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2019 May.20
SURUGA Cycle Journal Vol.39

DE01開発ストーリー。
楽しく乗れて、被写体にもなる。所有欲をそそる自転車を創りたい。

DE01開発ストーリー。楽しく乗れて、被写体にもなる。所有欲をそそる自転車を創りたい。

「自分が欲しいと思える物を作りたい。」
「(開発上)できない事は無いと思っている。」
「開発にゴールは無い。」

)DE01開発責任者の高橋晃太さん
DE01開発責任者の高橋晃太さん

本記事のインタビュー中に、DE01開発責任者の高橋晃太さんから何度か聞いた言葉だ。静岡県発の電動アシスト自転車を作る彼は、ロジカルだけど人間味たっぷりの開発オタクだった。

静岡県にある企業、株式会社デイトナ。

「デイトナ」は、オートバイ乗りに広く知られているバイクのカスタムパーツメーカーだ。静岡県周智郡森町に本社があり、広大な敷地の中にはバイクのロードテストコースがある。社名「デイトナ」の由来を聞くと、アメリカ・フロリダ州デイトナ・ビーチで行なわれるバイクの祭典「デイトナウィーク」だという。1972年に会社がスタート、1974年にブランド名「デイトナ」の使用を開始、1985年に社名を「株式会社デイトナ」に変更している。バイク好きが集まっていて、スタッフの半数はバイクの免許を持っているという。

静岡県周智郡森町にあるデイトナ本社
静岡県周智郡森町にあるデイトナ本社

モータリゼーションの変遷と新規事業

前出の「DE01」とは、デイトナ製の電動アシスト自転車のコードネームだ。正確には「Daytona PotteringBike(デイトナ・ポタリングバイク)DE01」。高橋さんは、2010年にDE01の開発部署である二輪事業部E-BIKEグループの前身である事業開発プロジェクトにて自転車部門を立ち上げ、現在もE-BIKEグループのリーダーを務めている。

Daytona PotteringBike(デイトナ・ポタリングバイク)DE01
Daytona PotteringBike(デイトナ・ポタリングバイク)DE01

なぜデイトナは自転車を作るのか。それは社会環境の変化と密接に関係している。高齢化社会での安心安全な移動手段の確保、都市部における駐車スペースの問題、エネルギー問題、自然環境へのインパクトなど、複数の社会問題に対応した次世代の乗り物を考えると電動アシスト自転車に行き着く。今後、そこに社会からの要請が厚くなると考えているのだろう。とはいえ、畑違いの電動アシスト自転車を作るのは容易では無いはず。ましてやそれを販売するとなると販路も開拓しなくてはいけない。山ほど苦労話が聞けると思いインタビューに臨んだ。

デイトナ社内 二輪事業部E-BIKEグループ
デイトナ社内 二輪事業部E-BIKEグループ

写真を撮りに行きたくなる、写真に撮りたくなる自転車

電動アシスト自転車は、道路交通法では「人の力を補うため原動機を用いる自転車」あるいは「駆動補助機付自転車」と呼称される。1993年にヤマハ発動機が発売したPASが世界初だ。以来、実用的な機能面の進化を続けて、現在では両輪駆動や、走行中に自ら発電し、充電するモデルもある。そもそも、通勤、買い物などの日常使いを焦点にした商品として開発が進み、それは現在も電動アシスト自転車の中心にある。ここ数年、アクティビティとしての自転車に脚光があたり、電動アシスト自転車のスポーツモデルも出始めている。DE01のコンセプトはそれらと異なり、乗り手の趣味に溶け込み、趣味の領域を広げるものだった。それを具体的に表す言葉として「写真を撮りに行きたくなる、写真に撮りたくなる自転車」をコンセプトワードにしている。現在DE01は、電動アシスト自転車の新たなマーケットを日々拡大させている。

デイトナ本社周辺でDE01を体験 写真右はE-BIKEグループ 篠原裕希さん
デイトナ本社周辺でDE01を体験 写真右はE-BIKEグループ 篠原裕希さん

購入者のイメージは30代の写真と旅が好きな女子

かなり絞り込んだイメージだ。解釈してまとめてみると「カメラを相棒に週末のショートトリップを楽しむ人に、徒歩よりも大きく行動範囲を広げ、公共の交通機関のように経路に縛られず、より多くの発見や出会いが得られる自転車の速度域を、疲れの少ない電動アシスト自転車で提供し、その自転車自体のフォトジェニックなデザインが次のトリップのモチベーションにもなる。」といったところだろうか。

島田市のシティプロモーション企画「茶輪子」での撮影風景。牧之原台地の茶畑をバックにDE01のフレームが映える。(撮影協力:島田市)
島田市のシティプロモーション企画「茶輪子」での撮影風景。
牧之原台地の茶畑をバックにDE01のフレームが映える。(撮影協力:島田市)

