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2013 Dec.27
『世界は君を待っている!MBA留学とグローバルリーダーシップ』特別インタビュー Extra edition Vol.1 前編

ベンチャー企業の海外進出をサポートする!
公認会計士・井上智宏が描く「夢」

ご好評をいただいているMBAホルダーインタビュー。ここでは毎回、『世界は君を待っている!MBA留学とグローバルリーダーシップ』(中央経済社)の著者であるMBA留学経験者の方々にご登場いただき、「本では伝えきれなかった!」という熱い思いや「夢」について語っていただいています。そしてもちろん、「MBA留学のすばらしさを伝えたい!」という体験者は本書の著者以外にも多くいます。そこで今回は番外編!最新のMBA留学事情をお伝えするべく、ゲストに公認会計士であり、今年米国デューク大学大学院修士課程を卒業されたばかりの井上智宏さんをお招きしてお話をお聞きしました。MBA留学前は大手監査法人に勤務して公認会計士として活躍されていた井上さん。順調にキャリアを積み重ねていく中でどうしてMBA留学へと踏み切ったのか。前編では渡米=一大決心に至る経緯を辿ってみました。

聞き手:スルガ銀行d-laboスタッフ 和智

ベンチャー企業の海外進出をサポートする!公認会計士・井上智宏が描く「夢」 前編 ベンチャー企業の海外進出をサポートする!公認会計士・井上智宏が描く「夢」

「漠然とした将来への不安」から公認会計士に

井上さんインタビューの様子

和智井上さんは一橋大学の商学部在学中に公認会計士の試験に合格して監査法人に就職されましたね。公認会計士、そして監査法人という道を選ばれたのには何か理由があったのですか。

井上大学生時代、私は自分に自信が持てない学生だったんです。まわりを見ると、学生時代をエンジョイしようとサークル活動に精を出している人が多かったんです。その中で私は「このまま遊んでいても多くは得られないだろうな」と漠然とした不安を感じていました。そこで何かひとつ打ち込めるものはないかと思って見つけたのが資格を取るための勉強だったんです。それで、大学1年生のときから公認会計士の受験を始めて、4年生のときに合格しました。わかりやすく言うと「将来がこわかった」んです。「資格を取っておけば安心だ」みたいな安易な考えで目指したんですよ。

和智安易どころか、学生のうちに公認会計士の資格を取るなんて、しっかりした考えをお持ちだったんですね。私なんか学生時代はサークル活動にどっぷり浸かっていましたから(笑)。

井上サークル活動はサークル活動で、コミュニケーション能力が高まるし人間関係も多様になるので貴重な経験だと思いますよ。大学生時代の私は今のように会計の仕事を通じてグローバルな仕事をしようという発想はまったくなくて、かといって将来何をするべきかという知識もなかったので、手をつけやすい資格の勉強を始めたというだけです。守りに入ったという感じですね。監査法人に入ったのも、公認会計士の資格を取れば就職先は必然的に監査法人になる、というルートに沿っただけです。私が大学を卒業した2003年当時は売り手市場と言われていて、いわゆる四大監査法人のひとつに簡単に入ることができたんです。

和智監査法人の仕事というと、一般の人から見るとなかなかイメージしづらいと思うのですが、実務に携わっている公認会計士さんたちは具体的にどんなお仕事をされているのでしょうか。

井上企業には貸借対照表や損益計算書などが入った決算書というものがありますよね。で、会社の人がつくったその決算書を正しいものであると証明するのが監査の仕事です。たとえば年間100億円の売上がある会社の場合、その裏には何十何百万といった取引があるはずなんですね。監査法人はその無数にある取引の中からサンプルを200件、300件と選んで調べる。この取引には本当に請求書が存在するのか、出荷された履歴はあるのか、実際に書類や商品の現物を見に行ってチェックするわけです。その中で問題がなければ「全体として正しい」とお墨付きを与える。サンプルをチェックするという意味では食品の安全検査などをイメージされるとわかりやすいかもしれません。

