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2014 Jan.27
DREAM MAKER
あの人に訊く、この話 Vol.2

趣味を仕事に、仕事が趣味に
向谷実の鉄道と音楽よもやま話

『DREAM MAKER』は、「change」「think」「play」それぞれのテーマのもとに、いま気になる人にインタビュー。仕事で、プライベートで、その人が創り出してきたものや、出来上がるまでのストーリー、そしてちょっとディープな話題にも触れていきます。

「play」をテーマにお話を聞いたのは、ミュージシャン、マルチメディア・クリエーターであり、鉄道好きで知られる向谷実さん。鉄道シミュレーションゲームの制作や、鉄道の発車メロディの作曲など、近年では趣味の域を超えて、鉄道関係のビジネスで活躍されています。本業の音楽でも、動画サイトにおける公開レコーディングや、ライブ演奏の生配信など、次々と新しい試みでファン層を拡大しています。また、SNS上でも積極的に情報発信し、ツイートやフィードは多くの人たちから注目されています。どうやら、ファンの人たちも、音楽ファンと鉄道ファンの両方が存在するようです。
向谷実さんの鉄道好きの原点とは? あの鉄道音楽を作った背景は? 最近の音楽活動のねらいは? など、音楽と鉄道への思い入れや、制作におけるエピソードを教えてもらいました。

趣味を仕事に、仕事が趣味に 向谷実の鉄道と音楽よもやま話

向谷実さんが鉄道好きになったワケ

向谷さんが小学校2年生の頃、1964年10月に「夢の超特急」という名で東海道新幹線の東京—新大阪間が開通しました。当時の話題といえば、テレビ、東京オリンピック、東京タワー、そして新幹線。

「今の男の子たちがガンダムに憧れるように、僕らの時代は新幹線に憧れたわけです」

家の近所には二子玉川園(現・二子玉川)駅があり、玉電(玉川線)と砧線、大井町線が地上で交差するターミナル駅でした。そのため、向谷さんにとって鉄道は身近なものではありましたが、新幹線はまさに夢のような鉄道でした。

「同じ頃に第三京浜道路ができて、『制限速度が時速80km!すごい!』と言っていた時代です。自動車がまだ普及していないので、車の運転で時速80km出せることすら驚きだったのに、新幹線は時速200km出しているわけですから本当に夢のような乗り物でしたね」

また、山手線が「ぶどう色2号」というチョコレート色の車両からカナリア色(1961年)やウグイス色(1969年)に変わったことも、鉄道好きの心に残る出来事。同じ頃に東急ではステンレス車両を導入(1958年)、銀色に輝く車体もまた、新しい時代を予感させるものでした。

「世の中がまだモノトーンだった時代に鉄道はどんどんカラフルになっていった。そういう視覚的な刺激も鉄道から受けたわけです」

こうして、鉄道が最先端を行く時代に育った人の多くは鉄道に憧れ、「鉄道ファン」あるいは「鉄道マニア」と呼ばれるようになっていきました。

1960年代は、新幹線の登場と同時に蒸気機関車が徐々に姿を消していく、まさに新旧交代の時期。中学3年生になった向谷少年は、北は北海道から南は九州まで、SLを追いかけて旅をしました。このときの体験は後年、仕事で役に立つことになります。当時のSLの動画はたいへん貴重で、向谷さんが撮影した8ミリ映像をテレビ局に貸し出すこともあるそうです。

最近の鉄道ブームを支えているのは自分たちの世代だと向谷さんは言います。鉄道番組の収録現場でプロデューサーに、よくよく訊いてみると同世代だったということも。

ところで最近、鉄道好きの人たちは「撮り鉄」「乗り鉄」などと分類されていますが、向谷さんは何鉄なのでしょう?

「僕らが子どもの頃は、そんな分類はなかったから……だから『全鉄』ですよ(笑)」

音楽家として活動するようになってからも、向谷さんの鉄道好きは仲間内やファンの間では有名でした。子どもの頃からの趣味だった鉄道が、仕事に結びついたのはいつ頃だったのでしょうか。

向井さんインタビューの様子
向谷さんが子どもの頃好きだったという玉電の「ペコちゃん」こと東急デハ200形電車
向谷さんが子どもの頃好きだったという玉電の「ペコちゃん」こと東急デハ200形電車

