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2015 Sep.24
コレクターズRoom Vol.9「折りたたみ自転車」

折りたたみ自転車の仕掛けには、
開発者のアイディアと哲学が詰まっている

大谷和利さん

愛するモノに囲まれた暮らしは、豊かさと刺激に溢れているはず。「コレクターズルーム」では毎回、さまざまなコレクターを取材。コレクションする楽しさや自慢の品、収集に必要なお金のやりくり術などをご紹介します。

折りたたみ自転車を集める大谷和利さんは、アップル製品をはじめ、デジカメ、文具、プロダクトデザインなどに加え、自転車に関する単行本・記事を多数手がけている、テクノロジーライター。デジタル製品と折りたたみ自転車、一見かけ離れた存在のように思えますが、その根底は“カラクリ好き”という点で共通しているのだといいます。ひとくくりに折りたたみ自転車とはいっても、その仕組み、自転車の形状は実にさまざま。個性的な折りたたみ自転車の数々を、見せていただきましょう。

選ぶ基準は、独創性。“モノの進化”を感じさせる1台にひかれる

折りたたみ自転車にまたがる大谷さん

折りたたみ自転車に限らず、「技術の進化に興味がある」という、テクノロジーライターの大谷さん。まずは、折りたたみ自転車の面白さを伺うと…。

「自転車は、発明されてから長い時間を経ています。そのため、定番化した形があり、そこからの変化はほとんどない。でも折りたたみ自転車は、まだまだ進化が続いている状態。折りたたむことで、置き場所をとらず、持ち運びやすいように…と、みんなが同じ目的でつくっているのに、折りたたむ仕組みはもちろん、自転車自体の形状が違ったりと、全然違うアプローチがなされているんです」

そんな大谷さんが、折りたたみ自転車の魅力に目覚めたのは、1984年のこと。イギリスのブランド「モールトン」の折りたたみ自転車(厳密には分割式)が、最初の1台となったそうです。

「軽自動車『スズキ アルト』が50万円しなかった時代に、35万円の折りたたみ自転車を買うのは、勇気がいりました(笑)。でも手にしてみたら、そのメカニズムが興味深くて。その後90年代に入ると、ほかのユニークな折りたたみ自転車が目に入り出しました。コレクターという意識はないのですが、今では20台ほど所有しています」

それらの折りたたみ自転車は、すべて、大谷さん独自の目線で選ばれたものばかり。「世間の価値基準はあまり関係ない。折りたたみ自転車に限らず、独創的なアイディアを持ったものにひかれるんです」とか。それでは、アイディアに優れた品々とともに、大谷さんの折りたたみ自転車へのこだわりを教えていただきましょう。

■大谷’s折りたたみ自転車コレクション■

まるで手品のよう!ワンタッチで折りたためる自転車

たたまれた状態の自転車OEM製品と思われる自転車

これらは、折りたたみ自転車の折りたたみ方法が、いかに幅広いかを教えてくれる2台。で折りたたまれているのは、「ストライダ 5.0」。記事内2枚目の画像で、大谷さんが乗っている自転車を折りたたむと、こんなにもスリムに。ぴったりと折りたためるよう、マグネットが仕掛けられているそうです。電車などに持ち込む際は、専用の袋に入れる必要がありますが、普段はこの状態で転がして運べる点も便利。特徴的な三角形フレームは乗りにくそうに見えますが、「意外に快適で、さまざまなシーンで使える万能選手」とか。

は、「プジョー」のロゴが入っているものの、OEM製品と思われる1台。乗車時は、ベーシックな自転車の形状をしていますが、スタンドを立てたまま、シートポストとハンドルを後方に倒すだけで、このように手軽に折りたためる仕組みになっています。

「プジョー」にはフランス国旗のシール、「ストライダ 5.0」の荷台には樹脂製の荷物止めがついていますが、それらは大谷さんが加えたもの。「壊れて修理する場合も、オリジナルのパーツにこだわりません。手入れに関しても、磨いている時間があるなら、乗っていたいんです」と、あくまで、その乗り心地や使い勝手を楽しむことに価値を見出しているのだそうです。

自転車がトランクに変身。そのまま運べる、画期的アイディア品

イギリス発の「スクート」トランク型になったスクート

大谷さん所有の折りたたみ自転車のなかで、最も個性的といえるのが、イギリス発の「スクート」。2002年からたったの2年間のみ販売された、レアものです。両輪やハンドルを箱形の本体内に折りたたみ、上から付属のカバーをかけると、のようなトランク型に。そのため、袋に入れずに電車・バスに持ち込むことが可能です。「以前、ニューヨークに持って行ったことがあるんですが、飛行機搭乗時に荷物として預けたら、空港の係員が大騒ぎになっていました。X線で中身を確認したら、『トランクじゃなくって自転車だぞ!』と(笑)」と大谷さん。

こちらは発見時、日本に未入荷だったため、現地から直接取り寄せたそうです。レアものはインターネットで見つけることが多いという大谷さんに、検索のコツを伺うと…。

「目的の検索用語で直接的に探すと、発想や発見が狭まってしまう。だから僕の場合は、漠然としたキーワードで検索したり、そこからリンクを辿っていくことが多いです。キーワードから画像検索したり、『Folding bicycle』と英語で検索したり、それに国名を加えてみたり…。すると、予想外なものに出会えることがあるんです」