和智お聞きしているとすごく地道な作業のように聞こえますね。

井上警察みたいに証拠物件を揃えて書類を作っていくといった仕事ですよね。ただ、ちゃんとチェックするにはその会社のビジネスがわかっていないといけない。クライアントがグローバル企業なら英語も使えないといけませんし、社長さんにインタビューして会社の事業計画や戦略などについて聞いたりもします。書類を見たり作ったりするだけでなく、プロフェッショナルとしてクライアントと交渉する能力も要求される。そういう意味ではビジネスパーソンとして総合力が要求されるおもしろい仕事です。公認会計士だと普通のコンサルタントでは見ることのできない取締役会議事録や経営会議の資料にも目を通すことができる。これは監査法人の醍醐味でしたね。

ハーバード大学のランゲージスクールへ

井上さんインタビューの様子

和智そうした仕事をしている中で、海外を意識し始めたきっかけは何だったのですか。

井上入社してしばらくは日本の伝統的産業に属するまったくのドメスティックな会社を担当していたんですが、そのあとに外資系の会社や海外進出している日本企業を担当するチームに入れてもらったんです。25歳くらいのときでしたね。ここでプロフェッショルな上司にすごく鍛えられました。英文メールひとつにしても何度もドラフト(推敲)して送るとか、成果物のレポートにしてもお客さまに喜んでもらえるクオリティの高いものを提出するとか、プロの仕事というものを教えてもらいました。そして、27歳のときにマネジャーに昇進し、マネジャー研修プログラムの一環として、ハーバードのランゲージスクールに1か月間留学することになったんです。夏休みの間、学生がいなくなった寮に住み込んで徹底的に英語のスピーキングをやらされるといったコースです。

和智では、そのランゲージスクールでMBA留学への思いが強まったのですね。

井上そうですね。ハーバードのランゲージスクールでは、海外では「黙っている日本人」は全く相手にされないということがわかりました。ブロークンでかまわないから自分の意見を言わないと若い子たちにも簡単に言い負かされてしまう。グローバルなコミュニケーションとはどういうものかがわかったし、それができるようになるにはこれまでの自分の殻を破って新しいフィールドに出て行かなきゃいけないと感じました。実は監査法人でグローバルな仕事をやっていると、いままで自分が日本人として教育を受けてきて身につけた力では太刀打ちできないといった場面に遭遇することがよくあったんです。たとえば外資でなく日本企業でもグローバル展開しているような会社だと、一緒に仕事をする相手がアメリカ人やインド人、タイ人だったりするわけです。そのメンバーを自分がリーダーシップを発揮してまとめあげられるかというと、当時の私にはそういった力はまったくなかった。将来を考えるとこれは絶対に必要なスキルだし、この力不足を何とか解消しなければと切実に感じてもいました。そこでMBA留学をしてソフトスキルとかリーダーシップを身につけようと考えたんです。会計や財務以外の経営戦略などの知識も得られるだろうし、海外に人脈も広がる。言うまでもなく英語力も伸びて、多くことを学べると思って留学を志したんです。

和智実際にMBA留学をされたのはそれから何年か経ってからですよね。

井上ランゲージスクールから帰って2年間は監査法人で働きました。それまでやっていた仕事に一区切りつけたところで退職しました。そして、MBA留学をしたあとは自分で会計事務所をやろうと思っていたので、本当にできるかどうか、語学の勉強をしながら試しに1年間、独立して仕事をしてみました。

和智MBA留学をするには資金と英語力の2つが必要となりますね。

井上英語力は地道に上げていって受験に備えました。TOEFLというMBA留学に必須となる英語のテストがあるのですが、1回の試験時間が4時間。私は受験準備の2年間でこのテストを計30回以上受験して、ようやく目標スコアを獲得するという大変な経験をしました。留学してからもわかったのですが、語学はよほど相性のいい人じゃない限り、一つひとつ積み上げていくしかないですね。資金も節約生活で地道に貯めていきました。在学中の2年間は学生ですから収入もなく、学校の授業料や生活費は貯金だけでは足りないので奨学金をいただきました。会社派遣でなく自腹の人はだいたいこんな感じじゃないでしょうか。

