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イベントレポート

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2016年10月23日(日) 13:30~15:30

茶道裏千家 静岡青年部、高木智弘 /

【第2弾】親子deお茶会 ~茶道を通してマナーを学ぼう~

お辞儀の仕方や作法など、千利休の時代より脈々と続く日本の伝統文化「茶道」。無駄な動きを削ぎ落とした美しい所作に憧れるものの、気軽に体験できる機会は、大人でもなかなかないものである。ましてや、子どもであれば茶道に接する機会を持つことは、なおさら難しいかもしれない。今回の講座は、親子で茶道の基本動作を学んだ後、職人指導のもとお菓子作りを体験。最後は、自分で作ったお菓子とお抹茶をお茶会でいただくという充実した2時間。当日は、講座開始の前から、美しい着物姿の茶道裏千家静岡青年部の方々が15名ほど集まり、念入りな準備をされていた。会場の一区画には、12畳ほどの広さの畳が敷かれ、いつもとは違う雰囲気の中でセミナーが始まった。

茶道の基本である、立ち方と座り方を学ぶ

「昔は花嫁修業のひとつだった茶道ですが、最近では、習いたいという若い人が少なくなってきました。ですので、今日はとても嬉しく思っています。一緒にお茶を楽しみましょう。」という裏千家静岡青年部の方の挨拶の後、早速、畳のスペースに移動することに。茶道のお辞儀の仕方を学ぶ前に、まずは基本である、立ち方と座り方から練習した。

【立ち方】
1. 手は、軽く膝の上に置いて正座をした状態から、両足のつま先をかかとに乗せ(つま先に力を入れてかかとを上げる)、右膝を少し上げてからゆっくりと立ち上がる。
2. 右足が出ているので、両足を揃える。
3. 女性は手をももの前に、男性は手を軽く丸めて体の横に置く。

【座り方】
1. ゆっくり腰をおろして膝をつく。
2. 左手の上に右手を重ね、背筋をのばす。
(その時、畳のへりから16目が膝の位置になるように気をつける)

続いて、お辞儀の練習。お辞儀には「真」「行」「草」の3種類があり、それぞれを用途によって使い分けている。

●「真」のお辞儀
最も丁寧なお辞儀。両手を膝の前に下ろしながら上半身を下げ、手の平を全部畳につける。その時、両手で三角形を作るようにして指を揃える。背筋を伸ばした状態で、45度まで頭を下げ、ゆっくり3秒かけて元に戻る。お茶をいただく時や、掛け物を拝見する時などに使われる。

●「行」のお辞儀
「真」より少し気軽なお辞儀。指の第二関節までを畳につけ、「真」より浅い(30度くらいの)お辞儀をする。客同士の挨拶で、「お先に」「どうぞ」という挨拶の時などに用いる。

●「草」のお辞儀
一番浅いお辞儀。手の指を揃えて指先だけ畳につき、軽く頭をさげる。亭主がお点前の途中で用いる。

子どもたちは、初めての動作に戸惑いながらも、しっかりと聞いて練習していた。途中で足がしびれる子もいたので、少し足を動かしたりする時間を作りながら進められた。

お菓子やお茶のいただき方を習った後は、練り切り作りに挑戦

【お菓子の取り方】
お菓子は、右側から左側の人に渡すのが基本。亭主からお菓子が運ばれた人は、一礼した後、左側の人にも一度「行」のお辞儀をする(お先に、どうぞという挨拶)。その後は、正面に菓子器を戻し、菓子器を両手で持って感謝の気持ちを表わすように、軽く持ち上げておろす。懐紙を出し、お箸でお菓子をひとつ取ったら懐紙の上に乗せ、懐紙の右上でお箸の先を清め、次の人に渡す。

【お茶の飲み方】
お茶を運んでくれた人に「真」のお辞儀をした後、左側の人との間に、ひとまず茶碗を置き「行」のお辞儀をする。自分の正面に茶碗を戻し、「お点前頂戴致します」と、挨拶をした後、右手で茶碗を持った後に左手に持ち替える。茶碗の正面でお茶を飲まないように時計回りに2回まわし、お茶をいただく。飲み終わったら、口をつけた茶碗の部分を親指と人差し指で拭き、指先を懐紙で拭き取り、先ほどとは逆回りに2回茶碗を回し、正面に茶碗を置く。