2010年10月事業開発プロジェクトスタート

現在、電動アシスト自転車を担当する部署は「二輪事業部E-BIKEグループ」で3名。高橋さんと篠原さんが開発関係を、吉良さんが販売関係を主に担当する。常に冗談を言いながら明るさを振りまくムードメーカーの吉良さん。一度就職した後、一念発起して自転車の専門学校で勉強し、デイトナに入社した変わり種の篠原さん。そして2010年から一貫してこの仕事に携わってきた高橋さん。チームリーダーは高橋さんが務める。三者三様で年齢もバラバラな3人だが、とにかく仲が良くフラットな関係性。この辺りからもデイトナのオープンな社風が感じられる。

写真左から篠原裕希さん、高橋晃太さん、吉良好弘さん
写真左から篠原裕希さん、高橋晃太さん、吉良好弘さん

高橋さんと吉良さんは、この仕事に就くまで自転車に関心が無かったという。吉良さんは、仕事で自転車に試乗する事が多くなり、「乗ってたら風が気持ち良くて、景色もよく見えて、鳥の声とか聞くようになって、これは楽しいぞ!」と目覚めたという。高橋さんは開発者らしく、知識の必要性を感じて整備関係の資格の取得を始めたという。

「自分がお金を出して買いたいと思えるものを作りたかった」と吉良さん。
「自分がお金を出して買いたいと思えるものを作りたかった」と吉良さん。

2010年、高橋さんは現部署の前身である事業開発プロジェクトで自転車部門を立ち上げた。当初は電動バイク(オートバイ)を事業化する検討をしていた。自社製品の開発と社外品の販売を並行して考えながら、2011年12月にヨーロッパ製の電動アシスト自転車の販売を開始する。ある時、この自転車の購入者から「この自転車を旅先に連れて行きたくて、自転車が積める車に買い替えたよ。」という話を聞き、ぼんやりと「折り畳み自転車なら旅先に連れて行きやすいな。」と考えたという。その後、この自転車のカタログ撮影で神戸を訪れた時、坂の町神戸で電動アシストの恩恵を体感し、「折り畳みの電動アシスト自転車を作ろう。」と考えた。神戸からの帰りの車中で、DE01のコンセプト「電動アシストに見えない折り畳み自転車」はできあがった。

記念的な試作フレーム 吉良さんのハンドメイド
記念的な試作フレーム 吉良さんのハンドメイド

意思決定の速さと商品開発スピード

神戸から帰った高橋さんは、ヨーロッパ製の電動アシスト自転車は販売を終了し、すべて自分たちでコントロールできる自社開発の電動アシスト自転車を生産、販売するというDE01の事業計画を社内の経営会議にかけた。計画は経営会議で承認され、2014年2月から開発が始まり、2015年8月にDE01の販売が始まった。生産にかかった期間を差し引くと、開発期間は正味1年間という超スピードだ。

カタログ類は自分たちで写真撮影をする。
カタログ類は自分たちで写真撮影をする。

「早く作りたいって毎日思いながらやっていたら1年間でできました。」と、事も無げに言う高橋さん。ここで高橋さんのプライベートにがぜん興味が湧き、ご自宅に押しかけてみることになった。

高橋さんの頭の中が現実化したガレージ

高橋さんの自宅ガレージ、洗車用の高圧洗浄機まである。
高橋さんの自宅ガレージ、洗車用の高圧洗浄機まである。

休日に高橋さん宅のガレージにお邪魔した。広さは100平米超、平屋で天井がとても高い。都内暮らしの人間からすれば夢のような広さと空間だ。

ガレージ内の必要なものは高橋さんがDIYで作ることも多い
ガレージ内の必要なものは高橋さんがDIYで作ることも多い

使い方も異次元だった。入ってまず驚くのはプロジェクターのスクリーン。高橋さんがDIYで作ったらしい。正確な大きさは分からないが、見た目100インチは超えていそうな大きさだ。YouTubeの動画が映し出されていた。

休日には家族でガレージ遊びする日も
休日には家族でガレージ遊びする日も

そして、すべり台、ミニ四駆のコース、高橋さんご夫妻のオートバイ、自転車4台、組み立て中のバイク、食卓、高橋さんの書斎的スペースなどなど。もっとあるが書ききれない。

ご夫婦でTRIUMPHに乗る
ご夫婦でTRIUMPHに乗る

高橋家は5人家族。お子さん達とここで遊び、食べ、機械いじりもし、まさに何でもできる空間になっている。この日は同僚の山本さんが来ていて、高橋さんと一緒にバイクを組んでいた。まるで家族のように。

