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2013 Apr.2
No Place Like Home by 東京R不動産 Vol.8

そうだ!海沿いに住もう!
~作る~
湘南で何をしたいのか。家づくりはそこからはじまる

「海の近くに住む」。誰もが夢見る暮らしをすでに実践している人々がいる。
シリーズ『海沿いに住もう!』では3回に渡って人気の湘南エリアを特集します。第3回目は葉山を拠点に家づくりを手がけるハウスビルダー『パパスホーム』の井手しのぶさんをお訪ねしました。人が「家を建てる」という夢を実現するとき、そのパートナーとなってくれるのがハウスビルダー。湘南ならではのオリジナリティー溢れる住宅を世に送り出してきたパパスホーム代表取締役の井手さんの家づくりとはどんなものなのか?ご自身の暮らしぶりも交えてお聞きしました。

聞き手
高野 裕太(スルガ銀行d-laboスタッフ)
吉里 裕也(東京R不動産ディレクター)
長崎 義紹(パラグラフ代表)
語り手
井手 しのぶ(株式会社パパスホーム代表取締役)
そうだ!海沿いに住もう! ~作る~ 湘南で何をしたいのか。家づくりはそこからはじまる

現場のノリで家を建てる

長崎『海沿いに住もう!』も第3回目。今日は葉山のハウスビルダーである『パパスホーム』の井手さんに湘南で家を建てること、それとどういうふうにしたらいい家が持てるのか、その辺の話をざっくばらんに聞いていきたいと思います。

井手秋谷(横須賀市)の長崎邸も『パパスホーム』でやらせてもらいましたよね。あれはおもしろかった。

高野おもしろかったというのは、どういう意味でですか。

長崎もちろん図面はあるんだけど、半分は現場合わせでつくっていきましたよね。

井手うちのやりかたは、ざくっと決めて、あとは現場のノリで建てていくんです。その間の施主さんとのやりとりがおもしろいんですよ。

長崎家って実際に建ててみると「ここはこうじゃないぞ」という部分が必ず出てきますからね。

井手大手メーカーだとドアの把手ひとつまで施工前に全部決めちゃって、変更すると追加費用がかかりますよっていう話になる。でも、この仕事を20年やってきて言えるのは、絶対に途中で変わるということ。建物ができてきて立体で見ると「ここにこういう空間があるならこういう照明をつけたい」といったリクエストが必ず出てくる。それをできうる限り受けてあげて、お金をかけずに満足できる形にしていくのが自分たちの仕事だと思っているんです。

井出 しのぶさんインタビューの様子

吉里最近だと、どんな物件を手がけられましたか。

井手鎌倉の七里ケ浜で中古住宅をリノベーションしました。45坪の家をほとんどスケルトンにして、それで1,300万円ほど。新築で一から建てていたら2,800万から3,000万円くらいはかかっていたと思います。

吉里僕らもよく扱っているんですが、やはりリノベーションは多いのですか。

井手増えてきていますね。とくに多いのは鎌倉。コストパフォーマンスを考えたら新築よりおすすめです。やっぱり基礎と柱があるだけでも全然違う。浮いたお金で家具を揃えたりもできるし、銀行もリノベーションにはもっと目を向けてほしいですね。

高野リノベーションの物件だったら比較的若い世代の方でも求めやすいでしょうし、銀行としてもお手伝いができればいいなと考えています。

長崎リノベーションをする人たちって、自分たちがどういう暮らしをしたいかちゃんと考えている人たちですよね。新築を購入する人たちは「暮らしを考える」より先に「家を買う」が先行しちゃっている気がします。

井手新築神話がこんなに根強いのは世界でも日本だけ。でもその新築も10年もたったら価値がなくなってしまう。これからの時代はそうじゃなくて、もっと家を慈しんで、楽しんで、そこに肉づけをしていかなきゃと思うんです。

長崎うちができたときに井手さんに言われましたよね。床はなるべく素足で歩くように、その方がいい艶が出るからって。時間をかけないと出てこない味があるんですよね。

井手みなさんに今日来ていただいた長者ケ崎(鎌倉市)のこの家を建てたばかりのときは、ピカピカ過ぎて私も落ち着かなかった。2年くらいたって味が出てきて、ようやく落ち着いた感じでした。

吉里東京R不動産のお客さまもピカピカの新しいものには興味のない方が多いですね。それをよしとしないというか、どっちかというと味がある物件に人気が集まります。

長崎ピカピカの新建材の家ってほっておくとひどいことになっていくんですよね。

井手どんどんクロスとかはがれてきますしね。うちなんか犬が3匹に猫が2匹いるので、汚れたり傷がついたりするのは当たり前。むしろそれが家の歴史になっていくんです。

吉里ディベロッパーさんはよく営業トークで「この床はかたいから傷がつきにくいですよ」と言ったりするけど、自分で自分の首を締めているような気がするんです。傷がつくと価値が落ちるという考えのせいで傷のつきにくい素材を使う。そうするとちょっとの傷でもかえって目立ってしまって、お客さまに突っ込まれたりする。家は車じゃないのに車みたいな売り方をしているんですよ。