鉄道が趣味から仕事に変わったとき

1995年8月19日、向谷さんは自分の会社である音楽館から、鉄道シミュレーションゲーム『Train Simulator』を発売しました。これは、1993年にCD-ROMソフト『Touch the Music by Casiopea』を制作した際、当時はCD-ROMがごく一部の人だけものだったにもかかわらず、一定の評価を得たことから、こんどは自分の好きな鉄道をテーマにCD-ROMソフトを作ろうと考えたそうです。

「子ども2人を使って中央線を取材して、僕がカメラで撮り、プログラマーとグラフィックデザイナーの知人を集めて、まるで家内工業のように作ったんです。そうしたら発売して1か月もたたないうちに1万本近く売れちゃって。世の中こんなに鉄道好きな人がいるんだ、と驚きましたよ」

しかもこのソフトはMacintosh用。ゲームをするためにわざわざパソコンを購入した人も少なくなかったそうです。そして次はWindows用へ。なんとマイクロソフトの古川亨会長(当時)から直々にWindows版の制作を依頼されたそう。じつは古川氏もまた筋金入りの鉄道マニアなのです。4か月遅れで発売されたWindows版『Train Simulator』は4万本が売れました。

その後、音楽館では路線別の『Train Simulator』を次々と発売、6年間で21作品のPC用ゲームを発売しました。さらに2001年からはPlayStation 2専用ゲームを発売、以降も『Train Simulator』はさまざまな路線をカバーし、鉄道シミュレーションゲーム・ブームの火付け役となりました。また、プロパティライセンスの概念もない時代に、鉄道会社のライセンスビジネスの素地を作ったともいえそうです。

今ではゲームソフトだけでなく、鉄道博物館向けのシミュレーターや、鉄道運転士の教育ソフトも制作するようになった音楽館。

「音楽館は1985年に設立した会社なので、創業29年。でも会社をつくったときには、まさかこんな『鉄道館』みたいな会社になるとは考えていなかった(笑)」

日本国内だけでなく、海外路線のシミュレーターも制作している向谷さんですが、今後もし実在の路線でシミュレーターを作るとしたら、何線を採用したいか聞いてみました。

「実在といえば、上野東京ラインです。東海道線と東北線を突き抜けて走るっていうのがいいですね。さらに東京駅と上野駅を通過するのはたまらないでしょう」

シミュレーターのために撮影をするときには、原則的に全駅を通過するそうです。山手線の全駅通過など、普段では決してできない走行に、向谷さんだけでなく、運転士の方も興奮するとか。仕事とはいえ、鉄道好き冥利に尽きる体験でしょう。

そして、鉄道好きと音楽家という、向谷さんの趣味と仕事が結びついた活動が、鉄道の発車メロディや車内メロディの制作です。それぞれの曲にはどのような意図があるのでしょうか。

向井さんインタビューの様子
Train Simulatorこれまでに制作した数々のソフト

音楽館の会議室には、これまでに制作した『Train Simulator』をはじめ、数々のソフトが並んでいた。発車メロディのCDも発売されている。

あの発車メロディが作られた背景

2004年に九州新幹線の博多−鹿児島中央間が開通することが決まり、開通に合わせて向谷さんにPlayStation 2のソフトを作ってほしいという依頼がありました。JR九州の方と音楽の話題で盛り上がって話しているうちに、いつしか九州新幹線の発車メロディの話題になり、これから発車メロディを決めるところだとわかりました。

「既成の発車メロディのサンプルを聴かせてもらったら、失礼ながら無難な曲ばかりで、ここは僕の出番かなと思って。東京に帰って、翌日のうちに規定の長さで曲を作って、説明文と一緒にメールで送ったんです。それがこの曲」

このとき以来変わらない、向谷さんが発車メロディを作るときの制作ポリシーがあるそうです。

「発車メロディの場合は、曲を完全に終わらせないこと。これから鉄道に乗る人は、旅行や、学校や仕事など、どこかに行く途中じゃないですか。その列車に乗る前の音楽なので、基本は終わらせない」

列車に乗る前のワクワク感を表現したという曲が採用になり、九州新幹線各駅の発車メロディを任されることに。このときから、向谷さんの発車メロディ制作人生が始まります。

次に依頼を受けたのは、京阪電気鉄道18駅の発車メロディでした。上りと下り、列車の種別ごとに違う曲ということで、向谷さんが思いついたのは「つなげると一曲になる」ことでした。

「始発から終点まで乗っていれば、一曲全部聴けるわけです。これは受けましたね。ライブでも演奏しました」

最近では、東急東横線渋谷駅の発車メロディを制作しました。

「図面を見ると渋谷−代官山間は相当な上り勾配になっている。だから、乗る人に上り勾配を意識してもらえるように、登るぞ登るぞ、というイメージの曲にしたのです」

ところで、鉄道好きが気になる音楽に京浜急行のドレミファインバーターがあります。どうやら廃止になるという噂がありますが?

