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2015 Oct.5
コレクターズRoom Vol.10「機械式時計」

機械式時計に魅了され43年。
お気に入りの時計は、時間の価値を高めてくれる

松山猛さん

愛するモノに囲まれた暮らしは、豊かさと刺激に溢れているはず。「コレクターズルーム」では毎回、さまざまなコレクターを取材。コレクションする楽しさや自慢の品、収集に必要なお金のやりくり術などをご紹介します。

今回登場していただくのは、機械式時計のコレクター、松山猛さんです。男性誌の編集・執筆に加え、時計関連の著書を複数持つ松山さんは、70年代後半に男性誌でアンティーク腕時計を紹介し、当時のブームを牽引した立役者。最新の著書『それでも時は止まらない』(世界文化社)の中で、「僕は機械式時計に恋をした」と語る松山さんに、その魅力を教えていただきました。

機械式時計に目覚めたのは、クオーツ全盛期の70年代

機械式時計との出会いを話す松山さん

機械式時計に目覚めて43年の松山さんが、最初の腕時計を手にしたのは、25歳のとき。アメリカの蚤の市(のみのいち)で出会ったデッドストックの時計が、記念すべき1本目の機械式時計だったといいます。

「それまで、時間に縛られるのはカッコ悪いと思っていたんです。でも、そのとき出会ったグリュエンの時計は、アンティークなデザインに惹かれて購入しました。それが、1972年の出来事。1969年にセイコーがクオーツを発表した後だったので、世間はクオーツ一辺倒。昔ながらの機械式時計は、このままなくなるのではと思われていたほどでした。でも僕は、電気的信号を用いるクオーツには興味がなくて。むしろ時代を感じさせる機械式時計に、ロマンを感じたんです」

お気に入りの腕時計を手にしてから、「ちょうど仕事も忙しくなってきた頃だったし、時間を見ることが楽しくなった」という松山さん。その時計が壊れた際に訪れた時計店で、改めて機械式時計の魅力に気づくことになったそうです。

「修理するときに『いい機械が入っているね』と、時計の中を見せてくれて。なかなか美しいものが詰まっているんだな…と感じましたね。当時は機械式時計の需要がどんどん減っていて、今よりはるかに安く手に入れられたんです。今のうちに手に入れておかねば…と、ほかの時計も探すようになりました」

そうして現在、松山さんの手元にある約100本の時計は、すべて機械式時計です。

「機械式時計は、クオーツのようにどんどん改良されて古いパーツがなくなり、直せなくなることがないんです。修理を繰り返して、100年以上だって使い続けられる。モノとしての永遠性を感じますね。知るほどに面白い世界ですよ」

■松山’s機械式時計コレクション■

はじめて憧れた時計、カルティエ&最初の1本となったグリュエン

グリュエンの腕時計カルティエの「タンク」

松山さんが最初に手に入れたグリュエンの腕時計が、のもの。1940~50年代の品で、価格は、当時の為替レート換算で2万円ほど。「ハンフリー・ボガートが出演するアメリカ映画に出てくるような、古きよき時代を感じさせるデザイン。そろそろ、社会や時間ときちんとつき合わなきゃと思っていた時期だったので、この腕時計ならしてもいいかなと思った」そう。もちろん今も、時を刻んでいます。

そしてグリュエンを手に入れる以前、松山さんが「こんなデザインなら、いつか似合う大人になったときに、身につけたい」と憧れていたのが、カルティエの「タンク」。上京し、出版の仕事をはじめた頃に、スタイリストが身につけているのを見ていたといいます。この日の松山さんの腕にも、カルティエの「タンク」が巻かれていました。「もっともコレクションに熱心だった」という30~40代に、国内でデッドストックを手に入れたもので、「僕とだいたい同じ年齢の時計」とか。

好みは、長年使っても飽きのこないクラシカルなデザイン

100年以上昔につくられた、懐中時計1930年代のロレックス

クラシカルな時計を好む松山さんに、最近のお気に入りを伺うと、「変わり種を買ったりもしましたが、クラシックなものに回帰していますね。最近は腕時計も買うけど、懐中時計に傾いているかな」とのこと。は、100年以上昔につくられた、懐中時計。「ティントン、ティントン…」と可愛らしい音で、15分単位の時刻を知らせてくれる機構、クオーター・リピーターが組み込まれています。松山さんによれば「音が鳴るのは、機械式時計のなかで、最も高度な技術」だそう。