同僚の山本さんは高橋さんのお子さんともすっかり馴染んでいる
同僚の山本さんは高橋さんのお子さんともすっかり馴染んでいる

高橋さんの頭の中も、このガレージのようにいろんな物が垣根なく並んでいて、必要な時に必要なものを使ってマルチタスクで進めていける。そんな感じなのだろうと想像した。

「人の命を乗せるものを作っている」という思いが真ん中にある

DE01の開発に話を戻そう。開発で大事にしていることを聞いてみた。高橋さんは迷わず「安全性です。人の命を乗せるものですから。あと、法律に則った製品であること。」と答えてくれた。吉良さんが「それと、デイトナの名で世に出している責任もあります。」と。独自性とデザイン性が話題になるDE01だが、携わる人たちの根っこには高い遵法性と責任感がある事を感じた。

「デイトナというメーカーの社会的責任を感じます。」と吉良さん
「デイトナというメーカーの社会的責任を感じます。」と吉良さん

デザイン性もさることながら、「自転車を漕いでます感を残すこと」に拘ったアシストユニットなど、多くのパーツを自社開発しているDE01だが、思ったものはできているのだろうか。

出荷待ちのDE01。フレームの曲線が美しい。
出荷待ちのDE01。フレームの曲線が美しい。

高橋さんは、「DE01についてはできています。だけど、自転車でも、カタログでも、Webでも、ゴールはないんです。まだまだやりたい事だらけで、次のステップが頭を巡っています。」「自分の中では走行性能を上げたDE01も作りたくて、自分で試作機を組み立てて自転車屋さんに見せに行きました。売れそうな値ごろ感とかパーツの構成を検討してできたのがDE01X(DE01の最上級モデル)なんです。」

高橋さんのDE01Xプロトタイプ
高橋さんのDE01Xプロトタイプ

驚きの開発期間で誕生したDE01。しかし、多くの苦労を乗り越えての1年間だったという。デザイン性を重視したフレームで、強度を上げるのに苦労し、試作段階では何本もフレームを折ったそうだ。

開発ではフレームの強度を上げる試行錯誤が続いた。
開発ではフレームの強度を上げる試行錯誤が続いた。

作りたかった方向性が乗り手に伝わる車両ができた

DE01の販売店は2015年末の25店から、2018年末には77店になった。順調に拡大中だ。だが高橋さんは「DE01を理解して売ってくれる販売店さんを増やしたい。」と言う。

DE01のカタログには、自分たちで撮影したこだわりの写真が並ぶ。
DE01のカタログには、自分たちで撮影したこだわりの写真が並ぶ。

販売店で行なう試乗会では、乗り手の反応が決まっているという。サドル後方、後輪の上に配置されたバッテリー。外観的にはレザーで覆われている四角い小箱なので、初めて見た人は小物入れのバッグだと思うらしい。バッテリーだと告げると「えっ、これ電動アシストなんですか?へえ、かわいい、しかも折りたたみなんだ。」となる。他社の電動アシスト自転車は、なんとかバッテリーを隠そうとするが、DE01はそれを逆手に取り、デザイン上の強みに変えてしまっている。乗ってみると電動アシストの恩恵に感心し、さらに外装7段変速の自転車本来の走破性能にも驚くという。作りたかった方向性が乗り手に伝わる車両になっているという手応えは確実にある。

折りたたんだ状態だとここまでコンパクトになる。(撮影協力:島田市、大井川鐡道)
折りたたんだ状態だとここまでコンパクトになる。(撮影協力:島田市、大井川鐡道)
折りたたんでいたフレームを展開。
折りたたんでいたフレームを展開。
ハンドルとシートポストを伸ばして完了。力はいらず、慣れれば1分ほどでできる。
ハンドルとシートポストを伸ばして完了。力はいらず、慣れれば1分ほどでできる。

選ぶのはお客さま

最後に、今後の展開を高橋さんに聞いてみた。

「電動アシスト自転車事業を会社の柱となるよう成長させたい。商品として選ぶのはお客さま。お客さまがいかに満足するかを考え、自分たちが自信を持ったものを出し続ける事がそこへ到達する道なんだと思います。」

「定期的に仕事に遊びを取り入れてます。」と高橋さん。
「定期的に仕事に遊びを取り入れてます。」と高橋さん。

高橋さんの話には、顧客本位な考えが常に中心にある。それは2010年のプロジェクト発足から今日までブレてないと感じた。そして、電動アシスト自転車の新たなマーケットを作る挑戦は、この考えが中心にある限り失敗しないだろうとも思った。この先に待っているいろいろな問題も、高橋さんにとっては楽しい工程なのかもしれない。あのガレージでバイクを組むように。

デイトナの攻勢が続きそうだ。

Daytona PotteringBike

https://www.potteringbike.jp/

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