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2014 Sep.24
Dream & Passion
~輝ける女性たちの肖像~ Vol.12

-フリーダイバー・岡本美鈴さんに教わる「チャレンジし続ける楽しみ」-
“進化したい”という思いが、海へと潜らせる

自分らしく活き活きと働く、素敵な女性たちを紹介する「Dream & Passion」。12回目のゲストは、フリーダイバーとして活躍する、岡本美鈴さん。フリーダイビングとはエアタンクを使わず、身体ひとつで海に潜るスポーツ。団体・個人で、深度や潜水距離を競います。そんなフリーダイビングを岡本さんがはじめたのは、30歳のとき。3年後の2006年には、日本記録を更新。その後も、世界選手権の団体戦で金メダル、個人で銀メダルを受賞するなど、数々の記録を樹立しています。2014年8月現在、自己記録は水深90mで、個人種目・世界歴代3位!9月の世界選手権を前に、今までの軌跡を追いながら、ダイビングの魅力を中心に教えていただきました。

聞き手:スルガ銀行d-laboスタッフ

“進化したい”という思いが、海へと潜らせる

意外にも、泳げなかった子ども時代

岡本さんインタビューの様子

d-labo優雅に海に潜る姿を“リアル・マーメイド”とたとえられている岡本さんですが、小さな頃から、運動神経はよかったのでしょうか?また、都内出身とのことですが、自然が好きだったなどのエピソードがあれば、教えてください。

岡本実は大人になるまで、水のなかで足のつかないところは不安…というくらい、泳げませんでした。自ら進んで海に遊びに行くこともなかったし、泳げるようになりたいという強い思いもなくて。運動は好きでしたが、体育の成績は3か4、ほかの科目もほとんどが3。ズバ抜けて得意なものも、好きなものもありませんでしたね。

d-laboそんな平凡な子どもだった岡本さんが変わるきっかけとなったのは、いつ頃でしょうか?

岡本高校生のときに新体操部に入部したのが、没頭することの楽しさを知った最初のできごと。新体操は柔軟性が欠かせないので、遅くとも中学校の部活からスタートする人がほとんどです。わたしは比較的遅いスタートだったわけですが、それでも、やってみたくて(笑)。没頭するほどに、身体が柔らかくなったり、新しい技ができるようになるのがうれしくて、授業中も競技のことばかり考えていました。

d-laboすごい熱中ぶりだったんですね。高校卒業後も新体操は続けられたのですか?

岡本新体操は選手層が厚く、3年間活動しただけで国体に出られるような競技ではありませんし、どんなに頑張っても体型的な向き不向きもあります。あれこれ考えて、短大に進学するときに終わりにしました。

d-labo短大を卒業後、会社員となった岡本さんは、1995年の通勤途中に地下鉄サリン事件に遭遇したとか…。大変な経験をされたと思いますが、その頃は、どのような生活をしていましたか?

岡本子どもを連れて行く野外教育キャンプのボランティアスタッフを、何度か経験しました。そのような新しいことをはじめたのは、事件後に「明日はないのかもしれない」という意識が生まれたからです。子どもたちが自然と触れ合い、たった10日間ほどでたくましくなっていくのを目の当たりにして、自然の偉大さを感じました。なんらかの形で自然と関わっていく人生にしたいな…と、いう気持ちが芽生えたのは、ボランティアスタッフの経験がきっかけです。

小笠原で、イルカと泳ぎたい!
憧れを胸に、初ダイビングにチャレンジ

 岡本さんインタビューの様子

d-laboはじめて海に潜ったのは、1999年の20代半ばだったとか。そのとき岡本さんを海に向かわせたのは、なんだったのでしょうか?

岡本ある日、深夜にテレビをつけたら偶然放送していたのが、小笠原特集。小笠原の青い海のなかで、特別泳ぎ慣れているわけではなさそうなレポーターの女性に、野生のイルカが近寄っていく姿が目にとまりました。こんなに素晴らしい場所が日本にまだ残っていたのかと衝撃を受けて。自分も同じ体験がしたいと、小笠原行きを強く心に決めました。

d-labo岡本さんは当時、25メートルを泳ぐのがやっとだったということでしたが、チャレンジ精神が旺盛なんですね…!

岡本はじめの一歩は、大切ですよね。「これがそろったらやってみよう」、「いいタイミングがきたらやってみよう」と、考えがちなわたしですが、このときは、とにかくイルカが見たかった。「最初で最後だから、行ってみよう」という気持ちで、決断しました。そこまではよかったのですが、いざ小笠原に行くと、息を吸うためのシュノーケルを渡されてもうまく使えず…。身体を浮かせるためのライフジャケットを身につけて、やっと海に入ることができました。

d-labo念願のイルカをみたときは、どんな気持ちでしたか?

