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演奏家と一つになって良い音楽を作る

レコーディング・エンジニア
松下 真也さん

幼少期から音楽が好きだったという松下真也さん(30)。小学生の頃にコンサートで聴いた生の音と、自宅でラジカセやレコードで聴く音の違いを体感し、オーディオや録音に興味を持つようになったそう。それからクラシックやジャズを中心とした作品の音を研究するようになっただけでなく、実際にオーディオを自作したり、所属していたブラスバンド部での演奏を録音したりと松下さん独自の音づくりを開始しました。現在は都内のレコーディング・スタジオ「STUDIO Dede」においてレコーディング/ミキシングエンジニアを務める松下さんに、現在の仕事のやりがいや今後の夢などについて伺いました!

ラジカセで聴く音と生音のギャップに驚く

インタビューに答える松下さん

 音楽が好きだった松下真也さんが“音”に興味を持ったきっかけは、小学生時代のある出来事だったといいます。

「ラジオの作り方を教えてもらうため、妹の同級生のお父さんと知り合いになりました。その方はレコードをたくさん持っていて、いろいろ聴かせてもらううちにレコードによって音質が違うことを知りました。またその頃ピアノを習っていたのですが、コンサートなどで聴く生音とレコードやラジカセなどで聴く音のギャップを感じ、“音”や“録音”というものに強く興味を持つようになりました」

 その体験が原点となり、小学5年生頃からはオーディオの研究や組立をするようになったそう。

「自分なりに試行錯誤しながら、真空管のオーディオを作ったりしました。最初はキットを購入して、それをいろいろな回路を試しながらボロボロになるまで改造しまくりました(笑)。その経験のおかげで、オーディオの基礎的な知識が得られたと思います」

 自分の部屋の天井や床も、音の反響を考えて板を張るなど改造を施し、松下さんの理想の音を追い求める日々が始まりました。

理想の音を求めて試行錯誤した学生時代

作業中の松下さん

 中学から高校にかけてオーディオ熱はさらに高まり、オーディオショップに滞在する時間が長くなったといいます。

「専門店に入り浸り、さまざまなジャンルの音楽、さまざまな音に触れました。大好きなジャズに出会ったのもこの頃でした」

 松下さんが当時“良い音”と感じていたのは、サックスやトランペットといった管楽器がリアリティを持って立体的に響くこと、まるで目の前で演奏しているかのような生々しさが感じられるシャープなサウンドだったそう。その音を自宅で再現するために夢中だったと話します。

「オーディオ修理のアルバイトで資金を貯めながら、自宅の自分の部屋も改造してオーディオの設計や組立はもちろん、細かな部品からケーブル、機器の組み合わせなど試行錯誤を繰り返して、理想の“音”を追い求めました」

 しかしこのような音づくりの日々を過ごすうちに、考え方が変わってきたと語ります。

「オーディオなど、いくらハード面の環境を整えても、もともとのソフト面(録音)が良くなければ意味がないと気がついたんです」

 それを機に“録音”に興味を持つようになると、自身が所属するブラスバンド部の演奏を録音するようになりました。

「MDやDATなどの機材を持ち込んではレコーディングをしました。それを繰り返すうちに録音の奥深さにますます惹かれていきました」

 将来は好きなジャズを録音したいと思うようになった松下さんは「もっと専門的に学びたい」と、音響の専門学校への進学を決意しました。