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2015 Jun.25
コレクターズRoom Vol.3「C級スニーカー」

「C級スニーカーって何?」、王道スニーカーにはないコレクションの愉しみ

「C級スニーカー」コレクションと永井さん

愛するモノに囲まれた暮らしは、豊かさと刺激に溢れているはず。「コレクターズルーム」では毎回、さまざまなコレクターを取材。コレクションする楽しさや自慢の逸品、収集に必要なお金のやりくり術などをご紹介します。

今回登場していただくコレクターはグラフィックデザイナーの永井ミキジさん。永井さんが集めているのはスニーカーですが、普通のスニーカーではない「C級スニーカー」と呼ばれる、普段あまり目にすることも、聞いたこともない珍しいブランドのスニーカーばかり。どうして王道ブランドではなくC級なんですか?という疑問に始まり、王道じゃないからこそのおもしろさや苦労、そして得られたものについてうかがいました。

そもそも「C級」スニーカーってなんですか?

「C級スニーカー」について説明する永井さん

C級スニーカーコレクションとともに、仕事場で取材陣を迎えてくれた永井さん。さっそく気になる質問をぶつけてみました。C級スニーカーの定義ってなんですか?そしてA級やB級は?

「僕独自の定義なのですが、アディダスやナイキといった国内でも名の通ったブランドのヴィンテージをA級、それらのブランドの現行品や、アパレルブランドのスニーカーをB級としています。C級とは日本に流通されていないけれども海外ではメジャーなブランドやもしくは日本に入ってきたけど倒産や撤退ブランドのスニーカーをC級スニーカーと呼んでいます。ABCってランクがあるわけではなく、そうカテゴリーで分けているんです」

なるほど。ヴィンテージを「A級」とするのは、ジーンズやギターなどの楽器と通じるものがありそうですね。では、どうして永井さんはC級スニーカーを集めるようになったのでしょうか?

「10代の頃からナイキやアディダスといったブランドのスニーカーが好きでいろいろ買ってました。そこからヴィンテージスニーカーにも興味を持ち始めたのですが、10代なので使えるお金も限られているじゃないですか?だから買えるものといったら、加水分解(※1)で壊れる寸前のヴィンテージスニーカーなんですよ(笑)。やっとの思いで買って履いてもソールがパカっと割れたりして、とてもショックだったんです…。でも、だからといって、その辺の街のショップに置いてあるスニーカーだと他の人とファッション的に差別化できない。いろいろな試行錯誤をしていくうちに、自然とマイナーブランドのスニーカーを買うようになっていったんです。だから、最初はコレクションするつもりではなくて、自分が履くために買い始めたのがC級スニーカーにハマったきっかけです」

(※1 加水分解:スニーカーのソールの素材として一般的なウレタンゴムが、保存状況などによって経年劣化してしまう現象)

はじめはヴィンテージ(A級)や、通常のスニーカー(B級)を購入されていたという永井さんは、周りの人とファッション的な差別化をしたいという理由から、自然とC級スニーカーを買うようになったと言います。ではコレクションをするようになった、そのきっかけは何なのでしょうか?

「当時出会ったスニーカーのなかに、古いヒュンメルのスニーカーがあって本体はヒュンメルなのにソールがポニーという、それぞれ違うブランドがくっついていたんです。それをとても気に入って履いていたら、あるスニーカーショップの店主が『ヒュンメルは日本ではマイナーだけど、海外では有名なんだよ』と教えてくれたんです。僕が履くスニーカーを見ても、誰もどんなスニーカーか分からなかったのに、その店主だけは僕がどんなスニーカーを履いていても分かるんですよ。その人は元々800〜900足に及ぶ自身のスニーカーコレクションを売ったお金でスニーカーショップをはじめたという強者で、ものすごくスニーカーに詳しくて。それからその店に何度も足を運んで店主にC級スニーカーブランドのヒストリーについて教わるようになって、じわじわ面白くなってきた。それがコレクションのはじまりですね」

■永井’s C級スニーカーコレクション 希少価値ベスト3■

「ブライトニング」のスニーカー

「ブライトニング」のスニーカー

「これは『ブライトニング』という西ドイツのコンフォートシューズメーカーがつくったスニーカーです。デザインに惹かれて購入したんですが、ベロに「West Germany」という表記を見つけて調べいくうちに歴史が少しずつ分かってきました」

