特集
2016 Jan.19
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.119
会社員がアイアンマン世界選手権出場。挑戦への原動力とは?

スイム、バイク、ランの3競技をひとりでこなすトライアスロン。近年は日本国内でも愛好者が増え、各地で大会が行なわれています。
いくつかある距離カテゴリーの中で、もっともポピュラーで大会数も多いオリンピック・ディスタンス(ショート・ディスタンス)ではスイム1.5km、バイク40km、ラン10kmを走ります。しかしトライアスロンの最高峰、「アイアンマン・ディスタンス」となると、なんとスイム3.8km、バイク180km、ラン42.195kmもの距離を走破する強靭な体力が必要となります。
「アイアンマン」というレースは、世界各地で年間約40回も開催され、トライアスリートの聖地、ハワイ・コナで開催される「アイアンマン世界選手権」への出場権をかけて熱戦が繰り広げられます。日本でも去年8月に北海道・洞爺湖で「アイアンマン・ジャパン北海道2015」が開催され、1,600名近くの参加者がエントリーしました。
この大会の45~49歳のエイジ(年代)カテゴリーで優勝し、「アイアンマン世界選手権2015」への出場を果たしたのが、小松亮さんです。

総合サイクリングブランドであるスペシャライズド・ジャパンの財務部長を務める小松さんですが、実はトライアスリート歴はわずか7年。42歳でトライアスロンを始めるまでは、「週に1回ジムに行く程度」だったというから驚きです。
そんな小松さんが、仕事との両立を図りながら、いかにしてアイアンマン世界選手権への切符を手にするまでに至ったのか、お話を伺いました。
自転車メーカー入社をきっかけに自転車にハマる
小松さんがトライアスロンをはじめたのは、2007年1月にスペシャライズド・ジャパンに入社したことがきっかけでした。それまでは電機メーカーや建設会社に勤めていた小松さん。スペシャライズドの日本法人設立に際して、財務部長として入社し、取扱っている商材がたまたま自転車だったことから、バイクと出会ったのです。
「当時、自宅から会社まで乗り継ぎの接続があまり良くないので、自転車で通勤をしていたんです。といっても、当初はただの『ママチャリ』。けれどもせっかくだからということで、しばらくしてクロスバイクを購入したんです。
ちょっと奮発して、カーボン製のわりといいモデルを買いました。そうしたら、ものすごく気持ちよくて。それまで45分くらいかかっていた通勤時間が、20分ほど短縮されるくらいスピードも出るし、しかも身体がどこも痛くならない。バイクの楽しさを実感して、週末になるとロングライドをするようになりました」
自転車の楽しさに目覚め、サイクルロードレースに興味が向いたものの、「選手層が厚く、なんとなくハードルが高いような気がした」という小松さん。そこで大学時代に水泳部だった経験を活かせる、トライアスロンを始めることにしました。
元・水泳部の経験がトライアスロンに生きた
2008年7月に小松さんが初めて参加したトライアスロンの大会が、静岡で開かれた「レイクハマナ・トライアスロン」。スプリント・ディスタンス(オリンピック・ディスタンスの約1/2の距離)に出場し、いきなり137名中23位という成績を残します。
「水泳をやっていたことがかなりのアドバンテージになるんだと実感しましたね。スイムで上位集団に入れば、バイク、ランで順位を落としても、そこそこの成績は残せるんだ、と。勇んでその1か月後には手賀沼の大会にも出場しました」

