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イベントレポート

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2016年12月20日(火) 17:30~19:00

小澤 正人(おざわ まさひと) / 映画解説者

心ときめくひと時を「魅惑の洋画スクリーン・ミュージック」

今から60年以上前の1950年代は、世界中の映画ファンを魅了した名作が数多く誕生した、いわば「洋画の全盛期」。そんな全盛期の作品の中から代表的な作品をピックアップして、名シーンとそこに流れる映画音楽を楽しむ今回の講座。講師をつとめた小澤氏は、静岡県内を中心に各地で年間150回以上の講演をこなし、d-laboでの講演も今回で2回目となる。小澤氏の講演の人気ぶりは、当初30人だった定員を、会場のキャパシティ限界の50人に増やしたことからもよくわかる。
映画に対する幅広い知識と軽快なトーク、そして、テーマに合わせて編集したワンシーンを、何本も上映してくださるスタイルは、映画を深く愛している小澤氏だからこそできること。20時間以上も編集にかかる時もよくあるそうで、多忙な時は、徹夜状態で仕上げているという。クリスマスを間近に控えた平日の夜、超満員の会場は、これから始まる映画への期待と熱気であふれていた。

記憶に残る名画には、必ず記憶に残る音楽があった

小澤氏のリズミカルで軽快なトークが始まった途端、参加者たちは、小澤氏の語る映画の世界に引き込まれていった。「これまで、何万本という数えきれないほどの映画を観てきました。今回は、“心がときめく洋画のスクリーン・ミュージック”というテーマに絞り、洋画の全盛期に誕生した名作をご紹介します。その中でも、誰が聴いても知っているという曲が流れる映画の名シーンを、7作品ほど上映させていただきます。ところで、みなさんは、今まで見た洋画の中で大好きな映画はありますか?」
小澤氏の質問に、会場からは「慕情」「アラモ」「第三の男」という声があがった。次々と映画のタイトルがあがるたびに、小澤氏も参加者も盛り上がり、たった今顔を合わせたということが嘘のような一体感がうまれていた。

「記憶に残る『名画』と呼ばれる作品には、必ず記憶に残るいい音楽がありましたよね。最近の映画は、映像の技術は素晴らしい反面、記憶に残る名曲が少ない気がして、少し残念に感じています。今回は、テーマ曲を聴けばすぐにストーリーや俳優さんの顔が頭に浮かんでくる、そんな名作のシーンを集めました。」

まず、1本目の映画は、1955年に日本で公開された「慕情」。ジェニファー・ジョーンズが演じる香港の医者(ハン・スーイン)と、ウィリアム・ホールデンが演じる新聞記者(マーク・エリオット)の愛の物語。上映されたのは、マークが戦死したという悲報を受けたハン・スーインが、いつも2人で会っていた裏山の丘に行く場面。ハン・スーインが1人泣き崩れるラストシーンに流れる「Love is a many splendored thing」は、今もラブソングの定番になっている。「映画のシーンと音楽がこんなにもマッチした映画は、他にはないと思います。ここで流れてほしいと思った時に、必ず慕情のテーマ曲が流れてくる。まさに映画音楽の教科書のような映画です。」

無名の俳優が、1つの作品でトップスターになれる、映画俳優の人生

2本目は同じく1955年に公開された、ピアニストと女優の伝記映画「愛情物語」。妻が出産の後に死んでしまったことに落ち込んだ夫は、生まれた息子を残して演奏旅行に行ってしまう。数年後に戻った父と息子がようやく心を通わせ、2人は向かい合わせのピアノでショパンのノクターンを演奏する。「今も、この映像を観て泣きそうになってしまいました。実は、僕が大学生の頃、新宿の映画館でこの2本を同時上映で観たんです。男同士で行ったのに、もうボロボロに泣いてしまって。でも、帰りのエレベーターに乗ったら、乗り合せた人たちが全員泣きはらした真っ赤な目をしていたので、少しホッとしました。素晴らしい映画音楽と言えば、この映画は欠かすことができない作品だと思います。」