「オサガ」のベクトル

「オサガ」のベクトル

「1970年代にアメリカで興ったジョギングブーム期のブランド『オサガ』のスニーカーです。なんでもこの矢印のロゴは、オレゴン市民による公募で考えたそうです」

「スポットビルト」のランニングシューズ

「スポットビルト」のランニングシューズ

「『スポットビルト』は今となっては『サッカニー』を吸収したブランドで当時スポットビルトとサッカニーの二枚看板でやりつつ現在のサッカニーに落ち着いたそうです」

お気に入りの一足:「カンガルー」のスニーカー

「カンガルー」のスニーカー

「これはアメリカの『カンガルー』というブランドのスニーカーです。横にロッカーのキーとコインを入れるために考案された小さなポケットがついていることから、このブランド名になったそうです」

スニーカーショップではなく、
おばあちゃんのお店でこそ見つかるC級スニーカー

ずらりと並ぶコレクション

「スニーカーコレクションというのは、コレクション界においては非常にメジャーなジャンルであって、それだけに厳しい世界なんです。366足目からがコレクションのはじまりといわれるほどで、まずは365足、1年毎日違うスニーカーを履けるだけの数を持っていないとコレクターと言ってはいけないとまで言われてます。そんな世界にいながらも、僕の場合は集めているのがC級スニーカーだから、お金をかけるだけでは集めることができないんです」

スニーカーコレクションの中でも異端の分野である「C級スニーカー」。それ故に通常の方法ではコレクションをすることができないそうですが、ではどのようにコレクション活動をしているのでしょうか?

「とにかく行動しないと集められません。靴屋で買うにしても、おばあちゃんがやっているような昔ながらの靴屋さんに入ってみたり、骨董屋のような場所に売っていたりもして、むしろスニーカーと関係のない場所で見つけることが多い世界ですね。ひょんなことから情報を得られることもあるので、たくさんの人と会ったり、スニーカー以外の世界に興味を持ったりして、スニーカーと関係ないことをあえてしていないとダメです。僕はデザイナーという職業柄いろいろなところに行くので、そういう意味では仕事もコレクションに役立っています」

悩みは「メジャーなスニーカーを履けないこと」!?

C級スニーカーをコレクションするにあたって、色々な国の、文化や歴史を知ることになったという永井さん。

「そうした余計な知識があればあるほど、職業であるグラフィックデザイナーとしての個性が出てきます。誰も知らないようなデザインをたくさん知っていれば、それだけアイデアソースが広がるので、C級スニーカーコレクションは仕事にも役立っていますね。無理矢理仕事に活かしているという部分もありますが(笑)」

逆にC級スニーカーコレクションをはじめたことで失ったものはあるかと尋ねると、意外と切実な問題も。

「メジャーなものを履けなくなりましたね(笑)僕はもともとナイキやアディダスに好きなモデルがあって、今でも買ったり、持っているものもあるんですけど、こういうC級スニーカーをテーマとした取材を受けていると、『もうこれから先メジャーなのを履いてはいけないんじゃないか!?』とハッとすることがあるんですよ(笑)」

欲しいスニーカーに出逢っても、履けないサイズしかないことも多く、ここ数年はサイズを見ずに、自身が履けないサイズのスニーカーも購入しているという永井さん。

「C級スニーカーとの出会いは『今ここで買わないと、次にはもう出会えない』という時が大半です。おばあちゃんがやってる昔ながらの靴屋はクレジットカード使えないですしね(笑)。今はコンビニにATMがあるから便利で、どうしても現金を用意しないといけないときはコンビニまでダッシュします(笑)」

行動とネットワーク、そしてここぞという一期一会の瞬間を逃さないことで「C級スニーカー」という自分独自のコレクションを築き上げている永井さんに、今後コレクションをどう活用したいのか伺ってみました。

「スニーカーというのはもともと保存するものではなく履くためのもので、経年劣化による加水分解やカビとかの問題があって、きれいな状態のまま残すって難しいんです。だから、今あるコレクションを使って、C級スニーカー図鑑を作りたいです。後の世代のファッション好きやスニーカー好きにこんな世界があったのかと知ってもらえるような資料本を作りたいですね」

■コレクター's データ■
ミキジさんのC級スニーカーコレクションの一部
ミキジさんのC級スニーカーコレクションの一部。
  • コレクション:C級スニーカー
  • コレクション歴:約20年
  • コレクション数:400点

撮影:照沼健太