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2016 Dec. 8
Topic on Dream ~夢に効く、1分間ニュース~ Vol.158

出発前から食後までスマートに。プロに学ぶ会席料理のマナー

懐石料理

ビジネス、プライベート問わず、様々なシーンで行なわれる会食。食べなれないものが出る店や高級店に行くとマナーに戸惑うこともあるはず。

そこで今回は京王プラザホテルにある懐石料理店「蒼樹庵(そうじゅあん)」の女将、土屋陽子さんに会席料理のマナーについて教えていただきました。

会席料理とは? 行く前の準備での注意点

懐石料理店「蒼樹庵」

「会席料理」とは“おもてなしの席” “お酒の席”という意味を持つ日本式コース料理。室町時代から江戸時代にかけて発展したと言われる「本膳料理」を簡略化させたものだそうです。同じ読みで「懐石料理」がありますが、こちらはお茶席の前にいただく食事から生まれたと言われています。

献立は「懐石料理」同様、一汁三菜が基本になっています。

さて、会席料理の場に行く準備にも気をつけたいことがあります。

事前の準備で気を付けたいこと

  • 服装はTPOを考えて選ぶ。お座敷の場合は、短すぎるスカートやジーンズは×。ワンピースやスーツを選ぶのがスマート。
  • 繊細な料理の香りを妨げる強い香水は×。
  • 事前に会の趣旨と参加者、席順を確認しておくとお店についてからスムーズに席に着くことができます。
  • 和室での素足は失礼にあたるため、靴下やストッキングを持参しましょう。

以上の4つのことに留意して準備しましょうね。

お店に到着~着席までの心がけポイント

会席料理は和室でいただきますが、靴を脱ぐ場合は正面を向いて靴を脱ぎ、一度上がってから靴の向きを直すのが正解。ただし、お店の人が靴箱に入れたり、向きを直したりしてくれる場合は、自分で直さなくても大丈夫です。また着席するときは、勧められてから座るのが基本だそうです。

「接待の時は、事前にお店側に“接待する側”“される側の人数や内訳”など伝えておくとスムーズです。上座下座を間違ってしまうと、料理をサービスする順番や帰りに上着や靴を出す順番など、すべてが狂ってしまいます」

通常、上座は入り口から遠い席、下座は入り口に近い席を言います。和室では、床の間を背にした席が一番の上座、床棚の前の席が次席になるのだそう。混乱しないためにも、事前に部屋の配置も確認しておくとスムーズかもしれません。

また席に着くときにも注意すべきポイントがいくつかあります。

「蒼樹庵」の個室
「蒼樹庵」の個室

席に着くときの注意ポイント

  • 挨拶:座布団の左横に座って挨拶をしてから、座布団に座ります。
  • 荷物:大きな手荷物はクロークに預け、預けられない場合は大きめのバッグは左足元の床、掘りごたつの場合はくぼみの部分に。小さめのバッグは椅子の背もたれ部分に置きましょう。
  • 座り方:テーブルとおなかの間に、握りこぶし程度の間隔をあけて。また、背筋を伸ばすと美しく見せることができます。

おしぼり、ナプキン、懐紙の使い方

和食に限らず食事前に出てくるアイテムと言えば、おしぼりとナプキンです。日本料理の場合、箸だけでいただきにくい料理は手を使ってもよいとされているため、食事中も使用します。それぞれ、美しく使うためのポイントを確認しましょう。

おしぼり

  • 顔を拭くのはNG!
  • おしぼりで手をふいたあとは、ちゃんとおしぼり受けに戻しましょう。

ナプキン

  • 二つに折って、折り目を膝側にしてかけます。
  • 服を汚さないためにも、口を拭うときはナプキンの内側で拭いましょう。

また持っておくとスマートなのが、二つ折りにされた懐紙(かいし)です。

「懐紙は口元や指先、箸、グラスの汚れを拭いたり、焼き魚を食べるときに骨を押さえたりと、活用方法はさまざま。上手に使って食事をすることでよりスマートな印象を与えられます」

重要アイテム・箸を上手に使うには?

