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イベントレポート

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2017年9月17日(日) 13:30~15:00

安田 久子(やすだ ひさこ) / Lukull 主宰

日本の行事を食卓から
~テーブルコーディネートから学ぶ四季~

洗練されたインテリアのレストランや、和の雰囲気を大切にした粋な小料理屋などへ行くと、シンプルな料理でもとてもおいしく感じることはないだろうか。料理をおいしいと感じる感覚は、実は視覚が8割を占めるという。
今回お招きしたのは、東京の食空間プロジェクト株式会社に所属する、認定講師・コーディネーターである安田久子氏。ニューヨーク、シンガポールといった海外から、日本全国の20~60代と、さまざまな世代の生徒へテーブルコーディネートなどの食空間演出を通信講座で指導している。また、自宅がある浜松でも認定サロンを運営。ショールームやショップのディスプレイを手がけることもあるという。
「日本の行事を食卓から」をテーマに、テーブルコーディネートのコツと、お月見をテーマにしたコーディネートをご披露いただいた。

料理をさらにおいしく見せるための食空間演出法

「テーブルコーディネート」とは、おいしいものを、よりおいしく食べるための食空間演出のこと。「センスがなければできないのでは」「高級なお皿がなければ導入は難しいのでは」と思うかもしれないが、コツさえ覚えれば、誰でも簡単に日常に取り入れることが可能だという。
自宅でも、その日の料理に合わせて食器を変え、花を飾り、空間を演出することで、料理をさらに「おいしく」見せてくれる効果が期待できる。

「テーブルコーディネートの仕事をしているとはいえ、毎日自宅できっちりと食卓を整えているわけではありません。ただ、時々、プチコーディネートをするんです。そうすると、娘が『今日の料理、なんだかおいしいね。』と言って、普段口にしないものも食べてくれることも。私はあまり料理が得意ではないのですが、テーブルコーディネートによって料理がさらにおいしく感じてもらえることを、日々実感しています。」

テーブルコーディネートのポイントは、「5W1H」にあるという。「5W1H」が決まると、どんなものを食べるか、どんなおもてなしをしたらよいかが見えてくるという。今回は、d-labo静岡を「自宅のリビング」と想定し、友人夫妻を自宅に招く際のテーブルコーディネートを提案してくれた。今回の設定内容は、次のとおり。
●誰が…私たち夫婦が
●誰と…友人夫妻と
●何のために…先日友人夫妻に招待されてご馳走になったので
●いつ…9月は月がきれいに見える時季なので、せっかくだから十五夜に
●どこで…我が家のリビングで
●何を…旬の野菜を使った和食を
「5W1H」を考えた後、テーマを設定する。今回のテーマは「お月見」。
「おもてなしは、自分本意にしないということが大切です。招待した方への気持ちを込めて、テーブルコーディネートをしましょう。」

日本人だからこそできる和モダンスタイルのコーディネート

安田氏は、和モダンスタイルを好んでテーマに選ぶという。和食器もあれば、洋食器もある。洋のクロスに和のトレイを重ねるなど、和と洋をかけ合わせたスタイルだそうだ。
「家の中に西洋スタイルが広まる中、日本人だからこそ作り出せるスタイルだと思います。」

【和のテーブルコーディネートをするためのポイント】
●季節感を出す
季節を感じる色や花を使い、演出する。
●和食器を使う
日本には、陶磁器、漆器および石器など作家作品が数多くあり、静岡県内であれば、志都呂焼(島田市)や、森山焼(森町)、賤機焼(静岡市)が知られる。大皿、中皿、小皿、大鉢、小鉢、汁椀およびお猪口など、種類も豊富。全国各地で陶器市も開催されているので、機会があったら足を運び、日本食器の風合いを確かめてみるとよい。
●和のカラーを使う
日本の伝統色を使った、温かみのある色づかいを取り入れる。
●「間」を大切にする
歌舞伎でも大切にされている、日本独特の美学。日本庭園をイメージするとわかりやすい。
●引き算
いろいろなアイテムを並べてしまいがちだが、引き算も大切にする。すこし少ないかなと感じるくらいがちょうど良い。
●小物を使う
キャンドル(和キャンドルもお勧め。)、ナプキン(手や口を拭いたり、着ているものを汚さないためにも必要。40~45cm四方のものが使いやすい。色柄が豊富で、使い捨て可能な紙ナプキンを活用してもよい。)を使用してみる。結婚式で見かけるような、名前入りカードを用意するとゲストに喜ばれる。

次に、テーブル演出のためのアイテムについて、説明を受ける。

【テーブルを演出するアイテム】
●テーブルクロス
テーブルクロスは、気軽にテーブルのイメージを変えることができる便利なアイテムだ。テーブル全体を覆うフルクロスのほか、一部分を覆うクロスなど、さまざまなサイズがある。
●テーブルランナー
テーブルの中央を横断するように敷く敷物。ランナーの上は、共有スペースという提示にもなる。シーンに応じて、端に敷いたり、重ねたりする方法も。
●ランチョンマット
ランチョンマットは、個人のスペースを意味する。テーブルクロスに、同素材のランチョンマットを重ねると野暮ったい印象になってしまうので、木のお盆やトレイなど、違素材のものを使うとよい。複数重ねて、ランナー代わりに使用することもできる。

