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イベントレポート

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2016年10月30日(日)15:00~17:00

宮澤 崇史(みやざわ たかし) / bravo代表、元プロレーサー(自転車ロード競技)、湘南ベルマーレサイクルロードチーム監督兼任

サイクリストのための楽に走る自転車のポジショニング&ペダリング

宮澤崇史著書「頭脳で勝利に近づく!プロのロードレーステクニック」に基づいたセミナー。ポジションによって意識を変えて走ることで効率よく速く走れる方法や、レースに向けたトレーニングの方法や身体作り、レースの作戦などを学んだ。

自転車を安全に楽しむためには「空気を読む」ことが大切

ヨーロッパで18年間にわたって自転車ロードレーサーとして活躍し、日本チャンピオン、アジアチャンピオンの実績をもつ宮澤氏。2014年に現役を退いた後は、指導者としても活躍している。現在もサイクリストから圧倒的な支持を集めているだけあって、セミナーには多くの参加者がつめかけた。

まずは、サイン会からスタート。ひとりずつ並んで、宮澤氏の2冊目の著書「頭脳で勝利に近づく!プロのロードレーステクニック」や、サイクルジャージにサインをしていただくとともに、ツーショットで記念撮影。宮澤氏と言葉を交わし、がっちりと握手する参加者たちの表情は、笑顔でいっぱいだった。

「ロードレースというのは、肉体的にも精神的にも極限のところで競うもの。この本の、『プロのロードレーステクニック』というタイトルを見て、自分は自転車が好きだがそこまでは…というふうに感じる人もいるかもしれません。けれど、車もバイクも自転車も、基本的なところを守らなければ、危険が伴なうものなんですね。だからこの本は、安全に走るための参考書としても活用していただければと思います」

本を開くとまず眼に飛び込んでくるのが、「空気を読む」という言葉。車を運転しているときでも、歩行者や他の車の動きを予測しながら行動するが、「ロードレースにおいても、集団の中で好きなように動いていいわけじゃない」と宮澤氏。

「初心者ほど、他の人との間を広げようとしがち。なぜかというと、混んでいる中にいると怖いからなんですね。でも実はそれが、危険な環境を生み出してしまっている。人と距離をとって、自分の周りにスペースができるから、自分から好きなように動いてしまって、周囲もその動きに翻弄され、周囲を巻き込んで落車してしまうことが多いんです。ロードレースというのは、スペースが無く動けない中にいてこそ安全が保たれている。そういうことがわかれば、レースやグループライドももっと楽しめるようになると思います」

「空気を読むこと」のほかに、「ポジションの取り方」もまた、自転車を安全に楽しむために重要なことのひとつだと宮澤氏は強調する。

「『こぎやすい』ポジションが、イコール走りやすい、安全、とは限りません。大切なのは、体を体幹で支えること。ほとんどの初心者、中級者は、腕、つまりハンドルに体重を預けている人が多く、これは自転車を扱ううえでとても危険なんです」

ロードバイク愛好家が増えるなか、「昔に比べて大きな事故が増えた」と宮澤氏。理由は、「自転車選びとライディングポジション。最近の自転車は、フレームの材質が硬く、その分、ペダルを踏んだ後の反動が速く返ってくるんです。逆に言えば柔軟性がなくなっていて、“乗りにくく”なっている。だからこそ、自分の脚質、スキルにあった自転車選び、ポジションの設定が大切になってくるんですが、それがなかなかできていないんですね」

では、どうしたらいいのか。「自転車を選ぶときのポイントに、“足が高く上がるか”ということがあります。自転車をこぐということは、ペダルを踏む足と同じスピードでペダルを引き上げるということ。これを1分間に90回、100回と繰り返すわけです。足の位置が低ければ、上げるためのエネルギーも多くかかる。つまり燃費が悪いわけです。経験がある選手とない選手では、足が上がったときの到達点が10度くらい違う。自転車が進むスピードも、足が高く上がる選手の方が優れています」

具体的には、特に初心者は、サドルの位置を後ろにし、さらに下げると、足を高く上げることができる。慣れないうちは違和感があるかもしれないが、「それを続けて力がついてくれば、結構足が上がるようになってきます。それから、少しずつ自分が快適だと思えるポジションに変えていくのがいい」と宮澤氏。

「ここ3~4年で、ポジションについての意識が高くなってきています。ハンドルに体重をのせなくても、自分の体幹で自転車に乗れるようになることを目指してください」

乗り方が劇的に変わる“おっとっとペダリング”とは?