最初に軽量・小型化を図った量産品「ビッカートン」の後期モデル

「ビッカートン クラシック」かなりコンパクトにたたまれた「ビッカートン クラシック」

「折りたたみ自転車は70年代以前からありましたが、軽量化と持ち運びやすさを追求した量産品としては、1972年に初代が売り出された『ビッカートン』の折りたたみ自転車が最初」と大谷さん。その後期型が、こちらの「ビッカートン クラシック」です。左の状態から折りたたむまでには少々複雑な工程が必要ですが、「知恵の輪のような楽しみがある」とのこと。たたんだ後は、前カゴのように取り付けていた青い袋に収納し、コンパクトに持ち運ぶことができます。軽量化のため、ほとんどのパーツがアルミでつくられているのも特徴。

「ビッカートン クラシック」は後期型ですが、基本的には初期型を重視することが、大谷さんの折りたたみ自転車集めのこだわりのひとつです。「初期型には開発者のスピリットが詰まっている」とか。

「どんな製品もバージョンを重ねるごとに、改良したり、市場との折り合いを考えていきます。するとモノとしての習熟度は上がるけれど、最初の思想性や情熱はどこかで失われ、だんだん平凡になる…なんてことも。僕が手に入れるのは、折りたたみ自転車というモノではありますが、大げさにいうと、エンジニアやデザイナーのアイディアと対話しているような感覚なんです」

日本の折りたたみ自転車市場を飛躍的に拡大させた、歴史的1台

「ブリヂストン ワンタッチピクニカ」たたまれた状態の「ブリヂストン ワンタッチピクニカ」

日本で折りたたみ自転車が広く普及したのは、1980年代。きっかけとなったのは、「ブリヂストン ワンタッチピクニカ」の登場です。「僕は中古で手に入れましたが、発売時の価格は47,800円。高度成長期のなか、世界に誇れるものを…と、メーカーが総力を上げてつくったものなんです」とのことで、当時は50ccバイク「ホンダ モンキー」よりも高価だったといいます。

ちなみに、大谷さん所有の「ワンタッチ ピクニカ」は初期型。その後もモデルチェンジが重ねられ、「トランジットコンパクト」という名の製品に引き継がれましたが、現在は直系の製品シリーズはなくなってしまったそうです。

マニア垂涎「ヴィアンキ」の超希少品まで。さて、次なる夢の1台は?

日本発の「ミツトヨ のびのび号」「ビアンキ イルビチ」

“幻”といえるほどの珍しさを誇るのが、この2台です。は、1975年から3年間のみ生産された日本発の「ミツトヨ のびのび号」。名前のとおり、フレームとサドル、ハンドルのそれぞれを伸び縮みさせることで、体格に合わせたサイズ調整が自在。折りたたみというより伸縮型のようにも思えますが、ペダルは車輪と平行に、ハンドルは内側に折りたたんで、横幅を小さく収めることができます。

は、「ビアンキ イルビチ」。分解型になっており、記事内2枚目の画像で大谷さんが組み立てているのが、こちらです。「ビアンキ」は、現存する中では世界最古のイタリア自転車メーカー。「この高度な設計技術は、さすが」と大谷さん。

「ネジ1本ゆるめるだけで分解できるけれど、問題なく乗れています。自動車などに用いられるモノコック構造と呼ばれるつくりを採用しているのですが、これはとても高度な技術。そのうえ、このような開断面のモノコック構造を実現するのは、さらに難易度が高い。『ビアンキ』の名にかけてつくったものの、結局ビジネスとしては成り立たなかった…そんなモデルなのではと、推測しています」

入手の際は、メールで交渉の末、海外に住む個人の所有者から送ってもらったそう。珍しい自転車が多数掲載されている『サイクルペディア 自転車事典』(産調出版)にも載っていなかった貴重な品だといいます。

さて、国内外問わずに、オリジナリティ溢れる折りたたみ自転車を集めてきた大谷さん。現在、“いつかは欲しい夢の一台“はあるのでしょうか?

「『サイクルペディア』の洋書版で見つけた、リヒャルト・ザッパーというデザイナーが手がけた「ズームバイク」という1台。パンタグラフ(菱形で伸縮する機構)のように、折りたたむと棒状になる折りたたみ自転車があるんです。試作のみで市販はされなかったのですが、非常に気になる自転車だな…と思っています。インターネットが普及しても、まだまだ知らない情報ってたくさんあるんですよね。もうこれ以上、秀逸な折りたたみ自転車はないだろうと思っても、何年かすると、知らなかったものを見つけてしまう(笑)。そうなったらもう、手に入れて自分の目で、仕組みを確かめたくなるんです」

知的好奇心が尽きない限り、大谷さんの独創的な折りたたみ自転車集めは、続いていくのかもしれません。

■コレクター's データ■
折りたたみ自転車コレクション
  • コレクション:折りたたみ自転車
  • コレクション歴:約25年
  • コレクション数:約20点
  • 費やした費用:80万円ほど
  • 最高額:35万円(1984年に購入した「モールトン」の価格)

撮影・蟹由香

Information

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