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地元で誰もマネできないミニトマトをつくる

ミニトマト農家
石井 政輝さん

神奈川県茅ヶ崎市で代々農業を営み、16代目となる石井政輝さん(28)。ご両親が25年ほど前にミニトマトづくりを開始し、神奈川県で唯一のミニトマト専門農家になりました。石井さんの『おイシイ農園』のミニトマトは評判を呼び、地元の方々を中心に大人気に。「ミニトマトは味も見た目も、本当にいろいろな可能性があるんです」と語る石井さんは、さまざまな色合いや理想の味わいを求めて、日々試行錯誤を繰り返しているそう。ミニトマト、そして地元の茅ヶ崎を愛する石井さんに、現在の仕事のやりがいや今後の夢などについてうかがいました!

農業高校卒業するもギター会社に就職

インタビューに答える石井さん

 美しい海や山といった、自然の豊かな神奈川県茅ヶ崎市。その場所で代々農業を営む実家に生まれ育ち、16代目となった石井政輝さん。元々、家業である農家を継ぐことは幼少期より考えていたそうですが、「家業を守ってくれるのは嬉しいけれど、若いうちは別の経験も積んだ方が良い」というご両親からのアドバイスで、農業高校を卒業すると趣味の道を進みました。

「農業高校に通ってそのまま大学への進学も考えたのですが、両親の言葉通り、それでは農業ばかりになってしまいます。そこで若いうちにやりたいことにチャレンジしてみようと、ギタークラフトの学校に進みました」

 ずっとギターに興味を持っていたという石井さん。弾くことはもちろん、ギターそのものをつくることにも興味があったといいます。

「小さな頃から、ものをつくることが好きだったんです。特にギターをつくることに魅力を感じ、夢中になりました」

 そしてギター関連の会社に就職すると、販売員としてお客さまと商品を繋ぐ役割を担うことになりました。

「製品づくりに携わりながら、お客さまに直に触れるというのは、いろんな気づきもあってやりがいがありました」と接客業の楽しさを実感した石井さん。

 さらに、休日には実家のミニトマトを販売する手伝いを開始。やがてこの手伝いが、次なるアクションへのきっかけとなるのでした。

運命を決めたお客さまの一言

インタビューに答える石井さん

 25年ほど前に、より美味しくて彩り豊かなものをつくっていこうと、ミニトマト専門の農家となった『おイシイ農園』。石井さんも幼いころからミニトマトづくりを手伝ってきましたが、ギター製作や販売の仕事に従事するようになると、休日限定で販売のサポートをすることになりました。

「ギターの販売業務がとても楽しくって、結構成績も良かったんです(笑)。だからその販売の経験を生かそうと、茅ヶ崎で開催されるマルシェなどで、『おイシイ農園』のミニトマトを販売する手伝いをするようになりました」

 マルシェでの直売は刺激的で、さまざまな学びを得ることになったそう。

「お客さまとダイレクトに触れあう直売は、いろんな意見をいただける場です。味の話はもちろん、この品種はこんな感じだったと具体的な意見もあって、たくさん勉強させてもらいました」

 そんな日々を過ごしていたある日のことでした。いつものように休日に、マルシェでミニトマトを販売していると、お客さまから運命を変える一言をもらったといいます。

「『このミニトマト、あなたがつくっているのではないの?』といわれたんです。私は販売だけで両親が生産していたため、返す言葉がありませんでした。つくる過程に話が及ぶと返答に窮してしまうことが以前にもあり、その言葉をきっかけに自分でミニトマトをつくっていこうと心に決めました」

 そして石井さんは実家に戻り、ミニトマトづくりをスタートさせたのでした。