特集
2016 Dec. 6
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.157
「頭の中に次々と浮かぶ風景を形にしたい」
人気粘土作家・おちゃっぴさんが語る創作の喜び

カラフルな樹脂粘土でつくるユニークな作品で、たくさんの人を笑顔にしている粘土作家のおちゃっぴさん。イベントなどへの作品提供だけでなく、ワークショップやテレビ番組では、子どもはもちろん、大人にも、作ることの楽しさを伝えています。
おもちゃとアニメが大好きだったという幼い頃のお話から、思わぬきっかけで粘土作家になるまで、そしてこれからの夢について、d-labo湘南スタッフ原田がおちゃっぴさんに直撃インタビュー!ワークショップの様子とともにお届けします。
「図工でほめられたことがない」という
おちゃっぴさんの創作の源とは?

ー小さい頃から絵を描いたり粘土でキャラクターを作ったりするのが好きだったんですか?
「まだ“オタク”なんて言葉はなかった時代だけど、今思えば、そんな感じでしたね。おもちゃやアニメが大好きで、特にアメリカの番組、ハンナ・バーべラの『チキチキマシン猛レース』はビデオに録って夢中で見ていました。鍵っ子で、ひとりで家にいる時間が長かったから、画面の細かいところまで覚えるくらい見て、それを絵に描いたりしていましたね」
ー美術が得意だったんですね。
「でも絵は下手でしたよ。ほめられたこともないし、図工でいい点を取ったり、賞をもらったりしたことも一度もなかった。大学だって経済学部の商学科ですし(笑)。ミュージカルをやって段ボールで舞台作ったり、ブルーシートに落書きしてその前で踊ったりという表現活動はやっていましたけど。学校で美術やデザインを専門に習ったことはないんですよね」
ーそうなんですか! ではその他の人と違う視点はいったいどこから…。
「子どもの頃から妄想するのが好きだったんです。頭の中に、次々と風景が出てくる。いろんな姿形の人や動物が現れたり、崖が大きな顔になっている所を自分がブーンって飛んでいるといったシーンが思い浮かんだり。そういうのって、他の人も同じだと思っていたんですけど、違うって知って驚きました(笑)」

ー粘土を始めたのはいつからですか?
「最近ですよ。社会人になってから、10年くらい前です。大学卒業後、サンリオを経て、おもちゃコレクターの北原照久さんのお店で働いていたんですね。そのとき、NHKで『ニャッキ!』というイモ虫が主人公のクレイアニメーションが流行っていて、『じゃあ“ニャッキ!展”やろう』って、勝手にキャラクターを粘土で作って展示したんです。それがずいぶん話題になって、NHKに伝わって怒られちゃって(笑)。さらに突然、お店に作者の伊藤有壱さんがいらっしゃったので、慌てて謝ろうとしたら、伊藤さんが『いいですね』って、ほめてくださった。『作ってくれて嬉しかった』って。それでこちらも嬉しくなって、粘土の話で盛り上がったりして。そこから僕も、いろいろと作品を作るようになったんです。そのうち、伊藤さんに、『ご自分でやってみたらどうですか』と勧められたのが、粘土作家になるきっかけになりました」
ーおちゃっぴさんの作品はすごく個性的です!
「使っているのは樹脂粘土で、色がとてもきれいなんです。最初は市販のものがあったんですが、輸入が禁止になってしまって、国内で作れる会社を自分で探しました。納得のいく樹脂粘土ができるまで2年くらいかかりましたね。今もまだ開発途中です。
日本の粘土は、色の表現範囲が狭いように感じます。色彩感覚というのは学校で教えてもらうものではなく、経験で得ていくもの。それを、自分の手で作り出して、さらに組み合わせて立体にする、というのが、新鮮なんじゃないかなと思っています」
ー作品作りとともに、ワークショップも積極的に開催していらっしゃいますね。
「粘土は、何もないところから作りますよね。特に、小さい子だと『そうきたか!』『ええー、なんでそことそこくっつけたの?』と、こちらがびっくりするような発想を見せてくれたりする。ワークショップは、僕にとっても、発見がたくさんあってすごく面白いんです。
人工知能が進化して、知識なんていらなくなってしまう、そんなこれからの時代に、ゼロから新しいものを発想する力って、とても大切だと思います。『こういうことをやったら褒められますよ』というお手本のようなものは意味がなくなってきますから。だから僕は、小さな子どもももちろんですが、中高生にもぜひ粘土作りをやってもらいたい。おちゃっぴの粘土が、将来、新しいアプリを開発する発想の元になったりしたら、嬉しいなと思うんです」
おちゃっぴ粘土でフォトフレームをデコレーション!

