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2015 Jun.26
Dream & Passion ~輝ける女性たちの肖像~ Vol.15

今年はどう楽しむ?
〈浴衣デザイナー 芝崎るみ〉が考える、浴衣の魅力

芝崎るみさん 「Rumi Rock」アトリエの前にて

自分らしく活き活きと働く、素敵な女性たちを紹介する「Dream & Passion」。今回のゲストは、浴衣ブランド「Rumi Rock」のデザイナー、芝崎るみさん。個性溢れる自身のブランドのみならず、百貨店やアパレルブランドからの依頼を受け、年間でデザインする浴衣は、100以上!そんな芝崎さんが、着物・浴衣のデザイナーになった経緯とは?個性溢れる「Rumi Rock」ブランドで、大切にしていることとは…?インタビューのラストでは、浴衣の楽しみ方のヒントも、教えていただきました。

「自分が楽しみ、人をよろこばせる仕事」を目指し、服飾の世界へ

フクロウ柄の浴衣と芝崎さん

25年ほど着物・浴衣のデザイナーをなさっている芝崎さんですが、最初に、この仕事に就いた経緯を教えてください。4年生大学を卒業して、一旦は企業の事務職をしていたとのことですが、デザイナーを目指すことになったきっかけとは…?

芝崎もともと絵や手芸は得意で好きでしたが、大学は文学部だったので、好きなことを仕事にするという選択肢が、自分のなかにありませんでした。卒業後に事務職として入社したのは、とにかく忙しい職場。面白かったけれど、長く勤めるのは体力的に無理だな…と感じていて。どうしようかと思っているとき、ミック・ジャガーの単独公演を東京ドームで観たんです。「自分が楽しい仕事をして、人をよろこばせるって素敵じゃない?」といわれたような気がしました。

それで、得意だった服飾の世界に目が向いたんですね。仕事を辞めるのは、勇気がいったのでは?

芝崎思い切りがいい性格というわけではないんです。きっと、そのときの仕事で未来が見えなかったから、決心できたんだと思います。誰にも相談せずに決めましたね。仕事を辞めてからは、舞台やテレビ衣装の会社でアルバイトをしながら、服飾系の専門学校の夜間部に通いました。

専門学校では、洋服に関する技術・知識を学んでいたと思いますが、和服のデザイナーになったのには、どのような理由があったのでしょうか?

芝崎専門学校を卒業する頃には、20代半ばになっていました。年齢的なこともあり、新人のデザイナーとして雇ってくれる会社がなかったんです。そんななか先生の紹介で着物の図案をつくっている会社を訪問したら、「明日から来て!」といわれて。もともと時代劇が好きで、自分自身もよく着物を着て遊んでいました。でも、専門的に絵を学んでいたわけではないし、まさか自分が柄を描くことになるとは、思っていなかったですね(笑)。

それでも飛び込んでいけるのは、すごいことだと思います。着物の図案は、どのように描いていくのでしょうか?

芝崎その会社では、専用の細い筆と刷毛、絵の具を渡されました。着物だけでなく古着も好きでたくさん買い込んでいたので、そういったものからヒントを得て、毎日2柄ほど描いていましたね。最初に通い出したときは、まだ専門学校に通っていたし、「まずは1週間やってみよう」という感じだったんです。最終的には、4年ほどいましたが(笑)。ものすごく、密な時間でしたね。ちなみに私自身は90年代はじめからパソコンを取り入れていますが、業界的には、今も手書きが基本です。

現在は主に、浴衣をデザインしている芝崎さんですが、デザイナーとして、浴衣ならではの魅力を教えてください。

芝崎洋服の場合、多様な形状のものがありますが、浴衣はフォームが決まっていますよね。そこに柄を落とし込むと、奥行きやテイストがずいぶん変わります。素材が生む雰囲気もありますが、図柄だけでできることも、たくさんある。25年ほどデザインをしていますが、注染(浴衣に用いる伝統的な型染め)だけでも、まだまだ多くの世界観が生み出せると感じます。着る人が着こなしを工夫することでグレードアップするのも、面白い点です。

デザインのうえで欠かせないのは、企画力

反物を眺めながら

今度は、現在のお仕事について伺っていきます。図案会社に勤務後、芝崎さんが立ち上げた「RUMIX DESIGN STUDIO」では、オリジナルブランド「Rumi Rock」のデザインのほか、他のメーカーから依頼を受けたり、コラボレーションしてデザインをすることもあるとか。年間で、どのくらいの浴衣を生み出しているんですか?

