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2015 Oct.30
Dream & Passion ~輝ける女性たちの肖像~ Vol.19

視点は「その国に生まれていたら?」。
〈写真家 在本彌生〉が語る、旅×写真

在本彌生さん

自分らしく活き活きと働く、素敵な女性たちを紹介する「Dream & Passion」。今回お話を聞かせてくれたのは、写真家の在本彌生さんです。在本さんがカメラを手にしたのは、国際線のフライトアテンダントとして世界各地を飛び回っていた20代後半のこと。その後、30代でカメラマンデビューし、現在に至るまで、旅先で出会ったものを撮影し続けています。写真が加わることで、旅がどう変わるのか?思わずシャッターを切りたくなる瞬間とは?カメラを片手にふらりと旅に出たくなるお話が満載です。また、11月初旬に発売予定の写真集の一部とともに、その詳細も教えていただきました。

「旅は楽しいけれど、ただ過ぎ去っていく」と感じていたCA時代

『MAGICALTRANSIT DAYS』表紙『MAGICALTRANSIT DAYS』内の作品
在本さんのデビュー作となった、『MAGICALTRANSIT DAYS』(アートビートパブリッシャーズ)。
被写体となっているのは、どこにでも転がっていそうでありつつも、思わず目を奪われる、人・モノ・コト。

イタリアの航空会社に14年間勤め、その後、フリーフォトグラファーとして9年間活躍してきた、在本さん。現在も、旅先での写真を多く撮影なさっていますが、学生時代から、旅が大好きだったとか…。

在本わたし、旅ありきの人生を送っていて。学生時代から、さまざまなところに旅していました。学生時代はイタリア映画もよく見ましたね。「イタリアに呼ばれてる!」なんて思い込んで、イタリア語や文化を勉強して、仕事でイタリアに行ける会社を探し…。そうやって、若い女の子の妄想で突っ走った結果(笑)、イタリアの航空会社で勤務できることになったんです。

旅好きの在本さんにとって、フライトアテンダントの仕事は、楽しかったのでは?

在本東京・イタリア間のフライトを担当していたんですが、当時は一度出発すると、2週間は東京に帰れなかったんです。フライト以外の時間は自由に過ごせるし、経由地もバリエーションに富んでいたので、毎日いろんな人や場所に出会え、楽しかったですね。さらに、海外の会社なので、3週間以上の休暇が年に2回。休暇中も、あちこちに旅をしていました。

そんな在本さんが、写真に出会ったのは、入社6年目だったとのこと。楽しい日々のなかで、なにか心境の変化があったのでしょうか?

在本会社に入ったときは、いずれほかのことに興味が出てきて、長くは勤めないだろうと思っていました。でも働いていると、時間はあっという間。28歳のときにふと、「小学校でいうと6年生を終える年だな…」と、感じたんです。

20代後半は、多くの女性が仕事や将来のことを考える時期ですよね。

在本とくにフライトアテンダントの仕事は、プロジェクトなどの区切りがなく、形が残らないサービスを生み出す仕事。毎日楽しいし、多くの人や場所に出会ったけれど、それらがスーッと自分のなかを通り過ぎて行っている気がしたんですよね。「6年間でなにができたんだろう?このまま退職まで、勤めるの?」と考えたときに、なにか、自分の経験を形にして残したいと思ったんです。仕事ではなく、趣味として。

写真との出会いは、乗客の方にすすめられたからとか…。

在本10時間以上ある長いフライトの際に、一人で搭乗していたお客さまにふと、考えていたことを話しました。そうしたら、「せっかく各地に行くんだから、写真を撮ってみたら?東京の新橋に中古カメラショップがあって…」と、アドバイスしてくださったんです。「趣味として続けなくても、カメラを持っていれば使う機会もあるんじゃない?」って、すごく気軽に。私も、「あぁ、そうか」と軽い気持ちで、教えてもらったとおり、新橋に行って、コンパクトカメラを買ったんです。1998年のことでした。

もしこの国に生きていたら?その気持ちが、撮りたい写真を決める

11月発売予定の写真集の作品11月発売予定の写真集の作品
11月発売予定の写真集の作品11月発売予定の写真集の作品
11月発売予定の写真集の作品の一部。
在本さんの公式サイトでは、ほかの作品も閲覧可能。

自ら購入したカメラで撮影しはじめたのは、やはり旅先の光景だったのでしょうか?

在本ちょうど同時期、会社に1年間の休職制度ができました。仕事を続けるか迷っていたこともあり、その休暇を利用して旅に出ることにしたんです。訪れたのは、憧れていた南米やロシアなど。そこで撮影もしましたが、それが仕事につながるとは、まだ思っていなくて。ふんわりと、「写真って面白いな」と感じているくらいでした。そのときのエッセイや写真は、36歳で出した作品集『MAGICALTRANSIT DAYS』で見ることができます。30代の数年間は、フライトアテンダントとフォトグラファーを兼業していたので、あの写真集は、「フォトグラファー一本で生きていく」という、決意表明のようなもの。そんなわけで、写真の魅力を感じ出した頃のことや作品も収めてあるんです。

在本さんが写真を撮影しはじめた頃は、まだフィルムの時代。今は携帯電話にもカメラが搭載されていますが、当時は今ほど写真が身近ではなかったと思います。カメラが加わることで、旅の仕方や目線が変化したのでは?

