特集
2017 Feb. 28
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.170
珍生物ハンター・平坂寛も唸る。
東京湾で深海魚が釣れて、しかも美味!?

太陽の光が届かない漆黒の海底で、独自の進化を遂げてきた深海魚。その生態の多くはいまだ謎に包まれたままです。釣り針をおろすと、かかるのは見たこともない異形の魚たち。そんな非日常が東京湾で体験できること、ご存知でしたか?今回は、“東京湾での深海魚釣り”をピックアップ。“珍生物ハンター”としてテレビや雑誌でも活躍する、生物ライターの平坂寛さんに教えてもらいました。
東京湾外は“深海の楽園”だ!
深海魚とは、一般的に水深200メートルより深いところに住む魚のこと。そもそも東京湾に深海なんてあるのでしょうか。
「東京湾は湾外に出る辺りから、急激に海底が深くなっている。水深は500メートルを超えており、東京海底谷と呼ばれています。ここには大都会・東京から海に流された有機物が流れ込むため、魚のエサとなるプランクトンが豊富に集まり、深海の楽園を形成しているんです」
そんな豊かな漁場に釣り針を垂らすと、出会える深海魚とは…?平坂さんに、過去に釣りあげた深海魚の数々を紹介してもらいました。
深海魚コレクション@東京湾
ヘラツノザメ


東京海底谷には多種多様な深海鮫が生息しているとして、世界中の研究者も注目をしています。なかでも代表的な深海鮫がヘラツノザメ。鮫というと流線型の体型を思い浮かべますが、この鮫はヒレが小さく、ブヨブヨでだらしない体をしているところが可愛いんですよ(笑)。全長は1メートル以上、一番の特徴は緑色の大きな目。この目は太陽の光を浴びるとものすごく美しく光って、何度見ても感動しますね。
ホラアナゴ

口が大きくて、目は白眼がなく真っ黒。体の色も青黒い不気味な色をしていて、まるでウツボのゾンビのようです。見た目もグロテスクなんですが、この魚を釣りあげると仕掛けに白い粘液が大量にくっついて、それがまた気持ち悪いんです(笑)。まるで、映画『エイリアン』の世界。大きな魚の死がいなど何でも食べてしまう深海の掃除屋で、比較的良く釣れます。
トウジン


尾びれが針のように尖っていて、もう完全に泳ぐ気はないなって感じの魚ですね(笑)。全長は50センチくらいで、タラの仲間です。釣りあげると、深海と陸との圧力の差で大きな目が飛び出してきます。鋭く伸びた鼻が異国人のようだということから、この和名が付けられたそうです。
バラムツ


スズキ目に属する大型の深海魚で、大きなものだと2メートルを超えます。体を覆う鱗がバラのトゲのようであることから名付けられました。この魚の目は黄金に輝くんです。アゴまで裂けた大きな口に鋭い歯が並んでいて、まるで怪獣のようですよね。
深海魚釣りは、日帰りで行ける冒険!

これまでに世界中の海を巡り、数々の怪魚や巨大魚を捕まえてきた平坂さん。そんな平坂さんをも虜にしてしまう、“深海魚釣りの魅力”について伺いました。
①生きた深海魚に出会える
僕は小さい頃から生き物が大好きで、川でも山でも捕れるものは何でも捕まえて遊び回るような少年でした。そんな僕にとっても深海魚は図鑑でしか見られない、専門家だけしか出会えない幻の魚だと思っていました。それを自分の手で捕まえられて生きた姿を見られるのが、なによりの魅力ですね。
②冒険に出るような高揚感
東京湾から船で東京海底谷のある場所に着くまで、1時間半ほどかかります。その間、クルージング気分を味わうこともできます。イルカやトビウオの群れが飛び跳ねる光景など、予期せぬ幸運に出会えることもありますよ。漁場に向かう船の上では、いつも未知の冒険に臨むような不思議な高揚感を得ますね。
③毎回見たことない魚が釣れる
仕掛けを引きあげている間、どんな魚がかかっているかは本当に分かりません。深海魚釣りは毎回が未知との遭遇!家に帰って図鑑で調べなければ分からないような魚と出会える体験は、普通の釣りではなかなか味わえません。
④「一投入魂」、普通の釣りにはない楽しさ
普通の釣りと大きく違う点は、仕掛けを投入する際も引きあげる際も、深海まで届くのに20分近くかかってしまうこと。だから、常に一投ごとが勝負!「大物を狙っているんだ」という実感がわくんです。
⑤市場には出回らない幻の味を食べられる
釣りの醍醐味といえば、捕った魚を持って帰って食べられることでしょう。深海魚だって魚ですから、食べることができます。肝が美味で、土佐湾や駿河湾など深場の港町でしか手に入らないトウジン。さっぱり味で刺身、鍋、フライなんでもいけるヘラツノザメ。絶品ながら市場には出回ることのない、幻の深海魚・バラムツ。調理方法ひとつで、見た目の悪い深海魚が高級魚顔負けの味になります。
釣ったからには食べてみよう!深海魚の意外な味


