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2018 Feb.22
SURUGA Cycle Journal vol.19

ツール・ド・ニッポンに賭ける思い
ルーツ・スポーツ・ジャパン代表・中島祥元氏

ツール・ド・ニッポンに賭ける思い ルーツ・スポーツ・ジャパン代表・中島祥元氏

ただ走るだけではない、“走って遊べる、自転車のイベント”「ツール・ド・ニッポン」をご存知でしょうか。各地の地方自治体や団体と連携し、「その土地ならでは」の地域性を感じながら、旅行気分でレースやサイクリングなどを楽しめるといった自転車イベントは、年々人気を呼んでいて、2017年は全国16地域で18イベントをシリーズ開催、約1万5,000人のサイクリストが参加しました。その主催・運営にあたっているのが、中島祥元さんが代表を務める一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン(※2018年2月3日に改称。旧名:ウィズスポ)です。2017年12月には地元・静岡県の地域創成に取り組んでいるスルガ銀行とも業務提携を発表。ここでは中島さんに「ツール・ド・ニッポン」に賭ける思いについて聞いてみました。

やりたいこと、夢に向かって歩んだ20代

エンデューロやヒルクライムなど「自転車に乗る」ことと「温泉に入る」を結合させた「温泉ライダー in 加賀温泉郷」、与えられたミッションをクリアして獲得したポイントを競う「ライドハンターズ in 阿見」など、自転車を軸としたユニークなイベントで開催地の地域振興に一役買っているのが「ツール・ド・ニッポン」です。全国各地の自治体や民間団体と共同での取り組みは、2017年度国土交通省観光庁の「テーマ別観光による地方誘客事業」のひとつにも採択されています。

中島さんがこうしたスポーツイベントに取り組んだのは大学卒業後とのこと。自身をスポーツビジネスへと駆り立てたものは何だったのか。本人いわく「僕は自転車業界では珍しいパターン」と語る中島さん。いったいどこが珍しいのか。うかがってみると、なるほどという答えが返ってきました。

「僕は今でこそ自転車業界にいて自転車イベントをやっていますけど、若い頃を振り返ると、元々自転車の選手だったわけでもないし、若い頃からサイクリングが趣味だったというわけでもない。そういう意味ではあまりいないタイプだと思うんですね」

そう話す中島さんが中学、高校と夢中になっていたのは部活のバレーボール。地元の富山県高岡市で過ごした10代の頃は、「試合に負けたら涙を流すし、頭は坊主にするみたいな」と本人が笑うような熱血スポーツ少年でした。大学は家から通える石川県の金沢大学へ進学。ただし、この進路については「正直、深く考えていなかった」と言います。

「金沢大学を選んだのは地元に近いから。入ったのは経済学部の経営学科だったんですけど、これが授業を受けると全然興味が持てなくて。本当に自分がやりたいことはこれなのかな、と疑問に思って2か月くらいで大学をやめてしまったんです」

「勝負をするなら東京だ」と考えた中島さんが入り直したのは早稲田大学のスポーツ学科。「勝負をするなら東京というのは今振り返ると狭い考え方でしたが、本当に自分が興味を持って取り組めるとしたら、部活でずっとやってきたスポーツだと思ったのでスポーツをビジネスにするというスポーツマネジメントを学びたかった。当時、体育学部や運動生理学的なことを学ぶスポーツ学部はすでに各地にあったんですけど、スポーツマネジメントを学べるのは早稲田大学と筑波大学しかなかったんですね。それで早稲田大学へ進学して"スポーツ経営学"というゼミに入ったんです」

「ツール・ド・チャイナ」で受けた衝撃、事業を自転車に特化

大学4年間で培ったのは「スポーツを通じていずれは起業したい」という思い。その夢は、思いのほか早く実現します。大学卒業後、友人が代表となった会社の設立に参画。そこで出会ったのが自転車でした。