お茶の基本的な動作を習った後は、いよいよお菓子作りへ。お菓子作りの講師は、和菓子職人でもあり、茶道裏千家の準教授でもある高木智弘氏。「今日作るのは、“練り切り”という上生菓子。これで菊の形を作ります。」
包む手前までは、高木氏が準備してくださっていたので、子どもたちは、生地を丸める作業からスタート。まず、丸めた練り切りを平らにつぶし、真ん中にあんこを入れて、あんこが見えなくなるように丁寧に包んでいく。軽く丸めたらキレイな面を上にし、三角ベラの角(二本線ができる角と一本線ができる角があるもの)を使って、十字を描くように押さえて線をつけていく。十字の間に、さらに、2本の線を描いたら、小さく丸めた黄色い練り切りを真ん中に置いて花芯を作る。最後に、葉っぱの形にくり抜いた練り切りを添えて出来上がり。子どもたちは、あっという間に2つ完成させ、できたお菓子をお母さんたちに見せては嬉しそうにしていた。

いよいよ本番。楽しいお茶会がスタート!

わずか1時間弱の間に、茶道のお辞儀の仕方から、お菓子やお茶のいただき方を学び、さらに、お菓子まで作った子どもたち。次は、いよいよ本番のお茶会へ。少し緊張気味の子どもたちに、先生が優しい言葉をかけた。「お茶会は楽しいものです。肩の力を抜いて、ゆっくり、ゆったりと過ごしてくださいね。」

本番では、習ったお辞儀や座り方に加え、扇子を使った挨拶や、飾ってある掛け物やお花を眺めることにも挑戦した。「今日の掛け物に書かれているのは、“常楽豊年”という言葉です。秋には美味しいものがたくさん収穫できるので、台風や雨に負けずにお米や作物が採れますようにという願いが書かれています。」掛け物のとなりに飾ってあるのは、山や野原に咲いている季節の花々。その中でも、目立つ背の高い長い花は、“ワレモコウ”という名前で、山登りをすると野山で見つかる花だという。

子どもたちは、習った作法をしっかりと実践し、自分で作ったお菓子を食べ、子どもには少し苦いであろうお茶も丁寧に飲んでいた。最後に、講座の間ずっと、後ろから子どもたちの様子を見守ってくれていたお母さんやお父さんへ、子どもたちがお茶を点ててあげることに。子どもたちはみな、大好きなお母さんたちのために張り切ってお茶を点てていた。お母さんたちも、茶道の基本を実践した後、子どもたちが作ってくれたお菓子を食べて、親子でゆっくりとした時間を過ごしていた。

お茶会が終わり、最後に、これからの夢について2人に話を伺った。茶道裏千家の伊藤氏は、「茶道を通じて出会えたご縁を大切にして、1年後でも10年後でも構わないので、またお茶を通じてお会いすることです。茶道には“一期一会” という言葉がありますが、一生に一度だけではなく、何度でも出会って繋がっていけたら嬉しいです。」高木氏は、「自分が作ったお菓子を食べたお客さまに、幸せな気持ちになってもらうこと。食べた人が笑顔になってくれることを目指して、お菓子を作り続けていきます。」と語ってくださった。

文・鴨西 玲佳

講師紹介

茶道裏千家 静岡青年部、高木智弘
茶道裏千家 静岡青年部、高木智弘

茶道裏千家 静岡青年部
茶道を愛好する青年茶人の集まりで、我が国有数の青年文化団体。茶道を通じて、『日本を知らない日本人のための架け橋になろう』を信条に日々楽しく有意義な活動をしている。

高木 智弘(たかぎ ともひろ)
静岡県富士市出身。製菓衛生師。
2016年10月に開店した『菓子処 たかぎ』店主。和菓子製造歴は30年。裏千家淡交会富士青年部部長を務めた。2012年退任後、茶道裏千家準教授。静岡県産の原料にこだわったお菓子作りを行なっている。