Job-labo file 27

社会とつながる空間プランナー

インタビューに答える下國さん

 クライアントの想いを“空間”という“カタチ”で表現することだけではなく、そこに集う人々に驚きや感動をもたらすことも下國さんは大事に考えているそう。手がけた空間がクライアントや来場者の方々にしっかり機能しているかどうか常に気を配っているそうです。

 そんな下國さんが「ようやく丁稚奉公を脱し、自分が主体となった空間をつくることができました」と語るのが、東京・御茶ノ水にある、噛むこと・飲み込むことを総合的にサポートするコンセプトショールーム『Kamulier(カムリエ)』。

「“歯科医療”という言葉が、最初に与えられたキーワードでした。そこから何ができるのかいろいろなアイデアを巡らし、介護や食育をテーマとした“食と歯科医療のコラボ”を思いつきました。美味しさを追求するシェフやパティシエと食のバランスを追求する栄養士、そして歯の健康を追求する歯科医という、その道の専門家から成るチームを結成し、「噛むこと・飲み込むこと」をサポートする飲食物や空間づくりを進め、生活の質を向上させる“場”を実現しました」

 空間をデザインするというだけでなく、その場で何をするのか、またそれが社会にどのように役立っていくのかを見据えることで、多くの人に貢献する空間のプランニングに成功しました。

「空間プランナーは、場のデザインだけでなく社会と直接つながっていく仕事です。だから世の中のことやトレンド、現代の人々が求めているものなど、幅広いことを知っておかなくてはいけないんです」

 と、下國さんは力強く語ってくださいました。

空間を通して、たくさんの笑顔を!

インタビューに答える下國さん

 “ある場所”を、どのようにデザインするとクライアントの想いを表現できて、さらに訪れるお客さまにも喜んでもらえるのか。そんなコンセプトづくりから実際にお客さまが集うところまで、トータルに重要な役割を担う空間プランナー。

 下國さんはこれまで、ショールームや展示会といった企業PR施設を中心に手がけてきましたが、現在では博物館、科学館、美術館といった文化・公共施設に携わるようになったそう。

「企業PR施設は見せたい商品などが明確ですが、文化・公共施設は見せるものが多種多様で、さらに訪れる人も子どもからシニアの方まで十人十色で難しさがあります。しかし“集客施設”であることは共通しているので、お客さまがときめいてくださるような空間を、自分も勉強していろんな発見にときめきながら、つくりあげていきたいと思っています」

 最近では地元の特産物や地域を紹介する、観光につなげる文化施設をプランニングする機会が増えているそうで、下國さんは空間のみならず「こんな商品をつくってみては?」と、商品開発の提案も積極的に行なっているとか。

「やりたいことを実現するためにのんびり回り道をしましたが、今後も空間づくりを中心にしながら、さらに企業や地域、文化など、さまざまなブランドづくりに貢献していきたいです」

 個人的には、社内外において誰もが気軽に話せる“近所のタバコ屋のおばあちゃん”のような存在になりたいという下國さん。これからも空間プランニングを通して、全国各地にたくさんの笑顔を生み出していくのでしょう。

株式会社 乃村工藝社

  1. www.nomurakougei.co.jp
  2. 〒135-8622 東京都港区台場2丁目3番4号

Kamulier(カムリエ)

  1. www.kamulier-gc.jp
  2. 〒113-0033 東京都文京区本郷3-2-15 新興ビル1F
  3. TEL:03-6903-4233
  4. 営業時間:11:00~19:00(月曜~土曜)
  5. 定休日:日曜・祭日
Mini column

空間プランナーって、どうしたらなれるの!?

住宅メーカーやインテリア、百貨店や飲食店、設計・建築やデザイン会社など、さまざまなフィールドで必要とされている空間プランナー。現在では個人住宅や店舗のディスプレイといった小規模なものから、ショールームや企業のPR施設、公共施設や美術館などの文化施設といった大規模なものまで、その活躍の場は拡大しています。

空間プランナーとは、さまざまな空間の企画やプランニングを担う仕事ですが、その職種に就くにはどうしたらよいのでしょうか?

多くの場合は、建築やインテリア、ディスプレイ、デザインなどの会社で経験を積みながら空間プランナーになる方が多いようですが、民間資格として「空間プランナー(一般財団法人日本能力開発推進協会)」や「インテリアコーディネーター(公益社団法人インテリア産業協会)」などの資格を取得していると、空間プランナーの職に就くのに有利になることも。

図面を読んだり描いたりする機会も多いため、建築やデザインを学んでいる人が重要だと思われがちですが、空間プランナーの使命はクライアントの想いをカタチにして、来場するお客さまの興味を惹くこと。アイデアや論理立てた計画がポイントとなるため、下國さんのように別の分野からでも目指すことが可能な職業のようです。

最近では省庁や自治体が、公共施設の再開発に広く空間活用のアイデアを募るなど動きも出ており、空間づくりに携わるチャンスは広がっています。あなたも空間プランナーに興味があれば、トライしてみては!?