は、1930年代のロレックスの「オイスター」。「ブームになる以前から、ロレックスを集めていた仕事の先輩がいました。僕が結婚したら、コレクションから1本、プレゼントしてくれる約束をしていたんです。その後、僕が結婚を報告したら、ある日、これを持って訪れてきてくれた」と、思い出の詰まった腕時計です。クラシカルなデザインと文字盤にブランドの王冠マークが入っていないのは、古い品だからこそで、「この頃のものには、マークが入っていないものもあるんです」とか。

歯車で動く機械式時計には、生物のような温かみがある

モーリス・ラクロアの「ル・カレ」「ル・カレ」の歯車

こちらは、松山さんが機械式時計に惹かれる理由のひとつ“歯車の魅力”を教えてくれる、モーリス・ラクロアの「ル・カレ」。文字盤を回っているのは分針のみで、四角い歯車が何時かを示す、遊び心溢れるデザインです。のちに秒針が四角になったモデルもつくられましたが、これは、四角の歯車として最初につくられたもの。「世界に100本ほどしかないんじゃないかな」と、非常に希少な逸品です。「昔から、おもちゃの時計で歯車が四角いものはあったんです。それを、すごく高い技術を用いて、本物の時計でやるってことに驚かされた」そう。

裏面は、内部の仕組みを見られるようになっています。「車も飛行機も、歯車が使われている。それを最初に使ったのは、星の動きや時を知るための機械。歯車がなかったら、文明は発達しなかった。そういう人類の進化を感じさせてくれる背景も面白いし、機械式時計って、無機質な物質でできているのに、血が通っている気がするんです」と松山さん。

つくられた背景を知る。それが、コレクションをより楽しむ秘訣

ジラール・ペルゴの腕時計ジラール・ペルゴの腕時計

著書や雑誌編集の仕事をとおして、各国の時計職人やコレクターと交流のある松山さん。「どうやったらこれができるんだろう、誰がつくったんだろう、なんでみんなが惹かれるんだろう…とか。そういうことを調べて理解できてくると、楽しいですよね」と、コレクションの面白さを教えてくれました。

こちらのジラール・ペルゴの腕時計は、そんな松山さんだからこそ、手にできた品です。文字盤には、「ROMA」「LONDON」など、世界の都市名が書かれ、各地の時刻がわかるようになっています。しかしなぜか、ほかの都市よりも目立つ赤で、「TOKYO」ではなく「YOKOHAMA」の都市名が。その理由とは…?

「ジラール・ペルゴは、スイスのメーカー。日本とスイス間で修好通商条約が結ばれたのは、約150年前。そのときに、この会社の創業者が、横浜に来て商売を始めたんです。もう何十年も昔のことですが、会社を引継いだ方と、その人の墓を探し、横浜の外人墓地にお参りしたんです。その後、『彼を記念した時計をつくったので、贈ります』といただいたのが、この腕時計。プロトタイプで、ゼロのナンバリングがしてありますよ」

自分が価値を見出せる時計があれば、時間の捉え方が変わる

『それでも時は止まらない』『松山猛の時計王』『松山猛の時計王 2』

松山さんの著書、『松山猛の時計王』『松山猛の時計王 2』、そして今年1月に出版された『それでも時は止まらない』(すべて、世界文化社)は、時計愛好家のバイブルとなっています。自らが楽しむだけでなく、著者・編集者として、その魅力を発信し続ける松山さんに、その理由を伺うと…。

「僕が機械式時計を買い出した70年代には、こういう教科書的な本がなかったんです。だから、1,000円以下の安価な中古の時計を開いて、仕組みなどを勉強しました。すると、機械式時計はこんなに高い技術を用いているのに、クオーツが登場しただけで、なぜそれを捨ててしまうのか…という疑問が生まれてきて。それで、自分が編集していた男性誌『ポパイ』などで、ヴィンテージ時計の魅力を発信しはじめたんです」

当時の『ポパイ』は、大学生が読者のメイン。若者でも、気軽に機械式時計を手にできていたわけです。「でも今は、腕時計がすっかり高価になってしまった。僕だって手が出ないほど」という松山さんに、インタビューのラスト、改めて、「価値ある時計とは?」と尋ねてみました。

「例えば、30年前に買ったものでも、やはりいい時計だなと、思い続けられるもの。僕にとっては、世の中の価値基準や金額的なものより、自分自身が価値を見出せるかどうかが重要なんです。時計が計る時間って、それに縛られていると感じることもできるし、自分で管理すると考えることもできる。本当にお気に入りの時計を持つことで、人生のクオリティーが違ってくると思いますよ」

■コレクター's データ■
機械式時計コレクション
  • コレクション:機械式時計
  • コレクション歴:43年
  • コレクション数:約100個
  • 費やした費用:忘却
  • 最高額:400万円

Information

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撮影:松永光希
撮影協力:KAIGANDORI Des Anges