井出 しのぶさんインタビューの様子井出 しのぶさんインタビューの様子

高野『パパスホーム』では「家を建てたい」というお客さまが来たら、具体的にはどのように対応されているんですか。

井手当然のことだけど、まずは時間をかけてヒアリングをします。とくに知りたいのは、湘南に来て何がしたいのか、どんな生活を送りたいのか、ですね。その上でお客さんに合った土地をさがします。土地が決まったら家づくりです。うちのお客さんは「階段の手摺はパリのアパート風に」とか「直線よりも曲線を多用して」というふうにはっきりした考えを持っているし、写真なんかの資料もたくさん見せてくれる人が多いので落とし込みは割としやすいですね。

長崎それでもやっぱり図面だけじゃわからない。

吉里わかりませんよね。僕らだってお金をもらってプロとして仕事をしているんだけど、じゃあ自分でやろうとしたらパッとは決められない。箱ができても、「うーんどうしようかな」って悩んで、やっぱりこれだろう」と途中で床をはがしたりもする。

井出 しのぶさんインタビューの様子井出 しのぶさんインタビューの様子

井手プロでも悩むんですよね。一般のお客さまが図面だけ見てそこに何を置こうか決めるなんて絶対に無理。うちは空間によって天井の高さを変えたりして「こもり感」を出したり、逆に開放感を演出したりしているんですけど、その箱の大きさはできてみないことには実感できないんです。

吉里窓があってそこに椅子を置く。椅子の高さによって外の電線が邪魔になったりならなかったりする。これはもうできてからではないとわからない。

井手家を建てている間って、施主さんが1週間に1回くらい見に来てくださるんですよ。それで屋根の勾配を見て「ここに収納をつくれたりしますね」なんていう話になっていく。本当は面倒くさいんですよ。契約して図面をつくって、そのままの家を建てるんだったらうちの監督の仕事は今の3分の1の労力で終わる。でもそのやり方はうちのやり方ではない。施主さんがあとで後悔したり大変な思いをしないで済むようにしてあげたいんです。

井出 しのぶさんインタビューの様子

高野『パパスホーム』さんみたいなハウスビルダーに出会えた施主さんは幸せですね。

長崎湘南のビルダーって残念ながら東京じゃ無名なんですよ。僕もこっちに家を建てた友人にどこかいいところはないかって聞いて紹介してもらったのが井手さんでした。「ただ大雑把だよ」って言われたけれど、その大雑把が逆に家づくりにおいてはいい形で作用しましたね(笑)。

家は慈しんで育ててゆくもの

井手湘南に暮らすって、伸びしろの部分がある人じゃないと駄目ですよね。忙しくて生活がギリギリで通勤は30分以内じゃないと無理という人が湘南に来ても楽しめない。東京みたいに便利な場所じゃないので、便利がすべてじゃないぞというところを楽しめる人でないと。この家なんか台風の日は風がすごいし、夜なんか真っ暗でまわりに何もない。潮風で手摺が錆びたりもします。裏にはタヌキが出るような山があります。

吉里そのかわり眺めはすばらしいですね。海がバーンとあって、正面には江の島と富士山が見えますね。

井手夕日がすごくきれいなんです。シャンパンを飲みながら夕日を見るのは最高です。江の島や鎌倉の花火大会もここから一望できます。私は以前は鵠沼に住んでいたんですけど、ずっと葉山に住みたいと思っていたんですよ。この家は5年くらいかけて見つけた物件です。

井出 しのぶさんインタビューの様子

高野強いて不満をあげるとしたら何でしょう。

井手夜に遊ぶことができないことですね。逗子も葉山も遅くまでやっている店がない。鎌倉にしても9時過ぎると閉まっちゃう。これがネックですね。

長崎僕も夜10時に東京から帰って来て、それから飲める店があったら完璧に移住しちゃんですけどね。残念ながらそういうお店がない。

吉里理想的なのは、家に一度帰って風呂に入って、家族で夕食を食べて、それから一杯飲みに行くといった生活ですね。

井手男性的な発想かもしれないけれど、なんか違う空間で自分をリセットしたいという気持ちはあります。要するに何かを求めるには何かを我慢しないといけないということなんですよね。捨てる覚悟がないと湘南には住めない。

長崎何かを得るかわりに何かを捨てる、というのは湘南移住の一貫したテーマですね。フルスペックを求めてはいけないということ。いろんなものの基準とルールが東京とは違うんですよね。そこを誤解して東京と同じものを望んで来るなら来ない方がいい。海のそばって「素敵」なイメージがあるけれど、その「素敵」の裏には落とし穴がある。

井出 しのぶさんインタビューの様子井出 しのぶさんインタビューの様子

井手物が錆びたり、植物が枯れたりね(笑)。

高野最後に、湘南で家を持つとしたら家自体に対してはどんな気持ちで臨めばいいですか。

井手さっきも言ったけど、家を慈しんで育てていく、そういう気持ちが大事です。家具も全部一気にではなく、時間をかけて揃えていく方がたぶん素敵な家になるんじゃないかな。