デューク大学に留学。授業はチームでディスカッション

井上さんインタビューの様子

和智留学先はノースカロライナ州にあるデューク大学ですよね。デューク大学を選んだ理由を教えてください。

井上まずひとつは、デューク大学のチームワークを重視するカルチャーですね。一人で座学に専念する学校ではなく、チームメンバーからフィードバックを得て、人間的に成長できる環境を志向していました。デューク大学はアメリカ人以外の学生が40パーセントを占めているのが特徴的で、多国籍の学生たちがグループワークでコミュニケーションを密にして勉強しています。いろんな国籍の人たちと交流しながら学べるのが魅力でした。それとカリキュラムが割とフレキシブルで、とくに専攻を決めなくても興味のある授業を選んで受けることができました。私は会計に関しては知識があったので、それ以外の起業関係やファイナンスの授業を取ることが多かったです。

和智アメリカ人以外の学生というと、どの辺の国が多いのでしょう。日本人の占める割合はどれくらいでしたか。

井上多いのは、インド、中国、韓国。あとはチリやコロンビア、ブラジル、アルゼンチンなどのラテンアメリカの学生が多かったですね。少ないのはヨーロッパの学生で、日本人は同学年ですと私の他に女性が1人いるだけでした。日本人が大勢いてかたまっているような学校には絶対に行きたくなかったので個人的はよかったのですが、MBA留学の意義を考えると全体としてもっと日本人にも行ってほしいと思いますね。学年で450人中、日本人がわずか2名というのは寂し過ぎます。

和智先ほどグループワークとおっしゃりましたが、やはり授業はディスカッション形式なんですか。

井上デューク大学では1年生のときにまず強制的にチームを組まされます。私が入ったのはアメリカ人3人、インド人1人、マレーシア人1人、それに自分の6人のチーム。男性は4名で女性は2名。この6人で授業の前に、平均で2時間くらい長いときで5時間以上、ディスカッションをするんです。その上で授業に臨んで、授業でまた話し合って湧いてきた疑問点などをみんなで解決していくといったスタイルですね。プレゼンテーションの授業などもこのメンバーで練習をする。1週間に4、5回はこのディスカッションを繰り返していました。

和智授業で学ぶ内容はどんなものだったのでしょう。

井上授業の課題そのものは、ファイナンスなどにしてもいわゆる世の中に出ているMBA本に書いてあるような基本的なものですが、それに関するケースメソッドを行うと、本の中にはない新しい発見があったりするんですね。私が監査法人勤務だったように、チームメイトはみんなそれぞれバックグラウンドを持っていますから、それぞれの視点で話すわけです。例えば、ラテンアメリカのマーケティング戦略を考えるケースがあった場合、インド人チームメイトが「インドでは、貧困層向けにポテトチップスを小分けにして売って成功している事例がある」と自身の経験を共有して、「じゃあ、ラテンアメリカでもインドの成功事例を応用して戦略を考えたほうがより合理的だね」と新しいアイデアを出したりします。本当の経験でなくても1回他人と議論しただけでもそういう考え方は身に付きます。それがディスカッションをしながらチームで学んでいくというやり方の良い点です。

仲間の協力と努力で英語を克服!

デューク大学留学時のチームメンバーとの写真
デューク大学留学時のチームメンバー

和智ネイティブのアメリカ人とのディスカッションは大変そうですね。

井上やはり英語では苦労しました。言いたいことがあってもうまく喋れないとつい黙ってしまいますよね。でも黙っていると「この人はやる気がない」と思われてしまう。何でもいいから喋らなきゃ、という感じでした。

和智チームの人たちに嫌な顔をされたりはしませんでしたか?

井上そこはアメリカ人のいいところで、チームメイトの中に1人、いかにもアメリカ人といった親切な女の子がいたんですよ。私が英語で困っているとわかったんでしょうね。あるとき「これからしばらくランチを一緒に食べよう」とメールをくれたんです。自分が相手になるから英語の勉強をしましょう、と。チームメイトの力を引き出そうとする配慮は、本当にありがたかったですね。

