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イベントレポート

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2017年7月4日(火)19:00~20:30

平畑 徹幸(ひらはた てつゆき) / 医療法人社団創友会 UDXヒラハタクリニック 理事長

がん遺伝子診断と治療

がんは遺伝子の病気であり、遺伝子診断によりMRI/CT/PETでは見つける事のできない、微細な初期段階のがんを見つける事ができる。遺伝子診断では127項目のがん遺伝子検査により異常を起こしている遺伝子を特定する事ができるので、がんの早期発見を可能としている。また、がん治療は、原因となっている遺伝子を治すことが究極の目的である。今回の講師である平畑氏が設立したUDXヒラハタクリニックでは、体内に正常ながん抑制遺伝子を入れることにより、がんの死滅や遺伝子の正常化を促す治療を提供している。 本セミナーでは、第4の治療法と言われる免疫療法や、クリニックで行なっている第5の治療法である遺伝子治療について語っていただいた。

急激に増加しているがんによる死亡者数

講師は、日本で唯一、DNAワクチンなどによるがんの遺伝子治療を行なっている『UDXヒラハタクリニック』の平畑徹幸氏。がんの治療といえば、外科手術、放射線治療、抗がん剤治療。これが日本では国の保険制度が適用される標準医療=三大療法とされているが、最近は免疫療法や遺伝子治療など、次世代の治療法が注目を集めている。このセミナーではまず、そうしたがん治療について考えてみた。

日本人の死因第1位はがん(悪性新生物)。

「1947年から2013年までの死亡率の年次推移をグラフ化すると、2000年くらいからがんで亡くなっている人の数が急激に増えています。これはつまり、三大療法ではがんは治りきれていないということを意味しています。」

標準医療では十分とは言いきれないがん治療。と同時に、がんの厄介なところは予防が難しい点にある。やはり死因上位にある心臓疾患や脳血管障害には動脈硬化を防ぐなどの数値化しやすい予防法があるが、がんの場合、生活習慣上でできることは煙草やアルコールを控えるくらいだろう。

「がんでいちばん大事なのは予防です。まずはならないこと。なってしまっても、早いうちに発見することが大切です。」

目には見えないほど小さながん細胞。それを人間は体内で1日に1,000個から1万個作っているという。だが通常は免疫細胞が働いてそれらはがんには至らずに終わる。よく言われるがんの「ステージ」でⅠ期というのはこのがん細胞が10の9乗(10億個)ほど集まった状態を指す。この時点でのがんの大きさは1センチで重さは約1グラム。実はがんがここまで育つには10年から30年ほどもかかるという。一方で、Ⅰ期までいった腫瘍が転移機能を持つにはわずか2年しかかからない。直径1センチほどだったがんが周囲に浸潤し始めるとⅡ期。それがリンパ節に転移を始めるとⅢ期。次のⅣ期ともなるとがんは多臓器に転移し、1キログラムを超える末期がんとなる。こうした進行が始まる前にがんを発見してくれるのが、PET-CTやレントゲン、内視鏡検査、腫瘍マーカー、超音波などのがん検診だ。

「がん検診はすごく大事です。毎年行なわれる住民検診は必ず受けるようにしましょう。」

がんの原因は細胞内にある遺伝子の異常

命を守るがん検診。だが、限界はある。

「一般の病院で行なわれているのはすべて目で見る検査です。そこで発見できるのは6ミリ程度の大きさまでのがん。それより小さいがんは残念ながら見つけることはできません。」

組織を採取して細胞の状態を見る病理検査にしても「偽陰性、偽陽性といって間違った診断をしてしまうことがある。」という。

  では、がん細胞はどうやって生まれるのか。そのもととなるのは正常な細胞だ。細胞の中心にある核には遺伝子の集合体である染色体が含まれている。染色体は、煙草、アルコール、放射線、環境汚染、発がん物質、遺伝的素因などが影響すると傷ついてしまう。普通はそれでも修復するが、なかには異常を起こしたまま「前がん病変」といわれる状態となって細胞分裂をつづけてしまうことがある。この細胞が塊となったものががんだ。変異を繰り返す細胞はやがて腫瘍となって基底膜に浸潤し、栄養補給のために血管を新生する。そして血流に乗って体内へと分散する。こうなると転移を止めることは難しい。

