スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

イベントレポート

イベントレポートTOP

2016年12月1日(木) 19:00~21:00

久野 和禎(ひさの かずよし) / コノウェイ株式会社 代表取締役社長/プロコーチ、一般社団法人コグニティブコーチング協会 副代表

「脳」を上手に使って仕事も人生も充実させる方法

呼吸をすること、食べること、歩くこと、眠ることなどは全て脳の指示によって行なわれている。それにも関わらず、「脳の効果的な使い方」はあまりよく知られていない。今回は、仕事、プライベートなど人生の全ての場面で脳を効果的に使うために、人工知能のベースとなっている認知科学を土台に発展した能力開発理論に基づいて、どのようにすれば脳を効率的に動かすことができるのかをお話しいただいた。認識できる範囲を広げ、より俯瞰(ふかん)的な視点で物事を見る力を身につければ、問題解決能力を高めることができる。人生の質を高めるために、脳の驚くべき力について学ぶ機会となった。

前頭葉が「ゴールドビジョン」を生み出す

普段はプロコーチとして経営者向けにコーチングや講演などを行なっている久野和禎氏。このセミナーでは最新の認知科学に基づいた「脳の使い方」についてお話しいただいた。
まずは動画や画像で脳の仕組を体験。白黒2つのチームが互いの仲間にボールをパスする動画や、見方によってアヒルにもウサギにも見える絵を鑑賞してみた。結果としてわかったのは「人間の脳は同時に2つのものを知覚できない」ということ。こうした脳の仕組を解明してきたのが認知科学。最近とみに注目されている人工知能の開発も、この認知科学が基礎となっているという。
「人間の脳が他の動物と違うのは大脳、とりわけ前頭葉の大きさです」
人間の意欲や創造性はこの前頭葉の産物だ。

「牛は他においしいものがあったとしても草しか食べない。しかし人間は、たとえおなかを壊すリスクはあっても、おいしそうであれば他の食べ物に挑戦したり、他の誰もやっていないことをやろうとしますね。その最たるものが空を飛ぶことです。私たちが今ある生活を送れるのはすべて人間の前頭葉が発達してきたおかげといっていいでしょう」
では、脳を使って「仕事も人生も充実させる」にはどうすればいいか。ここで持ちたいのが「ゴールドビジョン=輝くビジョン」だ。

「世の中のあらゆる達成実現はすべてゴールドビジョンの産物。たとえば文字ができる以前は、言った言わない、の世界でした。そこで誰かがこれがあれば便利だろうと文字を発明した。その時点では発明者だけが今いる世界から文字があるというゴールドビジョンの世界に行ったわけです。Appleもホンダも松下もディズニーも、世界企業と呼ばれるような企業は必ずゴールドビジョンを持っています」

一方で、ゴールドビジョンは「スティーブ・ジョブズや本田宗一郎のような一部の天才だけの特権ではない」。ゴールドビジョンは「誰もが持てる」もの。「仕事も人生も充実させる」には「まず今の自分を超えること」だという。
「誰かと比べる必要はありません。今の自分を超えることができたら、それだけで最高ですよね。そのためにも皆さんなりのゴールドビジョンを持っていただけたらと思います」

今いる世界=コンフォートゾーンから「ゴールの世界」へ

この「ゴールドビジョンメソッド」のポイントとなるのが「未来を視る力」、「自分を信じる力」、「人を巻き込み動かす力」の「3つの力」だ。たとえば自分が営業マンだったとする。現状の自分が住んでいる世界(=コンフォートゾーン)は「売れていない世界」。そこから「売れている世界」に行くにはどうすべきか。

ここで肝なのは「売れたい」と願うのではなく「目標=ゴール」を置くこと。そのゴールもできる限り遠く、高く、そしてたくさん設定する。なぜかといえば「その方が脳にはよりエネルギーが生まれるから」だ。裏返せばそこには「人間は現状維持が好き」という背景がある。たとえ「売れていない世界」でもそれなりには心地よいものだし、こうした現状維持は動物が持つ生き延びるための本能でもある。だが、それではいつまで経っても「売れている世界」には行けない。