「2001年でした。中国で開催される『ツール・ド・チャイナ』にオーガナイザー側として関わることになったんです」

UCI(国際自転車競技連合)の国際レースである「ツール・ド・チャイナ」に、それまで自転車イベントを知らなかった中島さんは「度肝を抜かれました」と言います。

「公道を使う自転車のレースを見るのははじめてでした。とにかくその盛り上がり方に驚きました。北京の高級ショッピング街を通行止めにしたり、草原地帯がコースだったりするんですが、どこからこんなに人が集まるんだろうというくらいの観客の数なんです。じゃあ、日本はどうなのかなと調べたら、こういう盛り上がり方をしているレースはないということがわかったんです。そのときに、いつかこれを日本でやってみたら……と思ったんです」

その後、2009年には独立し、株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパンを設立。スタート時は、テニス、サッカー、水泳など、自転車以外のスポーツイベントやスポーツ教室を手掛けていたという中島さんですが、やがてその事業は自転車へ集中していくこととなります。

「当時のルーツ・スポーツ・ジャパンは僕を含めて4、5人の規模でした。あるとき、このまま色々なスポーツの領域へ事業を拡大していくのもいいけれど、まずは自分たちの強味に集中した方がいいなと考えたんです。そこで選んだのは自転車でした。この頃はまだ他社でも自転車に特化しているところは少なかったし、レジャー白書などを見ても、これから自転車がくる、みたいなことが書いてある。『地域活性化』という、僕の中でのもう1つのキーワードからも、自転車はとても将来性のあるカテゴリーだと思えました。それに、たとえばサッカーだとプレーヤーがたくさんいるからそこの山に入ってもトップにはなれないけれど、自転車ならまだ山は小さいけどトップになれるかもしれない。そして、その山もこれから先大きくなるかもしれない。そういった事業的判断もあって、自転車イベントを中心に活動するようになりました」

みんながハッピーになれる自転車イベントを

自転車イベントを事業の中心に据えると同時に取り組んだのは「主催者」になること。

「イベントの主催者というのはリスクをともなうものです。だからそれまでは意図的に受託事業を中心としていたのですが、どうせ本腰を入れてやるなら、やはり自分たちでイベントをゼロから設計していこうと、そう決めて主催者になることとしました」

では、自分たちはどんな自転車イベントを主催するのか。

中島さんの頭にあったのは「スポーツですべての人が幸せになること」。ここで言う「すべての人」とは参加者だけではなく、それを観戦する人、運営する人、応援・協力する人、そのイベントに関わるすべての人のことを指します。

「スポーツの魅力、それは感動体験です。自分でやるスポーツでも、観るスポーツでも、スポーツで得られる感動というのは、人が感じる感動のなかでもけっこう上位に位置するものだと思えるんです。だったら、その感動をよりたくさんの人が得られる社会にしたい。この思いが僕たちの自転車イベントの原点となっています」

そこで具体的にイメージされたのが、「ツール・ド・チャイナ」で体験したような公道レース。それも地域を舞台とした自転車イベントでした。公道レースは、競技の性格上、どうしてもできる場所が限られてくるし、地元にも負担をかけることになる。しかし、地元の人たちにもメリットがもたらされるのなら、参加者と地元の人たちの両者が幸せになれるのではなかろうか。そうやって考えていくうちに見えてきたのが、現在の「ツール・ド・ニッポン」だったといいます。

「『ツール・ド・ニッポン』の特色は、日本各地にある観光資源やその地域のいいものに触れながら旅気分で参加してもらえるところです。自転車の持つ爽快感にプラスして、観光地や名物料理など地域の魅力を味わう。そうすることでサイクリストと地域の人々との間に交流も生まれるし、地域の経済も潤うし、みんながハッピーになれる。こうしたサイクルツーリズムの考え方に基づいているのが『ツール・ド・ニッポン』です」

いかに「地域性」を出すか

事業をスタートした2011年は、はからずも東日本大震災の起きた年。ルーツ・スポーツ・ジャパンでは、「震災で沈んでいる日本をスポーツで活性化する」というビジョンのもと、全国約2,100の自治体に企画書をDMで送付。翌2012年には営利企業である株式会社のほかに、より自分たちのビジョンを伝えやすい形をとるべく一般社団法人ウィズスポ(2018年2月3日より一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパンに改称)を立ち上げます。こうした呼びかけに応えてくれたのが、茨城県かすみがうら市、石川県加賀市、埼玉県熊谷市、栃木県さくら市の4地域でした。