岡本小笠原の海は、とにかく感動的でした。“ボニンブルー”と称される深い青と、水族館でしか見たことがない生き物たち。水面付近から見ていると、海の深くで、自由に泳ぐ地元の方々がイルカとくるくる回ってたわむれていました。餌付けをしているわけではないのに近づいてきて、アイコンタクトしながら泳いでいるので、自分もそこに行きたいな…と思いました。

d-laboそれがきっかけで、小笠原に通うようになったんですね。

岡本その後は年に2~3回、小笠原へ。このときも、「今年が最後で、来年はもうないかもしれない」と思って通い続けました。普段も、空いた時間に考えるのは小笠原のことばかり。今の季節、海はどんな様子だろう、ほかにどんな魚がいるだろう…って。まるで、片思いをしているような感じでした(笑)。

d-labo高校生時代に、新体操をしているときと同じような熱中ぶりだったんですね。

岡本仕事にも張り合いが出たし、当時のわたしにとって小笠原は、“人生を充実させてくれる場所”。そこでの出会いが、フリーダイビングにも、つながっていきました。

距離が伸びるごとに、“進化”を実感できる。
それが、フリーダイビングにハマった理由

岡本さんインタビューの様子

d-labo2003年に30歳でフリーダイビングをはじめたとのことですが、当時は今よりも、フリーダイビングの認知度が低かったと思います。競技との出会いを、教えてください。

岡本小笠原で知り合った仲間たちと、沖縄の海に行く機会がありました。その帰りの飛行機でトラブルがあり、1時間半ほど、機内で足止めをくらってしまい…待ってる間に隣の席の方と話をしたら、なんと、フリーダイビングの日本代表選手の方でした。当時は、女優の高樹沙耶(現・益戸育江)さんがハマっているスポーツという程度しか知識がなかったのですが、イルカと一緒に泳ぐコツがあれば教えてください、と積極的に聞いてしまいました。

d-labo偶然の出会いが、競技への入り口だったんですね。

岡本イルカと泳ぎたいなら、フリーダイビングの練習をするといいとアドバイスいただき、離陸前から羽田空港に着くまでの時間すべて、フリーダイビングの話をしていただけました。熱心に話していらっしゃる姿を見て、そんなに楽しいスポーツなのか…と考えていたら、東京で活動しているフリーダイビングクラブの代表者を、電話で紹介していただけるという流れになり…。話がどんどん進むので、「えっ、今!?」と驚きました(笑)。

d-laboそんな急展開にもかかわらず、フリーダイビングをはじめた岡本さんも、すごくアクティブですよね。

岡本まずは形からということで機材をそろえ、ダイビングスクールに通いはじめました。当時はあくまでも、イルカと泳ぐことが目的。まさか選手になるとは、1ミリも思いませんでした。

d-laboとはいえ、2年後の2005年には、もっとも大きなフリーダイビングの大会である、AIDAフリーダイビング世界選手権へ出場しています。この大会に出るには、国内の年間ランキングで3位までに入らなければならないとか。熱心に取り組まれていたからこそと思うのですが、フリーダイビングの魅力は、どこにあったのでしょうか?

岡本それまで泳げなかったので、足ヒレを使ってスーッと進むだけでも、その心地よさに感動しました。なにより、潜った深さが数字になるので、自分の“進化”が具体的にわかる。新しい世界がどんどん広がっていく感じがして、おもしろくなって没頭するうちに、選手になっていました(笑)。

d-labo2005年の世界選手権では、初出場にも関わらず、自己ベストを記録しています。そのときのことを教えてください。

岡本フランスでの大会だったのですが、強い海外の選手が大勢いますし、英語も話せなかったので、圧倒されっぱなし(笑)。そんな緊張のなかで、自己ベストを塗り替えて52メートルも潜ることができました。感じたのは、「やり遂げた!」という達成感と、「また進化することができた」という感動。そして、「もっと先を見たい」と、強く思いました。

d-laboちなみに、フリーダイビングを極めることで、イルカと泳ぐ夢は叶ったのでしょうか?

岡本ほかにダイバーがいないような深い場所で、一緒に遊ぶことができました。ジンベイザメと泳いだこともありますよ。ジンベイザメは本当に大きくて、壁のようでした。いつまでも、体の斑点模様が目の前を通り過ぎていく。これも同じ、ひとつの命なんだな…と、すごく神秘的な気持ちになりましたね。小笠原でそのような経験をして、海の生き物たちと泳ぎたいという希望は、すっかり満たされ、その後は、競技が中心になっていきました。

さまざまな景色と感情を経験するフリーダイビングは、
まるで、ひとつの旅のよう

岡本さんインタビューの様子

d-labo初出場の翌年、2006年の世界選手権では、61メートル潜り、初の日本記録を樹立されました。そのときは、日本一を目指すという気持ちで挑んだのでしょうか?

