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2016年11月24日(木) 19:00~21:00

小林 啓二 / アセット東京株式会社 代表取締役、相続対策専門士・宅地建物取引士

相続問題は"不動産"で起きる
~知らないと損をする不動産と相続の話~

相続と言うと、頭に浮かぶのは税金のことではないでしょうか。“相続=税金”と捉えてしまうと、お金持ちだけの問題と片づけてしまいがちです。しかし、相続問題とは“不動産”問題である。相続財産に不動産が含まれていれば、どんな家庭でも相続問題が起きかねない。一軒の家を子ども3人で相続するにはどうしたらよいのか、借金してアパートを建てると相続対策になると聞いたけれど本当なのか、同じ土地でも分割の仕方で税金が変わるのか、などの疑問について宅地建物取引士で相続対策専門士でもある小林氏にご解説いただき、知らないと損をする不動産と相続に関する話を聞く機会となった。

簡単にはいかない不動産の相続

講師の小林啓二氏は「不動産と税金に強い相続対策の専門家」。不動産業者としての30年以上の経験に加え、不動産業の資格として知られている宅地建物取引士の上位にあたる「不動産コンサルティングマスター」や、日本ではまだ300人程度しかいない「相続対策専門士」の資格を保有しているプロフェッショナルだ。都内で不動産会社を経営する一方、相続対策を専門とした一般社団法人『あんしん相続支援センター』を運営。日々、「相続の問題」で悩んでいる人々の支援を行なっている。

「相続」と聞くと頭に浮かぶのは土地や家などの不動産。実際、相続財産の内訳を見ると半分近い46.9パーセントが不動産となっている。では「相続の問題」とは何だろうか。

「相続の問題は大きく分けると2つ。〈分割の問題〉と〈税金の問題〉に分かれます」
もし親に不幸があって、残された子どもが遺産を相続することになったとする。そのとき最初に取り組むべきは「分割の問題」。このとき現金であれば兄弟の人数分で割れば事は済む。が、そう簡単にいかないのが不動産だ。

「例えば、大きな土地があって節税のために親の代でマンションを建てたとします。子どもは3人。いざ相続するときにどうやってマンションを相続するか。これをうまくやらないと兄弟間での争いに発展してしまいます」
不動産や現金そのほかの資産などを分割するには「現物分割」、「換価分割」、「代償分割」、「共有分割」の4つの方法がある。「現物分割」はネクタイの形見分けなどまさにそこにあるものを分けること。「換価分割」はそれを売って現金に換えて分けること。「代償分割」は、例えば長男が実家を相続したとして、残りの次男や三男には長男が現金を渡すようなケース。そして「不動産で絶対にやってはいけない」のが「共有分割」だ。

「不動産でこれをやるとトラブルになる確率が非常に高くなります」
もし不動産を共有すると、売るには全員の承諾が必要になる。長い目で見ると相続が発生するたびに相続人が増えていくことにもなる。小林氏が受けた相談でも「気が付いたらひとつの土地を30何人かで持っていた」といったケースがあったという。不動産の共有は「問題の先送り」。どんなに仲のいい者同士でも避けた方が賢明だ。

「相続の問題」を解決するには「行動」すること

これだけでなく「すぐに換金できない」のも不動産の抱える問題。相続税を払うのに土地を売却しようとしても、売却には正確な測量が必要だし、建物がある場合は取り壊さないといけない。相続税の納税は相続が発生してから10ヶ月後だが、それまでにそれらを済ませて売却できないこともある。もし延滞したら2ヶ月までは7.3パーセント、それ以降は14.6パーセントもの延滞税がついてしまうことがある。

もうひとつの悩みの種は「価値がわかりにくい」こと。不動産は「一物四価」。ひとつの不動産には「公示価格」と「路線価格」、「固定資産税評価額」、「市場価格」の4つの「価格」がある。相続する側として知りたいのは「自分がいくらもらえるか」。そうなると大切なのは「市場価格」だが、「税理士さんの多くはそこを勘違いして遺産分割協議や遺言書を作成する際に路線価格ではじき出しています」という。肝心の市場価格にしても、地方の土地や山林であったりすると値をつけることができなかったりする。よく「相場」というが、それは「買手」があってのもの。買手がいなければ査定することすら難しい。

