特集
2013 Mar.21
Dream & Passion
~輝ける女性たちの肖像~ Vol.2
—人気声優・桑島法子から学ぶ夢を叶えるためのヒント—
社交的な性格だったら、「声優」という仕事を選んでいなかった
自分らしく活き活きと働く、素敵な女性たちを紹介する「Dream & Passion」。
第2回目のゲストは、人気アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のステラ・ルーシェ役、『魔法少女隊アルス』シーラ役、『機動戦艦ナデシコ』ミスマル・ユリカ役、『犬夜叉』珊瑚役などのアニメーション声優として知られ、外国映画やナレーションなど、さまざまな分野で活躍中の人気声優、桑島法子さん。岩手県出身で高校卒業後、声優養成所の青二塾で学び、1995年に『美少女戦士セーラームーンSS』でデビュー。10年前からアイドル声優の枠を越え、宮澤賢治の詩を朗読する「朗読夜」を開催し、好評を博しています。子どもの頃から声優になりたかったという桑島さんの仕事への想いや原動力、そして自分らしい生き方についてお伺いました。
- 聞き手:
- スルガ銀行d-laboスタッフ 和智あゆ美
自分じゃない「何か」になりたかった
d-laboよく聞かれると思うのですが、声優になろうと思った理由はなんだったのでしょうか。
桑島子どもの頃から自分じゃない「何か」になりたくて、そういった職業に就きたいと思っていたんです。そんなことを思っていた子ども時代でしたから、テレビでミュージカルや劇団四季の舞台中継を観ては真似して遊んでいました。アニメーションで最初に見たのは「未来少年コナン」。すごく面白くて、ビデオを全巻買ってもらったほどです。いろいろなアニメーション作品を見ていく中で、宮崎駿さんの世界にすごく嵌まり込んだ時期があったのですが、その時期に自然と声優という仕事を意識するようになり、声で演じる仕事をやってみたいと思ったんです。
d-labo当然、声優や役者になるためには学んだり、レッスンが必要だと思われますが、上京前はどうされていたのですか。
桑島私は高校卒業まで岩手県に住んでいました。演劇部をつくって演じるということはありましたが、声優になるための習い事ができるような環境ではありませんでした。だから、テレビを見ながらジェラシーを感じていたというか、中学時代に自分と同じ年頃の人が声優として仕事をしているのを見るとうらやましかったですね…。「私も東京に生まれたかった」と、ずっと思っていました。大学に行くつもりは全くなく、「高校を卒業したらすぐに声優の世界に入りたい」と考えていました。
d-labo当時は情報もあまりなかったと思いますが、高校卒業後、どうされたのですか。
桑島東京に声優養成所があることは知っていました。そこに入るのが声優への一番近道だと思い、青二プロダクションを母体とする「青二塾」を受けたところ合格することができました。
d-labo声優になるためには、どういう能力が必要なのでしょうか。
桑島まずは正しい日本語を意識できるかどうか…。私の場合、「この台詞はおかしくないか」、「日本語として正しいのか」を常に意識して台本に向き合います。自分で直したり、演出家さんと相談をしたりしますが、そういうことに気付けることが大切です。その場でアクセントを直されたときにすぐに対応しないといけないので、耳の良さも必要ですね。それと想像力。子どもから小動物、あるいは宇宙人までいろいろな役があり、今まで自分が経験したことのないものを演じるわけですから、想像力はあったほうがいいと思います。
また、この世界はどんなに実力があっても自分の力だけではどうにもならないところがありますので、やはり人との出会いが大切です。例えば、オーディションを受けた時に、今は下手だけれど将来性があるとか、光るものがあるから使ってみたいなど、自分をすくいあげ、自分のよさを最大限に引き出してくれる人に出会えれば、可能性は広がっていくと思います。
d-labo桑島さんはいろいろな人に出会い、声優として開花されたのですね。声優の仕事は素人には絶対できないと思いますが…。
桑島自分のことはよくわかりませんが、運が良かったと思います。素人の方でも、真似しようと思ったなら簡単にできるんですよ。でも芸歴何十年という先輩方のプロの技やお芝居は、やはり別格です。少しでも近づきたいと思い、私も常々その先輩方から学んでいます。しかし近付くことはとても難しくて、だからこそやりがいのある仕事なんだと思います。
『犬夜叉』の「珊瑚」役は、自分の分身のように感じていた
d-labo桑島さんがお仕事をする上で大事にされていることはなんですか。
桑島私の場合、決めつけるのが好きではなくて、どの仕事に対してもフラットでいたいと考えています。最終的に現場で変わってしまうこともありますし、相手の役者さんの出方によって変わっていくこともあります。家でも練習していきますが、現場で出来あがるものを大事にしています。演技は生き物です。あまり凝り固まって「こうでなければいけない」と思い込んで、台本や役に向き合ったりしません。その瞬間、瞬間で自分が表現したいと思うことを表現するように心がけています。