  三大治療のうち、外科手術ができるのは転移する前の腫瘍。それ以降は放射線や抗がん剤治療を行なうことになる。ところが、人によっては放射線や抗がん剤が効かないというケースもある。理由は遺伝子の異常だ。

「我々のクリニックでも三大医療は大事と考えていますし、提携の施設と組んで放射線治療を行なっています。ただ、たとえばP53という遺伝子、この遺伝子に変異があると放射線や抗がん剤はほとんど効きません。」

P53だけではない。がんにはそれを引き起こす遺伝子や、逆に抑制する遺伝子が存在する。そうした遺伝子に変異やメチル化(遺伝子の不活動化)があると、人はがんになる。また、遺伝子によっては通常の治療が効かないこともある。そこでポイントとなるのが、平畑氏が自身のクリニックで行なっている遺伝子診断や遺伝子治療だ。

現代医学の空白を埋める遺伝子診断と遺伝子治療

遺伝子診断は、がんに関連する127個の遺伝子をすべて検査するといったものだ。

「1個はまだいいけれど、2個から3個異常があったら前がん病変。4個はグレーゾーン。5個以上は活動性のがんがあると判断します。」

 注目すべきは、MRI/CT/PETでは見つけることのできない微細な初期がんを見つけることができるということだ。

「現状の医学は、がんができてからⅠ期までの10年から30年という期間を見過ごしている。遺伝子診断はその空白を埋めるものです。」

ここでもしがんと診断されたら、次は遺伝子治療が待っている。平畑氏のクリニックで行なっているのは「外部から免疫力を高めるNK細胞治療、樹状細胞治療」、日本で唯一とされる「DNAワクチンによるサイトカイン遺伝子治療」、そしてP53やFUS1、TRAIL、IL-24などの遺伝子を投与する「がん細胞殺傷療法」の3つだ。予防だけなら「がん細胞殺傷療法」のみで十分。がんができているときは遺伝子治療で腫瘍を縮小させた上で手術や放射線、抗がん剤治療を組み合わせるといい。

「遺伝子治療を行なって遺伝子を正常な状態に戻せば放射線や抗がん剤も効くようになり、改善することが期待できる。」

気になる副作用は発熱や悪寒だ。これはステロイドで軽減できるが、免疫力が弱い人の場合は使えないのである程度は起こると考えたほうがいい。現在は全国各地の大学でも研究されているDNAワクチンによる治療だが、その多くはウィルスを使って少量を局所投与するものだという。

「我々の治療の特徴は細胞浸透性のリポソームを使っている点。これにより全身投与で大量の遺伝子を運ぶことができます。」

 これまでの症例は1,000以上。もちろん、がんが完治した人も少なくない。ただし、「遺伝子治療はマジックではないです。」。

「さすがにⅣ期となると完治される方は4.3パーセント。がんが心配な方はできるだけ早く遺伝子診断を受けていただきたいと思います。」

 平畑氏の「夢」は「自分たちのミニがんセンターをつくること」だ。
「遺伝子治療に三大療法も加えて、自分たちのところで患者さんを一貫してケアできるようになりたいですね。」

講師紹介

平畑 徹幸(ひらはた てつゆき)
平畑 徹幸(ひらはた てつゆき)
医療法人社団創友会 UDXヒラハタクリニック 理事長
1974年 東邦大学医学部卒業。米国留学(米国ノースカロライナ州イーストカロライナ大学医学部血液腫瘍科 リサーチフェロー)を経て、渋谷にヒラハタクリニックを開業。2008年には最先端がん遺伝子診断および治療の専門医療を目指して、 秋葉原にUDXヒラハタクリニック、研究所を設立。