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2016 Jul.1
Dream & Passion ~輝ける女性たちの肖像~ Vol.22

女優に憧れたハズが落語家に!?〈女流落語家 春風亭ぴっかり☆〉伝統の世界を、軽やかに駆け抜ける!

春風亭ぴっかり☆さん

自分らしく活き活きと働く、素敵な女性たちを紹介する「Dream & Passion」。今回のゲストは、“落語界のプリンセス”として人気の春風亭ぴっかり☆さんです。

25歳で春風亭小朝師匠に弟子入り。二ツ目に昇進するや、翌年にはNHK新人演芸大賞決勝進出。さらに海外公演や10日間連続独演会、テレビや舞台でも活躍するなど、女流落語界に新風を巻き起こす存在として注目を集めている、ぴっかり☆さん。身長150センチほどの華奢な身体で、男性社会の落語界を突き進んできた軌跡から、落語の楽しみ方までをうかがいます。

座布団一枚から繰り広げられる世界に魅了されて、
いざ弟子入り志願!

春風亭ぴっかり☆さん1

現在30代のぴっかり☆さん。寄席では、チャーミングな笑顔とテンポの良い口上で人気を集めていますが、まずは落語との出会いから教えてください!

ぴっかり☆子どもの頃から舞台を観るのが大好きで、ミュージカル女優になるのが夢だったんです。それで20代前半のとき、もっと舞台の勉強をしようと思い、歌舞伎や狂言、落語など日本の伝統芸能を観に行ったのがきっかけでした。

はじめてふれる落語の世界、どう感じましたか?

ぴっかり☆噺(はなし)に夢中になって引き込まれてしまいました。「落語は座布団一枚の宇宙だ」なんておっしゃる方もいますが、噺家が語り出した途端、江戸の長屋にタイムスリップしたり、はたまた異空間が広がったりと、話芸だけで一つの世界を紡ぎ出す。世界広しといえど、そんな芸能は落語だけかもしれません。

ご自身も落語家になろうと決意したのは、なぜなのでしょうか。

ぴっかり☆とにかく「落語が大好き!」ということが一番ですね。そして先輩方を見ると、タレントや作家としても活躍される方もいれば、落語一筋で人間国宝になる方もいる。活躍の仕方が幅広いんです。それに年齢を重ねるほど芸が光って、おばあちゃんになっても続けられる仕事。「これはいいな!」と思いました。

それで25歳のとき、春風亭小朝師匠に弟子入りをしたんですね。どのようにして入門されたのですか?

ぴっかり☆落語界のことは右も左もわからないので、落語家を目指す人に向けた本を買って、研究しました。その本に、「自分が憧れる師匠の楽屋に通い詰める。何度も断られるけれど、そのうち入門できることもある」と書いてあったんです。それでさっそく小朝師匠の講演会に行って、楽屋に突撃しました(笑)。

行動的ですね…!師匠も、若い女性が訪ねてきて驚かれたのでは?

ぴっかり☆最初はファンだと勘違いされました。師匠に会わせていただいて、落語家になりたい思いを一生懸命話していたら、師匠がまわりのスタッフさんに、「この子、取るよ~!」って。「あれ!?」と、一瞬混乱しました。何度も断られる覚悟だったのに(笑)。その場で入門が許され、私の落語家人生はいきなりスタートしたんです。

一度目で御眼鏡に適ったんですね。決め手はなんだったのでしょうか。

ぴっかり☆後から知ったのですが、「きみ、真打になりたいの?」って聞かれて、「興味ありません!ただ落語がやりたいんです。師匠みたいに舞台に出たり、テレビに出たり、なんでもやってみたいです」と正直に答えたのが、良かったみたい。落語家は「前座」「二ツ目」「真打」の3段階があり、真打は落語家の最上位。普通は、誰もが真打を目指してこの世界に入るんですけど。

本来ならば、「真打になります」とやる気を見せたほうが受かりそうですよね。

ぴっかり☆でも、師匠は「女流に落語の道は厳しい」と考えています。真打までの道のりは15年近くかかりますし、落語界は男社会ですから。だから、「とにかく、好きな落語ができればいい。いろいろ挑戦してみたい」という姿勢が、意外に良かったようです。