「僕らにとってこの4つの地域は、今でも『ツール・ド・ニッポン』の“オリジナル4”。自治体で最初に電話をくれたかすみがうら市では、市役所の方々が熱意をもって迎え入れてくれました。かすみがうら市には隣の土浦市と共同で開催している『かすみがうらマラソン』があるのですが、それにつづくアウトドアアクティビティが作りたいということで、行政が先頭になってイベントを立ち上げてくれました。茨城県自体も霞ヶ浦エリアをサイクリングで盛り上げたいという思いがあり、そのおかげもあって今年は対岸の阿見町でも『ツール・ド・ニッポン』を開催することになりました」

一方、石川県の加賀市で主役となっているのは地元の市民団体・「加賀まれびと交流協議会」。こちらは「地域を盛り上げたい」という有志の市民が集まって、地元のウリである温泉を前面に押し出した「温泉ライダー」を企画したといいます。

「『ツール・ド・ニッポン』を企画するときにいちばん気を遣うのは、いかにして地域性を出すか、です。加賀市でも、単に“加賀サイクルフェスティバル”的な名称にするよりも“温泉ライダー”とした方が魅力があるものとなります。(「温泉ライダー」 のネーミングは地元の方々のアイデアだそう。)毎年夏になると最高気温が日本で一、二を争う熊谷市の場合なら、それを逆手にとって“熱いぞ熊谷”と、あえて日本一暑いレースを謳ってみるとか、武田信玄ゆかりの韮崎市だったら“戦国ヒルクライム”とか、自転車に地域性をプラスすることが鍵となります。

また、こうした組み合わせをすることで、たとえば韮崎なら自転車イベントに力を入れたい人と、地元の歴史をウリに観光客を呼び込みたい人の両方が同じベクトルで動くことになって、そこに相乗効果が生まれたりもする。そういう意味で『ツール・ド・ニッポン』は地域の方々みんなが参画しやすいイベントなのかもしれません。これまでを振り返ると、“一緒につくっていこう”という思いが強い地域ほど、イベント自体も盛り上がっているように感じます」

2018年はスルガ銀行と業務提携し
静岡県東部で自転車イベントを開催

地域の魅力を発信していく「ツール・ド・ニッポン」。中島さんが「地域」にこだわっている背景には「父の存在がある」と言います。

「僕の父は新卒から定年まで、ずっと富山県高岡市の商工会議所に勤めていました。商工会議所では市街地の活性化に取り組んだり、北陸新幹線の誘致活動をしたりと、一生のほとんどを高岡という自分の故郷を盛り上げるために費やしてきました。僕もそういう父親を見て育ったせいか、地域振興や地域創成に対する思いが強いのだと思います」

2018年から本格始動するスルガ銀行との業務提携では、伊豆半島を舞台に自転車イベントを開催する予定とのこと。伊豆半島は中島さんの目にはどのように映っているのでしょうか。

「伊豆半島のイメージは、エリアとして大きいことですね。半島の南端部まではけっこう距離があるし、アップダウンもある。都内からもアクセスしやすい近場にありながら、走りごたえのあるコースが設定できる。観光資源はたくさんあるし、『ツール・ド・ニッポン』のようなイベントの開催地としては非常にポテンシャルの高い地域だと思います。僕たちはこれまで自治体や市民団体とは連携してきたけれど、スルガ銀行さんのような金融機関と提携するのははじめてのことです。お互いにしっかり熱意を持ってコミットして、静岡県をサイクルツーリズムで活性化していけたらと願っています」

提携イベントとして、現在、検討されているのは「静岡県同時多発グループライド」。これは以前からスルガ銀行サイクルステーションを拠点に富士山麓や伊豆半島各所で開催されているプレミアムライドイベントを原形に、アテネオリンピックプレーヤーである田代恭祟さん(リンケージサイクリング代表)が設定したコースを同時多発でグループライドしようというもの。初心者からベテランまで誰でも楽しめる多彩なコースが魅力です。他にも静岡県東部のサイクリングコースの情報提供や、d-laboミッドタウンを利用した「ツール・ド・ニッポン」PRインドアイベントの開催、全国で開かれる「ツール・ド・ニッポン」へのスルガ銀行ロードバイクプロジェクトメンバーの参加、SNSなどでの情報発信などが予定されています。

