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イベントレポート

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2016年11月22日(火) 19:00~21:00

藤井 洋平、宮地 太基 /  

音楽で心も体もリフレッシュ!

合唱サークル、ギタークラブ、ダンス教室など、身近な習い事の多くに音楽が使われている。音楽は楽しい!誰もがそう感じるのではないでしょうか。実は音楽は、ただ楽しいだけでなく健康の維持にとても有効で、音楽を意図的に利用する「音楽療法」というセラピー法もある。「音楽療法」とは、人の心を癒したり、躍動させたり、過去の思い出を懐かしんだりするなどの活動を行ない、認知機能の維持、脳の活性化などを狙うものである。今回のセミナーはみなさんに実際に体験していただきながら、音楽療法について学ぶ機会となった。

音楽の力で人々に喜びを

「音楽療法」と聞いて、どんなイメージが浮かぶだろうか。セミナー冒頭、藤井洋平氏が説明してくれた「私たちLeafの音楽療法」とは、「音楽の持つさまざまな特性や働きを意図的にセラピーのツールとしていくことで、心身の健康や感情の秩序化などに役立たせるもの」だという。
「音楽で人の心を癒したり、躍動させたり、過去の思い出を懐かしんだりするなどの活動を行ない、認知機能の維持、脳の活性化、社会性、意欲、積極性、残存機能の向上などを狙う。こうしたことをLeafでは有料老人ホームや地域のデイサービスセンター、鬱病の方が集まる施設、それに障害を持ったお子さんの施設などで行なっています」
この音楽療法を事業の中心とした株式会社Leaf音楽療法センターを藤井氏と共同経営者である宮地太基氏が設立したのは2009年。当時の日本は65歳以上の高齢者が人口の20パーセントに達しようとしている頃。この先に待っている超高齢社会を考えたとき、音楽療法は必ず人々の役に立つ。そう確信しての起業だった。
藤井氏と宮地氏は学生時代の仲間でもともとはミュージシャン志望。藤井氏は19歳のときにはロックバンドでデビューもしたが、その後は「夢が潰えて挫折しました」。
「うまくいかずにノイローゼみたいになった時期もありましたけれど、そのときも自分を救ってくれたのはやっぱり音楽でした」
音楽の持つ力はすごい。それを誰よりも肌で知っている藤井氏が音楽療法と出会ったのはバンドを解散し介護のアルバイトをしていた頃だった。たまたま知った音楽療法に「すごい」と感動した。
「音楽療法は人々に直接喜びを与えることができる。これはいけるぞ、と思ったんです」
すぐに自分でも福祉の専門学校に入学して夜間部で音楽療法を学んだ。企業経営の経験を持つ宮地氏に声をかけ、Leafを立ち上げることにした。音楽療法を世の中に広く伝えていくには、まずはそれを生業とする音楽療法士を増やさなくてはならない。それには営利法人として活動するほかに道はなかったという。

