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イベントレポート

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2017年1月29日(日) 13:30~15:00

中村 卓哉 / 水中写真家、パプアニューギニア・ダイビングアンバサダー

写真家 中村卓哉「パプアニューギニア 海の起源をめぐる旅」出版記念【トーク&サイン会】秘境で潜った。撮った!感動の海中を覗いてみませんか。

大自然に囲まれた秘境の地パプアニューギニアはダイバー垂涎のダイビングポイント。無垢なサンゴが...魚群が...乱舞する色鮮やかな海中に、手付かずの世界に、新鮮な驚きが溢れている。今回は、水中写真家として活躍する中村卓哉氏が、新刊写真集「パプアニューギニア 海の起源をめぐる旅」出版を記念したトーク&サイン会を開催。未知なる海をめぐる感動のひと時となった。

原始の地球を思わせる神秘的な海中世界にため息

水中写真家として世界中の海に潜り、知られざる海の魅力を伝え続けている中村氏。2016年12月に刊行されたばかりの最新写真集「パプアニューギニア 海の起源をめぐる旅」では、パプアニューギニアの神秘的なまでに美しい海を、迫力の写真で紹介している。今回の出版記念トーク&サイン会には、中村氏のファンをはじめ、多くの海好き、ダイビング好きが集まった。

進行役を務める湘南蔦屋書店旅行コンシェルジュの重野氏は、「旅の本に携わって40年になりますが、この新刊を見てびっくりしました」と熱っぽく語る。「パプアニューギニアの海の美しさをぜひ皆さんにも知っていただきたいと思い、中村さんにぜひにと声かけして、トーク&サイン会を企画しました」

重野氏からマイクを受け取った中村氏は、プロジェクターに映し出された写真とともに、パプアニューギニアの魅力について語り始めた。

「パプアニューギニアの首都ポートモレスビーまでは、日本から真南に、直行便で6時間半くらい。意外に近いですよね。今、地球上のサンゴの多くが死滅していくなか、パプアニューギニアだけは、世界で唯一、サンゴが増え続けている場所なんです。海の生き物の4分の3がサンゴのある場所に住んでいることを考えると、フレッシュなサンゴがたくさんあるパプアニューギニアは、生き物がとても多い場所だということになります」

プロジェクターに、写真集の冒頭に収録されているパプアニューギニアの空撮写真が映し出される。熱帯フィヨルドと呼ばれるギザギザと入り組んだ海岸線と、こんもりとしたジャングルの様子は、「地球にまだこんなところがあったのか」と驚いてしまうような、まさに秘境の風景だ。フィヨルドの山と山の間の海は栄養が豊かなので、そこでのフィヨルドダイビングでは、多種多様な生き物が見られるという。

「パプアニューギニアには、ダイビングスポットが7か所あり、それぞれにベストシーズンが違うので、一年を通してダイビングが楽しめます。ポートモレスビーに着いたら、ダイビングスポットまで国内線のプロペラ機で移動します」

最初に中村氏が紹介してくれたスポットは、島の南東エリアにあるトゥフィ。トゥフィの空港は、なんとホテルの敷地内にある。パプアニューギニアでは、自然環境を維持するために、各エリアにダイビング施設は1~2か所しか設けられていないのだが、トゥフィでダイビングができるのはこのホテルだけ。トゥフィを訪れるほぼ全員がダイビングを目的にしているため、飛行機はこのホテルに着陸するというわけだ。

「毎回、パプアニューギニアに着いたら、まず撮ろうと思っている写真があります。パープルビューティという魚を、きれいに撮ろう、と。この写真集の中にも、パープルビューティがたくさん出てきます。トゥフィで撮ったのは、キャベッジコーラルというキャベツのような形をしたサンゴの仲間が集まるキャベツ畑のような場所で、パープルビューティが群れをなしている写真です」プロジェクターに映し出されたその写真は、見たことのない不思議な光景。参加者からため息混じりの歓声が上がった。

ほかにも珍しい“歩くサメ”エポレットシャークがテーブルサンゴの下に潜んでいるところや、「赤玉」と呼ばれるトゥフィ名物、レッドピンジャロスナッパーの巨大な丸い群れ、複雑で鮮やかな模様をもつ小さなカニハゼなど、ダイナミックなものからマクロなものまでさまざまに、トゥフィの海を紹介していただいた。

海底に沈むタンカーから、光る魚の大群が流れ星のように!

