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イベントレポート

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2016年9月24日(土)11:00~12:00

金森 智(かなもり さとる) / 株式会社モンベル広報部 課長代理・ジャパンエコトラック推進協議会

アウトドアトリップの魅力 ~JAPAN ECO TRACKのススメ~

アウトドアの秋到来!新しいアウトドアトリップ「JAPAN ECO TRACK」をご存知だろうか?「JAPAN ECO TRACK」とは、トレッキング・カヌー・自転車といった人力による移動手段で日本各地の豊かな自然を体感し、地域の歴史や文化、人々との交流を楽しむ新しい旅のスタイルのこと。今回は、その魅力について、モンベルの金森氏にお話しいただいた。

スポーツをしながら水の循環を辿る「SEA TO SUMMIT」が始まり

講師は、登山をはじめとするアウトドアの総合ブランド、モンベルの金森氏。自身も登山、スキー、サーフィン、ロードバイクを楽しむアウトドア派で、この日も自転車を電車に乗せる「輪行」で藤沢駅へ、そこから自転車で来たという。

「輪行は、慣れてくれば、バラして袋にしまうまで10分、組み立てるのは5分くらいでできるようになります。電車だけでなく、飛行機なら手荷物として無料で預けられますよ。今日お話するアウトドアトリップというのは、そんなふうに、アウトドアの道具を持ち運びながら旅をしてみませんか、という提案です」

スイスアルプスに3回、ヒマラヤにも1度登った経験をもつ金森氏は、「世界中をまわっていると、アウトドアの旅がしやすいな、と感じる国がある」と言う。たとえばスイスはアウトドア先進国。電車やバスなどには自転車をはじめとする大きな荷物を置く場所が確保されている。そういう意味では、新幹線や電車へのトランクの持ち込みですら肩身の狭い思いをしなくてはならない日本は、まだまだアウトドアの旅がしにくい国だといえる。

今回のセミナーで金森氏にご紹介いただく「JAPAN ECO TRACK」は、アウトドア後進国の日本で、人々にもっと自然を楽しんでもらおうという目的で、モンベルが中心になって行なっている取り組みだ。

「JAPAN ECO TRACK」の考えのもとになっているのが、「SEA TO SUMMIT」というイベントである。金森氏はまずここで、「SEA TO SUMMIT」の紹介ビデオを上映。

「海で発生した水蒸気が、雨や雪となって山に降り、それが川となって森や里を潤して、再び海に還っていく。『SEA TO SUMMIT』では、この水の循環を、スポーツをしながら遡ります。海や湖をカヤックでスタート、里を自転車で、最後は山頂まで登山で進むなか、かけがえのない自然について考えてみよう、というのがコンセプトです」

第1回は、2009年に鳥取で開催、249名の参加者が集まった。現在までに11地域、37大会が実施され、2017年にはアメリカ・オレゴン州でも開催が決定。世界へと広がっている。

数々の取り組みでアウトドアトリップをサポート

年に1度の開催である「SEA TO SUMMIT」を、全国各地で、365日いつでもできるようにする。それが、「JAPAN ECO TRACK」の取り組みだ。

「旅先で自転車に乗ったり山に登ったりすることは、慣れていない人にはなかなかハードルが高い。どんな道具が必要なのか、どうやって持ち運ぶのか、など、わからないことがたくさんあると思います。そこで今、私たちは、そうしたアウトドア旅行者を受け入れるための体制作りを進めています」

たとえば「ルートマップ」。観光地では独自のサイクリングマップを用意しているところもあるが、たいていは現地に行かないと手に入らないし、書式もいろいろでわかりにくい。そこで、「JAPAN ECO TRACK」では、書式を統一したルートマップを作成。現在、「境港・皆生・大山」「由良川、大江山」「信越自然郷」「山形・飯豊」「びわ湖・伊吹山」の5エリアのルートマップがつくられており、モンベルのショップでも入手できる。

駅、空港、港湾、道の駅、駐車場、バスターミナルなどをアウトドアの「ステーション」化する動きもある。更衣室や自転車の組み立て場所を設置したり、インフォメーション、レンタル、装備や食糧飲料水の購入、荷物配達などの機能をもたせたりすることで、アウトドア旅行者の利便性をアップ。鳥取の米子空港などで実現している。