ポイントを押さえたうえで、テーブルコーディネートを実践してみる

テーブルコーディネートのポイントを学んだ後は、実際に会場にセッティングされたテーブルで、コーディネートを披露いただいた。

【テーブルコーディネートを実践してみる】
●1)センターピースの飾り付け
テーブルクロス、センターランナーを敷いたら、テーブルで一番目に付くセンターピースからコーディネートしていく。セミナーではお月見をテーマに、イミテーションのお団子や、ススキ、ワレモコウを飾った。高さがあるススキを使用したので、テーブル中央ではなく、端に寄せた。30cm以上の高さになるときは、端に寄せる方がよいとのこと。
●2)一人ひとりのスペースを作る
今回は、安田氏自身が天竜杉に色を塗り、絵付けした木製トレイを使用。厚みがあり、高級がある佇まいに、参加者からも感嘆の声が漏れる。木材は、ホームセンターなどで安く手に入るので、ぜひ実践してみたいアイディアだ。薄手の木は反りが起こりやすいので、ある程度厚みがある方がよいとのこと。
●3)食器を並べる
今回は、土の温かみを感じる沖縄の作家作品を使用。すべて同じものを用意するのはお金がかかるので、テイストが似ていれば、形が違っても大丈夫とのこと。今回は、ワイングラスで日本酒をいただくという想定。こういった和と洋の組み合わせのテクニックは、ぜひ真似したい。
●4)仕上げ
竹をイメージしたキャンドル、ナプキンに和紙を巻いたもの、箸置き、花を飾る。箸置きは、折り紙と和紙で手作りしたもの。テイストが合うものがなければ、手作りするのもよい。

間を適度に入れつつ、物を多く置きすぎないのがポイントだ。お皿も、一枚で置くのではなく、平らなお皿の上に器を置くなど、重ねることで高さ出しをするとよい。
そして、テーブルコーディネートをするうえで気をつけたいのは「格を揃える」ということ。高級感のある食器に、チープなカトラリーはテーブルでも浮いてしまう。その反面、格を揃えた紙コップ、紙ナプキン、プラスチックの器を使用すれば、気軽なパーティーでも十分なおもてなしになる。

ここで、参加者から質問が出る。
「テーブルクロスや、テーブルランナーが汚れてしまうのが心配。料理が載る前のお皿に花を飾るなど、どこまでやったらよいでしょうか?」今回は、来訪してもらってゲストに喜んでもらうおもてなしが一番の目的。風景も記憶に残してもらいたいから、料理が出てくる前のテーブルコーディネートにも気を配るという。「料理を出す際には、適度にお花を片付け、別のお皿で料理を提供しても。」と安田氏は話す。

セミナー終盤には、3種類のナプキンの折り方を伝授いただいた。折り畳んだナプキンに和紙を巻いたり、ウサギやカタツムリに見立てる形などのアイディアは、見た目も華やか。カードやお花をそえると、さらにゲストに喜ばれそうだ。セミナーの最後には、自分で折ったナプキンを、コーディネートされたテーブルに添え、写真を撮る時間も。
ラグビーに打ち込む息子さんの姿を見て、自分も打ち込めるものを見つけたいと思い、始めたのがテーブルコーディネートだという安田氏。テーブルコーディネートを始めるまでは、日本の行事に特段の関心はなかった。しかし、今では行事はもちろん、日本の伝統工芸品などにも興味を持つようになったという。
「昔の人が作り上げてきた伝統を大切にしたいと思っています。2020年には東京オリンピックも開催され、今、日本の伝統を広めるいい機会になっています。海外の方にはもちろん、子どもたちにも広がればと思っています。」

今回、会場に提示されたようなテーブルコーディネートをすべて真似するのは、なかなか難しい。しかし、テーブルに季節の草花を飾る、庭のハーブを料理にそえてみる、メニューに合わせて食器使いを変えてみる、箸置きを置いてみるなど、すぐにでも取り入れられるプチコーディネートもあるので、まずは一つからでも試してみてはいかがだろうか。家族から「今日は、いつもと雰囲気が違って、料理がおいしいね」と言ってもらえれば、大成功だ。
文・河田 良子

講師紹介

安田 久子(やすだ ひさこ)
安田 久子(やすだ ひさこ)
Lukull 主宰
静岡県浜松市出身。25年間トールペイントを手掛けていたが、自身の息子と仲間の皆がラグビーに打ち込んでいる姿に心を打たれ、自分も新しいことへの挑戦ということでテーブルコーディネートを習い始める。都内の食空間プロジェクト(株)主催のスクールにて認定講師・コーディネーターを取得。世界お茶まつり2016テーブルコーディネートコンテスト銅賞受賞。「Lukull」の主宰、食空間プロジェクト株式会社に所属、スクール通信講師として活動。