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イベントレポート

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2016年10月29日(土)13:30~15:00

遠山 眞人、野秋 和弘 /  

第6回 プロと楽しむ お街ゼミな~る
d-labo静岡×静岡呉服町名店街 『ペット信託について』

ときに子ども、ときに親友のように私たち人間に寄り添い、大切な家族の一員としてともに暮らしているペットたち。今や、子どもよりもペットの数が多いといわれる中で、大きな問題になってきているのがペットの相続。飼い主にもしものことがあった場合、残されたペットはどうなってしまうのか。誰に面倒を見てもらい、その費用はどのくらい用意しておくべきなのか。そんな不安を抱えている多くの飼い主のために登場したのが、ペットのための新しい相続の仕組み“ペット信託”。今回は、相続関係の業務に詳しい行政書士の遠山眞人氏にペット信託について、解説していただき、さらに当社カスタマーサポート本部部長でありファイナンシャルプランナーでもある野秋和弘より大切な財産の遺し方について詳しく解説させていただいた。

今はペット社会も高齢化社会へ。ペットの相続の新しいカタチ“ペット信託”とは

まだ聞き慣れないという人が多いけれど、今後普及していくと言われているペット信託。これは、一般財団法人ファミリーアニマル支援協会が2013年に商標登録された、できてから3年ほどしか経っていない新しい信託の仕組み。金融機関の担当者でもしっかり説明できる人が少ないという中、行政書士、動物法務士および相続鑑定士であり、ペット信託についても詳しいという遠山氏に講師を務めていただいた。
「ペット情報誌によると、日本でペットを飼っている人は全世帯の19%。つまり約5軒に1軒はペットを飼っているということです。私自身も、以前ペットを飼っていた経験があります。今は、犬や猫はもちろん、オウムなどの鳥類や爬虫類、アロアナから錦鯉といった魚類まで種類が多様化してきました。ペットはもはや家族同然。ときには家族以上の存在にまでなっています。」
昔は室外で飼っていた犬や猫も、室内で生活するケースが増えたことで、平均寿命がのびている。実は、人間よりも高齢化社会と言われていて、飼育されている犬の半分以上が、人間の年齢で例えると70歳以上にあたるという。そこで心配になってくるのが、飼い主が入院や介護施設へ入居したとき、または死亡してしまったときのペットの今後について。残されたペットは殺処分になってしまわないか?世話を引き継いでくれる人がいるのか?そんな不安を抱える人も少なくない。そこで、自分が亡き後にペットを世話してくれる人を決め、何かあった時は用意しておいた財産でペットを守るのが「ペット信託」である。
では、ペット信託が考案される前はどうしていたかというと、生前のうちに誰かと委任契約を結んでお金を預けるか、ペットの飼育を条件に財産を相続・贈与するという内容の「負担付遺言書」を作成するという方法がとられていた。しかし、実際には財産分けで揉め事が起こったり、お金を渡しても本当にペットの世話をしてくれるかわからないといった点が問題になっていた。ペット信託では、そのような問題が起こらないように、相続財産とは別にお金を管理することができるので、確実にペットのための財産を遺すことが可能になるという。

ペット信託は、いわば強制力と監視力をつけた遺言書

ペット信託は、まず委託者(依頼する人)・受託者(引き受ける人)・受益者(利益を得る人)を決めなければならない。委託者と受託者は信託契約で結ばれ、委託者が死亡もしくは病気等で管理ができなくなった時、受託者はペットの預かり機関に飼育料を支払うなど、ペットのために残された財産の管理を行なってくれる。ペット信託の大きなメリットは、信託監督人をつけることが可能だという点。信託監督人とは、信託契約の内容が適切に遂行されているかの確認や、ペットの飼育状況および財産管理をチェックしてくれる人のこと。これで、負担付遺言書では良心に頼ることしかできなかった部分に、強制力と監視力をつけることができる。