島の北西エリアにある、世界一サンゴの種類が多いキンベ湾というスポットは、ホヤやカイメンなどの原生生物がびっしりと水底を覆っていて、原始の海を彷彿させる場所だ。湾の外れのキンベボミーは、施設から距離が遠く、なかなか潜ることのできないリスキーなポイントだが、そのぶん、バラクーダとツバメウオが一緒に泳いでいる巨大な群れを、スノーケルでも見られるほどの迫力のある海。中村氏は次々と素晴しい写真を見せてくれた。

首都ポートモレスビーの近郊でも、小さくて色鮮やかな、珍しい生き物がたくさん見られる。ケラマハナダイのケンカシーン、ポロカサゴの大あくび、ユーモラスなタツノオトシゴ…。

「これまで1万本以上のダイビングを経験してきましたが、今回、沈船のハッチの中からヒカリキンメの大群がキラキラと光りながら流れ星のようにわーっと出てきたのは、もっとも興奮した光景でした。ナイトダイビングで、厳しい撮影でしたが、夢中でシャッターを切った15分間でしたね」

パプアニューギニアの中でも最も有名なスポット、マダンや、かつて旧日本軍の海軍司令部が存在し、沈船ポイントも多いラバウル、絶滅危惧種のアオサンゴがリゾートのハウスリーフに群生しているケビエンと、それぞれに異なる表情を見せる海中風景が、参加者を魅了する。

中村氏が「一番好きなスポット。まさに奇跡の楽園」と絶賛するのがアロタウ。北はソロモン海、南はコーラルシーと、生態系の異なるふたつの場所の間にポツンとあるこのリゾートは、「自分のワイドな写真のスタイルに合っている」と語る。「1回のダイビングでハンマーヘッドシャークを見て、海中の木もれ日の中を泳ぐパープルビューティの群れを撮り、というような、贅沢なことができます」

5mmほどのカエルアンコウの赤ちゃん、1cmくらいのピグミーシーホース(タツノオトシゴの仲間)といった、小さな生き物の世界にもワクワクする。写真とともに、生き物にストレスを与えず写真を撮る方法など、水中での撮影テクニックも紹介された。

「写真集のカバーショットになった写真も、アロタウで撮影しました。ホヤ、カイメン、サンゴがうっそうと茂り、自然の額縁をつくる中に、パープルビューティが泳いでいる…。これぞ『ザ・パプアニューギニア』、という1枚になったと思っています」

自然環境も独自の文化も、守り、未来へ伝えていきたい

パプアニューギニアにはまだまだ未開の島々がたくさんあるが、実は現在、オーストラリアの実業家が、それを環礁ごと買い上げて、エコリゾートとして売り出すというプロジェクトが進行している。アロタウからさらに南東へ船で8時間という場所にあるその「コンフリクトアイランド」でのお披露目メディアツアーに、中村氏は日本人として唯一参加した。「パプアニューギニアの新しいダイビングスポットとして、これから注目される海。どんな場所か、というのは…次の写真集でお見せします(笑)」

今回の写真集には掲載されていないが、民族衣裳を身にまとったかわいらしい子どもの写真をプロジェクターに映し出しながら、中村氏はパプアニューギニアへの思いをこう語った。

「パプアニューギニアには、1,000の部族があって、1,000の言葉があります。この写真の子が身に付けているのは、貝で作ったアクセサリー。貝はシェルマネーといって、お金としても使われています。しかし、こうした独自の文化も、年々廃れてきている。近年は、液化天然ガス事業で世界中から投資が集まり、貧富の格差が生まれつつあります。海の中の自然破壊が広がるのも食い止めたいし、部族特有の文化も守っていきたい…そういうメッセージを、この写真集から受け取っていただければ嬉しいです」

パプアニューギニアは、ダイビング初心者でも潜れるような場所も多い。各ポイントにはセキュリティのしっかりしたリゾートがあり、キンベ、マダン、アロタウのリゾートには日本人ガイドもいるので、最初に訪れるのにはおすすめだと中村氏。写真とトークでパプアニューギニアの魅力を知ってしまった参加者たちはきっと、「行ってみたい!」という想いでいっぱいになったことだろう。

最後は、記念撮影と、写真集へのサイン会。未知なる世界への旅を楽しんだ、貴重な時間となった。

講師紹介

中村 卓哉
中村 卓哉
水中写真家、パプアニューギニア・ダイビングアンバサダー
10歳の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。週刊誌や新聞、ダイビング専門誌、ウェブマガジンなどの連載も多数。テレビ番組や映画の水中撮影も手掛けるなど多方面で活躍中。
著書に『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)などがある。