参加者全員でセッション=音楽療法を体験

可能性を信じての起業。むろん壁はあった。老人ホームや福祉施設での活動というと、どうしても無償のボランティアといったイメージがついてまわる。宮地氏は当時を振り返り、「やはり営業面では苦労しました」と語る。競合他社がいない世界はビジネスを独占することができる反面、「ゼロから1を自分たちでつくっていく」必要がある。「対価を払ってまでやるものなのか」という施設側の疑問を覆したのは、ほかならぬ音楽療法そのものだった。まずはトライアルセッションを、と実演してみせると、その楽しさや効果に誰もが目を見張った。その甲斐あってか「3年ほど前から音楽療法といえばLeafとみなさんから言ってもらえるようになりました」。現在の月間セッション数は約300。藤井氏たち音楽療法士を含む40名のスタッフが、大都市圏を中心に約130ヶ所の施設をまわっている。
では、実際の音楽療法とはどういうものなのか。今回のセミナーでは参加者全員に歌をうたったり楽器を鳴らしたりすることでセッションを体験してもらった。
藤井氏の弾くギターを伴奏に全員で歌ったのは『仰げば尊し』。なぜこの歌を選んだかというと「卒業式を思い出せるから」だ。
「たとえば、認知症の方というのは最近の記憶はなくても昔の記憶は残っているんですね。ただ、それも何かのきっかけがないと思い出すことができない。そこで役立つのが歌なんです。『仰げば尊し』を歌うことで記憶の扉の鍵を解除する。歌が記憶の糸を手繰っていってくれるんです」
二番目に歌ったのはSMAPの『夜空ノムコウ』。大人にとってはつい最近の曲に感じるが、実はリリースされたのは平成10年。今から18年も前の曲になる。
「18年前、皆さんは何をしていましたか。この曲を聴くと思い出すこともあるのではないでしょうか」
次の『君といつまでも』は昭和40年に加山雄三が歌った曲。この曲のポイントは歌の合間に「幸せだなあ 僕は君といる時が一番幸せなんだ…」という台詞が入る点。この部分だけは誰かひとりに担当してもらう。そうすることで、選ばれた当事者にはスポットが当たり「ほどよい緊張と主役体験が得られます」。

音楽のいいところは「ハートで感じることができる」点

4曲目は「歌あそび」。参加者を2つのチームに分けて童謡の『桃太郎』と『浦島太郎』を1行ずつ交互に歌ってもらった。実は曲調が何となく似ている両者。相手チームに引っ張られずに歌うのはなかなか大変だが、それゆえに「あれっ」というおかしさがある。
「こうやってみんなで歌っていると、雰囲気が良くなって互いの距離も近くなる。ひきこもりがちな人でもモチベーションが上がってコミュニティーに参加しやすくなるんです。これも音楽の持つ社会性ですね」
「歌あそび」のあとは「デュアルタスク(二重課題)」による「手話歌」。「うさぎ追いし かの山」から始まる『故郷』の一番を手話で表現しながら歌ってみた。ここで大事なのは手を動かしながら歌うこと。それが「頭の健康にいい」。と同時に、「手話の楽しさ」も体験できる。
「手話というのはアクション一つひとつに表現があって非常におもしろい。はじめての方でも奥の深いコミュニケーションツールだということが歌を通じて理解できます」
前半のラストでは8名の参加者に「夢」を尋ねてみた。「会社を作る」「旅行に行きたい」「ビールが飲みたい」「みんな幸せ」などの「夢」を歌詞にして『七夕さま』のメロディーに乗せて合唱。「世界でここだけの素敵な歌」を全員で共有した。
後半はサウンドブロックやトーンチャイムといった楽器を使いながらのセッション。ここでも情動に訴える音楽の楽しさを満喫した。
「音楽療法の療法的作用には心理的側面と社会的側面、生理的側面の3つがあります。音楽のいいところはハートで感じることができる点。これが他のセラピーにない強みです」
藤井氏の「夢」は「音楽療法を通じて音楽の喜びを届けること」。宮地氏は「音楽療法を世界に発信すること」。
「音楽の力はすごい。私たちの思いを伝えていければ、と願っています」

講師紹介

藤井 洋平、宮地 太基
藤井 洋平、宮地 太基
 
藤井 洋平(ふじい ようへい)
日本音楽療法学会認定音楽療法士
1978年生まれ。音楽専門学校在学中にポニーキャニオンよりデビュー。バンド解散後、日本福祉教育専門学校音楽療法専攻科入学。2009年7月に株式会社Leaf音楽療法センターを宮地氏と設立し代表取締役となる。代表として音楽療法士の育成に注力。

宮地 太基(みやじ たいき)
1980年生まれ。大阪スクールオブミュージックプロミュージシャンドラム科卒。2004年CD&DVD「落日」を発売(インディーズレーベル)。2006年電気料金削減コンサルタントベンチャー企業の役員として経営を学ぶ。2009年7月株式会社Leaf音楽療法センターを設立し代表取締役に就任。