芝崎多いときには、年間で1,000柄以上つくったことも。最近は、市場が一つひとつの柄を大切に売るようになってきましたが、それでも「Rumi Rock」と合わせて100柄ほどはデザインしています。

デザイナーというとアーティスティックな側面に目が向きがちですが、どのような人に向けてつくるのか、テーマはなににするのかなど、企画力も大切ですよね。そのほかにも、さまざまな仕事があると思いますが、どのように浴衣のデザインを組み立てていくのか、知りたいです。例えば、最近は、どのようなお仕事をなさったのでしょうか?

芝崎三越伊勢丹のオリジナル浴衣は、昨年に続き、今年もデザインしました。昨年はおかげさまで評判がよく、多くの方に着ていただけたと聞いています。特徴は、和装初心者にもやさしい“着姿が決まる仕立て”と“すらっと見える柄の工夫”。企画と図案のほか、型紙にもこだわれたので、衿もとのつくりを工夫したり、工場からのサンプルをチェックしたり、販売員の方々にアピールしてもらうべきポイントを仕様書に盛り込んだり…。作業はたくさんありますが、だいたい1か月足らずの期間で、組み立てますね。

私たちが普段目にすることのない、浴衣デザイナーの仕事が見えてきたような気がします。次は、「Rumi Rock」のことを教えてください!

浴衣を通して、“使い捨てではない人生”を知って欲しい

こだわりの黒地にイエローの浴衣を手に取る芝崎さん

「Rumi Rock」には、花柄などはもちろん、髑髏(どくろ)柄の浴衣、シルバーの帯など、ほかにはないデザインがたくさんあります。芝崎さんが、ブランドとして大切にしていることは、なんでしょうか?

芝崎“迎合しないこと”ですね。“流行を追わない”“面白い”“伝統的な柄の組み立て方”を考えて、飽きないものづくりを目指しています。売れることだけを目的にすると、間違った方向にいってしまうので、個々の売り上げは気にせずにつくっているんです。

オリジナリティ溢れる柄が生まれるのは、そういった背景があってこそなのかもしれませんね。今年販売されているデザインも、斬新なものがあるようですが…。

芝崎この黒地にイエローの浴衣は、70年代にブームになったスーパーカーを描いたもの。車は移動のための手段なので、200キロも出る車や、ガルーウィング(翼のように斜め上に向けて開くドア)は、本来、必要ないんです。それがなければ、もっと安いかもしれないし。それでもラグジュアリーさを求めてしまう、人間の欲望に興味があって。車自体のパワフルさも面白いと思い、デザインにしました。

オオカミがテーマの浴衣アポロ計画がテーマの浴衣

こちらは、紺・白が基調ながらも、個性的な柄ですね。左はオオカミ、右はアポロ計画がテーマとか。オオカミは、芝崎さんが子どもの頃に夢中になった小説『銀のほのおの国』(福音館書店)からインスピレーションを受けたそうですが、アポロ計画は、なぜ…? 浴衣と宇宙いう組み合わせは、とても意外です。

芝崎アポロ12号が持ち帰った月の石が展示された日本万国博覧会(大阪万博)、宇宙開発…そんなことが子どもの頃の記憶にあって、デザインしました。人類は月に行こうとするけれど、それが生活のなかで役立つわけじゃない。「アポロ12号の月での映像は、スタジオ撮影なのでは?」なんて疑惑まである。そういう“定かではないもの”に魅力を見出すのが、「Rumi Rock」らしさだと思っています。

図柄にそういった思いが込められていることを知ると、より楽しく着られそうですね。

芝崎「Rumi Rock」の柄を、自分で歌舞伎の演目にかけて着ている方に会ったこともありますよ。私がなにを思って描いたかだけでなく、持ち手が、柄と会話するようなことが起こればいいなと思っています。

「Rumi Rock」のファンは、どのような方が多いのでしょうか?

芝崎性別・年齢を問わない浴衣なので、幅広い方が着てくださっています。誰かに見せるためではなく、自分自身で浴衣を着る時間を楽しみたいと考えている人が多いですね。着るのに勇気がいる柄もありますが、少しの勇気を出した時間に、なにが起きるのかを楽しんで欲しい。高校生にすすめるなら「今しか着られない柄を」と思いますが、大人であれば、「今年はどこまで面白く着ようかな」というように、着こなしてもらえたら。

デザイン以外で、こだわっている点はありますか?