オリンピック・ディスタンスを走ったその大会でも、344名中35位と上位に入り、そのまた1か月後には「サンライズイワタ」というミドル・ディスタンス(オリンピック・ディスタンスの約2倍)のレースにエントリー。こちらは159名中45位と、着実に結果を出していきます。
「ランの20kmなんて、練習でも走ったことがなかったんですよ。だからまさにぶっつけ本番。けれどもやればやるほど結果も残せたので、トライアスロンがどんどん楽しくなっていったんです」
2009年9月の「佐渡国際トライアスロン」では、初のロング・ディスタンス(オリンピック・ディスタンスの約3倍の距離)に挑戦。「もちろんフルマラソンも走ったことがなかったから、後半はもうぼろぼろ。なんとか完走できた感じ」と言いながらも、757名中74位という成績を残し、その後の大会でも距離カテゴリーを問わず、コンスタントに上位1割以内に入る実力を発揮していきます。
「順位が上がれば目標も上がっていくし、完走を目指すだけだったのが、その先を意識するようになっていきました」。折しも小松さんがトライアスロンを始めて以降、国内外のトライアスリートも加速度的に増加し、それを受けて小松さんが勤めるスペシャライズドでもトライアスロン用のバイクを開発。その新マシンを自らも導入した小松さんは、確かな手応えを感じます。
「やっとバイクで『戦える』ようになったと感じましたね。ランの苦手意識は依然としてありましたが、それをカバーできるくらいの結果を出すことができました」。そんな小松さんは、2011年7月の「アイアンマン・コリア」において882名中25位で完走し、「アイアンマン世界選手権」への切符を手にします。
世界選手権で感じた大きな壁
そうして初めて臨んだ「アイアンマン世界選手権2011」でしたが、その結果は1,918名中873位。思うような結果を残せなかった原因を、小松さんは次のように語ります。
「自分が経験してきた世界とは、まったく違っていました。スイム、バイク、ランのなかで特に苦手とするものはなく、すべての種目において最高のパフォーマンスが発揮できるひとたちばかりが参加していたんです。
そもそもトライアスロンは、参加するひとの多くが本業の仕事を持っていて、ある種『大人の部活』的な部分もあると思うんです。僕自身、普段はフルタイムで仕事をしているわけですから、ハワイに行くこと自体が『おまけ』のようなもの。旅行感覚でごはんを食べたり、観光したりして楽しんでいました。
けれども参加者の中には、より高みを目指す人や、自分より年上でも毎年のように出場する人もいたんです。とはいえ、レースが終わった直後には、残念だったという思いはあっても、悔いはありませんでした」
2012年には「いったん休憩」と国内の2レースにのみ参戦し、アイアンマンからは距離を置いた小松さんでしたが、次第に後悔の念が頭をもたげることに。
「2011年の大会に出場した日本人の仲間50名くらいと仲良くなって、情報交換するようになったんです。僕が休んでいる間にも、アイアンマンで良い結果を残したり、がんばっている仲間たちを見ていると、やはり自分も……と触発されたんです」
再びアイアンマンを目指すことにした小松さんでしたが、2013年シーズンは足底筋膜炎に悩まされ、まったく結果が残せず。2014年はランの練習量をセーブすることで治癒を図りましたが、練習量の少なさが仇となり、やはり思うような結果が出せませんでした。
再び世界の舞台へ……しかし思わぬアクシデントが
そして迎えた2015年のシーズン。過去の結果を踏まえ、足底筋膜炎を治療し、しっかりケアしながら、トレーニングを積んでいきました。
環境に恵まれている自分の会社をトレーニングの拠点とし、朝は始発電車で出社。8:40の始業までに、ライドやランを行ないます。仕事を終えた後は、近くのジムでスイムやストレッチなど。平日にしっかりトレーニングし、土日はいずれか、午前中にロングライド。週15時間ほどトレーニング時間を確保します。「時間が限られているので、ムダなことは極力したくないんです。週のトレーニング時間は決して多いほうではありませんが、質を高めることでカバーしました」
意外なことに、食事に関してはまったく気にしていなかったのだそう。「限られた人生、そこまではやりたくないなというか。やはり美味しいものを味わいたいですし、食べたいものを食べたい。あくまでトライアスロンは『遊び』の領域という意識なんです。限りある人生、ストイックになりすぎず、できる範囲のことをできるだけやる、という感じですね」
そして前述どおり「アイアンマン・ジャパン北海道2015」で年代別優勝し、「アイアンマン世界選手権2015」へ参戦した小松さん。準備万端、と言いたいところでしたが、世界選手権ではまったく歯が立たなかったと言います。「北海道の国内大会から50日ほどしか空いていなかったこともあり、回復とトレーニングにかけるバランスが難しかった。結果的には、その疲労が取れていなかったということでしょう」
スイムでは先頭集団とのバトルを避け、後方に陣取ったものの、想定よりもタイムをロスすることに。そしてバイクでは原因不明の体調不良に襲われ、60km地点で補給がまったく取れなくなってしまったのです。いったん90km地点で休憩を入れながらも、前に進みつづけた小松さんでしたが、ランの30kmではついに水さえ受けつけなくなってしまいました。
「そこからは『完走すること』に目標を切り換えるしかありませんでした」。休みながらも歩きつづけ、なんとかゴール。12時間58分31秒、2,308名中1,681位という結果でした。「2011年のときは達成感もありましたし、歩けないほどヘトヘトになりましたけど、今回は『出し切った』という実感が持てませんでした。まったく筋肉は疲れていなかったんです」
妻にトライアスロンのパワーを見せたい
普段は人口1万人ほどのハワイ島の中心部、カイルア・コナ地区。年に1度行なわれるアイアンマン世界選手権では、世界各国から約2,000名の選手たちが集い、応援する友人や家族たちが約3,000名、そしてボランティアスタッフとして約5,000名の人びとが集まります。なぜそれほどまで、多くの人びとがコナを目指すのか……。
「そこには『パワー』があるんです。選手たちはそれぞれ完走、記録を目指し、目標に向かってハードワークを積む。そしてそれを間近に見守り、支える家族がいて、ゴールシーンにはゴールした人の数だけストーリーがあり、ドラマがある。その強いパワーを糧にして、『また一年がんばろう』とボランティアスタッフさえも思えるんです」
予期せぬ体調不良のため、小松さんにとって不完全燃焼に終わった2015年の大会。小松さんには「今年が最後」との思いもあったといいます。それでも、もう一度アイアンマン世界選手権に出ようと思ったのは、「昨年結婚した妻にトライアスロンのパワーを見せたい」という思いがあったからだそうです。

小松さんが照準をあわせるのは来年、2017年の大会。それに向けて、すでにトレーニングを再開しています。
「2015年の10月に大会が終わって、3週間はまったく何もしなかったんです。そうするとやはりウェイトも増えてきて、そろそろ動きはじめようと思い、今朝は始発に間に合うように目覚ましをセットしたんですけど、つい二度寝してしまって。
やっぱり練習はキツイんですよ。けれども同時に、トレーニングが確実に自分にいい影響をもたらしていることも実感するんです。走っているときやライド中、ふとアイデアが生まれたり、仕事の長期的なビジョンを思い描くことができたりする。身体を動かさないと、脳のパフォーマンスが低下するんですよ。この3週間で痛感しました。トレーニングをせずに、良いことなんてなにもないですね」
ビジネスマンとして、そして夫として、日々の生活を大切にしながらも、トライアスリートとしてトレーニングを積むことは、小松さんの日常に好循環を生みだしているようです。
Information
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