スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

特集

特集TOP

2014 Aug.22
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.44

「アドラー心理学」が現代日本人の心に響いた理由

昨年末に発売された『嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)が37万部のベストセラーになるなど、オーストリア出身の心理学者アドラーが注目を集めています。フロイトやユングと同じ時代に生きたアドラーが、なぜ今になって現代の日本人の心に響いているのでしょうか。アドラー心理学にまつわる多数の著書があり、30年にわたってアドラー心理学の研修を行ってきた岩井俊憲さんにお話を伺いました。

「アドラー心理学」が現代日本人の心に響いた理由

生き方・働き方が多様化する現代に合致したのがアドラー心理学

岩井さんによると、日本人には2つの性質があると言います。

1つは「みんなと同じでなければならない」という同調圧力。出る杭は打たれるという言葉があるように、日本では“右に倣え”がよしとされてきました。もう1つは「みんなに好かれたい/嫌われたくない」という承認欲求・失愛恐怖。他人からの承認によって自分の居場所を確保してきたのです。

しかしこの2つの性質は、グローバル化や生き方・働き方が多様化してきている現代の日本の社会では成り立たなくなってきているようです。

「いわゆる村社会などの同質社会では、この2つの性質が適していました。しかし異質なものが複雑に絡まり合う現代社会においては、対人関係でギクシャクしてしまう要因になります。それに対して、アドラー心理学は、『人は一人ひとりユニークなもの』、『自分は自分でモチベートする』ということを言っています」

つまりアドラー心理学が受け入れられる背景には、日本人が避けては通れないグローバル化や生き方、働き方の多様化があったと言えるのだそうです。

「以前、彼氏がいる女性がカウンセリングに来ました。その彼氏は、自分と会うとなぜか不機嫌でいるようなんです。彼女は『私のせいだ』と思って彼のために何かをしないといけないと言うのですが、何かをすれば『ウザったい』と煙たがれる。だから彼女に言いました。他者が不機嫌であるのは、他者に不機嫌である理由があるのであって、自分とはまったく関係ない、と。でも彼女には理解できないんですね」

岩井さんが話してくれたこの例のように、日本人は問題を客観的に見ることがとても苦手なようです。これに対して、アドラー心理学では「課題の分離」というものを提唱しています。「他者が不機嫌であるのは、他者に不機嫌である理由があるのであって自分とはまったく関係ない」という部分です。

この「課題の分離」ということができるようになれば、なぜ今まで悩んでいたのだろうと不思議になるくらい、物事が解決していくのではないでしょうか。

また、現代社会には『こういう“原因”があるからこういう結果になる』というロジックが刷り込まれているようです。岩井さんは続けます。

「それに対して、アドラーはアンチテーゼを投げかけています。人間の意思というのは、“原因”ではなく、もっと未来志向であり目的志向のはずです」

つまり、原因論で物事を考えることは「人の勇気をくじく社会」に繋がり、目的論で物事を考えると「勇気を与える」社会に繋がるのだそうです。

どちらの方が、生きやすい社会なのかは、多くを考えなくても自明なことだと思います。生きづらい現代社会だからこそ、「アドラー心理学」を勉強して実社会に活かしてみるのはいかがでしょうか。

取材協力:ヒューマン・ギルド

文 遠藤由次郎