初心者でも安心して参加できる「ツール・ド・ニッポン」

「日本」を旅する「ツール・ド・ニッポン」。「日本のサイクリングの魅力」を中島さんは「自転車で走るという爽快感はもちろん、その土地の空気を感じられるところがいいですね」と語ります。

「100kmという遠く感じる距離でも自転車だと、気が付くと容易に移動できていたりする。と同時に、坂道などを上っていると地元のおばちゃんが、頑張って、と応援してくれたりもします。長い距離を走りながら、通過する地域の人とちょっとした交流もある。その両面があるのが魅力です。『ツール・ド・ニッポン』というイベントは、地域の観光資源を含め、そうしたものに触れられる格好のツールではないかと思います」

サイクリストにとっての「ツール・ド・ニッポン」の良いところは「敷居が低いところ」。既存の自転車イベントに比べて初心者に優しいイベントは、中島さんたちが当初から思い描いてきたものだといいます。

「この先は、いままでのシリーズに加え、ハードルをもっと下げてより初心者の方々が参加しやすいイベントを開催していきたいですね。安全性や管理面で質の高いイベントを全国各地で提供していきたいと願っています」

中島さんについて
~スルガ銀行ロードバイクプロジェクト キャプテン深田 聡朗~

中島さんは熱い人です、とても。桁外れに。

実は私、必要以上に熱い人があまり得意ではありません。笑

が、中島さんの(とてもいい意味で)度を超えた熱さは、私の得手不得手を超越して微笑ましくさえあります。そして一旦、その熱さに心を開いてしまうと、今度は協力したくなってしまいます。まさに「中島さんにハマっていく」わけです。きっと中島さんの周りには、私と同じようにハマった多くの人がいて、一緒に「ツール・ド・ニッポン」の事業を営んでいるのだと思います。

そんな「中島さんにハマった」人たちが集まる「全国サイクルツーリズム連携推進協議会」なる会合があります。メンバーは主に、ツール・ド・ニッポン開催地自治体や観光協会です。このたび弊社もメンバーになりました。中島さんのビジョンに共感している方たちとの交流は、必ず弊社の地元静岡県にもいい循環をもたらすと確信しています。これからも「中島スポーツ劇場」にハマりながら、ベクトルの合った皆さんと自転車振興を進めていきたいと思います。

「ツール・ド・ニッポン」経年開催の考え

  • イベント開催が目的ではなくサイクルツーリズムでの地域活性化が目的。単発開催では効果が期待できず、経年開催を前提とする。
  • 開催地自治体には「主催」または「共催」に入ってもらい、中長期ビジョンを共有しともに作り上げていく。

Information1

ツール・ド・ニッポン

エンデューロやヒルクライム、タイムトライアルなどのレースや、ガイドサイクリングやロングライドなどのサイクリング、ゲーム性の強いライドハンターズ、キッズ向けのランニングバイクを使ったライダーマンキッズなどの自転車種目にプラスして、旅行気分で開催地域の「その土地ならでは」の観光資源や食材などを楽しむ自転車イベント。2018年も全国各地で開催予定。

一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン(旧名称ウィズスポ)

http://wizspo.jp/

株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン

http://roots-sports.jp/

Information2

ロードバイク購入ローン

ただ走るだけではなく、その土地ならではの景色や文化にも触れられる「ツール・ド・ニッポン」。中島さんのお話を聞いていると参加したくなりますね。そこでおすすめなのが、スルガ銀行のロードバイク購入ローンです。自転車本体の購入はもちろん、ライドイベントの参加費用、サイクルウェア、フレームやホイールなどのパーツ類など、自転車にまつわるすべてのものにご利用いただけます。年利は一般的なクレジットカードのリボ払いや分割払いよりもお得。返済は最長120回。ご自分に合った返済プランを組み立てることが可能です。