「交通インフラとの連携も重要です。自転車をそのまま載せることのできるサイクルトレインや、登山者を運ぶ登山バス、さらには和歌山の古座川で活躍しているカヤックを屋根に載せられるカヤックタクシーなど、専用の交通機関があれば、気軽にチャレンジできますよね。特にカヤックは、川を下った後は上流に停めた車に戻らなければならず、しかも身体は濡れているわけです。カヤックタクシーはシートも防水になっているので、気兼ねなく利用できる。カヤッカーに優しいタクシーなんです」

ほかにも、「ルートマップ」のルート上にトイレや給水、早出の対応やバイクラックの設置、空気入れや工具の貸し出しなどで旅のサポートをしてくれる協力店をつくることにも力を入れている。

「ロードバイクって、結構高額なんです。私のはそうでもないですが(笑)。だから、道路脇にそうそう停めておけるものではなく、スタンドもないため専用のバイクラックがあると、お店に立ち寄るときも安心です。こうした協力店には『JAPAN ECO TRACK』のステッカーを貼るなどして、ツーリストがひと目でわかるようにしています」

「ルートマップ」を頼りに、迷わず目的地へ向かえるように、標識や案内表示の設置も進めている。装備を持っていないツーリストにも対応すべく、登山用品やカヤック、自転車のレンタルを行なったり、地域の事業者と連携してガイドツアーを実施したりと、「JAPAN ECO TRACK」の取り組みは、アウトドアトリップの敷居を下げ、間口を広げるとともに、地域の活性化の一助にもつながっている。

「マップは、英語、中国語、韓国語など、他言語にも対応しています。海外からのツーリストには、日本の文化や自然を知るために自転車でゆっくり観光し、地元の人との触れ合いたい、という人も多いので」

日本人にとっても、海外の人にとっても、「JAPAN ECO TRACK」は日本を知るためのよい指南役になってくれそうだ。

「JAPAN ECO TRACK」で日本全国の資源を活性化させたい

金森氏の説明を受けて、「JAPAN ECO TRACK」のビデオを見る。鳥取の「境港・皆生・大山」ルートを舞台に、ふたりの女性がアウトドアトリップを楽しむ内容だ。米子の鬼太郎空港に着いてすぐ、宿泊先に荷物を発送。空港内の更衣室で着替えて、自転車をレンタルしたら、いよいよトリップスタート。

水木しげるロードを観光しながら走り、海沿いの皆生海岸ルートで潮風を感じながらのサイクリング。カヤック体験を楽しんだら、再び自転車に乗って大山へ。バイクラックも設置された登山口近くのホテルに泊まる。

翌朝。モンベルのショップに寄って装備をレンタル、支度を済ませたら、大山頂上を目指して登山。緑が減少してしまった山を守るため、石をひとつ持って上がる“一木一石運動”にも協力する。下山後は温泉で疲れを癒し、自転車で米子空港へ———という内容だ。

「将来的には、『JAPAN ECO TRACK』のロードマップが、日本全国網羅できればいいな、と。マップは、モンベルのホームページからもダウンロードできますし、アプリへの対応も考えています。ぜひご覧になってみてください」

セミナー参加者からは、「お店はどこにあるのですか?」「この辺りでアウトドアトリップを楽しめるところはありますか?」「自転車のおすすめは?」などの質問も上がり、大いに関心が高まった。

「たとえば登山に関して言えば、ここ数年ブームになっていますが、盛り上がっているのは北アルプスや、八ヶ岳の一部の地域だけ。一極集中化しているんです。でも本当は、日本全国、どこでも資源はある。環境保全、スポーツ、お金、地域活性といったことが、うまく循環していくための仕組みづくりができれば」と金森氏。「自分も自然の中で遊んで、幸せな思いをさせてもらっている。『JAPAN ECO TRACK』の活動が広がって、皆さんにも楽しい思いをしていただくのが夢です」と語った。

講師紹介

金森 智(かなもり さとる)
金森 智(かなもり さとる)
株式会社モンベル広報部 課長代理・ジャパンエコトラック推進協議会
1991年モンベル入社。営業部での勤務の後1999年から直営店であるモンベルストアの店長として店舗運営に携わる。2014年より現職。現在はメディアプロモーション、地域との連携・企業コラボレーションなどの業務にあたっている。
自身のアウトドアスポーツの活動としては、大学山岳部で登山を学び、国内外で登山やクライミング、テレマークスキーを経験。30代でサーフィン、40代でロードバイクを始めアウトドアの楽しみの幅を広げている。