10月19日、そんなおちゃっぴさんの粘土教室が、d-labo湘南で初開催されました。今回は、フォトフレームをデコレーションするという大人向けのワークショップ。赤い髪のマーメイドと青い波、白い貝殻をあしらった、カラフルでかわいいデザインに仕上げます。テーブルには赤、青、黄色、緑色、白の5色の樹脂粘土が、それぞれ袋に密封された状態で用意されています。
「まず、白い粘土の袋を開けてください。粘土をこねていきます。樹脂粘土は、引っ張ってちぎって、それをくっつけて、また引っ張ってちぎって、ということを繰り返しながらこねていきます。だんだん柔らかくなってきますので、そうしたら今度は引っ張って伸ばしてたたんで、を繰り返します。手が汚れている人は白い粘土がグレーになってきまーす(笑)」
最初は乾燥気味でブツ切れしていた粘土が、こねるうちにしっとり柔らかくなってきて、参加者からは「すごい!伸びるー!」と驚きの声が上がります。こねているだけなのに、皆さんすでに楽しそう。
まずは青い粘土と白い粘土を混ぜて、波の部分を作っていきます。こね終わった白い粘土に、青い粘土をサクランボ大くらいくっつけて、再び一緒にこねることで、水色にします。こうして、2色、3色と混ぜていくことで、自由な色が作れるのです。

「表面をツルツルに仕上げるには、こねた粘土を両手に挟んでゴロゴロところがします。こうすると、粘土とは思えないような、樹脂のような質感になっていきます」
ここで、表面がきれいにならず苦戦する参加者から、「先生、ブツブツみたいなのが出てくるんですけど」と質問が。それに対しておちゃっぴ先生、「どれどれブツブツが…病気ですかね」(笑)。休むことなく手を動かしながらも、笑いの絶えない楽しいワークショップです。
水色の粘土ができたら、細長く伸ばして、端にハサミで切れ目を入れながらクルリと波模様にアレンジしていきます。これがなかなかイメージどおりにいかないのか、「もう一回やろう」と、丸めるところからやり直す人も。

「好きなもの」に自信をもって取り組めるきっかけに
マーメイドの髪の赤色、顔と体と腕の色、下半身の明るいグリーンと、粘土を混ぜて色を作っては、それをパーツにし、重ねていくことを繰り返して、フォトフレーム作りは続きます。「頭が大きすぎたー」「髪の毛が不自然じゃない?」「マーメイドが胴長になっちゃった」など、思いどおりの造形にするのは難しいよう。
「あまり時間をかけると粘土が乾いて固くなってしまいますから、だんだんスピード上げていきますよー」
髪の毛や尾ひれ、手の指、貝殻の模様などは、ハサミや爪楊枝を使って入れていきます。細かい作業に、参加者たちもより慎重な手つきに。

2時間のワークショップで、全員完成…までには至りませんでしたが、「もっとやりたかった!」「これは一度やるとハマるかも」と、皆さんご満悦。最後は作品を手に、全員で記念撮影して、クリエイティブな楽しい時間を締めくくりました。
「僕自身は、粘土そのものには全然こだわっていないんです」とおちゃっぴさん。「頭の中の風景を形にしたいと思っていて、その手段が、たまたま粘土だっただけ。最終的な夢は、遊園地を作ること!」と、壮大な目標を語ってくださいました。だれもが「自分はこれが好きなんだ!」と、自信をもって進んでいけるように。おちゃっぴさんの活動には、そんなメッセージもこめられているのです。
Information
- おちゃっぴ
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クレイキャラクターデザイナー
キャラクターデザインから映像作品、グッズ製作まで幅広く手掛ける粘土作家。
自身が考案した「おちゃっぴねんど」を使って、全国各地で「創作体験ワークショップ」を開催。10年間で5万人以上の子どもから大人までが参加している。
日本テレビ「行列のできる法律相談所」、BS日テレ「おはようアンパンマン」など出演。
- d-labo湘南
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Fujisawaサスティナブル・スマートタウン内、湘南T-SITEにあるd-labo。
“湘南+夢”をコンセプトに湘南の暮らしや趣味、衣、食、住、芸術などの情報を発信するまったく新しいコミュニケーションスペースです。様々なジャンルのイベントやセミナーを定期的に開催し、心躍る体験を通して<夢をかたちに>する、<夢に日付を>いれるお手伝いをしております。