d-labo多岐にわたるお仕事の中で、「良かった!」と思われることはどんな時ですか。
桑島『犬夜叉』という作品で「珊瑚」という役をやっていたのですが、テレビシリーズで同じ役をずっとやっていくと、自分自身のプライベートでのドラマも加わっていきます。他の役者さんにもさまざまなドラマがあり、それら全部を含めて作品の思い出になっています。5年後に完結編として、もう1回やることになったときは、スタッフも役者も思い入れが非常に強く、結果として素晴らしい作品になりました。そして、この役は私の分身だなと思いました。愛着のある作品や役を演じ続けられること、そしてそれを楽しみにしてくださるファンの方がいることはとてもうれしいことですね。
d-labo私は「犬夜叉」が大好きで、「珊瑚」に深い思い入れがあると聞いてうれしく思いました。「珊瑚」役をするときに何か気をつけていたことはありますか。
桑島「珊瑚」は、大きな哀しみを背負っているキャラクターで、最初は私なりの解釈で演じ、周囲にも良かったと言っていただけました。5年経って再び演じたときに深みが増したと言っていただけたので、それは何か意識して演じたというよりも私の経験や年齢からにじみ出てきたものだと思います。あのメンバーでマイクの前に立つと自然に「珊瑚」になれます。あの中で、「珊瑚」はギャグを言うようなムードメーカーではないですし、割と心を閉ざしている女性です。自分にも少し似ている部分があるので、無理をせずに演じることができたんだと思います。
「こうなりたい」というビジョンを持って努力することが大切
d-labo桑島さんは、声優として役を演じたり、映画の吹き替えや朗読、CDや写真集を出していたりと、いろいろな仕事をされていますが、その中で特に力を入れたい分野や「これが好き」というのはありますか。また、それぞれ違うのでしょうか。
桑島それぞれ違いますね。初心に帰るとやはり演技がしたくて声優になったので、アニメーションや映画のお仕事は一番しっくりきます。ナレーションは自分の声でその作品の雰囲気を作り上げるため、面白い世界です。外国映画は強く希望して最近になってやらせていただけるようになりましたが、もともとの役者さんの声や演技、イメージに合わないといけないので難しい半面、とてもやりがいがあります。今年はアメリカのドラマ「CSI:科学捜査班」第12シーズン(WOWOWで放送予定)に出演します。
d-labo声優はとても人気のある仕事で、憧れている人も多いと思います。これから声優を目指そうと思う人に何かアドバイスはありますか。
桑島そうですね。オーディションを受けて、あっさりデビューが決まる人もいれば、養成所にずっと通っていても芽が出ない人もいます。あるいは芸能プロダクションに所属していて、たまたま声優の仕事がくる人もいます。今はいろいろな方法で声優になれる時代ですが、ただデビューしたあとにビジョンがないと声優の世界に居続けるのは難しいので、まずは「こうなりたい」というビジョンを持って努力してはどうでしょう。
d-labo桑島さんの今後の抱負や夢をお聞かせください。
桑島ずっと声優になりたくて20代で夢が叶いましたが、その後は必死にもがき、苦しかったですね。早く30代になりたくて、30歳になれば肩の力を抜いて仕事ができるようになるのではないかと思っていました。そして念願の30歳になったときに、「この先の目標は何だろう?」と自分に問いました。今、先輩たちを見ていてもエイジレスといいますか、40代・50代・60代でもとても素敵で、輝いています。私も先輩たちのように、いくつになってもこの仕事をやっていたいというのが目標であり、夢です。そして多くの人に私自身からも夢を届けていきたいですね。
自分にしかできないことをやりたくて、宮澤賢治の「朗読夜」をスタート。
d-labo桑島さんはライフワークとして宮澤賢治の詩を朗読する「朗読夜」というイベントをされていますが、どういうきっかけで始めたのですか。
桑島声優の仕事は切り替わっていくのが早くて、昨日のことや3日前にどんな仕事をしたのか思い出せないことがあります。その中で流されない自分を確立したいと20代の頃から思っていました。当時、このままで行くと自分の中に何も残らないのでは…という危機感を抱いていたんです。表現にはさまざまな方法がありますが、私にしかできないものを1つ持っていたら流されることがありません。そこでライフワークとしてやっていきたいと思ったのが宮澤賢治の朗読だったのです。朗読ならお婆ちゃんになっても続けることができますしね。
d-labo宮澤賢治も桑島さんと同じ岩手県の出身ですね。宮澤賢治がお好きだったのですか。