なにが幸いするか、わからないものですね。そこから先はトントン拍子だったのでしょうか。

ぴっかり☆いいえ、うちの師匠は弟子入りした後が厳しいんです。最初に言われたのは、「向いてないと思ったら、いつでも辞めてもらうから覚悟してね」。これは脅し文句ではなくて。師匠はとても愛情深い人ですが、芸については、情けは一切かけない。明日、クビになるかもしれない…そんな緊張感とともに、私の修業ははじまったんです。

あきらめず落語と向き合ったことが
女流落語家としての道を拓いた

春風亭ぴっかり☆さん2

落語家のお弟子さんは、どんな修業をするのでしょうか。

ぴっかり☆「前座見習い」として、最初は、師匠のカバン持ちや雑用から。前座の試用期間ですね。そこで認められると、楽屋仕事をしながら、「開口一番」(寄席で本来のプログラム前に演じられる短い落語)を担当する前座に。私が前座になったのは、入門8カ月後です。前座見習いの間は、寄席には出られません。でも私は、師匠のはからいで、前座になる前から師匠の独演会などの高座に上がらせていただいていました。

チャンスは与えられる。でも、それだけ早くから力量が試されるということでもありますよね。ぴっかり☆さんの初高座はどうでしたか?

ぴっかり☆師匠に「初高座、『狸の札』ね」と言われ、緊張でドキドキしながら高座に上がりました。命を助けてくれた男に、狸がお札に化けて恩返しする落語なのですが、途中で頭が真っ白に。ストーリーがわからなくなり、客席に向かって「た、狸、ここからどうするんでしたっけ!?」って叫んでしまいました(笑)。なんとか仕切り直して、サゲ(結末)までたどり着いて…。お客さまは、そんな姿を見て大笑いしてくれましたが、初高座としては散々でしたね。それ以来、失敗したこと、師匠や皆さんの期待に応えられなかったことは、数知れずです(笑)。

そんなとき、どのようなことを考えるのでしょうか。

ぴっかり☆絶対にいけないのは、稽古不足。芸に手を抜いて失敗するのは、噺家として絶対にあってはならないことなんだと、自分に言い聞かせています。私がちょっとでも手を抜くと、師匠はお見通し。だから、とにかく師匠の背中と落語だけを見ていこうと。365日1日も休まず、楽屋仕事をしながらネタを覚え、前座を務めていく修業が5年間続きました。

厳しい前座修業を経て、2011年には二ツ目に昇進。落語家は昇進などの機会に、名前を変えることがありますが、現在の「春風亭ぴっかり☆」は、二ツ目になって名乗られたお名前です。前座時代と二ツ目との違いは、お名前以外にもありますよね?

ぴっかり☆前座時代は、落語の修行と師匠のお世話で飛び回っていました。地味な男着物を着て、髪もショートカットだったし。でも二ツ目になると、羽織袴で高座に上がれます。でも独り立ちすることにもなるので、そこからは自分で仕事を見つけてこないといけないんです。

二ツ目に昇進後は、「笑点」に出演され、独演会や海外公演も果たしていました。さらに、舞台女優やバラエティー番組など、幅広く活躍されています。チャンスをつかむ秘訣は…?

ぴっかり☆前座修業の間に培ったものが、大きかったと思います。私が前座の頃、二ツ目への昇進基準が厳しくなり、当初は3年ほどで昇進できるはずが、5年に長引いてしまいました。それでも踏ん張っていたのを見ていた兄弟子や仲間が、声をかけてくださって。他のジャンルのお仕事も、きっかけは寄席から。たまたま客席で観ていたプロデューサーの方から、仕事が広がっていきました。

地味な仕事であっても、じっくり向き合っていれば、それを見ていてくれる人がいる…、納得です。男社会である落語の世界で、逆境を感じたことはありますか?

ぴっかり☆お客さまや落語仲間から、「女流は認めねえよ」ってピシャリと言われたこともあります。でも、男をマネれば、私ではなくなってしまう。女であることを生かしながらも、性別を超えた個性や魅力で勝負したい。性別関係なく、「ぴっかり☆の芸が見たいんだ」と言ってもらえる噺家になりたいと思っています。

芸は、自分からにじみ出るもの。
だから、今の自分より少し上を目指したい

春風亭ぴっかり☆さん3

伝統芸能の世界では、よく「芸を磨く」と言いますよね。ぴっかり☆さんにとって、芸を向上させる道とは?