芝崎最近は、洋服に使うのと同じ150センチ幅の布を切り、ミシンで縫製した浴衣もありますが、「Rumi Rock」では、小幅と呼ばれる国産の和服地サイズの布地を使っています。小幅だと布の左右に耳があるので、仕立て直しが容易なんです。そもそもの浴衣は、庶民の普段着・労働着でした。生地が古くなったら寝間着にして、その次は枕カバーなどにリメイクして、最後はオムツにして…。本来の浴衣って、そうやって長く使えるものなんです。

「Rumi Rock」では流行を追わないという話がありましたが、流行って、昨年のものは古いものとして、捨てさせよう…というシステムでもありますよね。

芝崎流行と無縁であるというのが、浴衣の良さになったらうれしいですね。使い捨てではない人生のなかに、「Rumi Rock」の浴衣があればいいなと思っています。

今年は、会社のロッカーや旅行鞄に浴衣を入れてみては?

芝崎るみさん 「Rumi Rock」アトリエの前にて

ちょうどこれから、浴衣で出かける機会が多い季節になります。浴衣の着こなしでアドバイスがあれば、教えてください。

芝崎私自身は、「Rumi Rock」の浴衣に古着の帯を合わせたり、江戸時代風に…など、リラックス感のあるコーディネートをすることが多いです。木綿の着物のように着こなすことも。最近は、帯結びの本がたくさん出ていますよね。デザイナーではなく着る人が着物のフォルムを決めるという点が、着物のよさ。洋服のトレンドカラーを1色だけ使ってみたり、バッグや帽子など、洋装の小物を取り入れてみたり…。鏡の前で、あれこれ試して、コーディネートしてみてはいかがですか。

ちなみに今日の帯は、「Rumi Rock」のものでしょうか?

芝崎帯板を入れれば半幅帯のようにも使える工夫をした、「Rumi Rock」の兵児帯(へこおび)です。蝶結びさえできればシワにならず、ほどけにくい。お太鼓結びよりも、はるかにラクに着ることができます。2本使いなど、いろいろな応用もできますよ。

髑髏柄の浴衣提灯柄の浴衣

疲れず、手軽に着られるのは、魅力的です。

芝崎普段、仕事で忙しい方々にも、浴衣を着る時間をつくってもらえたらと思っているんです。会社帰りに着て遊びに行くために、ロッカーに浴衣が入っている。そんなことになったら、いいなぁ…と。旅先に、浴衣・帯・薄い履物を持って行って、夜の散歩を楽しむのも、素敵です。

浴衣というと、夏祭りや花火大会を思い浮かべがちですが、お話を伺っていて、ほかにもさまざまなシーンで着てみたくなりました。

芝崎「Rumi Rock」では流行を追わないといいましたが、浴衣全体の流行や年齢によるくくりもなくなってきていて。お洒落する時間の楽しみをなにに見出すのかが、より個人的なものになってきているんです。今年は洋服でいうとインディゴがトレンドなので、リラックスしたいときには紺白の浴衣を選ぶのも洒落ていますし、浴衣を着る時間をアンティークの文様に浸るひとときにする…というのも、日常から頭を切り替えられると思います。木綿のシャキっとした手触りや、職人が工夫を凝らした染め方を感じるのも、心地いいものですよ。

最後に、今後、こんなデザインをしてみたいという夢を教えてください。

芝崎海外旅行に行くときに持って行ったり、日本に旅行する外国人の方が買っていきたくなるようなデザインができれば。ワールドワイドに通用する、日本の世界観を提示したいと考えています。

世界にはさまざまな伝統的ファッションがありますが、なかでも浴衣は、気軽でコーディネートの自由度が高いもの。芝崎さんのお話をもとに、今年は、より自分なりの楽しみ方を見つけられたら素敵です。本日は貴重なお話、ありがとうございました。

Information

RUMIX DESIGN STUDIO
フクロウ、スパーカー、オオカミ、髑髏等のこだわり柄の浴衣

芝崎るみさんが1994年に立ち上げた、デザイン会社。オリジナルブランド「Rumi Rock」のほか、他社ブランドのデザイン、他社製品の製造、個人からのオーダーなども行なう。『エヴァンゲリオン』『デビルマン』をはじめとするアニメ作品、日本各地の染織メーカーとコラボレーションした浴衣・手ぬぐいなども制作。海外からも、注目を集めている。

東京ミッドタウン「ISETAN SALONE」に、「Rumi Rock」コーナーが登場

2015年7月1日から7日まで、六本木の東京ミッドタウン内セレクトストア「ISETAN SALONE」に、「Rumi Rock」の浴衣コーナーが登場。今回紹介した浴衣のほか、大人に似合う、お洒落で個性的な浴衣や帯がそろいます。浴衣の図柄の線の強弱や麻混の涼しげな素材感、帯の光沢やラメなど、間近で見ると、写真だけではわからない魅力に気づくはず。東京ミッドタウン内のd-laboとあわせて、ぜひ、訪れてみてください。

SURUGA Visaクレジットカード

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撮影・蟹由香