Job-labo file 35

お客さまの口に“おいしい”を届ける

インタビューにこたえる千田さん

 三茶ファームでは青果のほかお米や調味料なども扱うものの、お店のキーワードはあくまでも「八百屋」。おいしくて身体に良いだけでなく環境保全や持続的な農業のためにも有機野菜を中心に扱っています。

「情報を正しく伝えること、本当に良いものを届けること。おいしいだけでなく、その機能を果たす場であることを最も重要視してお店をスタートさせました。ネット販売ももちろん可能ですが、やはりコミュニケーションが重要ですからそれはやりません。八百屋としてお客さまと会話をしながらの対面販売にこだわることで、つくる人と食べる人のハブとなることを常に考えているんです」

 これまでに広がったネットワークをフルに使い、市場や仲買業者を活用せずに、ほとんどの商品を生産者から直接仕入れて販売するスタイルを貫いています。

「皆さんの食への興味が、どんどん高まっているのを感じます。どうせ食べるなら素材の良いものを選ぼうという傾向がありますね。こちらもただ販売するだけでなく、お客さまに商品の魅力や特徴をきちんと説明しますし、逆に消費者の反応を生産者に伝えるようにしています。生産者は消費者の声を知りたがっているので、非常に喜ばれますよ」

 顧客とのつながりもとても大切にしているので、会話や野菜を使ったレシピを聞くために来店するお客さまも多いとか。 「八百屋は野菜を販売する場所ですが、ただ売って終わり、だけではいけないと思っています。情報も一緒にきちんと伝え、お客さまの口に入って『おいしい!』と言ってもらえるところまで、しっかりと考えて実現していきたいと思っているんです」

社会や未来を活性化させたい

インタビューにこたえる千田さん

 今でこそ三茶ファームの運営は軌道に乗りつつあるものの、オープンからしばらくは厳しい時代が続いたといいます。

「八百屋として良い野菜を届けること、そして農業や農家を持続可能なものにすることを目指してやっていますが、現実はやはり、なかなか難しいですよね(笑)。これまでの経験を活かしてITやWEBデザインなどを手がける会社を立ち上げて、その両輪でなんとかやっていた状態でした。最近は、ITの会社では未来をサキドリするWEBマガジン『SAKIDORI』や、結婚式などのWEB招待状作成サービス『Weddingday』が好評を博し、また三茶ファームも認知が拡大し、少しずつですがようやく足場が固まってきたように感じています」

 三茶ファームが地元の商店街“エコー仲見世商店街”に立地することもあり、三軒茶屋や商店街への貢献も最近はこだわっているそう。

「近くのカフェや雑貨店とコラボして、マーケットを開催したりしています。人の流れ、つながり、いろんな商品や製品、サービスとの出逢いを提供する機会をつくれたらと思い、実際にカタチにすることを心がけています」

 さまざまなアイデアと行動力を武器に、良い野菜や生産者を広める役割を担いつつ、地域の活性化にもしっかり貢献する。

「八百屋だから野菜を売るだけとか、何々だからこれしかやらない、というのはもったいないと思うんです。もっと広い捉え方で柔軟に、これからもいろんなコト・モノ・情報を発信しつづけて人とつながりながら、社会や未来の活性化につなげられたらと思っています」

 千田さんのフィールドは、どんどん拡大していくようです。

三茶ファーム店舗

『三茶ファーム』WEBサイト

http://sanchafarm.com/

Mini column

増えるスーパー、減る専門小売店。自分たちのアイデアで町おこし!

経済産業省の調査によると、総合スーパーやコンビニの数が増加しているのに対し、専門店や小売店の数は減少しています。“シャッター商店街”という言葉がニュースにもなっているように、個人商店や商店街そのものが無くなる、または衰退していくケースが増加しています。

しかし、千田さんが三軒茶屋においてほかのお店とコラボしながら商店街の活性化を試みているように、独自の“町おこし”で元気を取り戻している商店街もどんどん増えているようです。

群馬県館林市の“たてばやし下町通り商店街”では、毎月1回『下町夜市』を開催。商店街を舞台に「いずれ出店したいと考えているチャレンジ出店者によるテント営業」や「ウォークラリー」さらに「JAZZ演奏」などで盛り上げ、集客効果のほか空き地の有効利用も果たすことに成功。既存店の活性化のみならず商店街のブランド向上、そして新規創業者の増加にも寄与する結果につながりました。

またエリア特性を改めて精査することで成功した商店街も。鳥取県の若桜街道商店街は「住民のニーズに合う店がない」と、大規模商業施設ばかりが賑わい、商店街は活気がなくなる一方でした。転機は2009年のこと。「まずは空き店舗を何とかしよう」と、地域のニーズに合う集客スペースづくりにチカラを入れました。学生・ビジネスマン・高齢者とあらゆる年齢の人たちの声を聴き、見えたのが“食を通じた他世代の交流拠点”でした。コンビニが撤退した場所でもあるため誘致は困難を伴ったものの、ニーズの高さから焼きたてのパンを105円均一で販売している地元のベーカリーに打診し、厳しい状況を共有しながらも信頼関係を育み、ついに合意。そして生まれたのがベーカリー&コミュニティスペースの『こむ・わかさ』でした。元は空き店舗だったにもかかわらず、オープンから半年で来店者が10万人を突破するほどの人気に。人を集め商店街自体を活性化する役割を担うことに成功しました。

アイデアと行動で、一時的でない地域活性化を果たした成功事例として、モデルケースとなっています。あなたもアイデアや発想を活かして、商店街や街を活性化させることができるかも!?