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ネット通販の活用で運営を安定・拡大

ayanas店内

 ショップは「普通の植物を売るというのではなく、個性的な樹形の観葉植物、名前を付けたくなるような可愛らしい草姿の多肉植物やサボテンを販売する」「暮らす人の趣味趣向が彩なす空間に合わせた植物を提案する」をコンセプトにスタート。

「植物の知識も経営のノウハウもほとんどないまま、熱い想いだけでのスタートでした(笑)。家具ショップの時に植栽についていろいろ教えていただいた方から仕入れなどの方法を学び、どうにかオープンしました」

 最初の数年間は厳しい状況だったとオープン当初を振り返ります。

「店舗が住宅地にあったこともあり、来客数が多くなく、なかなか売上げも伸びずに悩みました」

 開店当初は、植物がネット通販で売れるはずがないと思い込み、店舗のみでの販売だったこともあり売上げは厳しい状況に。住んでいた自宅の家賃すら重く感じられるようになり、友人宅に身を寄せながらも店舗はなんとか守ったといいます。

「大変でしたがやりがいはあり、苦労とは感じませんでした。状況が変わってきたのは、植物をインターネットで販売し始めてから。首都圏を中心に日本全国から注文をもらい、現在では売上げの9割がインターネット販売です。また店舗を目指して来てくださるお客さまも増え始めました」

 今までの仕事での知識・経験を生かしたネットショップが成功し、いよいよ経営が軌道に乗り始めたそう。そして2011年にはより広い現在の店舗に移転し、活動も拡大させました。

植物を中心に仕事とプライベートを一体化

インタビューに答える境野さん

 境野さんの一日の流れは、午前中に市場などで仕入れをし、午後になると植物の手入れや出荷作業のほか、最近では庭づくりやショップのディスプレイ・デザインやイベント準備なども多くなっているそう。

「同じ植物は一つとしてなく、いつも出会いにワクワクします。また自分が提案した植物に触れたお客さまが喜ぶ姿を見て、この仕事のやりがいを実感します。最近は個人宅の庭づくりやショップのディスプレイを依頼されることも多くなり、植物をさまざまな形で提案する機会が増えました。やりがいや楽しさもどんどん広がっています」

 と、笑顔で話します。一人ひとりの毎日に、植物が自然と溶けこむ暮らしを提案することに、より一層こだわるようになったと言葉をつなぎます。

「植物を身近に感じる生活って、本当に豊かだと思うんです。その素晴らしさをもっと、多くの人たちに伝えていきたいと思っています」

 仕事として植物を扱う境野さんですが、究極の目標は、自分の生き方そのものに植物が自然と存在するライフスタイルの実現だそう。

「今後の夢は、お店をさらに拡大することや情報を発信しつづけることももちろんですが、それよりも植物を中心に仕事もプライベートも一体化したようなライフスタイルにしたいと考えているんです」

 日常から植物を身近に感じる暮らしを実践しながら、境野さんはこれからも多くの人々に緑のある毎日の素晴らしさを伝えていくのでしょう。

Mini column

グリーンショップや花屋を起業するには?

色とりどりの花や観葉植物などを扱う仕事に就くには、どのようなノウハウや経歴が必要になるのでしょうか? 実は花やグリーンを扱う仕事は資格や免許が特に必要なく、興味や知識・経験があれば誰でも携わることができます。

実際に花屋の仕事に携わる人は、農業大学や園芸に関する学校などで知識を学んだり、花屋や園芸ショップで働きながら経験やノウハウを得たりと、人によってさまざま。

知識や販売に関するノウハウを学び自分のショップを開店する場合には、店舗の決定、仕入れ、接客、梱包、小物などの販売、そして日々の手入れやお店の経営など一人で何役もこなさなくてはなりません。境野さんの場合は、実店舗を運営しながら知識を生かしてネット販売も強化。

「ネットの場合は商品である植物を実際に見ることはできないので、背景やライティングなどをこだわって一点一点撮影し、さまざまな角度から植物を正しくキレイに見せるようにしています。植物は一点ものなので葉の形や樹形、大きさなどについても分かりやすいように手やペットボトルを入れて撮影し、お客さまが知りたいポイントを分かりやすく伝えるよう工夫しています。また、自分自身の梱包の技術が上がったことや運送の進化によって、サイズの大きい植物の発送も可能になり、クレームもなく取り扱いの幅が広がっています」と境野さんは話します。