ぴっかり☆話芸を高めていくことが、一番。落語家は高座に上がってから、その日のお客さまの雰囲気や反応を見てネタを決めます。客席の空気を読めないと、「この前はこの噺で笑いを取れたのに、今日は空振り」なんてことが起こる。どんな状況でも臨機応変に、自分の芸を最高の状態で披露できるようになることが、落語家の最上位である真打にふさわしい力なのだと思っています。

客席と噺家の間(ま)から生まれる、一度かぎりの芸なのですね。

ぴっかり☆それから、私自身が人として内面的に充実することも大切だと思います。高座に上がると、自然と噺家の人柄がお客さまに伝わるもの。嫌味な人は、トゲトゲした雰囲気が出てしまうし、懐が深い人は、ちょっとした間にも奥深さと面白みがあるんですよね。師匠はもちろん、お客さまの目もごまかすことはできないんです。

最近は、海外のお客さんに向けて話されることも。2013年の欧州7カ国巡演に続き、2016年もドイツで開催された「第16回日本映画祭・ニッポンコネクション」で落語と踊りを披露されたとか…。

ぴっかり☆たくさん笑っていただけて、私自身、びっくりでした。セリフは字幕なのですが、笑いのツボは意外と世界共通なのかも。落語は1人の噺家の話芸だけで成り立ち、座布団一枚から繰り広げられる独特の世界。しかも、それが伝統芸能として400年以上続いているのは、新鮮に映るようです。

ぴっかり☆さんの芸、これからますます磨かれていくかと思いますが、目指すところがあれば、教えてください!

ぴっかり☆枠にとらわれず、いろんな場所で落語を披露していきたいですね。落語以外の新しいことにも挑戦して、それが噺家としての芸につながっていけば。そのために、仕事では常に今の自分の実力よりもちょっと上を目指す。そうやって少しずつ、自分を成長させていきたいと思っています。

落語は、日本の伝統文化のひとつです。とはいえ、寄席で聞いたことがない方も多いはず。インタビュ―のラスト、ビギナーに楽しみ方のアドバイスをお願いします。

ぴっかり☆日常でも、特別な日でも、落語は気軽に楽しめる庶民の娯楽。お仕事帰りに立ち寄って、思いっきり笑ってストレス発散もいいし、着物や浴衣でおめかしして甘味処などに寄ってから、寄席に繰り出すのも粋ですよ。

ビギナーは、どんな落語会に行くのがオススメですか?

ぴっかり☆「鈴本演芸場」や「浅草演芸ホール」「新宿末廣亭」「池袋演芸場」などの寄席は、昼夜問わず、好きなときに入って好きなときに出られるシステム。丸一日観てもいいし、小一時間だけという楽しみ方もできます。最初は、こうした寄席がオススメ。どちらも大御所から若手まで勢ぞろいするので、きっとお気に入りの噺家を見つけられると思います。

お目当ての噺家さんができると、楽しくなりそうですね。

ぴっかり☆自分好みの落語家が見つかったら、その方の独演会や小規模な落語会に出かけて、マニアックな芸やおろしたてのネタを鑑賞してみてください。きっと、すっかり落語の世界にハマってしまいますよ。生の迫力はちがいますから、是非一度、聴きにいらしてください!

ぴっかり☆さんの落語も、是非、聞いてみたいです。噺の面白さはもちろん、ぴっかり☆さんのお姿からも、パワーをいただけそうです!本日は、ありがとうございました。

春風亭ぴっかり☆さん4

Information

春風亭ぴっかり☆公式サイト

ぴっかり☆さんの公演予定はもちろん、いつも軽快なぴっかり☆さんのパワーのモト(!?)がわかるブログも公開中。ちなみに「ぴっかり☆」は、二ツ目に昇進した11月1日が「灯台記念日」だったことから、小朝師匠が命名。「師匠は記念日好き。真打昇進の日は、どんな名前をいただけるか、今からドキドキです(笑)」とか。

春風亭ぴっかり☆さんと直筆サイン
ぴっかり☆さんの直筆サインは、記事公開後しばらくの間、d-laboミッドタウンに展示予定です。

撮影・伊東 武志