在本仕事は移動の連続で、風景がめまぐるしく変わっていく。旅先で、なにかを見つけても、自分が楽しいと感じるだけで過ぎ去ってしまう…。そういう体験が、写真によって整理できるようになりました。あとは、帰ってから現像するのが、すごく好きだったんです。自分で作業をしていると、旅先で見たものが写真になってよみがえってくる。ときには、その場とは違って見えたり、デフォルメされていたり…。それがすごく面白くて。ハマりましたね。

在本さんの作品に、広々とした風景はほとんどありませんよね。一見、どこの国の写真かはわかりませんが、その場の空気感は伝わってきます。在本さんがシャッターを切る瞬間は、どのようなときなのでしょうか?

在本わたしは、特別な場所、たとえば世界遺産とか、名所旧跡に行きたいわけじゃなくて。「もし自分がここに生まれたら、どんな生活をしているのかな?この風土のなかで生きていたら、どんなものが好きなのだろう?」と考えながら、普通の人々の住む街を旅しているんです。目に止まるのは、そういう気持ちにふっと入ってくる光景やもの、人の表情。私にとって、見た瞬間に圧倒的な美しさや生々しさを感じるものがあって、それを写真に残している…という感じですね。

旅行者の目ではなく、そこに住まう人の視点…。在本さんの作品はキレイな花や壮大な景色など、わかりやすく美しいものばかりが写っているわけではないですよね。それでも、惹き付けられるのが、不思議だったんですが、なぜか少しだけわかりました。

在本人は長く生きているほどに、自分の体験に寄せてものを見ると思うんです。視覚って強い感覚なので、自分では忘れていても、見たものの記憶はどこかにずっと残っているんじゃないでしょうか。写真を見るときにはその記憶をトレースして、好きとか懐かしいとか、なにかを感じる…。既視感まではいかなくても、この光の感じは体験したことあるな…とか、なにかに共感できる…というような感覚です。わたしの作品に限らず、そういうノスタルジックな点が、写真の魅力なんだと思います。

11月発売の写真集の楽しみ方&出会いある旅のためのアドバイス

旅へのアドバイスをいただきました。

11月初旬には、2冊目の写真集『わたしの獣たち』(青幻舎)が発売されます。どのような写真集になるのか、教えてください。

在本デビュー作以来、雑誌や広告の仕事はしていましたが、自分の作品集として本を出すのは、9年ぶり。やはり旅先で撮影した写真が収められています。300ページと大ボリュームで、エッセイもかなり入っていますね。パッと開いたページのビジュアルからイメージをふくらませるのも面白いでしょうし、写真の編集にかなり力を入れたので、ストーリー性のある作品集としても、楽しめると思います。

具体的には、どのような写真が多いのでしょうか?

在本最近、撮るのにハマっているのが、蘭の花と馬。それらの写真も、少しだけ入っています。人の写真も、かなり多いかな。引きの景観は少なく、被写体にフォーカスした写真が多いですね。国は、キルギス、ベトナム、フランス、バルト三国、アルバニア…と、さまざまです。

多くの国で撮影なさってきたんですね。インタビューの最後に、旅先で素敵な写真を残したいと考えている読者に、アドバイスをお願いします。印象に残る光景に出会う秘訣とは…?

在本旅先ですべてをつかもうとしても、それはとても難しいこと。興味のある分野に焦点を絞って見ていくと、好きなものに出会える確率が上がると思いますよ。たとえば、食べることが好きだったら、市場に行ってみたり、ご縁があれば、現地の方の台所に入らせてもらったり。見たことないような野菜があるかもしれませんし、わたしは先日エストニアの方の台所で、北国ならではの保存食を目にしてきました。東京の食生活とは全く違って、興味深かったです。

各地を巡ってきた在本さんの、オススメの旅先はありますか?

在本いまは馬に惹かれているので、最近、馬に乗るため、キルギスに行ってきました。その話をした方に、「今度はぜひ、タジキスタンのパミール高原を馬で走りなさい」と言われて。自然が素晴らしい場所だそうです。そうやって目的に向かって、旅する先を探すのも面白いと思いますよ。

ピンポイントの目的から探して行くと、思いがけない国が候補に挙がりそうですね!本日は、ありがとうございました。新しい写真集、楽しみにしています。

Information

『MAGICALTRANSIT DAYS』(アートビートパブリッシャーズ)

インタビュー冒頭でも登場した、在本さんの写真集。写真とともに掲載されている1998年から2006年までの日々をつづったエッセイには、写真の面白さに目覚め、訪問先で多くのことを感じ、やがて新たな人生へと旅立って行く、在本さんの20代後半から30代の思いがつづられている。仕事や人生にふと立ち止まってしまったときにも、手にとってみたい1冊。

在本さんのサイン
サイン入りの同書は、d-laboミッドタウンの図書コーナーで閲覧できます。
スルガVisaデビットカード

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撮影・村林千賀子