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イベントレポート

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2017年1月24日(火) 13:30~15:00

山口 里美(やまぐちさとみ) / 司法書士法人コスモ 行政書士法人コスモ 代表社員

モノの整理・心の整理で輝く未来を
~相続は大人片づけとエンディングノートで備える~

今や4人に1人が高齢者と言われる長寿大国・日本。自分が人生の後半戦に突入したと感じるようになると、頭の片隅に意識するようになる「終わり方」。「遺された人たちのために、元気なうちに備えておきたい」そう考えるのは、大切な人に支えられている素晴らしい人生だという証拠。だからこそ「終活」は、ネガティブな行動ではなく、これからの人生をより楽しく、より安心して暮らすためのポジティブな行動といえる。
今回は、司法書士法人コスモの代表社員であり、大人片づけインストラクターとしても活躍する山口里美氏を講師にむかえ、モノと心の整理術やエンディングノートの活用術、さらに成年後見制度の活用法まで教えていただいた。

「大人片づけ」の第一歩は、モノの片づけから

講師は、ツアーコンダクターから転身し、司法書士の資格を取得してからわずか3年で事務所を開業したという山口氏。今では、全国7拠点で事業を展開し、女性司法書士が経営する司法書士法人としては日本最大規模を誇る。さらに、整理収納アドバイザーという資格を活かして、さまざまな視点から「大人片づけ=モノと心の整理」をわかりやすく解説。昨年は、50回以上の講演を行なったという。

「大人になると2つの片づけが必要になります。1つは、モノの片づけ。今は、コンビニやネットなどでモノが簡単に手に入る一方で、ゴミの有料化や細かい分別の規定があって捨てにくい時代。だから家がモノであふれてしまうのです。」
家にモノが増えることは、年々増えている1人暮らしの高齢者にとって、命に関わる危険につながることにもなりかねない。「年齢と共にモノが増えていく一方で、体力はどんどん落ちていきます。自分で片づけられない状態になる前に、日頃から片づけるクセを身につけることが大事になります。」

モノを片づけることのメリットは、3つ。1つ目は、時間的効果。日本人は、平均して1日12分、1年にすると72時間もモノ探しをしている計算になる。「私が人生で一番大切にしたいと思っているのは“時間”です。限られた時間だからこそ、モノ探しの時間を好きなことや将来の目標に費やしてほしいと思っています。」2つ目は、無駄な買い物がなくなる経済的効果。そして3つ目は、片づけることで心が落ち着く精神的効果。では、どうしたらモノの片づけができるようになるのか。まずは、以下の5つを実践して、それを繰り返すことが大事だと山口氏は語った。

1.【重要書類や貴重品の片づけ】重要書類の置き場所を確認し、エンディグノートに書き出す。服用している薬や健康状態もあわせて記入する。
2.【避難経路の確保】地震などでの負傷の50%は、家の中の大きなモノが原因になる。
3.【高い所のモノの片づけ】高い所にあるモノは、頭に落ちてくる危険性が高いためすぐに移動。
4.【箱入り娘の片づけ】箱に入ったままの贈答品の整理。
5.【食品の片づけ】詰め込んである食品の整理。健康維持のためにも賞味期限のチェックを。

ここまでで、片づけは、自分もまわりも幸せにするだけではなく、災害から命を守ることにもつながることがわかった。

成年後見制度は、自分自身も大切な人も守ってくれる制度

講座の後半は、もう1つの「大人片づけ=心の整理」の話へ。2014年厚生労働省の資料によると、日本の平均寿命は、男性80.21歳、女性86.61歳。対して、健康で日常に制限のない「健康寿命」は、男性71.19歳、女性74.21歳。つまり、男性は約9年、女性は約12年、健康的とは言えない時期があるということ。

「みなさん寿命が来ることよりも前に、認知症になることの方が怖いと言います。その不安を取り除くために『成年後見制度』があります。これは平成12年に作られた制度で、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方を保護するための制度です。」

では、この制度がどんな時に必要になるかというと、具体的に次の4つが挙げられる。
【1】不動産の売買をする場合
【2】住宅ローンの設定をする場合
【3】遺産分割をする場合
【4】高齢者施設に入居する場合

