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イベントレポート

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2017年4月22日(土) 14:00~15:30

須﨑 大、藤井 仁美 /

犬との暮らしのコトハジメ
~ペットショップに行く前に受けてほしいセミナー~

自分に合った犬はどんな犬種?犬と一緒に暮らすにはどのくらいお金がかかる?どんな準備をすればいい?などなど、犬との暮らしをはじめたい方には、疑問や不安がたくさんあるはず。今回のセミナーでは、そんな疑問に「犬の専門家」がお答えした。犬の特性を知り、自分のライフスタイルに合ったパートナーを選べば、その生活はとても素晴らしいものになる。犬とのより良い暮らしを実現したいと多くの参加者が集まった。

犬が本来持っている欲求を叶え、能力を発揮させてあげよう

湘南Tサイト1号館1階にあるプレミアムペットフード&ケアショップ「GREEN DOG」との共催で行なわれたセミナー。冒頭「GREEN DOG」スタッフが「このセミナーに込めた思いを伝えたい」として、挨拶に立った。

「『GREEN DOG』は、15年前にネット通販でペットフードを扱う店としてスタートしました。当時は世の中に粗悪なペットフードも広く出回っており、犬たちが食べ物のせいでアレルギーや病気になっているのでは、と言われ始めておりました。『GREEN DOG』を立ちあげたオーナー自身も、同じ悩みを抱え、自ら良質なフードを扱うお店を立ちあげました。また、当時から問題となっていた、飼い主が『もう飼えない』と殺処分場に持ち込むような事例が、今でも後を絶ちません。今回はそのような現状を解決する一つの手段として、これから犬を飼おうとしている人、つい最近飼い始めた人に向けて、犬との暮らしをよりよいものにするための情報をお伝えしたいと思います」

最初は、代官山の動物病院に勤める獣医師の藤井氏によるレクチャーからスタート。藤井氏はまず参加者に「犬とはどういう動物ですか?」「なぜあなたは犬との暮らしを始めるのですか?」「どんな犬と暮らしたい?」「今の不安は?」と質問を投げかける。「犬はどういう動物?」については「犬は人とコミュニケーションがとれる動物」「癒し、元気を与えてくれる」「自己表現がうまい」という意見が。「なぜ犬と暮らしたい?」という問いには「一緒にお散歩をして自分も健康になりたい」「“犬友”と出会えるのも楽しみ」といった声が挙がった。藤井氏も「犬を飼うことで社会とのつながりをもてる、という報告もあります」とコメント。

藤井氏は「まず、犬は動物です。人間とは違います。これは当たり前のことなんですが、ときに忘れてしまいがちです」と強調する。「犬の家畜化が始まったのは、およそ1万5000年前だと言われています。犬はその誕生の頃から人間と深い関わりをもち、長きにわたってパートナーとして存在しています。そして人間にはないその素晴しい能力を伸ばすために、さまざまな交配が行なわれました」

レトリバー、ダックスフンド、トイプードル、チワワ、フレンチブルドッグ…。犬種が違えば能力も異なってくる。たとえば「獲物を捕る(捕食)」ことを目的に交配された犬は、「ガンドッググループ(鳥を捕る猟犬。レトリバー、ポインター、セッター)」「ハウンドグループ(獣を捕る猟犬。ビーグル、ダックスフンド、グレイハウンド)」「テリアグループ(害獣駆除犬。ジャックラッセルテリア、ミニチュアシュナウザー)」の3グループに分類される。

「テリアはかわいいイメージがありますが、ねずみを捕る犬。そういう犬種による特性や能力を理解して、彼らが本来持っている欲求を叶えてやることができるかということが犬を飼ううえではとても重要です」

藤井氏は「犬との暮らしを始めるにあたって知っておいてほしいこと」として、「動物福祉」という考え方を紹介。

①飢えと渇きからの自由(解放)
②肉体的苦痛と不快からの自由(解放)
③外傷や疾病からの自由(解放)
④恐怖や不安からの自由(解放)
⑤正常な行動を表現する自由

⑤の「正常な行動を表現する自由」とは、言い換えれば「犬種の能力を発揮できる自由」ということ。「あんな犬が飼いたい」「こんな犬がいい」という前に、まずはこの5つの自由を守ってあげられるかどうかをよく考えることが、犬にとっても飼い主にとっても幸せな暮らしを実現するためにとても重要なことなのである。

「飼いやすい犬」ではなく「自分の生活に合った犬」を

続いてヒューマン・ドッグトレーナーの須﨑氏が、「しつけ・トレーニングの重要性」についてレクチャー。

「“問題犬”と言われるたくさんの犬たちと会って感じたことは、犬たちは自分の行動を『問題だ』と思ってはいないということ。犬の問題行動は犬だけのせいではなく、人との関係性があって起こるんですね。私は自分の肩書を“ヒューマン・ドッグトレーナー”と付けました。人間目線の“問題”を起こさせないためのしつけ・トレーニングではなく、人にとっても犬にとっても良い関係を築けるようなしつけ・トレーニングをしてほしい。そしてそれは現在の人間社会で犬たちを守ることにもつながるのです」

須﨑氏はよく「飼いやすい犬は何犬ですか?」と尋ねられるという。しかし“飼いやすい”とはどういうことだろう?

