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大切なのはホスピタリティ

仕事中の清水さん

 NYで5年ほどを過ごすと帰国し、日本でフリーランスのメイクアップ・アーティストとしての仕事を始動させた清水さん。

「老若男女、プロのモデルさんや俳優さんから一般の方まで、いろいろな方にヘアメイクをしています」

 大切にしているのは“ホスピタリティ”と、清水さんは話します。

「ヘアメイクをするときは、対象となる方そのものの魅力を最大限に生かして、美しさを引き出すことを心がけています。それには高いスキル(技術)だけでなく、コミュニケーションもとても大切です。その人らしさや好みなどを理解したうえで行なうようにしているのです。またメイク中だけでなく、その前後の撮影中なども含めた時間すべてにおいて気を遣い、すべてをケアするようにしています。ヘアメイクにはそんなホスピタリティも重要だと思っているんです」

 緊張する人を会話でリラックスさせたり、表情の硬い人を笑顔で解きほぐしてあげたりすることも、メイクアップ・アーティストとして重要な仕事の一つと清水さんは語ります。

「トレンドはもちろんありますが、メイク自体は普遍的なものだと思っています。流行を常に気にはしつつも、それよりもホスピタリティやコミュニケーションを大切にしていきたいと思っています」

 毎日の技術的な訓練だけでなく、いろんな知識を吸収して、ヘアメイク対象者を“おもてなし”する気持ちが大事だと、話してくださいました。

夢はヘアメイクをつづけていくこと

インタビューに答える清水さん

 清水さんは現在、日本とニューヨークからの仕事の両方を手がけているそう。内容もファッション、広告、映像とさまざまで、それぞれにやりがいを感じているといいます。

「映画や広告、ファッションショーなど、現場によってやり方や対象は本当にさまざまですが、メイクアップ・アーティストは人をキレイにして喜んでいただく仕事というのは共通しています」

 しかし、苦労点も多いと清水さんは話します。

「私たちの仕事は、夜中だろうと早朝だろうと関係なく、またいつも急がされる立場にあります(笑)。実際、人に直接触れる仕事ですし、自然とコミュニケーションも深くなり気を遣うこともたびたび。体力も精神力も、高いレベルで求められる仕事なんです」

 そんな大変さはあるものの、人をキレイにする喜び、いろんな人たちと何かをつくりあげていく喜びはとても大きなものだそう。

「私のこれからの目標は、有名になりたいとかではなく、この仕事をずっとつづけていくことです。いろんな人と触れあいながら一つひとつの現場を大事にしていくことが、次へとつながる重要なポイントです」

 ヘアメイクは場所を選ばない仕事。清水さんは今後、日本やアメリカはもちろん、他の国でも仕事をしてみたいといいます。

「メイクアップ・アーティストの仕事は、コミュニケーションさえしっかりできればどこでもできる仕事です。日本では“メイクさん”と呼ばれることもありますが、常にクリエイティブな“アーティスト”であることを意識して、これからもチャレンジをつづけていきたいと思っています」

 出会いの一つひとつを大切にしながら、活躍の舞台は世界へと広がってゆくのでしょう。

メイクアップ・アーティスト
清水友香

http://www.yuka-shimizu.com

Mini column

ヘアメイクと美容師。職業を選ぶときのポイントは?

“ヘアメイク”と“美容師”。同じく人をキレイにするお仕事ですが、共通する部分とまったく違う部分の両方があるのを知っていますか? 最も大きな違いは、美容師はハサミを扱うため国家資格が必要なのに対し、ヘアメイクは資格が必要ないこと。また、美容師は資格を取得して美容室などで働くケースが多い一方で、ヘアメイクは独自のネットワークを駆使してフリーランスとして働く人が多いのも特徴。

いずれの職業も、学校などで専門的に学びこの道を進んでいる方がほとんどですが、その後の働き方は大きく異なります。では、キャリアプランの代表例を見てみましょう。

まずは美容師。美容師は勤務する美容室の営業時間をベースにした、規則的な時間のなかで働くことが可能。髪のカットやカラーリング、さらには接客などの経験を積むことができ、来客を中心とした定期的な固定客を手がけながら、やがては自分の美容室をオープンする…といったケースが多いようです。比較的安定しているせいか、2014年現在の美容師の数は48万7,636人で、前年より8,127人増加。また美容室の数も23万4,089ヶ所で、前年比1.3%の増加(厚生労働省「衛生行政報告例」より)とその数は増加しています。

一方のヘアメイクは、髪をカットすることを仕事にはできませんが、ヘアのセットアップからメイク、着付けまで幅広く手がけるのが特徴。結婚式など一般の方や、モデルや芸能人などの現場に出向いて仕事をすることがほとんど。そのため時間が不規則になりがちですが、さまざまな場所で自由に活躍しやすい職業ということもできます。収入はアシスタントだと月数万円の場合もありますが、プロダクション所属で平均年収180〜400万円、人気のフリーランスになると年収数千万円になるなど、頑張りや技術力で大きな収入を得ることも可能な職業です。

美容師とヘアメイク。そのどちらが適するかは個人次第ですが、共通するのはどちらも“人を美しくする仕事”ということ。あなたも人をキレイにしながら、自分も輝かせてみては!?