左上からバラムツ、ホラアナゴ。
珍生物ハンターとして珍生物を捕まえるだけでなく、ときには自らの舌でその味を確かめてきた平坂さん。もちろん、深海魚の試食にも挑戦してきました。一体どんな味がするものなのでしょうか?
「深海魚って文化包丁で中骨まで切れてしまう軟らかい魚がほとんどで、食べやすいんです。身は、水っぽいか脂っぽいかのどちらかです。というのも、水圧の高い深海で生きるには、体内に浮き袋を持つのが難しい。そこで深海魚は、体に水より比重の軽い油を大量に溜めこむ、あるいは逆に水分を大量に含んで周囲の水圧に合わせることでバランスを保っているんです。どちらも、食べてみると意外に美味しいというのが僕の感想です」
脂っぽい身をもった深海魚の代表が、バラムツです。この魚は筋肉に大量の脂を溜めこんでいて、「全身が大トロみたいな魚」なのだそうです。
「食べるとめちゃくちゃ美味しいんですが、人体で消化できない種類の脂を身に多く含んでおり、刺身で5切れも食べるとお尻から油が流れ出し、下痢などの症状を引き起こすこともあるので、食品衛生法で流通が禁じられている魚です。しかし味はとても良いことから、釣って自己責任で食べる人も多いですね」
私たちが知らず知らずのうちに口にしている深海魚もいます。見た目は恐いホラアナゴもその1種。蒲焼にすると、見た目も味も穴子にそっくり。実際に私たちが普段食べている穴子=マアナゴの代用として使われている魚だそうで、「スーパーで売っている穴子の蒲焼をよく見てみると、原材料名にイラコアナゴなどホラアナゴの仲間の名前が書いてあることが結構ありますよ。それだけ美味しい証拠です」と平坂さん。
深海魚が美味しかったなんて意外でした。これなら家族や友達に釣りの「お土産」を持って帰る楽しみも増えますね。
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初めての深海魚釣りで知っておきたいこと


左上から、釣り竿と電動リール。
ここまで聞けば、すぐにでも深海魚釣りに出たくてうずうずしている人もいるのではないでしょうか。そんな方々に向け、深海魚釣りを始めるのに必要なグッズや釣り船の予約方法をうかがいました。
「深海まで届く最低でも500メートル級の釣り糸、それと電動リール。この2つさえ用意すれば、あとは竿や仕掛けも一般的な船釣りのグッズでこと足りてしまいます」
次は船の手配ですが、残念ながら「深海魚釣り」を看板に掲げている釣り船は東京湾にはほとんどありません。そのため、深海魚釣りのためにチャーターさせてくれる船を探さなければなりません。
「初めての方なら、横浜市の磯子にあるノットイナッフ号がオススメです。深海魚釣りに力を入れているため、釣り方も船長さんに指導してもらえるでしょう」
摩訶不思議な魚と出会える、日帰り深海探索の旅。釣り経験者も初めての人も、これを機にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。きっと一生忘れられない経験になることでしょう。
Information
- 平坂寛
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生物ライターとして数々のメディアで活躍し、「デイリーポータルZ」、「動く図鑑MOVE」公式サイトなどで連載を執筆中。珍生物、巨大魚などを捕まえ、それらを食べ、“生物を五感で楽しむこと”をモットーとしている。不思議生物の情報を集めたサイト「Monsters Pro Shop」の運営も行なっている。
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