では、具体的にシミュレーションをしてみて、どのくらいの費用を用意したらいいかを算出してみよう。
1. 飼っているペットの推定余命を知る。
2. 1か月にかかるご飯代とトイレ代(おしっこシーツやマナー袋など)×12ヶ月を算出。
3. 年間でかかる医療費、保険料、予防注射代を算出。
4. (必要であれば)1ヶ月にかかるペットシッター代×12ヶ月を算出。
5. 2~4を合計した年間費用×余命年数を計算。
実際の例を挙げて費用を考えてみると、病気やケガの1か月の平均治療費は、犬2,190円、猫1,566円、トイレ用品の1か月平均額は、犬1,333円、猫1,692円。総合してシミュレーションしてみると、12歳の犬で確保しておきたい金額は約510万円、猫で約400万円。これは一例にすぎないが、余命2~5年と考えた時の平均の信託金は300~500万円程度だといわれている(ペットの年齢や病気等の有無で金額は大きく変わる可能性あり)。
「ペット信託は民事信託のひとつで、士業やコンサルタントでも理解できていない可能性があるので注意が必要です。もしもの時のことを考えたがらないのが日本人の特性ではありますが、大切な家族の一員であるペットのために、じっくりと相続を考えてみてください。」

想いを伝えられる遺言信託と、今後増えていく民事信託

遠山氏の話の後は、当社で遺品整理や遺言信託などの業務を担当している野秋へバトンタッチ。そもそも信託とは何かというところから説明した。
「信託には商事信託と民事信託があります。商事信託は、営利を目的として不特定多数と何度も行なわれます。受託者は信託銀行などになり、投資信託がこれにあたります。一方、民事信託は、営利を目的とせず特定の相手と1回限りで行なわれ、ペット信託や家族信託がこれにあたります。つまり、銀行では難しいような低コストで柔軟な設計が可能になるのです。」
しかし最近では、民事信託を取り扱う銀行が現れ始めたという。スルガ銀行では、まだ民事信託をサポートするサービスがないかわりに、資産を承継する手段のひとつとして遺言信託を取り扱っている。
「遺言書を遺したり遺言信託を利用するメリットは、法定相続人でない方にも財産を分けられること。つまり親族に限らず、お世話になった人や公益団体に分けることが可能になります。さらに、遺産分割協議が不要になり、遺言に基づく相続手続きを遺言執行者が行なえるようになります。そして、何より大事なのは、自分の想いを相続人に伝えることができるということです。」
ここで、ペットの相続に関する遺言書の一例が挙げられた。
遺言書には、親族のAさんと友人のBさんの2人に、ペットの面倒を頼む旨を記載。付言事項には、親族のAさんに分ける財産を多めにするかわりに、ペットの面倒をみてくれるBさんへの医療費や生活費の支払いを依頼したという。ほかにも、遺産の中から数千万円を日本盲導犬協会に遺贈し、残りを親族に相続させるという事例も。
「このように、遺言書があれば自分の想いをカタチにすることができます。第三者の遺言執行者がいれば、相続人の考えに惑わされずに相続手続きを進めることができるのです。」
もう1つ、人気が高まっているのが遺言代用信託。遺言代用信託とは生前に財産を預けることで、相続が必要になったとき、相続人がすぐに財産を受け取れるようにする信託のこと。一時金の受け取りを希望すれば、2営業日以内に受け取りが可能になり、葬儀費用等の資金として活用することができるという。
自分の財産の相続を自分で決められるのは、生きている間だけ。自分の大切な人やペットの幸せのために何を遺せるのか、信託を知ることで見えてくるものがあるはずだ。

文・鴨西 玲佳 夢を託す(相続関連)|スルガ銀行

講師紹介

遠山 眞人、野秋 和弘
遠山 眞人、野秋 和弘
 
遠山 眞人(とおやま まさと)
行政書士
建材メーカーの役員を経験後、事業再生・事業継承のコンサルタントとして独立。平成26年4月2日遠山行政書士事務所開業。役員時代に数千の契約書作成に参画、銀行とのパイプづくりの経験を生かし、起業支援と事業継承のコンサルティングを行なっている。

野秋 和弘(のあき かずひろ)
スルガ銀行 カスタマーサポート本部 部長
相続をはじめ、遺産整理や遺言信託などの業務を担当 ファイナンシャルプランナー