Special story

若手とベテランが一緒に、ファイヤーキングを支える

作業中の職人

 現在、世界において『ファイヤーキング』を製造するのは日本のみ。2011年にはファイヤーキングジャパン社が発足し、私たちはまた新しい製品を手にすることができるようになりました。その製造現場を支えるのは、先出の老舗ガラス工場に在籍する、若手からベテランまでの職人たちです。

「『ファイヤーキング』の製造は、他のガラス製品と比較して実はとても大変なんです。溶けにくいガラスなので溶融温度の繊細なコントロールも必要ですし、金型プレス成形にも技術が必要です。さらに成形後にバーナーで表面の泡を消して艶出しをするなど、手間暇をかけて一つひとつ丁寧につくっています。1日あたり4〜5百個生産していますが、そのためには炉の火を24時間365日絶やしてはなりません。そういった現場を支えているのは、職人たちなんです」と井置氏は言います。

 このように職人たちの技術と努力によって、数々の困難な課題を解決し、現時点では世界で唯一となる『ファイヤーキング』の復刻を成功させることができたのです。

マグカップのプリントにも息づくモノづくりのワザ

転写シートの張り付け作業

『ファイヤーキング』の代名詞ともいえる、企業のロゴやキャラクターなどの多種多様にわたるプリント。実はこのプリントは、機械による流れ作業ではなく、手作業でマグカップに転写シートを貼り付け温度を少しずつあげながら丁寧に焼き付けていくため、非常に手間と時間がかかる作業です。

 貼り付けるというと単純な作業のように感じますが、転写シートを貼り付ける際に水分や空気などの異物が少しでも入ってしまうと、転写シートを焼き付ける際に膨張し、シートをつき破ってしまいます。ちょっとしたことでプリントに穴が空いたり、異物が膨張し転写シートを引っ張りプリントが崩れたりと、精魂込めてつくられた『ファイヤーキング』が台無しになってしまうのです。

 その『ファイヤーキング』の第二の顔ともいえるデザインの貼り付けを担っているのは、美濃焼の産地として知られる多治見市近郊に位置する陶器メーカー「一山陶器」。空気が混じらないように転写シートを貼り付けたあと、一つひとつ手作業でへらを使い、気泡を取り除いていきます。そのため、作業開始から焼き付け完成品となるまでに、4〜5日がかかります。

 プリントは多岐にわたり、細かい描写が用いられる色も多いため、最新の機械でプリントしているように思われがちですが、実はこのように、非常に手間がかけられているのです。その細部までのこだわりからは、“日本のものづくり”の原点を垣間見ることができます。

 アメリカで生まれた人気商品を、日本のモノづくりの職人が復刻させる。これからは『ファイヤーキング』以外にも、このような事例が増えてゆくのかもしれませんね。

日本の技術で2011年に約35年間の眠りから復刻した『ファイヤーキング』

株式会社Fire-King Japan

  1. http://fireking-japan.com
Mini column

『ファイヤーキング』の歴史

スルガ銀行オリジナルFire-king

1905年の米国オハイオ州ランカスター。その小さな街で、6人の仲間とともに創業したのがホッキングガラス社です。工場の近くに流れる川の名前から命名されました。その後、1937年に合併によりアンカーホッキンググラス社と社名が変わり、6,000人規模の会社に成長しました。

耐熱強化ガラスのパイオニアとして、丈夫で耐久性に優れたブランド『ファイヤーキング』の生産を開始したのは、第2次大戦の真っ只中だった1942年のこと。その後、経済の発展にともなって、アメリカの一般家庭の定番食器として、また業務用食器、企業の広告媒体として、1976年にその製造・販売が終わるまで、多くの人々に愛され揺るぎない人気を誇りました。

そして2011年になり、35年の時を経て日本の技術によって蘇った『ファイヤーキング』。再び世界から、熱い視線を浴びることでしょう!