グラフィックからデザインを仕事に

何かのデザイナーになりたいという思いでアメリカ留学から帰国した今野さんは、考えを巡らし花に触れる道を一つの候補としました。
「とにかく自分で何かをクリエイトすることを求めて、まずは帰国後すぐにフラワーデザイナー資格検定3級を取得しました。花に触れるのはとても楽しいと感じました。プラモデル感覚のような。プラモデルには人工的な型がありますが、花は型のないものを創りあげて、自分なりにアレンジして自分なりに組み立ててゆく。花の造形美や一期一会の感覚、そして扱う難しさにも、とてもやりがいを感じました」
さらに、大学3年生の際に体験した大きな事故が、今野さんに新たな出逢いと可能性をもたらしました。
「スノーボードで背骨を骨折したんです。入院中に知人がたまたま持ってきたグラフィックのブックを見て、とても興味を持ちました」
グラフィックデザインに強く惹かれた今野さんは、グラフィックデザイナーとして社会人のスタートを切ることになりました。そこでの約3年間で、現在の基礎となるたくさんの経験を積むことが出来たといいます。
「グラフィックデザイナーとしては、構成力・余白の使い方・イメージの言語化などを体感することができました。また営業的な仕事も任されていたので、経営の視点やビジネス上のコミュニケーションといった基礎も学ぶことができたのは大きかったですね」
そうしてグラフィックデザイナーとして働いていたある日、今野さんの手元にフラワーデザイナーの有資格者向けのコンテストの案内が届きました。
「この案内が、フラワーデザイナーになったきっかけになりました」
花を通して世界をつなぎたい

ある日届いたフラワーデザインのコンテストに参加した今野さん。その結果とは・・・。
「1位ではなかったのですが(その後日本一を決めるコンテスト、日本フラワーデザイン大賞2006にて1位を獲得することに!)、会場で見知らぬ女性に突然声をかけられ、その一言が自分の今を決定づけました。『これあなたがつくったの? 私はあなたのが一番良かった』とおっしゃってくださったんです。それが嬉しくって。その瞬間に、花を通してもっとたくさんの人に喜んでもらいたいと思いました。
男性が花を扱うことなどにネガティブな意見もありましたが、欧米ではそれはとても当たり前のこと。日本でももっと花が生活に馴染んで欲しいという思いもあって、25歳からフラワーデザイナーの仕事を開始しました」
フラワーデザイナーの仕事について、「自分の好き勝手に花をつくるのではなく、さまざまな制約の中でデザインすることが大切であり、それこそがデザイナーにとって重要なこと。花に触れるほどに、その素晴らしさを実感します」と今野さんは話します。
「花それぞれの個性はもちろんのこと、花を贈ることに込められる思いや、歳時記のような日本の文化そのものが、フラワーデザインには詰まっています。花を通して人々を幸せにできる仕事だと常に実感しています」
フラワーデザイナーや講師として活躍する今野さんは現在、銀座を中心にプリザーブドフラワー専門店やスクールなどを手がける『Belles Fleurs Tokyo』の代表も務めています。
「花は世界共通言語で、人の心と心をつなぐものです。最近では海外で教えることも増え、花を通してさらに世界で日本の文化や心を伝えていきたいと思っています」
一つひとつの花に込められた今野さんの思いが、世界中にたくさんの笑顔を咲かせるのでしょう。

『ベル・フルール』WEBサイト