実際に相続が発生した場合、誰にどれだけの財産が分けられるか。第一順位は「遺言書」。次が相続人による「遺産分割協議」。そのどちらもなければ民法で定められた「法定相続分」による相続となる。何もしないでいるとこの「法定相続分」が適用。だがそうすると、それこそ土地を何十人で共有することになりかねないし、節税にもならないことが多い。「相続の問題」をクリアするにはあらかじめ遺言書を作ったり、協議をしたり、プロに相談するなどの「行動」が必要だ。

セミナー後半は「事例紹介」。分割対策の事例では「すごく多い事例」を紹介。姉弟3人で実家を相続。このうち家を姉が相続するとして弟2人には不公平のないように現金を渡す。解決策としていちばんいいのは生命保険。母親の生前から死亡保険金の受取人を娘に集中させておく。相続が発生したらそこで入る保険金を代償金として弟2人に分ける。こうすれば「みんながハッピーで終わります」。

プロ=専門家に相談することで相続税は驚くほど節税できる

節税の「事例」は「不良不動産の売却」。その代表が借地だ。一昨年に基礎控除が下がったこともあり、最近は所有する借地の底地を売却する人が増えているという。一例を挙げれば「国税庁が4000万円と評価した底地を1500万で売却した場合、およそ30パーセントの税金の方なら数百万円の節税になります」。
借地だけではなくいまや不動産は都市部の一等地を除けば「負債」と考えるべき時代。駅から遠い地方の住宅や別荘は需要がなく、へたをすると隣家の人に現金を渡して引き取ってもらうような状態となっている。そしてもうひとつ、何かと耳にすることの多い「借金をしてアパートを建てると節税になる」というのも、あくまでも需要のある場所に建てないと「結局は空室や修繕費でマイナスが増えて手放すこととなってしまいます」。

「アパートを建てると確かに相続税評価が下がる。だけどそれと賃貸経営がうまくいくかどうかは別の話。人口の減るこれからの社会を考えるとアパートは需要のある場所以外では建てない方がいいでしょう」
相続税の最高税率は55パーセント。これを節税するには、まずは専門家に相談することだ。注意すべきは全国に約7万6000人いる税理士のうち、相続に精通しているのは5パーセント程度だという事実。そのため一度は払った相続税も、税理士を替えて「更生の請求」という方法で出し直しをすると還付されることが多いという。

「不動産は同じ土地を分割するにしても分け方が縦か横かだけで相続税が数百万円、数千万円と変わってきます。ときには土地の活用次第では数億円をゼロにすることもできます。それをするのがプロ。もっと早く知っていればよかった、という後悔する人を一人でも減らしたいですね」
そう語る小林氏の「夢」は「みなさんを幸せにすること」。
「資本主義である以上、誰かが得をすれば誰かが損をするのは仕方がない。でも幸せの総量なら増やすことができる。相続のプロとしてそれに一歩でも近づきたいなと思います」

※上記は小林氏の見解です。

講師紹介

小林 啓二
小林 啓二
アセット東京株式会社 代表取締役、相続対策専門士・宅地建物取引士
1962年東京都生まれ。一般社団法人あんしん相続支援センター理事。昭和60年から31年間、不動産業に携わり、特に住宅(マンション・一戸建)の取引は1000件超の実績。商業施設・公益施設の複合再開発、分譲マンション開発および販売、そして賃貸不動産の総合管理に従事し、更に店舗出店開発に従事した経験から、事業用不動産の取引にも精通している。また、不動産オーナーの相続対策の頻度が増したのを契機に、相続支援専門の「一般社団法人あんしん相続支援センター」を設立。
最近では、不動産と税金に強い相続対策の専門家として、大手生命保険や銀行のセミナー講師や個別相談会の相談員を務めている。