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イベントレポート

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2017年6月8日(木)19:00~20:30

マーカス・オルド / スイス・アソス社海外マーケティング担当責任者

HAVE A GOOD RIDE!
最高のサイクルウェアで世界中のサイクリストを快適に!

ロードレースの第一線で活躍するプロ選手からアマチュアのサイクリストまで、世界中の自転車乗りに愛されているサイクリングウェアブランド「アソス」。この日のセミナーはその海外マーケティング担当責任者であるマーカス・オルド氏がゲスト。他社とは違うアソスの魅力と、オルド氏が日頃から楽しんでいるヨーロッパのサイクリングについて、アソスの日本総代理店であるダイアテック株式会社の寺本俊介氏を通訳に語っていただいた。

テーマは「いかに速く快適に走るか」

アソスの本社があるのはイタリアとの国境に近いスイス南部のルガノ郊外。創業者のトニー・マイヤー氏がアソスを設立したのは1975年のことだ。

エンジニアであるマイヤー氏が最初に手掛けたのは自転車。「いかに速く快適に走るか」をテーマに、世界初となるエアロ形状のカーボンパイプを使用したフレームを開発した。同時にマイヤー氏がこだわったのがライダーのポジショニング。風の抵抗を弱めるために、アソスではポジションを低めに設定してみた。しかし、テストの結果わかったのは「それでもかなり風が当たる」ということだった。「原因はウェア。当時の自転車選手はみんなメリノウールのウェアを着ていたんです。これがバタバタして抵抗を生んでいたんです」

そこでマイヤー氏が目をつけたのがスキーウェアに使われているライクラ(ポリウレタン)という化学繊維だった。スピードを競うダウンヒル競技で使用されていたジャージから不要なパットなどを外してサイクリングウェアを開発。薄くて軽量、伸縮性のあるスキンスーツは見た目にも革新的で、はじめてスイスの選手が着用した国際ロードレースでは「エイリアンが走っている」と驚きをもって報じられたという。こうしてアソスはサイクリングウェアの開発に特化。その優れた機能はトッププロ選手たちの間で広く信頼されるようになっていった。

「この写真を御覧ください」とマーカス氏が見せてくれたのは1982年にイギリスで開催された世界選手権での表彰台の写真。

並んでいる3人の選手、1位のジュゼッペ・サローニ、2位のグレッグ・レモン、3位のショーン・ケリー。彼らが着用しているショーツのすべてがアソスだ。「スポンサーだから提供していたのでは?」というのは間違い。アソスはどの選手とも契約をしていない。「彼らは3人とも自分でアソスを選んで買っていたんです。今でもこういう選手は大勢います」

ペナルティを払ってでもアソスを着たい

アソスのウェアの特長は暑さや寒さ、雨や雪などの過酷な環境に強いこと。とくに『ジロ・デ・イタリア』のような20日間をこえるレースではたとえ他のスポンサーからウェアを提供されていたとしても、体調管理のためにペナルティを払う覚悟でアソスのインナーやレインウェアを着ている選手が多い。アソスでは今年からそれまでの方針を転換、BMCレーシングチームにウェアを提供することになったが、実はこの契約が結ばれる以前からBMCの選手たちはアソスの製品をこぞって買ってくれていたという。

むろん、こうした製品は一般消費者向けに販売されているものと同じ。選手への供給用に作られたジャージやショーツも、レースには不要なポケットなどを省いただけで基本的には変わらないという。

世界中のサイクリストから支持されるアソスのウェア。その優れた製品はどんな環境で作られているのだろうか。スイスの本社は2階建ての住宅風の建物。反対側にはもともとマイヤー氏が住んでいた家がある。この2棟の建物の中にオフィスや工場、ショールームなどがある。

「アソスは社員120名の小さな会社です。そのうち70人はソーイングとリペアのスタッフ。私のようなセールススタッフは50人しかいません」
製品開発にあたっての同社の最大の特徴は「サンプルをすごく多く作るところ」だ。ショーツにしても他社が3つか4つしか作らないところを70着も作ったりする。

なぜそんなに多いのかといえば、いろいろなパターンを試しているだけではなく、さまざまなファブリックをテストしているから。ルガロ周辺は繊維産業が盛んで周囲には工場がいくつもある。アソスではそうした工場と提携してサイクリングウェアに最適な素材を開発している。本社周辺のコースでは「毎日アソスのウェアを着用したWERKSMANNSCHAFT TEAM(ベルクスマンズシャフトチーム:アソス社の社員を含むテスト専用チーム)や地元スイスの若い選手が開発中のファブリックや新作の長期テストを行なっている」。そこで得られたものは、すぐに会社にフィードバックされる。

「夢」は「いつか日本に住むこと」

このようにして生み出された製品は高価ではあってもほかには見られない機能を備えている。最新のS7ではパッド部分に「ゴールデンゲート」システムを採用。いままでのショーツでは完全に縫い付けていたためペダルを漕いでいるとどうしても肌に擦れてしまっていたパッドを、生地から半ば浮くように自由度をもたせた縫い付けとし、それによって肌に密着させることを実現、快適性を向上させた。「自転車に乗っていて痛みや違和感を覚えるとしたらお尻ですよね。そういうとき、たいていの人はサドルを交換しようとするけれど、サドルではなくショーツを変えてみてはいかがでしょう。私のガールフレンドもそれで問題を解決しました」

スイスの本社はサイクリングにも好適地。北に車で1時間も走れば、そこはアイガー山を望むスイスアルプスだ。南に行けばイタリアのトスカーナ地方。マーカス氏は時間があれば最低限の荷物をバックパックに詰め込んでサイクリングに出かけるという。ヨーロッパでのサイクリングのベストシーズンは4月、5月、9月。旅の間は土地の食材やワイン、ビール、コーヒーなどを満喫する。「おかげで私のフェイスブックは食べ物の写真ばかりが並んでいます」

マーカス氏はオランダ出身。38歳の今日になるまで「19回引っ越しをして、世界の5、6か国に住んできた」という。同氏の「夢」は「いつか日本に住むこと」だ。「なぜか?それはここでのサイクリングが好きだからです。日本の山はきれいだし、走りやすい。サイクリストのマナーもいい。それに日本のフードやカルチャーも大好きです」

セミナー終了後も会場内はマーカス氏との記念撮影や個別に質問を求める方で列ができ、一人ひとりに丁寧に、ユーモアを交えながら対応するマーカス氏の姿が印象的であった。

講師紹介

マーカス・オルド
マーカス・オルド
スイス・アソス社海外マーケティング担当責任者
現在、マーカス氏が海外マーケティング担当責任者を務めるアソス社は、「世界初」の製品を多数発表し、画期的なサイクリングウェアブランドとして支持されている。オランダ人と中国人を両親に持つマーカス氏は、さまざまな国で幼少期から自転車とともに過ごしてきた。10年以上の豊富なスポーツウェア業界経験をもち、現在はアソスウェアを通じて日本のサイクリストがもっと楽しく快適にライディングできることに力を注いでいる。