続いて3本目は、1960年のフランス映画「太陽がいっぱい」。当時まだそれほど有名でなかったアラン・ドロンが、この映画によって一躍トップスターになったという作品。「監督は『禁じられた遊び』を撮ったルネ・クレマンです。主演の貧しい青年をアラン・ドロン、大富豪の息子役はモーリス・ロネ、そして大富豪の恋人役にマリー・ラフォレという新人の女優さんが出演しています。作曲を担当したのは、ニーノ・ロータで、「道」という映画の音楽を作った素晴らしい作曲家です。アラン・ドロンは、この映画1本でトップスターになり、約10年間もの間、日本での人気男優ランキングで1位を取り続けていたほどです。」

4本目は、実話をもとに描かれた1963年のイタリア映画「ブーベの恋人」。14年もの間、刑務所に入っている恋人を待ち続けるストーリー。恋人を待ち続ける女性を演じた、クラウディア・カルディナーレの名演技と音楽が見事にマッチしている。音楽は、3大映画作曲家と言われている、カルロ・ルスティッケッリが作曲している。
「私は、主演のクラウディア・カルディナーレが大好きで、学生の時に生徒手帳に写真を入れて、いつも眺めていたほどです。受験勉強で辛い時は、「ブーベの恋人」のポスターを机の前に貼って、この2人はもっと辛いはずだから…なんて思って励みにしていましたね。」

この場面にこれ以外の曲はないと思える、素晴らしい曲をつくる作曲家のすごさ

小澤氏は解説を交えながら、5~8分前後に編集された映画の印象深い名シーンを上映してくださったので、短い時間でも音楽とともにスクリーンに引き込まれた。1作品ごとの上映後は、拍手が沸きおこった。「洋画の全盛期は、こういう映画がたくさん出てきた時代です。曲だけを聴いても、シーンがすぐに頭に浮かんでくる。それは、やっぱり作品の豊かさなんですよね。みなさんも自分の思い出とリンクさせながら観てくれたのではないかと思います。では、引き続き映画を見ていきましょう。」

次は、同じ作曲家なのに、こんなにも雰囲気の違う曲を作ることができる、という例をあげてくださった。作曲家の名は、ヘンリー・マンシーニ。まず、1つ目の作品は、「ひまわり」。戦争のために犠牲になってしまった夫婦を描く物語。もう1つの作品は、オードリー・ヘップバーン主演の「ティファニーで朝食を」。誰もが知っているあの名曲「ムーン・リバー」も、ヘンリー・マンシーニが作曲している。「どれも、このシーンにはこれ以上の音楽はないというくらい、ぴったりの雰囲気に作られている。これは、とてつもない才能だと思いますね。」

7本目は映画音楽を語るには欠かせない「ウエストサイド物語」。それまでのミュージカル映画とは一線を画す画期的な映像で、実際のニューヨークの下町で撮影された。赤いシャツを着たジョージ・チャキリスが最初に画面に登場する、旋律のシーンが上映された。ここで残り時間はあと10分ほどになってしまったが、今日は特別サプライズとして、もう2本、上映してくださった。
8本目は、シルヴィ・ヴァルタンが映画出演をして歌った「アイドルを探せ」、そして、9本目は、小澤氏からのクリスマスプレゼント、「ホワイトクリスマス」から全員で歌うシーン。全部で9本もの映画が上映され、参加者からは大きな拍手が送られた。

最後に、小澤氏の夢についてうかがった。「私は、50歳でサラリーマン生活を辞めて、映画解説者になりました。当時は、周囲の人たちに心配されましたが、今はこうやって全国からオファーをいただき、忙しくやっている毎日です。だから、もし夢を持っている方がいれば、ぜひ挑戦してほしいと思っています。そして、これからも映画を通じて誰かを少しでも幸せにできたら、こんなに嬉しいことはありません。」

文・鴨西 玲佳

講師紹介

小澤 正人(おざわ まさひと)
小澤 正人(おざわ まさひと)
映画解説者
東京経済大学卒業。静岡県中小企業団体中央会に32年間勤務。退職後、映画解説者として、母校東京経済大学をはじめ、常葉大学・静岡福祉大学、公的機関等、全国各地で数々の講演をこなす。また、ファイナンシャルプランナー・NPO法人静岡県オーケストラスクール副理事長・たばこのない社会をめざす会静岡代表としても活動。