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2017年6月6日(火)19:00~20:30

紫原 明子(しはら あきこ) / エッセイスト

紫原明子さんに聞く、「家族無計画」から見る女性の人生とお金

新しい家族論をつづったエッセイ『家族無計画』の著者、紫原明子さんに「お金」について伺う公開インタビュー。紫原さんは、キャバクラで月2,000万円豪遊したり、思い余って都知事選に出馬したりと、「日本一炎上しがちな夫」こと起業家・家入一真氏と18歳で結婚後、31歳で離婚し社会人デビュー。今回のセミナーでは、さまざまな失敗、反省を経て、現在は2児を育てながらエッセイストとして活躍する紫原さんが女性の人生にとって「お金」とは何か?について語っていただく機会となった。
運営:株式会社 ZUU(資産運用メディア「DAILY ANDS」)

18歳で結婚、20代で資産10億円に

講師は自著『家族無計画』が好評のエッセイスト・紫原明子氏。今年35歳になるという紫原氏は2人の子どもを持つシングルマザーだ。18歳で結婚し、30歳で元夫の家入一真氏と別居するまでは専業主婦として生きてきた紫原氏。十数年間に及ぶ結婚生活は、振り返ってみると普通の主婦の人生とはだいぶ違ったものであったという。
そこで今回のセミナーでは女性向けWebメディア『DAYLY ANDS』編集長の楠井朋子氏を案内役に、紫原氏の「これまでの歩み」や「お金について」の話をお聞きしてみた。

「お話をするにあたり、今日はスライドを一枚だけ用意してきました」

そう言って紫原氏が見せてくれたのは現在に至るまでの個人年表。パっと見て目を引くのは「18歳 結婚」の項目だ。元夫と出会ったのは高校在学中の17歳のとき。すぐに同棲を始めて18歳で結婚、19歳で第一子を出産というのはいまどきの女性しては早い方だろう。

「4歳年上の元夫とは地元の福岡にいた高校2年のときにネットの出会い系サイトで出会いました。この頃の私はいわゆる中二病で、ひきこもりとか尖っている人たちが輝いて見えていたんですね」

当時の夫は月収20万程度のサラリーマン。つきあって半年で結婚し、すぐに第一子を授かった。驚いたのは妻の妊娠を知るや、夫が「会社をやめる」と言い出したことだ。

「家族と過ごせるようにお金を稼ぐ。そのために起業する、と言い出したんです」若い妻にとって「起業イコール倒産のイメージ」。倒産後、自分は夜の街で働くことになるのだろう、と覚悟した。

ところが、そんな不安は束の間、夫の始めた「業界最安値」のレンタルサーバー事業はわずか1年で急成長し、一家はそれまでの家賃6万円の田舎の物件から福岡市内の月25万円のマンションに移ることとなった。夫の毎月の給料は20万円から200万円に。21歳のときには上場企業の誘いで子会社化。いきなり数億円が入ってきた。一家は東京に引っ越し。家賃は50万になった。その後も「お金がどんどん入ってくる生活」はつづき、資産は10億円、家賃は最高で月120万円となった。

その一方で、妻は「なんだかお金がいっぱいあるな」と感じる程度。毎月夫から渡される生活費で好きなときに好きな服を買う程度の暮らしを営んでいた。

失敗して得られる自由がある

東京に移って変わったことは「飲めなかった夫が毎晩べろんべろんになって帰って来るようになったこと」だった。

妻は知らなかったが、気のいい夫は毎晩豪遊し、投資話があると可能性の薄いビジネスでもポンと大金を出すようになっていた。そうこうしているうちに無限にあると思っていた資産はゼロになっていた。同時期に夫の女性問題も浮上し、夫とは別居。自分が子育てをしながら働くこととなった。

「でも、それまでの私は専業主婦。電話の出方も名刺の渡し方もビジネスメールの書き方も何も知りませんでした」

まずは友人が紹介してくれた非営利団体でそうしたビジネスマナーを学んだ。次いで小さな出版社で働き、広報の仕事を会得した。何とかやっていけそうだと思い始めたときだった。別居中の夫が訪ねて来た。「都知事選に出馬する」という夫は、いつもの酒に酔った夫ではなかった。これからはお互いに別々の道で楽しく生きようと話しあい、離婚が決定した。その後は「ひょんなことからエッセイなどを書いて、それが仕事になって今に至っています」。

セミナー後半は質疑応答。楠井氏や参加者からの質問に答えていただいた。一般の人間、まして主婦の身ではなかなか味わえないゼロからスタートした資産数億円の生活。だが紫原氏本人は「お金については基本的なことがわかっていない」という。

「私にとって世の中のお金の流れというものはブラックボックスなんですね。誰がどこで儲けているのか。この社会で一番わからないのは不明瞭なお金の流れだと思います」

 株や投資についても「勉強はしたい」。しかし、実際は目の前の生活で精一杯というのが本音だ。生活費に2人の子どもの教育費……シングルマザーが都心で暮らしていくのは楽ではない。助かるのは仕事がたくさんあることや元夫が養育費を払ってくれていることだ。

「本にも書きましたが、自立というのは一人で立つということだけではなく、たくさんの拠り所を持つことだと思います。離婚はしたけれど、養育費をちゃんと払わない人が多いなかで元夫はそれだけはきっちり払ってくれる。そういう意味ではとても感謝しています」

 現在は築50年の古アパート暮らし。一時はプール付きの高級マンションに暮らしたこともあったが、感じている自由は今の方がずっと大きい。

「個人的にはやっと足かせが取れて裸一貫になれた感じ。今の世の中は一回失敗しないと自由になれないかもしれませんね」

高過ぎる結婚の「価値」、もっと生きやすい世の中にしたい

結婚は「ぜひまたしたい」と思っている。そこには「結婚と離婚の価値を下げたい」という思いがある。結婚や離婚は確かに人生の一大事ではある。だが、それゆえに結婚できないでいるとそれ自体が悩みになる。結婚をすればしたで浮気や夫婦喧嘩で悩む。離婚をしても「なんであんな結婚をしたのだろう」と過去で悩むことになる。こうしたことで悩むのは「結婚の価値が高いがゆえ」だ。

「そもそも一度結婚したら添い遂げるなんていうのは無理芸。それができた人はラッキー。でも、できなくても不幸じゃない。お互いにまた違う道で幸せになればいいのではないでしょうか」

結婚も離婚も、もう少しカジュアルに身軽にできれば生きやすい世の中になるのではないか。そのためにも「一回経験した者の責任として再婚はポンポンしたいですね」。

 こんな紫原氏には独身の女性たちから相談も多く寄せられる。その大半は婚活や出産についてのものだ。言いたいのは「出会いは運」だということ。自分はたまたま結婚も出産も体験したけれど、巡り会いがない場合だって当然ある。そうした中で生きる女性が非難されることのない世の中であってほしいという。

 「夢」は「伝えたいことをフィクションで書くこと」という紫原氏。

「ノンフィクションでは説教臭くなって伝わりにくいことも、物語の中でこんな世界があるんだよと提示すれば伝わるかもしれない。アプローチを変えて、いろんなものが書けるようになりたいですね」

講師紹介

紫原 明子(しはら あきこ)
紫原 明子(しはら あきこ)
エッセイスト
1982年福岡県生まれ。高校卒業後、音楽学校在学中に起業家の家入一真氏と結婚。のちに離婚し、現在は2児を育てるシングルマザー。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)などがある。