「たとえば『アレルギーがあるから毛が抜けない犬がいい』と、トイプードルやシュナウザーを飼ったとします。しかし毛が抜けないということは伸び続ける、つまり月に1~2回はグルーミングに行かなくてはならないということ。では短い毛の犬がいいか?抜けた毛で掃除機が3日でいっぱいになります」

「こういう犬がいい」という考えは人間のエゴだと須﨑氏は言う。「“飼いやすい犬”はいません。それぞれの犬の特性を知り、自分の生活に合った犬を選ぶことが大切なのです。そういう意味で犬種選びは車選びに似ています。家でゆっくりしたい人がボーダーコリーを飼うのは、インドア派の人が排気量の大きな車を持つようなもの。自分が好きな犬種ではなく、思い描くライフスタイルと合うかを考えましょう」

散歩やブラッシングに十分な時間がとれるか、アウトドアで一緒に時間を過ごせるか。子どもや高齢者がいるかいないか、日中家に人がいるかという家族構成も重要だ。たとえばトイプードルは「みんなから愛されること」が仕事だから、日中ずっと留守番させると「かまってもらうための仕事=いたずらやオシッコ」をたくさんする。これは問題行動ではなく、犬の特性と人の暮らし方がマッチしていないために起こることなのだ。

広さ、戸建か集合住宅か、周辺の公園やドッグラン事情といった住環境、そして経済事情も犬との暮らしを考える際のポイントだ。

犬との出会い方も「ペットショップに行く」だけではない。ブリーダー、保護施設など、それぞれのメリットやリスク、注意点についてよく知り検討することも必要だ。

「“犬を飼う”ではなく“犬と暮らす”ということは、どういうことか考えてみましょう。まず1日2回の散歩と、ウンチとオシッコ。食事。1日の流れが犬中心に変わり、人も朝早く起き規則正しい生活になります。そして彼らは遊びのプロフェッショナル。とても高い確率で大切なモノを壊します。きれいな家具もズタボロになり、バッグはあなたの高価なもの、お気に入りのものを選んで噛みます(笑)。多くの犬が私たちより先に死にます。それでも犬と暮らしたいか?よく考えてみてください」

犬との暮らしについて真剣に考えるよいきっかけに

ここからは参加者からの質問タイム。「日本の犬種について教えてほしい」「豆柴と柴犬は違うの?」など、実際に飼いたいと思っている犬種についての情報が知りたいという人が多かった。

「長く一緒に暮らした犬が亡くなり、寂しかったので同じポメラニアンの子犬を飼い始めた」という参加者は「今2か月なんですが、すごく噛むので…」としつけの悩みを相談。須﨑氏は「2か月の子が噛むのは問題ではないですよ。」と励まし、藤井氏は「前のコとは性格が違うのかもしれませんね。小さいコはあまり厳しくしつけようとすると怖がってしまうこともあるので、トレーナーに相談するのもいいと思います」とアドバイス。

「初めて犬を飼うのですが、保護犬でも大丈夫でしょうか?」という質問も。「保護犬は、親がどんな犬かわからない、どういう生育環境だったかわからない、ということも多い。初めてならば、保護犬であっても過去がわかっているコを選ぶといいでしょう」「お子さんが面倒を見るなら子どもに慣れているコを迎え入れるほうがいいですね。子どもとの相性がいい犬種としては、イングリッシュコッカー、ゴールデンレトリバーなどがいます。お母さんが散歩をすることもあるでしょうから、お子さんだけでなくお母さんの意見も考えたほうがいいですよ」とのこと。

犬との暮らしを始めたいと思っている人にとっては改めてその覚悟を問われ、すでに犬と暮らしている人にとっては犬との関係性を再び考えるきっかけとなる、有意義なセミナーとなった。

講師紹介

須﨑 大、藤井 仁美
須﨑 大、藤井 仁美

須﨑 大
DOGSHIP LLC.代表。
ヒューマン・ドッグトレーナー。実務経験と、動物の行動学と心理学を学問してきた立場から、人と犬、人と人の相互関係をライフワークとして研究。また、社会人向けに「動物から学ぶコミュニケーション」をテーマに、企業や自治体・ホテル等にて、講師としても活動を行なう。2015年11月、4冊目の書籍「愛犬が長生きする本(宝島社)」を出版。

藤井 仁美
V.C.J. 代官山動物病院、行動診療科獣医師。
英国にて伴侶動物の行動学を学ぶ。その知識と経験を生かし、代官山動物病院でも行動問題の治療、しつけ方指導、病気のパートナーのメンタル面(精神面)のケアを専門に行なっている。