スルガ銀行 Dバンク支店

SURUGA d-labo. Bring your dream to reality. Draw my dream.

特集

特集TOP

2015 Aug.13
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.97

生物ライター平坂寛さんの「舌で知る生物情報」。
「誰も食べたことのないものこそ、食べたときのショックが新鮮なんです」

ワニガメを抱える平坂さん

日本各地に生息する外来生物や謎に満ちた深海魚など、さまざまな生物を「捕獲しては食べる」というユニークな活動をライフワークとしている平坂寛さん。その目的は「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「触覚」、そして「食べて味わう=味覚」といった人間の持つ五感を駆使してその生物を知ること。「食べてみてはじめて知ることがある」という平坂さんに、活動中のエピソードや、そもそもどうして珍しい生物を「捕獲して食べる」ようになったのか、その経緯についてお聞きしました。

生物好きは子どもの頃から

平坂さんの著書『外来魚のレシピ 捕って、さばいて、食ってみた』

昨年刊行した『外来魚のレシピ 捕って、さばいて、食ってみた』が好評の平坂さん。こんな活動をしているくらいだから、子どもの頃からさぞや生き物が好きだったのでしょうと尋ねてみると、やはり「物心ついた頃から生物が好きでした」というお答をいただきました。

「昆虫でもザリガニでも、捕まえては飼って、かわいそうなくらいいじり倒していましたね」

五感を用いて生物と接していたのも当時から。匂いを嗅いでみたり、鳥だったら鳴き声を覚えていたりしたそうです。

「虫から入って、学年が上がっていくにつれてトカゲやヘビにも手を出していきました。釣りも覚えて……小学生のときにはブルーギルやブラックバスなどを釣って食べたりしていました」

なるほど、それでそのまま生物ライターへの道に?かと思ったら「実は中学で一度とまったんです」とのこと。

「中学や高校になると、まわりの目というものが気になり出しますよね。あいつ爬虫類おたくだぜなんて思われたら気持ち悪がられるし、女の子にももてない。だから中高時代は自宅でひっそり図鑑を眺めるくらいで、学校では普通の人の皮をかぶってカモフラージュしていました」

世をしのぶ仮の姿でいたのは高校卒業まで。琉球大学の生物学科(海洋自然学科)に進学すると「はじけちゃいました」。

「僕が学んだのは海洋生物だとか、南国の生物を扱う学科なんです。まわりがみんな生物好きだから隠す必要がなくなったんですね。で、先輩や友人たちと海に遊びに行っては釣った魚や捕まえた珍しい生物を食べるようになっていったんです。先輩に聞いても食べたことがないようなものだったら試しに食べてみたり。意外とおいしかったり、まずかったり、発見があるんです。それだけじゃなくて生物によって生態の特徴というのが味や肉の質に出るんだな、ということに気が付いた。こうなると、おいしいとかまずいとかいうのとは違う次元でおもしろくなってくるんですね。食べることでその生物のいろんな情報を内側から知ることができる。生物好きにとってその生物について理解を深めるということはいちばんの喜びなんです。それがどんどんエスカレートしていって、こわいものがなくなっていったという感じです」

食べたことのないものというと、心配なのは食あたり。そのへんはどうだったのでしょうか。

「図鑑を見れば毒があるかないかは載っているんで、だいたいのところは大丈夫です。ただ情報の少ない深海魚や謎のナマコとかはちょっとこわいですね」

はじめてのものを食べるときは「頭の中でどんな味かシミュレートします」。

「たとえば、カニとか伊勢エビとか甲羅がかたいやつっておいしいじゃないですか。だからガードがかたいやつはおいしいだろう、と。まあ、だいたいはずれるんですけどね。たいていは相手が一枚上をいっていて、ああ、こうきたか……と」

大学院生時代からフリーの「生物ライター」として活動

巻き貝

嬉しいのは特徴的な味や食感。味がなかったり、普通においしかったりすると「発見も感動もない」。

「食べて残念だったのは二枚貝のカワヒバリガイ。出汁を全部抜ききったみたいに味がなくてリアクションに困りました。あとはカブトエビ。見た目にインパクトがある生き物なので味もさぞやと思ったら、これも味がなくてがっかりでした」

「まずさ」のチャンピオンは「何の処理もしていない沖縄のアフリカマイマイ」。挑戦したのはサザエ風のつぼ焼き。よく焼けているかと食べてみたところ「生臭さ」と「ぬめり」に閉口したとか。

