Job-labo file 38

一杯のコーヒーをたくさんの出逢いに

バリスタ
向山 岳さん

ご両親の影響もあり、子どもの頃からコーヒーが好きだったという向山岳(30)さん。故郷・長野から、東京の大学に進学し上京するとコミュニケーション学を専攻しながら、ダブルスクールでプロダクトデザインも学びつつ、世界各国をバックパックでめぐる旅も経験。そんなさまざまな体験を通じて感じたのは、自分が知らないことにもっと出逢い、多くの人をハッピーにしたいということ。そのための一つの手段となったのが、コーヒーを中心にしたバリスタの仕事でした。現在はバリスタのみならずコーヒーを通じたプロデュースやコンサルティング業なども手がける向山さんに、仕事のやりがいやこれからの夢などについて伺いました!

デザインという価値を旅で体感

インタビューに答える向山さん

 自然豊かな長野県で、スポーツやアウトドア大好き少年時代を過ごした向山さん。知らないコトやモノ、ヒトと出逢うことが好きで、大学は憧れを抱いていた東京の学校に進学。これから国内外のさまざまな人たちとのたくさんの出逢いを楽しみたいと、コミュニケーション学を専攻しました。

「大学時代はバックパックを背負っていろんな国をまわったり、スリランカでは現地に幼稚園や井戸をつくるNGOに参加したりと、知らないことや自分にできることの可能性を探りました」

 そういった活動のなかで、強く印象に残る出来事があったそう。

「インドを旅していたときでした。たくさんのストリートチルドレンがいましたが、ある子があるモノを売りに来たんです。それはとてもステキなモノでした。お金だけを差し出すことはできないけれど、これならしっかり対価として支払うことができる。モノやデザインの価値を体感した瞬間でした」

 そしてコミュニケーションを学ぶかたわら、美術やデザインを専門とする学校に通いプロダクトデザインについての勉強もスタートさせることに。

 そして今度は、アルバイトをした山小屋で新たなテーマと出逢うのでした。

コーヒーのおいしさは環境からも生まれる

インタビューに答える向山さん

 向山さんがとある山小屋で、数か月にわたってアルバイトをしていたときのことでした。

「朝から晩まで仕事でヘトヘトでした。でも、たまの休憩が最高だったんです。壮大な大自然を目の前に、毎日変わりゆく風景を眺めながら、そして仲間と話を楽しみながら、味わう一杯のコーヒーが本当においしくて幸せな時間だったんです。コーヒーのおいしさとは、その味だけじゃなくって、環境も大事だと実感しました。コミュニケーション、空間やモノをはじめとしたデザイン、そしてコーヒーというキーワードがつながった瞬間でした」

 コーヒーそのものの味わいを、整えられた良い環境で提供すること。自分が山小屋で味わったような体験を都会でも広めたいと研究を開始し、都内のコーヒーショップでバリスタとして働きながらコーヒーのおいしさを追求しはじめました。

「ドリップばかりに意識がいっていたので、エスプレッソマシーンやカフェラテがどうできるのかからスタートしました。特にスペシャルティコーヒーの芳醇な香りにはまり、お湯を注ぐ速度やフィルターの濡れ具合などを変えつつ、その薫りをどう引き出すかを日々研究していました」

 またそれと同時に学んでいたのが、コーヒーの見せ方だそう。

「コーヒーそのものを追求していくと、次にたどり着くのはその味わいを楽しむ時間や空間となります。バリスタとして味だけでなく、デザインを学んだ経験なども生かしながら、そこの良さも提供したいと強く思いました」