」という人もいたという。

「そこで抗がん剤や放射線治療などあの手この手を使ってどうにか手術ができるところまで持っていこうとするんですけど、やはりなかなかうまくいかないんですね」

そんなとき出会ったのが免疫療法だった。免疫療法とは人間が本来持っている免疫力を利用した治療方法のこと。当時はたまたま先輩の医師が県の治験事業でそれを行なうというので、便乗する形で自分が担当する胃がんの患者に免疫療法のひとつである活性化リンパ球療法を抗がん剤と組み合わせて施してみた。すると約3ヶ月の治療で食道の入口を塞いでいたできものが「なくなった」。これが自身の転機となり、免疫療法を専門とする『東京ミッドタウン先端医療研究所』に移籍。現在は多くのがん患者に「免疫力を底上げ」する「活性化リンパ球療法」や「がんを狙い撃ちする最新世代の免疫療法」である「樹状細胞ワクチン療法」、「樹状細胞ワクチンが狙いにくいがんを攻撃」する「ナチュラルキラー細胞療法」などの免疫療法を行なっている。

よく言われているように、人間のからだの中では毎日5000個にも及ぶ細胞ががん細胞へと変化している。しかし通常は免疫細胞であるリンパ球ががん細胞を発見して攻撃するためがんになることはない。しかし「変装の名人」であるがん細胞の中にはリンパ球に見つからないものもある。それを見やぶるのが樹状細胞。「司令官」である樹状細胞はがん細胞を見つけると「兵隊」であるリンパ球に指令を出しがん細胞を攻撃する。最新の「樹状細胞ワクチン療法」は患者の血液からこの樹状細胞を取り出して増やす(培養する)ことでより多くのがん細胞を攻撃、転移や再発の予防にも役立つという治療法だ。

免疫療法は夢のような治療法ではない

最近はテレビや新聞でも話題になっているこの免疫療法。知っておきたいのは「免疫療法は夢のような治療法ではない」ということ。

「免疫療法だけでがんが治るということはありません。では何のためにやるのかといえば、最大の目的は標準医療の底上げです」
がんの標準治療といえば、手術と放射線治療、抗がん剤による化学治療の3つ。このうち手術と放射線治療は「局所」向け。たとえば胃や肝臓にできたがんならば手術、肺ならば放射線といった治療が一般的だ。一方の抗がん剤は複数の転移が見られるときなどの「全身」向けの治療。ただし抗がん剤は正常な細胞にもダメージを与えてしまうし、投与しているうちに効かなくなってくるという欠点がある。免疫療法の役割は免疫を活性化することでそうした抗がん剤の欠点を軽減、手術や放射線治療の効果を増大させることだ。

「僕は別に抗がん剤が駄目と言っているわけではありません。がん治療は総力戦。できることは全部やりましょうということです」
ここでは画像を見ながらいくつかの症例を解説。55歳のステージ4の膵がんの男性患者は肝臓に転移が見つかった時点で来院。樹状細胞ワクチン療法を行なったところ、大きかった腫瘍が「ほぼない」状態になった。39歳の肺がんの女性は肝臓、リンパ節、骨と転移していたため痛みがひどくモルヒネを打っている状態だったが、現在は腫瘍マーカーが正常化し、車椅子から自力歩行できるまで元気になった。ほかにも、素人目にもいかにもこれは難しいといった状態から回復した症例を紹介。自費治療のため費用の負担は大きい免疫治療だが、その効果が大きいことがわかる。

「うちの患者さんを見ていて感じるのは、みなさん免疫が活性化すると元気になられるんですね。食欲が増したり、目に力が戻ってきたり、数値ではわからない変化が見られます」

患者の負担が少なくより多くの照射が可能な体幹部定位放射線治療

つづいて登壇した柏原氏は「体幹部定位放射線治療(SBRT)の可能性」について講演。この治療法の利点は通常の放射線治療よりもより多くの放射線をがん細胞に照射できる点。

「これまでの放射線治療では正常な臓器にも放射線が当たってしまうためがんを治すところまでは当てられなかったのですが、定位放射線治療では3次元的に多方面から照射することでよりたくさんの放射線を当てられるようになりました」

これまでの症例は約300件。中でも8割を占めるのが肺がんだ。画像で症例を見てみると、いずれも根治、あるいは腫瘍が小さくなっていることがはっきりと見てとれる。また免疫療法と組み合わせることで、照射していない場所のがんまでが小さくなるという「アブスコパル効果」も期待できるという。柏原氏のクリニックではこの定位放射線治療のほかにも強度変調放射線治療(IMRT)を実施。前立腺がんなども手術なしで治癒した患者が大勢いるという。

「不満があるとすれば5センチ以上の腫瘍には保険がきかないなどの制度上の問題ですね。もっと多くの人が高度放射線治療を受けられるようになればと願っています」
島袋氏の免疫療法、柏原氏の高度放射線治療。共通しているのは副作用などの患者の負担が少ない点。治療も短時間で済むため入院は不要。通院だけでがん治療が行なえる。そのため遠方から来る患者も少なくない。

「たとえ肺がんの4期の人でも、定位放射線治療で腫瘍を叩いて、あとは抗がん剤とタイミングよく免疫療法を加えれば、かりに根治はしなくてもQOLは大きく改善されるはずです。ただ保険診療に縛られている一般の病院の先生たちは、そういう話はなかなかできない。あきらめたくないと思ったら、ぜひ私たちのところにご相談に来てください(柏原氏)」

島袋氏の「夢」は「究極的にがんをなくすこと」。柏原氏は「こういう治療があることをより広く知っていただきたい」。患者とその家族の笑顔を見ることが「いちばん嬉しい」という両氏。ますますの活躍を期待したい。

講師紹介

柏原 賢一、島袋 誠守
柏原 賢一、島袋 誠守
 
柏原 賢一(かしはら けんいち)
東京放射線クリニック 院長
ワシントン大学やハーバード大学でも研鑽を積んだ放射線治療の専門医。一般的に広く行なわれている放射線治療だけでなく、日本でも数少ない増感剤を併用したコータック治療等、放射線治療の可能性を最大限に活かした治療法を提案している。

島袋 誠守(しまぶく まさもり)
東京ミッドタウン先端医療研究所 診療部長
消化器外科・一般外科医として20年以上がん治療に携わった後、進行がんの患者様への治療において免疫療法が果たす役割の大きさを実感し、免疫治療を行なう現職に。患者一人ひとりの気持ちに寄り添った治療を行なっている。