特に、不動産の売買では、権利を持つ人が1人でも認知症を患っている場合、売買ができずに手続きが進まない状態に陥ってしまう。それが、今話題になっている空き家問題へとつながり、さらには日本の不動産全体が手のつけられない状態になってしまう可能性もあるという。

成年後見制度は、大きく2種類に分けられる。1つは、すでに判断能力が落ちていて、支援が必要な状態にある人を保護する「法定後見」。この手続きは、家庭裁判所への申し立てが必要となり、審判が下りるまで2~3ヶ月を要する。
もう1つは、元気で何でも決められるうちに、将来自分を助けてくれる人を予約できる「任意後見」。これは、任意後見人になる人と本人が公証役場へ行き、公証人立会いのもと任意後見契約を結び、公正証書を作成する。おおよそ1週間程度で手続きが完了する。任意後見契約を結べば、預金の管理や施設入居の手続き、不動産の管理や通院の付き添いなど、さまざまなサポートも依頼することができる。費用も法定後見の場合は6万円位~、任意後見の場合には2万円程度(ただし専門家に書類作成を依頼した場合は別途報酬が必要)。
つまり、任意後見制度は、経費も時間も法定後見よりかからない。

実際に、昨年の集計では、法定後見制度の利用が2~3%増加したことに比べ、任意後見制度は約10%も増えたという。「最近は自分が好きな人や信頼する人に任せたいという人が増えています。任意後見であれば、自分の希望する内容で契約することができるのです。」

遺言書とエンディングノートの活用で、トラブルのない相続へ

「最近は、相続のトラブルが本当に多くなってきています。よくドラマのテーマになったりもしていますが、まさに“相続”が“争族”になり、大切な家族がバラバラになってしまう可能性もあります。」

そもそも「相続財産」には、不動産や預貯金などのプラスの財産はもちろん、借金や未払い費用などのマイナスの財産も含まれる。だからこそまずは、財産になるものを全て書きだして、マイナスの財産が残っていないかどうかを確認することが大切だという。

「相続税の改定後は基礎控除額が引き下げられ、相続税がかかる人が1.8倍に増えました。実際に、遺産分割に関するトラブルは、過去13年で2倍に増え、そのほとんどが、財産がないと思い込んでいる家庭で起こっているのです。」トラブルを起こさないためにも、遺言書を作成しておくこと。そして、贈与などはできるときに着手しておき、元気なうちに任意後見人を自分で決めておくこと。そのためにエンディングノートを活用してほしいと、山口氏は熱く語った。

「私は、父が59歳のある日、突然父の余命があと3ヶ月と告げられました。遺された家族は、借金があるのかないのか、通帳がどこにあるのか、何もわからず大変な思いをしました。それよりも、父の想いや願いを聞けずに亡くなってしまったことが、何より悲しいことでした。そんな思いをする人が少しでも減るように、そして“争続”を防ぐための遺言書と、遺言書に書ききれなかった想いをエンディングノートに託すことで、真に円満な相続をしてほしいというのが私の願いです。遺言書は、実は15歳から書けるのです。もちろん何度でも書き直すことができるので、ぜひ大切な家族のために活用してください。」

今回の講座の参加者には、山口氏が考案したエンディングノートが1人1冊プレゼントされた。エンディングノートを書く前は、「気が滅入りそう」という声もあるというが、書き終えると「より家族への想いが強くなった」「新たな目標が見つかった」などのポジティブな声が多く聞かれるという。

「私のこれからの夢は、私の事務所が日本一信頼される司法書士法人になること。そして相続で困る方が1人でも減ることです。モノや心の整理をすることで、より安心安全に、前向きに暮らす人が増えてくれることが嬉しいです。」と話してくださった。 文・鴨西 玲佳

講師紹介

山口 里美(やまぐちさとみ)
山口 里美(やまぐちさとみ)
司法書士法人コスモ 行政書士法人コスモ 代表社員
1993年ツアーコンダクターより転身し、司法書士資格を取得。1997年に開業。
現在、東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・広島・札幌の全国7拠点で事業展開しており、女性司法書士が経営する司法書士法人としては日本最大規模を誇る。
フランチャイズアドバイザー、大人片づけインストラクターとしても活躍し全国司法書士女性会理事、全国司法書士法人連絡協議会理事を務める。
金融機関・企業における講演、業界誌などインタビュー・コラム掲載。