「噛めば噛むほどぬめりが出てきて、一匹飲み込むのに大変でした。元々は食用で持ち込まれた外来生物ですけど、人にはとても勧められませんね」

どうしてこんなにまずいのだろう。考察の結果、導き出した答は「天敵から身を守るため」。アフリカマイマイはカタツムリの一種。殻は薄く、身はやわらかく動きも鈍い。それなのに沖縄で大繁殖していられるのは「このぬめりのおかげだと思います」。あまりにまずいものだから、カラスもマングースも「あれは駄目なやつだ」とあきらめてくれる。これは自分で食べてみたからこその「発見」です。

それにしてもこれだけの生物好きなのだから、研究者になる道もあったのでは。事実、平坂さん自身もそのつもりで大学院にまで進んだといいます。それがフリーランスの「生物ライター」となったのは何か理由があったのでしょうか。

「研究者になれば最先端の立場でいろんな生物に触れられるかなと思っていたんですけど、実際の研究の現場というのはそんなにロマンのあるものではないんですね。それが大学と大学院で学んでいるうちにわかってきたんです。だったらフリーになって日本国内や海外を飛びまわった方がいろんな生物に触れられる。あとは、本を書きたいという夢があったんですけれど、これも何も学者にならなくても、ライターとして書けばいいじゃないかと気が付いたんです。今の時代はネット上に文章を書く場が転がっていますしね。それで大学院にいた頃から書き始めて、出版社から本を出していただけるようになりました」

本業は「生物ライター」。ただしテレビやある種のメディアでは「珍生物ハンター」などと紹介されてしまうことも……。

「テレビの仕事だとお笑い芸人さんに珍しい物を食べさせるといったような役回りが多いんで、そういう芸風にとられがちなんですけど、自分ではいたって真面目に生物全般について書いていきたいと思っています」

深海魚に興味を持ってもらえたら

深海魚

今も長崎を拠点に国内外を飛び回っている平坂さん。こうした活動をつづけていて難しいのは「法律に触れないように捕まえること」だそうです。魚類には種類によって禁漁期が設けられていることがあるし、釣り以外の方法を用いる場合は漁協との交渉も必要になってきます。もっとも難しいのは陸上生物。哺乳類や鳥類は「基本的には手出しできない」といいます。

「いちおう自分でも狩猟免許は持っているんです。でもハンティングの対象となる動物以外は獲れないし、地元の猟友会以外の場所では手続きをして許可を取らなきゃ狩猟はできない。その点、魚の方がまだ捕まえやすいですね」

この秋に刊行される最新刊は深海魚がテーマ。登場する魚のほとんどは自分で船をチャーターして釣り上げたものです。

見たことのない魚であれば「売られているものでも試してみます」。

「たまたまふらっと立ち寄った市場で珍しいものがあったら高くても安くても買います。へたするともう一生出会うことがないかもしれない、一期一会だと思って」

『外来魚のレシピ 捕って、さばいて、食ってみた』は「基本的に読んでみて楽しんでくださいというのがテーマ」。実はそこには「笑って読むことで若い人なんかに外来生物について考えてほしい」という「裏テーマ」もあったといいます。新刊で扱う深海魚は「普通の人には手が届かないように見えるけれど、釣り道具を揃えれば次の週末にも釣ることができるもの」。

「この本ではお子さんたちに深海魚に興味を持ってもらえればと思っています。僕の書いたものをとっかかりに将来は研究者になって、深海魚の謎を解いていってくれたりしたら嬉しいですね」

Information

つりダイスキローン

現在、深海魚釣りに挑戦中という平坂さんのお話、いかがでしたでしょうか。「つりダイスキローン」は「もっと釣りを楽しみたい」という社内の声から生まれたローンです。ロッドやリールはもちろん、タックルや魚群探知機、ツアー資金など「釣り」に関するものなら全てが対象。ボートの購入費や船舶免許取得費用、メンテナンス費用やマリーナ使用料などにもご融資。返済は最高120回。ご自分に合った返済プランを組み立てることができます。
※審査の結果、ご希望にそえない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

平坂 寛(ひらさか ひろし)/生物ライター

1985年 長崎県生まれ。ライターや生物観察・捕獲の案内人として雑誌、web、テレビ番組などで活動。モットーは「生物を五感で知ること」。著書に『外来魚のレシピ 捕って、さばいて、食ってみた』(地人書館)がある。学生時代、沖縄でのフィールドワーク中に外来魚の繁栄ぶりに衝撃を受けて以来、各地で外来生物の実態を視察することがライフワークの一つとなっている。

blog いきものいきもの