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2014 Mar.18
お気に入りの1冊 —My Favorite Book— Vol.8

自分の人生の「振り返り」ができる1冊
『働くひとのためのキャリア・デザイン』金井壽宏著

読書は人生の糧であり、本はときに「夢」へと進む自分を導いてくれる「師」となってくれます。本シリーズは各方面で活躍されているみなさんにそうした自分にとって唯一無二の本、「お気に入りの一冊」をご紹介いただくコーナーです。第8回目のゲストは、ソウル五輪シンクロ・デュエット銅メダリストであり、現在はメンタルトレーナーとして活躍している田中ウルヴェ京さん。アスリートの「キャリアトランジション」をテーマに活動をつづける田中さんが選んでくださった1冊は、『働くひとのためのキャリア・デザイン』。人なら誰しも訪れる「人生の節目」。そのとき、未来の自分をどうデザインしていくのか。大切なことを教えてくれる1冊です。

語り手
田中 ウルヴェ 京(国立鹿屋体育大学客員教授・メンタルトレーナー)
聞き手
鈴木 大介(d-laboスタッフ)
自分の人生の「振り返り」ができる1冊

自分と向き合える1冊

田中さんインタビューの様子

鈴木今日の1冊は『働くひとのためのキャリア・デザイン』。いかにも田中さんらしいセレクトだと感じました。この本とはどのようにして出会ったのですか?

田中いつもd-laboで開催しているセミナー「キャリアトランジション勉強会」を一緒にやらせていただいている重野弘三郎さんに10年か11年前、「読んだ方がいいよ」と勧められたのが出会いでした。当時の私は36、7歳で、ちょうどJリーグや日本オリンピック委員会で選手のキャリアプログラム開発をおこなっていた時でした。読み始めたら、「こんなにおもしろい本はない!」と、すぐに読破。経営学の先生がお書きになられている本だから理論がしっかりしているし、内容も自分が専門としていることにぴったり当てはまったんです。一読者として、自分が人生で得てきたものを振り返るいい機会にもなりました。学生なら就職前に、ビジネスマンなら転職や独立時に、60歳の人だったら退職後の生き方に、どんな人にも役立つ、キャリアを能動的に「デザイン」していこうという本です。

鈴木スポーツ選手の場合、身体的に限界がくると戦力外通告を受けたり、サラリーマンの場合は定年がきたら退職しなければなりません。実際に人がキャリアを新たにデザインするときというのは、裏に辛い事情が隠れていたりしますよね。会社からは「もういいよ」と言われ、でも自分では「まだやりたい」と思っていたり。こういうとき、前向きにキャリアをデザインしていくにはどうすればいいんでしょう。この本にはそういったヒントが詰まっていそうですね。

田中著者の金井壽宏先生は、人は「いくつになっても一皮むける」とおっしゃっています。人にどんな評価を受けたとしても、その事実から一皮むけることは可能です。こういったことを本に書くとき、メンタルトレーナーとしての私は心理的に迫っていくんですが、金井先生は着実に先行研究や事例を並べて理論的にお書きになる。読むと自分がどう行動すべきかが見えてくる。例えば、40歳になった男性だったら、自分が人生の折り返し地点に来たことを感じたりします。これからの復路をどう生きるか、自分ならではの内発的なモチベーションを探す一歩になると思います。

鈴木田中さん自身はこの本を読んで、何か行動をとられたんですか。

田中実は感動のあまり、金井先生のいる神戸大学に連絡を入れて会いに行ったんですよ。

鈴木金井先生に直接会いに行かれたんですか? すごい行動力ですね。

田中自分がいま何をやっているのかをご説明したら、心良く会ってくださり、いろいろとお話をしました。先生の別の著書『働くみんなのモティベーション論』では私のことを事例のひとつに取り上げてもいただきました。当時はメンタルトレーナーとして活動を始めたはいいものの、世間的には「なんだそれは」と怪しげに見られていた頃。だけど、先生とお話をすることで自分のやっていることに間違いはないという自信を得ることができましたし、スポーツ選手から起業という道筋を辿った自分を内省する上でもいい機会となりました。もちろん、この本を読めば、誰でも私のように自分と向き合えると思います。文中にはその方法が具体的に示されています。

<『働くひとのためのキャリア・デザイン』より抜粋>

エクササイズ 自己イメージのチェック

① 自分はなにが得意か。
② 自分はいったいなにをやりたいのか。
③ どのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか。

ほかの人がどのように思っているかではなく、自分が自分をどのように捉えているか、三つの問いにまず、走り書きのメモでいいから、答えてみましょう。文章にしなくても、キーワードをメモするだけでもかまいません。キャリアの内省に役立ちます。

これら三つの問いは、それぞれ自己イメージの三つの側面を照射している。
(1)能力・才能についての自己イメージ
(2)動機・欲求についての自己イメージ
(3)意味・価値についての自己イメージ
自己イメージとは、自分についての主観的な理解である。

図書館でおもしろそうな本を片っ端から借りる!