岡本わたしは、競争心が強いタイプではなく、自分の“進化”を求めている感じです。それが結果として、日本記録になりました。記録が出たときには、大号泣でしたね。フリーダイビングは、試合会場に辿り着くまでが、意外に大変。遠征費のほか、仕事やプライベートの調整もして…。それだけに、いろいろな思いがこみ上げてしまい、周りからは“クライング・クイーン”なんて笑われました(笑)。ここで日本記録を出せたことで「30歳まであまり泳げなかった人間でも、こんな記録が残せるんだ!」と思えましたし、その先にものびしろを感じて、モチベーションも上がりました。

d-laboさらに2010年には、世界選手権の団体戦で日本初の金メダルを受賞。昨年は、個人戦で日本人初の銀メダルを受賞。多くの記録を塗り替えてきた岡本さんですが、トップとしてのプレッシャーを感じることはありましたか?

岡本フリーダイビングは無理をし過ぎると、ブラックアウト(水中での失神)してしまう危険性もある競技。プレッシャーを感じるのではなく、そのときそのとき、できることを全力でやっています。

d-labo実際に潜っているときは、どのような感覚なのでしょうか?

岡本フリーダイビングには、リラックスが欠かせません。身体が緊張していると、それだけで筋肉が体内の酸素を消費してしまいます。行きは全身の力を抜くことが大切。わたしの場合は、瞑想に近い精神状態で潜っていきます。このとき、雑念が浮かんでも、車窓の景色が過ぎていくように受け流します。理想は、時間の経過も忘れてしまうような状態。肺のなかの空気が小さくなっていくのを感じながら、どんどん深く潜ります。

d-laboそのときは、苦しさはあるのですか?

岡本たとえば、息を30秒止めようとしたときに、最初の10秒は苦しくないですよね。フリーダイビングでは、その苦しくない時間を伸ばす練習を行ないます。全身の筋肉を弛緩させていると、水と肌の境がなくなって、自分が溶けていくような感じがします。青い海が宇宙で、その一部になったような、不思議な感覚を味わえますよ。

d-labo帰りは、どのようなことを考えているのでしょうか?

岡本帰りも、最初は苦しくないのですが、だんだん苦しくなってきたら、地上でまた会いたい人たちのことや、楽しいことを考えながら、水面を目指します。身体は、死に近づいているような極限状態。それでも、気持ち次第で動いてくれます。人間の可能性を感じますね。潜って上がってくるまでたった3分ほどですが、さまざまな感情を経験して、ひとつの旅をしてきたような感覚を覚えます。

d-labo海のなかにひとりでいると、日常とは考えることが違ってくるのですね。

岡本潜った場所を深いと思っていても、実際はもっともっと先がある。地球レベルで見れば、ここはまだまだ浅い場所なんだな…と感じます。それに、自分の体調がよくても、海のコンディションが整っていなければ挑戦できない。潜れるのは、自然が受け入れてくれたときだけ、ともいえます。そういう点も、海洋競技ならではのロマンです。

d-labo普段潜るときには、試合とは、また違ったことを考えているのでしょうか?

岡本試合のときは周りを見ている余裕はありませんが、普段は、海中の光景を眺めています。水中でプランクトンが落ちていくのを見ていると、暗い海の底に向かって、星が飛んでいくように見えますよ。イワシのトルネードに巻かれたこともありますね。一度として同じダイブはないという点も、フリーダイビングの魅力です。

フリーダイビングは、
40・50代になっても挑戦し続けられる競技

岡本さんインタビューの様子

d-laboラストは、今後のことをお聞きしたいと思います。現在は、競技以外でも、海に関する活動を行なっているとか…。

岡本「マリン アクション」という、海洋保全PR活動を行なっています。これは、海洋生物・海洋保全のための調査研究を行なうNPOエバーラスティング・ネイチャー(ELNA)とのコラボレーション活動です。各地の海を訪れていると、プラスチックのゴミでいっぱいのビーチなど、ショッキングな光景を目の当たりにすることがあったので…。一人でゴミを拾っているだけでは限界があると考えて、活動をスタートしました。

d-labo具体的には、どのような活動を行なっているのでしょうか?

岡本メインは、マリンスポーツを行なうアスリートを対象にした、啓蒙活動。自分が海に対して考えていることを周りの選手にシェアしてもらったり、なにかできないかと思っている選手たちに、ウミガメ卵の里親プログラムの活動を伝えたり。一般の方に向けては、年1回のトークショーを行なっています。海をキレイにするためには、ビーチにいる人だけでなく、川の上流に住む人たちや都会にいる人たちも、ともに行動することが大切。トークショーが、海のことを考えるきっかけになってくれれば…と願っています。

d-laboフリーダイビングを通して、さまざまな活動をなさっているんですね。9月16日から27日までイタリアで世界選手権がありますが、現在もっとも力を入れているのは、そこに向けた練習でしょうか?