体幹で自転車に乗る。そのためには、当然体幹を鍛えなければならない。「一番大切なのは、横隔膜と腹横筋だと思います。実際に、自転車に乗っている時に筋肉をどう使っているのか、説明しましょう」と言って、宮澤氏は自転車にまたがった。

まずは自転車に“真っすぐ”の姿勢で座り、ペダルに足をのせる。そのまま背中を曲げないで体を前に倒していくと、足が勝手に回っていく。

「これが、“おっとっとペダリング”です。僕が勝手に命名したんですけど(笑)」

気をつけの姿勢で立った状態で、背中を曲げずに体を前に倒せば、「おっとっと」と自然に足が前に出る。宮澤氏は、自転車に乗っているときも、その感覚をキープすべしと言うのである。

「体重がサドルではなく足に乗っているので、股の痛みも楽になります。サドルにドシンと座っていない状態を長くすることがコツなんです」

“おっとっとペダリング”は、向かい風にも有効だ。体を前に倒す力を、向かい風が支えてくれる(つまり風にもたれかかれる)訳で、「向かい風を浴びれば浴びるほど楽になる、という高等テクニック。この走りができるようになると、上り坂も楽になります」

「向かい風は嫌い」という参加者がほとんどのなかで、目からウロコのペダリング法に、感心する声が上がる。

「ほとんどの人は、自分のペダリングがわかっていない。たとえば、踵。一番上の、時計でいうと12時の位置から3時の位置の間に、なるべく早いタイミングで踵を上げて踏み込む。極端にいえば11時くらいの位置でペダルを“キャッチ”して踏み込み始め、踏み終わりの3時にペダル“リリース”する、この作業がうまくできるようになると、ペダリングがよくなります」

宮澤氏は、「自転車は大玉転がし」だと言う。「リスタートするのが大変なんです。動きを止めずに力を送り出し続けること。ペダリングの極意のひとつです」

次々と上がる質問。的確でユニークな答えに会場が沸く

後半は、参加者からの質問に回答していく。「サドルの位置はどのタイミングで変えればよいのか」「足を上げるというのは、どのくらいの振り幅なのか」など、今日のアドバイスに対する質問のほか、「足の筋力を付けるのが先か、乗り方を変えるのが先か」という問いかけには、「どちらも大事ですが、男性と女性を比べたときに、女性の方が筋力に頼らないため、上達するペースが早いことがあります。そういう意味では、乗り方を変えることは、効果があると思います。宮澤崇史名言集に「自転車は骨で漕ぐ」というのがありますが(笑)、バレリーナが足の親指で立つ時、筋力で支えているわけではありませんよね。骨の上に骨を重ねるようにして、真っすぐ立っている。そんなふうに、体の構造を意識して乗ってみると、変化を感じられるかもしれません」

ほかにも「骨盤を動かせば真っすぐ力が伝えられる」「セルフコンディショニングの重要性」「自転車のメンテナンス方法」「大殿筋を鍛えるスクワットのやり方」など、次々と上がる熱心な質問に、ひとつひとつ答えていただいた。

最後は、ポロシャツやイベントのガイドブックなどサイングッズをじゃんけんで争奪。大いに盛り上がった後、宮澤氏と参加者全員とで記念撮影。自転車への情熱と、笑顔にあふれたセミナーとなった。

講師紹介

宮澤 崇史(みやざわ たかし)
宮澤 崇史(みやざわ たかし)
bravo代表、元プロレーサー(自転車ロード競技)、湘南ベルマーレサイクルロードチーム監督兼任
1978年長野県生まれ。高校卒業後イタリアに渡り、自転車ロードレーサーとして活動を開始。病気の母に肝臓を移植し一旦は選手生命を絶たれるも、その後オリンピック出場、日本チャンピオン、アジアチャンピオン等実績を重ね、34歳でカテゴリの最も高いプロチームに在籍。プロチーム在籍中にリーダージャージ(個人総合時間賞)・ポイントジャージ(スプリントポイント賞)に日本人選手として唯一袖を通した。18年間の海外レース活動を経て、2014年に引退。