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2013 Nov.1
『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会 Vol.4

『消費者はデータから見えるか?』

「グローバル・リーダーを目指す人の総合マネジメント誌」として多くの経営者やコンサルタント、若手のリーダー層から支持を集めている『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』。10月1日に開かれた第4回目の「DHBR読者勉強会」では、ゲストにネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏をお招きしました。スイスに本社を置くネスレというグローバル企業にあって、グローバルなマーケティングが通用しない日本市場で長きに渡って事業に携わってきた高岡氏。会場となったd-laboには「マーケティングを勉強したい」という読者の方々が集合。ネスカフェやキットカットなど、おなじみのブランドの事例を聞きながら21世紀型のマーケティング、ビジネスモデルについて考えてみました。

『消費者はデータから見えるか?』

マーケティングには人間の本質を見極めることが重要

『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会の様子

DHBR10月号の特集は「顧客を読むマーケティング」。誌面において「マーケティングリサーチの結果を鵜呑みにすることは危険である」と示唆した高岡氏。読者勉強会のプレゼンテーションでは、まずその本意とするところを自ら語っていただいた。

「最近はどこでもビッグデータの話を耳にしますね。実は記事ではそれに対して疑問を投げかけてみました。人と違うことを言うのが僕流のマーケティングなんです」

一時期、日本では「小売業界を変えるもの」としてPOSデータがもてはやされた。だが「数字データがマーケティングの問題を全て解決してくれるわけではない」というのが高岡氏の考えだ。

「僕は基本的にはマーケットリサーチというのを信用していないんです」

その一例が人気商品の「ネスカフェ ドルチェ グスト」や「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」。デザイン性に優れている上、「一杯ずつつくって飲む」ことが主流となっている最近のライフスタイルに対応、しかも街中のカフェと変わらないコーヒーが飲めると大好評のコーヒーメーカーだ。

「マシンをどこに置きますか?」とデータを取ると、多くの人は「キッチン」と答える。しかし実際には「お客さんに自慢したくてリビングに置いている」人が半分を占めるという。これはリサーチでは口にしにくい顧客の本音だ。

「こうした人間の本質を見極めるのがマーケティングの仕事ではないでしょうか」

『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会の様子

本物のブランドづくりには「ニュース」と「体験」が必要

『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』読者勉強会の様子

プレゼンのあとは参加者からの質問に応答。

先日も「インスタントコーヒーという呼称をやめます」と記者会見し、話題となったネスレ。ここでは古くからある「ネスカフェ」というブランドをいかに「かっこいい」ブランドへと変えていくか。

ネスカフェのブランドイメージを大きく変えたのが原宿にある「カフェネスカフェ」だ。「マーケティング上のテスト」として、あえて目立たぬ場所にオープンさせたカフェは3か月で黒字化。ここで高岡氏は自分たちが「ネスカフェというブランドを過小評価していた」ことに気がついたという。と同時に「物の本質を見るのが苦手」な日本人の体質も知った。

そして高岡氏の仕事の中でもとくに知られている「キットカット」の受験生応援キャンペーンなどについて、当事者でしか知り得ぬ話を披露してもらった。

コンフェクショナリー事業の持続的な成長を目指し、新たなビジネスチャンスを探すため、”Have a break, have a Kit Kat.” というキットカットの世界共通のスローガンをいかに日本の消費者に対して意味を持たせるかを考えることになった高岡氏。消費者から「あなたにとっての理想的な“ブレイク(休憩)”とは」をテーマに写真を募集。その結果、日本の消費者にとっての理想的な“ブレイク(休憩)”とは「ストレスからの解放」だった。

また、キットカットのメインのターゲットである中高生のストレスが、受験、恋愛、友人関係に起因していることもわかってきた。そしてほぼ同時期に、九州の方言で「きっと勝つとぉ(きっと勝つよ!)」が「キットカット」に似ていることから、九州を中心に受験生やその家族の間で「キットカット」がお守りのような存在になっているという情報をキャッチ。こうして生まれたのが受験生応援キャンペーンだった。

「本物のブランドづくりにはニュースとエモーショナルな体験が必要」と高岡氏。マス広告からPRへ。これが21世紀型のビジネスモデルの一例だ。

Information 1

高岡 浩三 氏

ネスレ日本 代表取締役社長兼CEO
1983年、神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。各種ブランド・マネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリーマーケティング本部長としてキットカット受験生応援キャンペーンを成功に導く。2005年、ネスレコンフェクショナリー代表取締役社長に就任。2010年、ネスレ日本代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを構築。同年11月ネスレ日本代表取締役社長兼CEOに就任。経済同友会幹事。2014年より世界的マーケティングフォーラム「ワールド・マーケティング・サミット」に日本人初のボードメンバーとして参画の予定。近著に『ゲームのルールを変えろ』(ダイヤモンド社)がある。

Information 2

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー

世界最古のマネジメント誌として知られる『Harvard Business Review』(HBR)の日本語版。1976年の創刊以来、「優れたリーダー人材に貢献する」というコンセプトのもと「実学」に資する論文を掲載。現在は「グローバル・リーダーを目指す人の総合マネジメント誌」として『HBR』の論文の他日本語版オリジナル記事を掲載。時宜に合った特集内容が好評を呼んでいる。

公式サイト
http://www.dhbr.net/