田中さんインタビューの様子

鈴木それにしてもすごい書きこみの量ですね。本文の余白だけでなく、表紙カバーの裏や見返し部分などもメモでぎっしりです。

田中気に入った本にはどんどん書きこみをするんです。ものによっては真っ黒です(笑)。

鈴木この本は重野さんの紹介とのことですが、他に気に入った本はどうやって見つけているんですか。

田中まず図書館に行っておもしろそうな本を片っ端から借りるんです。その中で「これは」と思える本があったら購入する。これが私のスタイルですね。読む本は仕事に関連したもので、心理学、哲学、経営学、身体科学、宗教学あたりが多いと思います。最近は報道番組にレギュラー出演していますので、知識の補強に近現代史の本をよく読みます。歴史については疎いので、中高一貫の学校で6年間お世話になった歴史の先生にメールで「私でもすぐ読めて、すぐにわかる歴史の本を3冊教えてください!」とお願いしました。そうしたら「まずこれを読みなさい」とすぐに返事が(笑)。やっぱり、その道のプロの方に聞くのが一番早いですし、間違いないですよね。

鈴木本といえば、田中さんが去年出された『人生最強の自分に出会える 感情ノート 田中ウルヴェ京式』も好評ですね。

田中これは書き込み式で、自分について書くことで自己内省をする「習慣づけ」の本です。ストレスや悩みというのは、なかなか正面からは向き合いたくないものだし、それを認めたくもない。だけど実は「書く」と楽になるし、解決策も見つかるんです。もし自分が今、人生の「谷」にいると感じているような方、あるいは今の自分を変えたいが、どう変えることが自分にとってベストなのかわからない、というような方がいたら、ぜひ手にとってみてください。

鈴木おっしゃる通り自分と正面から向き合うことは勇気がいりますよね。でもそれをすることで、自分自身を客観視することができ、新しい世界が開けてくる。私も自分と正面から向き合ってみたいと思います。本日はありがとうございました!

『人生最強の自分に出会える 感情ノート 田中ウルヴェ京式』(田中ウルヴェ京著/秀和システム)、『働くひとのためのキャリア・デザイン』(金井壽宏著/PHP研究所)、『働くみんなのモティベーション論』(金井壽宏著/NTT出版)

<今回紹介した本>

『働くひとのためのキャリア・デザイン』(金井壽宏著/PHP研究所)

『働くみんなのモティベーション論』(金井壽宏著/NTT出版)

『人生最強の自分に出会える 感情ノート 田中ウルヴェ京式』(田中ウルヴェ京著/秀和システム)

Information 1

田中 ウルヴェ 京 氏

日本スポーツ心理学会認定メンタルトレーニング上級指導士
国立鹿屋体育大学客員教授
日本オリンピック委員会(JOC)情報医科学専門委員会科学サポート部会メンバー

東京都出身。聖心女子学院初・中・高等科を経て日本大学在学中にソウルオリンピックに出場。シンクロ・デュエットで銅メダルを獲得。引退後、6年半のアメリカ大学院留学で、スポーツ心理学・キャリアプランニング、認知行動療法等を学び修士修了。アスリートとしての経験だけでなく、日、仏、米での代表コーチとしての経験と、大学院で学んだ知識を活かし、心と身体の健康をテーマに、ビジネスマンからアスリートまで幅広くメンタルトレーニング、企業研修を行っている。著書訳書多数。最近では報道番組でレギュラーコメンテーターをつとめる。

Information 2

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d-laboコミュニケーションスペースは、ミッドタウンと二子玉川にあるフリースペースです。東京ミッドタウン/ミッドタウンタワー7Fにあるd-laboミッドタウンには「夢・お金・環境」をテーマにした本約1,500冊や書評サイト「HONZ」で紹介されたおすすめ本約700冊を所蔵。二子玉川ライズ・オフィス12Fにあるd-labo二子玉川には、「趣味」をテーマにした本約700冊や「HONZ」のおすすめ本約500冊、そして約300冊の絵本を所蔵しています。ミッドタウン、二子玉川ともに本好きにはたまらない空間となっています。文化、芸術、スポーツ、最新トレンド等のセミナーやイベントも頻繁に開催。

夢研究所「d-labo コミュニケーションスペース」

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