「正直なところ僕は大好きなんで、なんとか残ってほしいと思っていますけれど。メンテナンスとか、維持管理の問題で、残念ながらどんどん減っていくようですね。事情が事情なので、無理なことはいえないですしね」

新しいことに次々と取り組んでいく向谷さん。もちろん音楽活動でも同様です。そのひとつが、インターネットを利用した「可視化」です。可視化によって、何が変わったのでしょうか。

向井さんインタビューの様子

情報を可視化してみんなで発信

音楽のレコーディングというと、スタジオという密室で行なわれているイメージでしたが、これを覆したのが向谷さんによる音楽制作の可視化です。レコーディングの様子を動画配信サービスUstreamで生中継するという試みが行なわれたのは、2010年のことでした。

「実はその前に、曲を作るところを可視化していました。動きのない、音を加工している様子を何千人もの人が見に来る。レコーディングの生中継も、大勢の方が熱狂的に、熱烈に見てくださるということに、やっている本人が一番驚きました」

生中継をするからには、演奏力や、作曲力、技術力などが問われます。音楽で世界を相手にしてきた向谷さんだからこそ、多くの人がその姿に熱狂するのでしょう。2013年にはニコニコ生放送で3回の生レコーディングを行ない、なんと20万人近い人が視聴したということです。

インターネットが普及し、すべての人がSNSなどで発信力をもつようになった現代社会。個の感性、個の主観が大事な時代になってきたと向谷さんは話します。音楽活動においても、情報を可視化することで、みんなが共有して拡散してもらうことが目的なのだそうです。

さて、趣味と仕事が複雑に入り組んでいるように見える向谷さんですが、趣味と仕事をどのように両立させているのでしょうか?

「両立はできませんね。周囲には57歳児って呼ばれていますから(笑)。ここまでが趣味、ここまでが仕事、という境はもともとないタイプなんです。ただ、会社経営者とクリエイターの両立ということでは、頭の切り替えをしています。クリエイターとしては自由な発想を大切にしていますが、経営者としては慎重になる場面もあります」

子どもの頃から好きだった鉄道がいつしか仕事になり、事業として確立した向谷さん。それでも、シミュレーターの撮影のために開業前の路線に乗ることを「役得」と喜び、休みの日には鉄道旅行に出かけるなど、ひとりの鉄道好きに戻る時間もなくしてはいません。「好きなことを仕事にする」という多くの人にとっての夢を叶え、しかも次々と新しい夢の実現に向けて活動を続ける。向谷さんこそ「夢を作る人(DREAM MAKER)」なのではないでしょうか。

向井さんインタビューの様子

Information

向谷 実 氏
向谷 実 氏

1956年10月20日生まれ、東京都世田谷区出身。
ネム音楽院(現・ヤマハ音楽院)のエレクトーン科卒業。日本を代表するフュージョンバンド「カシオペア」に20歳よりキーボーディストとして加入。40枚以上のCDアルバムを発表した。
2010年よりインターネットでの動画配信を積極的に行っている。一方、熱狂的な鉄道ファンであり、世界初の実写版・鉄道シュミレーション・ゲーム「Train Simulator」を株式会社音楽館の代表取締役として開発。PS2、PSP、PS3 などで、延べ30タイトルを発売している。現在は博物館や鉄道会社の業務用ソフトの開発をメインに手がけている。各地の発車メロディや車内BGM の制作も担当。自らの名の付いたテレビ番組「向谷鉄道倶楽部」(CSフジテレビNEXT他)の放送や情報番組のコメンテーターとして出演するなど、活躍の場は絶えない。

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知られざる鉄道音楽の世界(2014年3月28日開催)
知られざる鉄道音楽の世界

鉄道は音に溢れています。駅に近づくと、券売機の電子音や自動改札機の開閉音とチャイムの音が聞こえてくる。改札を抜けると構内アナウンスや電車の走行音に発車メロディも。数多くの音がサラウンドで迫ってきています。鉄道の音は身近でありますが、それぞれの音にどんな意味があるかまではあまり知られていません。自身も発車メロディを作曲した向谷氏をお招きし、鉄道の音の深い世界をご案内いただきました。

イベントレポート「知られざる鉄道音楽の世界