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歌うことってこんなに楽しいんだ!

秀子さんのライブの様子

 富良野塾で学びながら、独自に歌の勉強もスタートさせた秀子さん。卒業後は地元の札幌でアルバイトをしながら歌のレッスンの日々を2年間つづけ、資金を貯めると東京へ。

「あてがあったわけではありませんが、とにかく東京へ出て歌いたいという思いでした。上京後は仕事をしながら歌を勉強する毎日でした」

 半年ほど経過すると、少しずつネットワークが広がってきたそう。

「人とのつながりが増えて、ちょっとずつ音楽活動ができるようになりました。セッションで出会った仲間と昭和歌謡をカバーするバンドを結成して、ライブハウスや下北沢などの路上で演奏するようになりました。歌うことってこんなに楽しいんだ! と思いましたね」

 路上でのライブは、知らない人と出会えたり、大空の下、開放的な気分で演奏できたりと、大変さよりも楽しさが勝っていたといいます。

「歌うことに、とにかく幸せを感じました。演劇やミュージカルはとことんつくり込んだものを丁寧に再現しますが、どちらかというと歌はその場で感じたものを表現して、聴いてくださる方の反応とともに一緒になって音楽をつくっていく感じが強いです。これまでに学んできたことが全て今に生きている感じがして不思議ですね」

“ワクワク”の原体験を誰かに届けたい

インタビューにこたえる秀子さん

 2005年には音楽活動を通して意気投合した仲間と、自身のバンド、ジプシー・ヴァガボンズを結成。シンガー、ミュージシャンとしての活動を本格化させました。

「最初はライブをしてもお客さまがいない…など苦労もありました(笑)。でも継続は力なりで、活動をつづけるごとに聴いてくださる方やお客さまからの反応も増えて、それがやりがいにもつながりました。自分たちの音楽で踊ってくださったり喜んでくださったり、それは本当に嬉しいことです」

 ライブでは、歌だけでなくエンターテインメント性にもこだわっているそう。

「ダンサーに参加してもらったり、衣装を手づくりしたり、自分も歌うだけでなくフルートを演奏したり。見ても聴いても、トータルに楽しんでもらいたいと思っています」

 結成11年となる2016年には、初となるフルアルバム『ヴァガゴロジー・シアター』を完成させました。

「10年以上が経過して、ようやく自分たちが追求する音楽を表現できるようになりました。今後は日本での活動はもちろん、海外でも演奏してみたいですね。未知なる世界への興味は尽きません。私が子どものときにミュージカルを観て感じた“ワクワク”を、今度は誰かに届けられたらいいですね」

 これからも秀子さんが紡ぐ歌や音楽は、誰かに“ワクワク”を届けつづけるのでしょう。

秀子さんが所属するバンド
ジプシー・ヴァガボンズWebサイト

http://gypsyvagabonz.net/disc.html

世界最大級のジャズ専門店
disk UNION Jazz TOKYO(撮影協力)

http://diskunion.net/shop/ct/jazz_tokyo

Mini column

ミュージシャンの収入って、どのようになっているの?

レコード売上の配分

音楽業界では、“マスター音源”の制作者が保有する「原盤権」を軸にして、ビジネスが展開されます。この原盤の制作にはアルバム1枚あたり1,000万円程度の予算が必要となるため、最近ではアーティスト、レコード会社、音楽出版社などが共同制作者となって、「原盤権」を保有するケースが増えています。

レコードの売上げは、小売りや流通においてそれぞれが売上げを確保した後で、原盤制作者に原盤印税、アーティストに歌唱印税が支払われます。アルバム1枚を100%としたときの主な配分構成の目安は、このようになっています。「レコード会社28%」「小売店27%」「原盤印税15%」「流通費10%」「広告宣伝費7%」「著作権使用料6%」「製造費6%」「歌唱印税1%」。

仮に3,000円のアルバムを10,000枚販売したとしましょう。トータル売上げ3,000万円から、アーティストには「歌唱印税1%」の30万円、そして作詞作曲を手がけた場合には「著作権使用料6%」の180万円から必要経費を差し引いた約85万円、合計115万円が収入となります。また、テレビやラジオ、カラオケやコンサートなどで楽曲を使用された場合などの“二次利用料”は、JASRACをはじめとした著作権管理事業者を通して、原盤制作者に還元されます。

さらにミュージシャン・アーティストはそれ以外にも収入源があります。たとえばライブやコンサート。契約によってさまざまですが、仮に1枚3,000円のチケットで販売11枚目以降を50%の収入とした場合。200名の会場で満席になったら、190枚×3,000円×50%=285,000円がチケット収入となります。

そのほかにも、グッズの売上げ、またメディア媒体への出演など、人気が高まるほどにそういった売上げも拡大していくことが考えられます。今ではITの発達で、自分の音楽を誰もが発信しやすい時代。音楽で生計を立てていくことは夢ではないかも!?