「もし男性が女性用トイレに間違って入ったら、もしくはその逆の場合でもいいです。そうなったら皆さん脱兎(だっと)の如くそこから飛び出すはずですね。そういったすごいエネルギーを出すには条件は2つしかありません」

ひとつは「よいゴールを持つこと」。もうひとつは「現状の外にある、ゴールの世界の臨場感を高めること」だ。ほしいのは「未来を視る力」。頭の中で思い描くのは「売れている自分」。仕事だけではなく、家庭でもプライベートでもすべてうまくいっている自分の姿を「視る」。それも可能な限り五感で、できれば「達成したときの喜び」といった感情も加えてみる。

「次はさらに重要。自分ならできると思うことです。10年後の自分を想像して私なら必ず実現できていると信じる。なぜそう言えるのか。答はひとつしかない。〈そう思う〉からです。スポーツでもビジネスでも、こんなふうに自己評価の高い人が成果を出すものです」
人間は1日のうちに5万もの言葉を自分に語りかけている。こうしたセルフトークの大半は無意識から湧き出されるものだ。が、こうした「湧き出し型」のセルフトークの大半はネガティブなものだという。それをここでは「自分に望ましいセルフトークに変える」。
「一日に一度でも、私って最高!と思うことが大事です」
そのときに邪魔をしてくるのが「お金」や「時間(過去)」、「他人(の視線)」といった物差し。しかし、未来だけを視ることでそれらのものからは解放される。

夢実現の鍵となるのは「人」

むろん、ゴールの世界へと突き抜けるのは容易なことではない。そこで必要とされるのが「人を巻き込み動かす力」だ。これは言い換えれば「信頼を得て応援される力」であり「ゴールドビジョンに共鳴してもらう力」でもある。そのためにはまず行きたい世界の側にいる人と「出会う力」が要る。

「サーフィンをやろうと思ったら、やっている人たちの中に入りますよね。やっていない人と会ってもできるわけじゃない。そういうことですね」

二つ目は「つながり」をつくること。頻繁に顔を出したり、誰か相手が望む人を紹介したりすることで、向こう側の世界の人に「喜んでもらう」。それがその世界に錨を下ろすことになる。こうして信頼を得てくると、やがては自分が紹介される側の人間になる。このときに大切なのは自分のやりたいことをしっかりとビジョンとして持っていることと、自分自身を表わす「タグ(名札)」を持つこと。自分のやっていることを信じきっている人というのは概して信頼されるものだし、そのとき「自分はこういう人間です」という名札があれば相手も人に紹介もしやすい。

「気を付けたいのは、無理に言葉で相手を説得しないこと。情報を渡したら、あとは理解して納得してもらうことを心がけましょう」
そこで得た信頼は「自分の夢を実現するための応援団となってくれるはずです」。
セミナー開催月にこのメソッドを詳しくまとめた著書を刊行する久野氏。「夢」は「この考え方を世界中に届けること」だという。
「その最初の一歩が出版。いずれは映画なども制作してみたいですね」

講師紹介

久野 和禎(ひさの かずよし)
久野 和禎(ひさの かずよし)
コノウェイ株式会社 代表取締役社長/プロコーチ、一般社団法人コグニティブコーチング協会 副代表
東京大学経済学部卒。筑波大学MBA取得。高校生まで海外で過ごし、大学卒業後に起業。人材系企業を経て、フィリップスなど複数の外資系大企業でマネジメントポジションを担う。その後、ProFuture(旧HRプロ)の常務取締役 兼 COOを経て、コーチングを軸としてコンサルティングを加えたサービスを提供する総合経営支援企業、コノウェイ株式会社を創業、代表取締役社長に就任する(現職)。現在は、大企業役員、中小企業社長など経営層からビジネスパーソンまで、幅広いクライアントに対してコーチングを行なっている。