「箸先五分、長くて一寸」と言われるように、箸の汚れは3センチ以内にとどめるのが良いとされています。上の方まで汚れているは見苦しいので、注意が必要です。そのほか注意したい箸マナーは以下のとおりです。

箸の使い方

  • 箸を休めるときは、必ず箸置きに。お椀や器の上にのせる「渡し箸」はNG。
  • 箸置きがない場合は、箸袋を折って箸置き代わりにするか、料理の器を並べる盆の縁を利用しましょう。
  • 食事が終わったら、箸袋の先を折り曲げて、袋の中に汚れた部分を隠すように箸を戻します。

「箸の先を舐める『ねぶり箸』や、汁やしょうゆを垂らしながら口に運ぶ『涙箸』、どれを食べようか器の周りで迷う『迷い箸』など、してはいけない箸の使い方にも注意しましょう」

料理別に解説。食べ方のポイント

懐石料理

何よりも一番気になるのが食べ方。各料理の特徴と美しい食べ方について教えてもらいました。

前菜

3種、5種、7種と奇数で盛りあわせられているのが基本です。好きな順序で食べていいのですが、左、右、中央の順で食べると、盛り合わせの美しさを損なわずに食べることができます。

吸物

水滴がお椀の中へ落ちるようにしてふたを外し、そのふたはお椀の右外に置いてください。次に箸で吸い口を押さえつつ、香りと出汁を味わいましょう。なによりも温かいお料理は、温かいうちにいただくこと。いただき終わったら、ふたとお椀の模様を合わせるようにふたを閉めておくのが正解です。

お造り

盛りあわせになっている場合は左から右、手前から奥に食べてください。とはいえ最近では、味の淡白な刺身から食べるのも良いとされています。

煮物(炊き合わせ)

一口で食べられないものは、お箸で一口大に小分け。切りにくい時は、左手で口を覆い、二度に分けて食べてください。汁気が多いものは、器を手に取っていただく。ふたを受け皿代わりにしても◎。

焼き魚

「尾頭付き」の場合は、左手の肩口から尾の部分までを先にいただき、上身を食べ終えたら、そのままの状態で箸を骨の下に入れて骨を外す。「切り身」の場合は左側より一口ずつ食してください。

揚げ物

熱いうちに盛り付けを崩さないようにいただく。また天つゆは、揚げ物の先にのみつけるように。ここでポイントは、つゆが垂れないように器を手前に持ってくること。

蒸し物

小ぶりな器の場合は、手に持っていただく。器が熱い場合は、器の乗った皿ごと持ちあげる、もしくは懐紙を使うのも◎。

酢の物

器を手に持ち、2、3回に分けて食べます。つゆをいただいてもOK。

お食事

ごはん、留椀(とめわん:お味噌汁などの汁物)、香の物の3品がそろって出されます。ごはんを一口食べてから、留椀、香の物を交互にいただいてください。香の物をご飯の上にのせて食べたり、香の物の皿から直接口に運んだりするのはNGなのでご注意を。香の物は、ごはんの器を受け皿代わりにして、口に運ぶようにしてください。

水菓子

果物やゼリーなどが出されます。果物は右側から、ゼリーは手前からスプーンで形を崩さないようにいただき、ブドウなど種があるものは、懐紙を円錐状にして口元に近づけてから種を出してください。

飲み物のいただき方は?

お酌

最後は、食事に欠かせない飲み物についてです。

お茶

煎茶のふたは、お椀と同じように水滴を茶碗の中に落としてから開けましょう。お茶を飲む際は、茶碗を右手に持ち、左手を添えていただきます。

お酒

日本酒は注ぐときも受けるときも、男性の場合は片手で持ってもOK。しかし、目上の方がお相手の場合は、両手で持ちましょう。女性の場合は、注ぐときも受けるときも必ず両手でいただきます。お酒を受ける場合、必ず器を持ちあげ、注いでもらったあと、一口いただいてから置くのがマナーです。

「お酒は料理との相性もあります。迷ったらお店に相談してください。お料理を引き立て、場を和ませることも、お相手を考えたマナーのひとつと言えます」

会席料理は思いやりが詰まっている

以上、会席料理のマナーを解説しました。あくまでもこういったマナーは、食事を楽しむためにあるものです。お互いに心地よい時間を過ごすためのものですので、あまり堅苦しく考えず、美味しく会席料理を楽しんでみてくださいね。

文・ミノシマタカコ

Information

土屋陽子

京王プラザホテルの和食<あしび><みやま>など、約25年以上日本料理のサービスに従事。日本女性らしい美しい立ち振る舞いを心がけ、正しい作法に則った優雅な接客に努める。豊富な経験と知識を活かし、現在は懐石<蒼樹庵>で、大人のたしなみ講座の講師も務める。

土屋陽子