和智それはいいお話ですね。

井上あと、入学間もない頃に、台湾出身の先生からランチに招かれたことがありました。その先生はアメリカに来て数年で大学の教師になった人で、やっぱり英語ではすごく苦労したと話してくれました。英語が下手だから授業をしてもアメリカ人の学生は聞いてくれない。当然評価も低くて解雇されるおそれが出てきた。そこでいったん授業を休んで、半年間、授業で話す英語の特訓をしたと言っていました。学生を笑わせるためのジョークや想定される質問、その返答も含め、授業で話すことをすべて一度文章に落として、それをアメリカ人に添削してもらい、奥さんの前で何度も繰り返し喋って練習したと言うんです。そうして授業を再開したら、今度は学生からの評価がすごく高くなって自分に自信が持てたと、そう話してくださいました。これに励まされて、私もみんなの前で話すときは、どんなに時間がかかっても、話す内容を全部文章に落とし込み、何度も練習して臨むようになりました。困ったことがあったら、とりあえずはそれに腰を据えて取り組むことが重要なんだという気付きを与えていただきました。

和智先ほどもおっしゃっていた通り、英語はやっぱり積み上げが大事なんですね。

井上誰もが苦しみを経て伸びていくんじゃないでしょうか。まあ、話すのが好きな人は有利だと思います。おしゃべりな人は日常が英語の特訓になりますから。私の場合は学んだことを地道に積み上げて、それを練習して実戦の場で披露するということを繰り返していった。そうするうちに自分の英語の問題点などもわかってきた。どうしたら相手に伝わりやすくなるのか、相手に好意的に受け止めてもらえるのか、そういうポイントも何となくわかってきました。以前は1対1でしかきっちり話せなかったのが、複数相手でも話せるようになっていきました。チームでは課題ごとに持ち回りで誰かがリーダーになって議論を仕切ったり、内容をまとめたりするんですけれど、そういったこともできるようになりました。

和智チームで学んでいくなかで大変だったエピソードなどはありますか?

井上うちのチームはそうでもなかったけれど、やっぱりケンカをするんですよね(笑)。で、その対策としてデューク大学では1年生の各チームには2年生のメンターがついて相談に乗ってくれるんです。「時間通りに来ないメンバーがいる」といった問題があったとしたら、「僕たちも同じようなことがあったよ」、「そういうときはこういうルールを決めてみたら?」と。ソリューション自体はたいしたものじゃないんだけど、こういう話を聞くと「ああ、昔から同じようなことはあったんだな」とみんな気付くんです。もっと大人にならなきゃ、とお互いに感じてチームがうまくまわるようになるんです。

和智逆にすごく仲良くなる相手もいたりするんでしょうね。

井上私はチームメイトのインド人と非常に仲が良くて、「会計を教えてくれ」と頼まれて家に教えに行ってあげたりしていました。お礼にカレーやラッシーをごちそうしてもらいましたね。

和智やっぱり会計では他の人より上をいっていたんですね(笑)。

井上一応会計士ですからね。会計についてだけは、みんなを「おお!」と驚かせていました(笑)。

※地道な努力で英語力を積み上げ、ソフトスキルをアップさせていった井上さん。後編ではインド、中国への交換留学、そして卒業前に実現したアップルCEOティム・クック氏との面会などのエピソード、帰国後のこれからについてのお話をお届けします。

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井上 智宏 氏

株式会社ベンチャーインク 代表取締役・ベンチャーインク国際会計事務所 公認会計士・税理士
1980年、岐阜県生まれ。2003年、一橋大学商学部卒業後、プライスウォーターハウスクーパース(現あらた監査法人)に入所。2006年、公認会計士登録。2010年、公認会計士事務所設立。2011年、株式会社BBC(現ベンチャーインク)設立、代表取締役社長に就任。同年、米国デューク大学MBA(フュークアスクールオブビジネス)入学。2012年、インド商科大学院(ISB:Indian School of Business)に交換留学。2013年、デューク大学MBA卒業。同年、北京大学経営大学院に交換留学。日本帰国後はベンチャーインク国際会計事務所/株式会社ベンチャーインクの営業を再開。「日本発グローバル」をめざし、ベンチャー企業、中小企業のグローバル支援に取り組んでいる。

公式サイト
http://ventureinq.jp/

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https://www.surugabank.co.jp/d-bank/services/visa_debit.html

文 中野渡淳一
写真 大井成義