岡本実は、8月は一度も海洋練習ができていない状況です。神奈川に練習拠点があるのですが、今の拠点は風の影響で、ボートが出せない日が多くて。それで、新たな練習環境を持ちたいと考え、週に数回、真鶴に通っています。これまで良い戦績に恵まれたのは、きちんと練習できてきたからこそ。今後、たとえわたしが競技をやめるとしても、他の競技者が東京近郊で練習できなくなってしまう状態は、絶対に避けたい。理想は、わたしがいなくても多くの人が練習を継続できて、地元の方々にも受け入れていただき、地域活性にも貢献できて…という環境をつくること。後輩や仲間のためにもと考えて、地元の方々に協力をいただきながら、奮闘しているところです。

d-labo今年の世界選手権は団体戦に参加するとのことですが、優勝すると、団体で3回目の金メダルになりますよね。41歳の岡本さんですが、まだまだ挑戦が続いているのは、すごいことだと思います。

岡本現在の世界記録を持っている女性は、ロシアのナターリア選手。彼女は51歳ですが、毎年進化して世界記録を塗り替えています。年齢面でも、夢があるスポーツですよね。わたしも、引退は全く考えていません。

d-labo国内の選手も、30・40代の方が多いですよね。10代から20代前半の選手が多い水泳とは違うな…と思うのですが、理由はあるのでしょうか?

岡本筋肉は酸素消費量が多いので、フリーダイビングではあまり必要としません。わたしも、フィンをキックするインナーマッスルだけは鍛えていますが、筋トレはしていません。スタートするときも、なるべく心拍数を落として、海に入ります。それに、ブラックアウトしないように自分の限界を見極めたり、心を落ち着かせるのは、年齢を経た人の方が得意。フリーダイビング愛好者や競技者には、社会人になってからはじめたという人も、多いですよ。

d-labo今日は、岡本さんの活動とともに、フリーダイビングや海で泳ぐことの楽しさを教えていただきました。今回、マリンスポーツに興味を持った読者にメッセージがあれば、お願いします。

岡本普段、水に入ることがない方は、水に入るというだけで、ちょっと勇気が必要ですよね。今は、水泳でもダイビングでもドルフィンスイムでも、レッスンできる教室がたくさんあります。想像しているよりも、敷居は低いはずです。水泳レッスンに通って自由に泳げるようになるだけでも、自分の世界が広がっていくと思いますよ。

d-laboありがとうございました。9月の世界選手権、応援しています!

Information 1

岡本美鈴公式サイト

9月16~27日にイタリアで行なわれる世界選手権の様子や結果は、公式Facebookで確認できます。また、公式サイトのギャラリーでは、岡本さんがイルカやジンベイザメと泳ぐ姿や、過去の世界選手権での様子を見ることが可能です。

岡本美鈴公式サイト

公式サイト
http://mimidive.com/

公式Facebook
https://www.facebook.com/freedivermisuzu

Information 2

プールナ フリーダイビング スクール

2012年に岡本さんが開設した、常設のフリーダイビングスクール。プールと海、両方でのレッスンがあり、全くの初心者でも参加可能。「全身の力を抜く練習をすると、深さとは関係なく、水に溶けるような感覚が味わえます。『水のなかがこんなに気持ちいいと思わなかった!』と感動して涙する生徒さんや、30・40代になってから、できなかったことができるようになることで、『人生観が変わった』という生徒さんもいますよ」と岡本さん。

公式サイト
http://www.mimidive.net

Information 3

浦安市屋内水泳プール

岡本さんがはじめて泳ぎ方を教わり、現在もトレーニングを行なっている、千葉県浦安市の公営施設。今回の取材・撮影(屋外プールでの画像)にも、ご協力いただきました。

公式サイト
http://www.urayasu-kousha.or.jp/taiiku/pool/

Information 4

ダイバーズローン

ダイビングの魅力は伝わりましたでしょうか?この記事を読んで、「ダインビングを始めてみたい!」、「やっぱり自分の機材が欲しい」という人にオススメなのが、スルガ銀行の「ダイバーズローン」。ライセンス取得、ダイビング機材購入資金などにご利用いただけます。返済回数は最高84回まで。電話やウェブからお申し込みいただけます(銀行への来店不要)。

※審査の結果、ご希望にそえない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

詳しくはこちらから。
https://www.surugabank.co.jp/reserved/landing/diving/

撮影(屋外プールでの画像) akiko.k