桑島もともと父が趣味で朗読をする人だったのです。父は宮澤賢治の『原体剣舞連(はらたいけんばいれん)』の朗読が得意で、それを子どもの頃から聞いて育ちました。その詩は東北地方の伝統芸能、剣舞をイメージして創られたもので、大迫力で歌い上げるため、すごくカッコイイのです。言葉の意味はよくわからなかったのですが、私もやりたいと思い、小学生の頃から父の朗読の録音テープを聞きながら、こっそり練習をしていました。
d-laboそれが宮澤賢治の詩との出会いだったのですね。大人になってからも宮澤賢治の朗読がやりたいという気持ちが続いたのですか。
桑島20歳の時にたまたま、宮澤賢治生誕100年記念のイベントがあり、所属事務所の先輩が朗読で出演することになりました。私は、同郷の平野正人さんからピンチヒッターとして呼ばれ、そこで人前で初めて『原体剣舞連』を朗読しました。周囲からすごく好評で、「大事にやり続けたほうがいい」というアドバイスをいただきました。その後も、自分がパーソナリティーを務めていたラジオ番組で『銀河鉄道の夜』を朗読しました。そして26歳の時、「朗読夜」をスタートすることになったのです。
当時はアイドル声優の朗読を聞きにきてくれる人がいるんだろうか…と、思いましたね。「私は宮澤賢治の朗読しかしません」という尖った精神の元、スタートしたのですが、あれからもう10年経ってしまいました。最初は純粋に朗読を聞きにきてくれる人ばかりではないことにジレンマもありましたが、今では私の朗読を応援してくださる方や、「朗読夜」をサポートしてくださる方も増えてきました。そんな中で東日本大震災が起こり、宮澤賢治がクローズアップされてきました。そうした時代の流れの中で自分のやる意味が変わってきているようにも思えますし、「朗読夜」をライフワークにしたのは間違いではなかったと感じています。
原動力は、自分を上手く表現できないというコンプレックス
d-labo「朗読夜」が長く続いているのはそれだけ魅力があるからだと思います。これからもぜひ続けてほしいと思います。今後の予定を教えていただけますか。
桑島今年は宮沢賢治没後80年なので、まだ言えないのですが、それに合わせて計画を立てています。4月ごろに 「朗読夜」のホームページ上で告知できるかと思います。「朗読夜」では毎回アンケートを配っているのですが、初めてのお客さまも多く足を運んでくださいます。近くでやる際にはぜひ聴きにいらしてください。
d-labo次の「朗読夜」には、私もぜひ行きたいと思います!最後の質問になりますが、桑島さんは声優になりたいという子どもの頃からの夢を叶えました。その道程は厳しく、さまざまな困難もあったかと思いますが、その夢に向かって突き進む原動力は何だったのでしょうか。
桑島そうですね。声優になりたいというお手紙もよくいただくのですが、本当になりたかったら、あるいは自分にはこれしかないと思ったら、一歩を踏みだすことだと思います。その一歩はとても恐いけれど、「自分にはこれしかない」ということがあるのは、とても幸せなことですし、大事にしてほしいと思います。
d-labo桑島さんの場合は、声優をやりたいという思いが強かったから、続けてこられたのでしょうね。
桑島私の場合、人とつながりたいという気持ちがどこかにあり、その手段が声優という仕事なのです。役を演じ、全然知らない誰かが見てくれることが自分がいる証みたいな気がして…。なので、根底には孤独感みたいなものがあります。自分を上手く表現したいのですが、できないから声優という仕事で表現する。もし、私が社交的で友だちがたくさんいたら、この職業は選ばなかったかもしれませんね(笑)。
そうしたコンプレックスを逆に原動力にすることは他の方にもできるような気がします。みなさんも苦手なことを逆手に取って頑張れるかもしれません。私には、これしかないから頑張ることができ、結果的にここにいるのです。
Information1
桑島 法子氏
青二プロダクション所属の声優。アニメーションをはじめ、外国映画やナレーションなど、さまざまな分野で活躍中。
公式サイト
http://www.aoni.co.jp/actress/ka/kuwashima-houko.html
「朗読夜」オフィシャルホームページ
http://www.mse-p.jp/roudokuya/
Information2
青二塾
時の流れに左右されない本物の俳優育成を目指すための俳優養成所。
公式サイト
http://www.aoni.co.jp/tokyo/jukutokyotop.html
Information3
総合口座積立定期預金
夢に向かって突き進んでこられた桑島法子さんのお話いかがでしたか?夢の実現には多少なりともお金が必要です。そこでおすすめなのがスルガ銀行の「総合口座積立定期預金」。毎月5,000円から気軽に積み立てができ、年間2回まで積立額の増額が可能です。夢の実現に向けてコツコツ貯蓄するのはいかかでしょうか?
詳しくはこちらから
https://www.surugabank.co.jp/d-bank/services/fixed_installment.html